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オレの技術は使えるのか?異業種転職したエンジニアの本音(3)家電編:知識・経験の不足分は「スキルの土台」で対応できる ソニー
第1回目の「自動車編」第2回目の「IT・コンサル編」に続く、異業種転職シリーズの最終回は「家電編」だ。業績の差が顕著な大手電機メーカー各社だが、それぞれの理由でエンジニアニーズが止まることはない。企業により注力分野が異なるだけに、今後の事業戦略や製品展開などをじっくり見極めたい。
(取材・文/総研スタッフ 高橋マサシ イラスト/関根庸子) 作成日:05.11.16
Part1 次世代開発の流れをつかんで、採用ニーズを先取りする
 多様な製品を抱える家電業界では、異業種から転職しやすい職種、製品、専門分野と、そうでないものが複雑にからみ合う。ならば、現在から将来への技術の流れをつかんで、有力分野にアプローチするのもひとつの方法だ。
家電業界が熱望する異業種からの採用分野例
 家電業界とひと口に言っても製品のすそ野は非常に広く、企業の数も膨大だ。それを前提に求人の大きな流れを見ると、「次世代デジタル家電」「通信との融合」「自動車業界への参入」の3つが挙げられる。
 次世代デジタル家電とは、主に携帯電話などモバイル機器の画像処理やCCD開発。職種では映像ドライバなどを作る回路設計、LSIなど半導体、ソフトウェアなどだ。
 通信系はホームネットワークを見据えた次期戦略。屋外からは携帯電話、家庭内ではテレビをインターフェースとして、AV機器や白物家電とネットワークを組む。それぞれの機器に載せる通信デバイスの開発者と、つなげる無線系ネットワークエンジニアが中心。異業種からの壁はそれほど高くない。
 また、大手電機メーカーがシェアを伸ばしつつある自動車関連も元気だ。ハイブリッド車の電気部品など、サプライヤーとしての開発エンジニアを求めている。
 そのほかには、海外市場をターゲットとした製品開発もある。例えば低価格を特徴とする欧米向けAV機器、シェア拡大を狙った中国・アジア向け白物家電など。後者はハードならメカトロニクス系、ソフトなら制御系エンジニアがメインだが、メカトロ系の異業種転職はなかなか難しいのが実情だ。

Part2 大手コンサルティングファームからソニーへ
 外資系大手のコンサルティングファームでITコンサルタントとして活躍。事業会社で主体的に動きたいと、2005年1月にソニーに転職した。「どうやって速く走るか」が仕事の主題だった前職に比べて、不確実だからこそ現場のビジネスを実感していると語る。
「やった成果が形になる今に、とても満足」
コンサルティングファームから大手電機メーカーへ移った中村さん
ITコンサルタント時代の仕事で大賞を受賞
 新卒で外資系の大手コンサルティングファームに入社。主に官公庁や国内メーカーのシステム開発などを手掛けてきた中村さん。日本で初となる自治体コールセンターを構築して、日経コンピュータ「情報システム大賞」の電子政府賞を受賞したことも。2003年にはマネジャーに昇格。最大で30人のメンバーを抱えて、激務に追われる毎日を送っていた。

「マネジャーになってステージが上がり、周りを見渡す余裕が出てくると、自分が主体で動きたいと思うようになりました。契約の制限などから手が出せる範囲が決まっているファームでは、すべてを見られず、かかわれない。ならば1社の事業会社で、現場から経営までをじっくり学びたいと思いました」
 転職の条件はIT職種で製造業。また、外資系が必ずしも「グローバル」でないと知る彼は国際展開している国内系企業を望んだ。リクナビNEXTに登録して数社から声が掛かったが、「事業部の設計効率向上」など、今までと最も異なる仕事内容を提案したソニーに入社した。
短距離ダッシュから大きなゴールの中距離走へ
 中村さんは現在、デジカメ用イメージセンサーの事業戦略や、事業部内の中期計画立案などを担当。ITコンサルタントから事業企画担当へと、職種も変わっている。
「技術用語などの言葉もわからなければ、仕事の進め方も全然違う。中でも最も驚いたのが時間軸の差です。以前は数カ月という期限を決めたら後はダッシュ。『どうやって速く走るか』を常に考えていました。今は『大きなゴールに向かって中期的にビジネスを動かす』が仕事です。前はまっすぐ走ればよかった。しかし現実のビジネスは、人、製品、工場、利益の流れといった不確実な要素が多いので、走り方は非常に複雑です」

 ただ、それほど焦りは感じていないと言う。土台となる仕事の推進力やノウハウがあれば、その上に載せるスキルや知識は、これから積み上げていけばよいと考えているからだ。
「前職でも顧客や案件で、CRMや会計などシステムの内容は変わりました。今度は家電業界、覚えることは多いのですが、心配はしていません。何より、製品という形で『やった仕事が目に見える』ことにとても満足しています」
中村享史さん
半導体事業グループ
イメージングデバイス事業本部
経営品質部門
事業戦略部 IS事業企画課
中村享史さん(30歳)
有効1030万画素大判:CMOSセンサー
中村さんが所属する半導体事業グループの代表的なデバイス「有効1030万画素大判:CMOSセンサー」
超高精細液晶ディスプレイパネル:4K SXRD
同じく「超高精細液晶ディスプレイパネル:4K SXRD」
 
北村幸彦氏
人事センター
採用部
経験者・東アジア採用GP
統括課長
北村幸彦氏
人事の話:評価されたのは【仕事の取り組み方とこれまでの成果】

 私どもは特に異業種、同業種と区別してはいません。確かに業種が変われば専門知識や設計手法は違ってきますが、それは社内異動で開発対象が変わるのと同じ。ベースとなる技術やスキルがあれば、いくらでも応用は利きます。中村さんはまさにそのケースでした。
 その意味で応募者の方に望むのは、「仕事に取り組む姿勢」「今までの成果」「ソニーで実現したいこと」です。弊社は「とんがった人材」が多いと思われがちですし、実際にそうですが、いかに周囲を巻き込んで目的を達成するかという、チームワークも重視します。
 そういう仕事をしてきたエンジニアなら、十分な成果や実績、「これがやりたい!」という強い意志をおもちでしょう。そんな方はぜひソニーにチャレンジしてください。

Part3 家電業界への転職を成功させるカギは「専門技術のアピール力」
 家電業界が異業種エンジニアを採用するケースは以前からあるが、その経験が蓄積されてきた現在では、「入社後の伸ばし方」に対するノウハウも培われている。製品や技術が多様な業界だが、全体的な受け入れ体制は整いつつある。
電機メーカーのエンジニア採用は今後も継続
 家電業界は大手電機メーカーの業績に大きな差が出ており、いわゆる「勝ち組」「負け組」などと単純に色分けされることも多い。しかし、エンジニアの中途採用を止める企業はまずないと、リクルートエイブリックの河辺真典氏は言う。
「短期的に業績が低迷している企業からも求人は継続してあります。リストラと採用を並行して進めるのは現在では当たり前ですし、そういった企業ほど『次の打ち手』を考え、新たな人材を必要としています。業績の差は、注力する製品や分野による差だと考えてもよいでしょう」
 また、家電業界への異業種転職の特徴は、業界での業務知識を以前ほど問わなくなってきたことだそうだ。
「7、8年前のITバブル期には、中途でも派遣でも大量に採用する、数合わせのような傾向がありました。その経験を経て、異業界からの受け入れ体制を充実させてきた今、彼らを自社で育成する企業が増えています。この傾向は第二新卒層の採用増にも表れています。特に回路設計など電気・電子、通信、ソフトウェアでは、以前に増して出身業界を問わなくなってきました」
できることとやりたいことを明確にして伝える
 異業界出身者の転職活動のポイントは、保有スキルを明確にすることだと河辺氏は語る。
「企業は異業種ならではの技術や発想力を求めていますが、逆に不足を感じるのは業務知識と、業界特有の設計思想・手法、コスト意識などです。そこで、自分のスキルや知識を明確にして、できることとやりたいことを面接でアピールすることが大事です。自社で育てる気運が高まっているだけに、応募者の特性を見極めたいと思う企業は多いでしょう」
 また、狙い目としてはサプライヤーや関連メーカーがある。家電と聞くと大手電機メーカーを連想しがちだが、国内にわずか数社しかない。一方で部品メーカーや計測機器メーカーなどの関連企業は非常に数が多い。
「優秀な技術をもつ企業はとても多いですし、セットアップメーカーと共同開発する企業なら、先端技術の最前線に立てます。業界全体で異業種のエンジニアを採用する傾向は、今後も高まると思いますよ」
河辺真典氏
リクルートエイブリック
第一ビジネスユニット
EMCカスタマーマーケット
CA1グループ
グループマネジャー
河辺真典氏

家電業界への異業種転職を成功させる方法:技術の動向を見定めて、その業界で生かせる専門スキルをアピールしよう
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  高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ  
高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
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ソニーの中村さんと人事の北村さんを取材したのは別の日でした。しかし、2人とも全く同じことを言っていたのです。それは、「しっかりしたスキルの土台があれば、足りない知識はいくらでも補充できる」ということです。本人の努力は欠かせないものの、異業種転職の最大のポイントだと感じました。この連載は今回で終わりますが、今後のご要望などあれば教えてください!
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