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情報系システム開発スキル・流通系CRM業務ノウハウをピンポイントアピール! 40歳の壁を越えて大手のCRMコンサルタントに転身したA・Eさん
A・Eさんが新卒入社したのは日本を代表する大手電機メーカー。しかしメーカー系SEとしての立場に疑問を感じ、大手SIerに転職する。その後は着実にステップアップするが、30代後半に至り開発現場からどんどん遠ざかっていった……。
(取材・文/中村伸生 総研スタッフ/山田モーキン)作成日:05.11.23
Profile
大手コンサルティングファーム CRMコンサルタント A・Eさん(42歳)
得意とする技術領域は、まずは若いころに手がけた画像処理とそのデータ管理に関するスキル。さらに医療関連のシステムや流通系CRMの構築など複数のソリューションをこなす。システム監査の資格も取得。
転職活動1回目:独立系SIerにたどり着く
 ヘッドハンティング?
転職1回目(31歳)業種:大手SIer/職種:システムエンジニア
転職理由
自社ハードの採用が最優先の開発姿勢に疑問
企業選びの条件
メーカーにとらわれないオープンシステムを手がけられる企業
転職で犠牲にしたこと
大手企業で培った人脈
転職活動で工夫した点
専門のエージェントに職務経歴書を添削してもらった
活動期間
3カ月
活動方法
人材紹介会社登録
内定社数/応募社数
3社/5社
転職活動の反省点
自分が何をしたいのかをはっきりして、エージェントに伝えればよかった
 大学院で音声認識を研究した私が入社したのは、コンピュータもつくる世界的な電機メーカーA社。配属されたのは企業の業務アプリケーションを開発する部門だった。情報システムを手がけることに異存はなかったが、年月を経るにつれ、ひとつの不満が無視できなくなっていった。それは、自社ハード優先のシステム構成を強要されたことだった。企業経営から見れば理解できないこともない。むしろ、会社の利益のためには当然なのかもしれない。それでも最善の提案をしようと思えば、他社ハードを使ったほうが望ましい場合が少なくない。オープン時代が到来したころだったので、顧客の立場で考えれば不都合が目立ってきたのだ。もう、ソフトはハードを売るためのおまけと考えていた時代は去ったと思った。このまま会社の方針に従っていたらストレスがたまるばかりだ。徐々に転職を考えるようになっていた。

 そんなある日、転職エージェントを名乗る男性から電話がかかってきた。「当社に転職希望者として登録しないか」というオファーだった。もちろん会社には内緒の話である。すわヘッドハンティングか!と思ったが、よくよく聞けば、これから自分のスキルを正確に知って、それからマッチする企業を紹介してくれるようだ。中堅の人材紹介会社なのだそうだ。これも何かの縁か。勧めに従って登録することにした。
 職務経歴書の添削を重ね、自分の知らなかった市場価値を知る
 転職先の希望は明確だった。クライアントに対して最善の提案をするためにハードの互換性を意識しないオープンシステムの開発ができるとともに、自分が培ってきた画像処理やデータベースのスキルを生かせる企業であることを伝えた。それからエージェントに履歴書と職務経歴書を渡した。

 エージェントは職務経歴書を見て、自分のスキルならば必ず納得いただける転職先が紹介できると言ってくれた。ただ、何度も添削させられた。自分ではたいしたことではないと思っていたこと……、例えば暗礁に乗り上げたプロジェクトをチームリーダーとして何とかカットオーバーまでもっていったことなどは、先方がけっこう評価する経験なのだそうだ。

 それから3カ月ほどの間に10社前後の応募先をピックアップしてもらった。そこから5社に絞って面接に臨んだ。5社はA社のような名だたる大手ばかり。そのことには満足したが、自分の要望とはミスマッチしているようだ。オープンシステム開発のSE募集ではなかったり、自社システムの開発要員として採用したいと言われたりした。クライアントのシステムを自在に設計できる開発職を希望したはずなのに……。意思表示が弱かったのだろうか。
 だから、実は合否も半々だった。こちらの希望を伝えたら、急に話が盛り下がった面接もあった。言った・言わない……の問題だが、エージェントのマッチング力に疑問をもった。
 有名企業にこだわっていた自分の視野の狭さに気づいた
 何となく転職活動に停滞感が見えてきたころ、5社目の面接に挑むことになった。聞いたことのない社名だったのであまり乗り気ではなかった。でも事前資料を見たら、このB社は業界でもトップクラスの実績をもつSIer。独立系で、社名にメーカーの名前がつかなかったので一般への認知度は高くなかっただけだった。だが、自分は仮にも同じ情報システム業界で働いてきたのだ。視野の狭さを気づかされた。そして、よくよく考えれば、ベンダー色のついていない独立系SIerこそ自分が探していた転職先にぴったりなのである。先方も自分のキャリアを気に入ってくれ、3回目の面接で内定となった。
転職活動2回目:40歳の転職が成功するとすれば、キーワードは“ピンポイント アピール”
 30代後半から喜べなくなった昇進。現場を離れたくない
転職2回目(40歳)業種:大手コンサルティングファーム/職種:CRMコンサルタント
転職理由
昇進したものの、マネジメント業務にやりがいを感じなかったから
企業選びの条件
 
開発の第一線で働かせてくれる企業
転職で犠牲にしたこと
大手SIerの経営幹部への昇進可能性
転職活動で工夫した点
自分のスキルを具体的(実際に出した提案書)に見せた
活動期間
3カ月
活動方法
人材紹介会社登録
内定社数/応募社数
1社/7社
転職活動の反省点
複数の人材紹介会社を利用したらよかったかも
 B社では医療の最前線を支援する医療画像データベースの構築に参画したり、百貨店のCRM(カード会員を対象とした販促支援システム)などの構築プロジェクトを担ったりした。徐々にプロジェクト内での存在感も大きくなり、数年でプロジェクトマネジャーのポジションまで到達した。システムエンジニアとしては順風満帆。自分でもこの転職は成功だったと思った。そして30代も後半に差し掛かると、より上位の役職に昇進した。普通なら喜ばしいことなのだろうが、自分にとっては苦痛が増えてきた。開発現場から遠ざかり、部門全体の収益性を考えなければならなくなったからだ。モノづくりよりも、数十人の部下をどう食わせていくのかが、仕事で目指す目標になってしまったのである。そして40歳の大台が近づくにつれ、再び転職することが頭をよぎることが多くなった。
 過去に率いたプロジェクトの提案書が自分を物語ってくれた
 そしてとうとう40歳を迎え、前回にお世話になった人材会社にアクセスしてみた。今、本当に自分が望んでいるような転職先があるかどうか不安だったからだ。新しい担当者は、即戦力として加われる募集がないと厳しいだろうと言った。その言葉を受けて、自分の専門分野である情報系システムのプロマネ、もしくはコンサルタントを希望していることを述べた。今度は自分の要望を明確に伝えてオーダーを出したのだ。

 さっそく次々と応募候補企業の資料が送られてきた。いろんな会社が応募先としてピックアップされた。大手メーカーのシステム子会社、通信サービス会社の系列、ベンチャーも交じっている。今回は年齢が年齢だけに大企業にはこだわらなかった。ベンチャーでも自分の経験とスキルを必要としてくれる企業があれば、喜んで飛び込むつもりだった。

 そして片っ端から受けてみたのだが、どの会社とも良い出合いとはならなかった。エージェントによれば、すぐに断られた企業も少なくなかったそうだ。このままB社に残るという選択が現実的になってきたある日、エージェントから大手コンサルティングファームC社に応募しないかという電話があった。

 どうせ駄目だろう……、C社と聞いてすぐにそう思った。C社は日本のITを先導するようなコンサルファームだ。大規模かつ先進的なプロジェクト実績も多い。落ち続けたあとだったので、そんなレベルの高いC社に入れるはずがないと考えたのだ。それでもエージェントは受けてみましょうと言う。確かに独立系SIerのプロマネとして自分を考えた場合、今まで受けた企業よりもマッチした仕事がありそうだ。そこで、過去にクライアントに出した数々の提案書や仕様書、企画書などを持って面接に臨んだ。自分のスキルを知ってもらうことに加え、「自分のやりたい仕事」を伝えられる素材を用意して臨んだのである。
 すると、その提案書をネタに、先方と思いがけず話が弾んだのだ。クライアントの業務改革を提案したときの苦労話や要件定義の際のエピソードに耳を傾けてくれ、しかも共感したり評価したりしてくれたのである。そして担当役員、副社長と、有意義な面接を重ねていったところ、最後に申し分のない待遇条件が提示された。あとで聞けば、情報系システムの開発スキルと流通系CRMの業務ノウハウ、それに先方対応力をもった人材を探していたのだそうだ。まさに私のような人間である。ピンポイントのニーズに当てはまったわけである。
 周囲に迷惑をかけないことを第一に会社を移ることを考える
 B社自体には何の不満もないだけに、転職することで迷惑をかけることを極力避けるようにした。実は転職活動を開始して3カ月ほどたっていたが、その間に意図的に部下に権限を委譲し仕事の分量を減らしていた。混乱なく辞められるように準備しておいたのである。加えて、C社に1カ月先に入社時期を延ばしてもらう。引き継ぎにそれだけの時間がかかると思ったからだ。引き留めをかわしつつ、Excelに自分の業務を書き出して、引き継ぐ内容がチェックできるように工夫したりした。そして予定どおり、1カ月後に多くの人間に見送られてB社を退職することができた。今もB社時代の上司・同僚・部下たちと交流があり、仕事を紹介し合ったり、助けたり助けられたりする関係が続いている。B社時代の人脈がそのまま生きているのだ。それもこれも、退職の際に十分に配慮した行動をとったからであろう。
考察:A・Eさんの転職活動1回目/2回目を徹底比較 何が変ったのか?
常に年齢相応かそれ以上のスキルを身につけていたA・Eさんの2回の転職で、もっとも大きな違いは年齢と言えるだろう。1回目は31歳という転職市場でもっとも企業が欲する年齢。実際、大手企業であってもえり好みができた。2回目は本人が語るように、ピンポイントのニーズがないと採用されにくい40代だ。6社に落ちたのもニーズから外れていたからだろう。ところが、ニーズと合っていた企業は、一般的に7社の中ではもっとも難関と考えられるコンサルティングファームだった。もっとも力が発揮できる会社に、もっともアピールできるポイントを訴求したのが勝因だったといえよう。
また、A・Eさんは前職を辞める際に引き継ぎなどで相当に気を使った。そのおかげで今も当時の人脈を維持できている。さすが“大人の転職”といえるのではないだろうか。
40歳からの転職は、いかにピンポイントのニーズに巡り合えるかで決まる。もっとも力が発揮できる会社に、もっともアピールできるポイントを訴求していきたい
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