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営業・顧客が「さすがプロ」と言う、ありがち質問への模範解答(3) 「無線LANは情報漏れ放題でしょ」と聞かれたら?
「はやってるんだから、アレ、うちでもやってよ」と、聞きかじりで注文してくる顧客や、「それ、ホントに役に立つの?」と半端な知識で“いちゃもん”を付けてくる営業……。「技術で問題解決」が仕事のエンジニアも、これでは力を発揮する前から一苦労。というわけで、顧客や営業の生半可な質問や注文への「模範解答」を考えてみる短期集中連載。第3回は「無線技術」を取り上げます。
(文/川畑英毅 総研スタッフ/根村かやの イラスト/岡田丈) 作成日:05.11.16
 単に「話をする道具」ではなく、メールにウェブ・ブラウジング、さらにはお財布代わりにと、進化を続ける携帯電話。単にじゃまな配線をなくすだけでなく、オフィスのフリーアドレス化の原動力にもなる無線LAN。磁気媒体よりずっと高密度に記録した情報を、非接触で読み取ることができるICタグ……。
 ふと気付いてみれば、われわれの身の回りには、小さな信号から大量のデータまで、さまざまな情報が“無線”の技術を介して飛び交っている。

 しかし、何でもかんでも「無線にしたらOK!」というわけではないのは当然のこと。一方で、「無線なんて!」と毛嫌いされても困ってしまう。生半可な知識をぶつけてくる顧客や営業に、相手が「なるほど」と思える説明をしてあげて、より“スマート”に技術を導入する環境を整えるのも、エンジニアの仕事のうちかも。

 というわけで、第3回は「無線(ワイヤレス、モバイル)技術編」。顧客や自社の他部門からの、「ありがちな質問」と、それに対して当編集部からの「例えばこんなお答えはいかが?」のヒントを、株式会社トリニティセキュリティシステムズ 営業本部/ネットワークエンジニアリ ンググループ/部長・伊勢幸一氏の監修で、組み立ててみました。
ありがち質問1 「無線LANって情報漏れ放題なんじゃない?
解答のツボ
無線LANが盗聴されやすいのは確かだが、対策しだいで、有線に比べ決して脆弱でない環境を組むことが可能。そのコスト/手間とオフィスの生産性とのバランスであることを理解してもらおう。
顧客の営業部長
 無線LANって、電波でデータをやり取りしているわけだから、情報が漏れ放題だって聞いたよ。そんなの、オフィスで使って大丈夫なの?
エンジニア
 確かに、一般家庭で無線LANを使っている場合、隣家でそのデータが見えちゃった、なんていう話がないわけじゃありません。例えばWindowsXPは、自動的に無線LANを検出して接続する機能を持っているので、電波の到達範囲内でXPを使っている場合、その気がなくてもLANの中のデータを拾ってしまうことはあり得るんです。
 そこで、まずは不正にログインしてデータを取られる危険をなるべく少なくすること。次に、それでも有線に比べて盗聴の危険性はずっと高いので、暗号化で情報の解読を困難にすることが重要です。例えば、WPA、SSID、MACアドレス・フィルタリングなど、不正なユーザーのログインを防いだり、情報を暗号化したりする仕組みを使います。
 WPAは無線LANの暗号化方式の規格で、暗号鍵を一定時間ごとに自動更新、ユーザー認証の機能もあります。SSIDは、無線LANのアクセスポイントやクライアント各機器にIDを設定、アクセス制限を設ける技術。MACアドレス・フィルタリングは、すべてのネットワーク機器に設定されているユニークな番号であるMACアドレスをもとに、アクセスポイントで制限をかける技術です。
 もちろん、個々の技術が万全とは言えませんが、組み合わせればセキュリティのレベルを上げることができます。
 特に企業内で使う場合には、ユーザーが限定できるので、アクセスポイントだけでなく端末側にもボードを入れて共有鍵方式で相互認証を行うなど、対策はいろいろ考えられますよ。
営業部長
 有線に比べていろいろ手を打つ必要があるんだね。そこまでして無線LANにする意味、あるの?
エンジニア
 もし、今お使いになっている環境で、組織内の異動や、日々の人の動きがそれほどないのであれば、有線で十分なんです。
 しかし、御社の場合、事業の拡大もあって、組織の異動やオフィス・レイアウトの変更がしばしばありますよね。その場合、有線ではケーブリングだけでもずいぶんコストや手間がかかります。無線LANなら「オフィスのフリーアドレス化」が可能。レイアウトを変えるときも配線をやり直す必要はありません。また、電波が届く範囲内なら、マシンの持ち運びが自由ですから、会議やプレゼンなどにも便利ですよね。当然、ケーブルがないので、断線や抜けなどの不慮の事故も防げます。オフィスの生産性向上に関しては、非常にメリットがあるんです。
 確かに、セキュリティ確保には、導入にも維持にもコストがかかります。「簡単・安価に強固なセキュリティ」というわけにはいきませんが、得られるメリットは、かける手間・コストに十分に見合うものと思います。
 
ありがち質問2  「無線LAN? Wi-Fi? Bluetooth? どれを使えばいいの?」
解答のツボ
規格の名前がさまざまに入り乱れて、素人は混乱しがちな無線技術。それぞれ使いどころや特徴があることを、簡潔に説明しよう。
総務課担当者
 オフィス内を無線LANで結ぶっていうけど、無線っていえば、Wi-FiとかBluetoothとかっていう言葉もよく聞くよね。結局、どう違うわけ?
社内エンジニア
 Wi-FiとかBluetoothも、両方とも無線の規格の名前。
 現在使われている無線LANの機器は、国際的な規格であるIEEE 802.11や、その拡張版の規格に準拠しているんだけれど、「Wi-Fi」というのは、そのうちの「IEEE 802.11a/b/g」に対して、業界団体「WECA」が名付けたブランド名なんだよ。
 だから、使う予定の機器にも、「Wi-Fi」のロゴが入っていたりすると思うよ。
総務課担当者
 それじゃあBluetoothっていうのは何なの? ひところずいぶん騒がれたけど、ウチで入れる必要はないの?
社内エンジニア
 Bluetoothは、Ericsson、IBM、Intel、Nokia、東芝の5社が中心となって提唱している無線技術。インターネットプロトコルを使った情報をのせることもあるけれど、比較的単純な信号交換をごく近距離で行うのが基本で、周辺機器や、携帯情報機器、それから家電などに使われている。Wi-Fiなどの無線LANとは、用途が違う。
 むしろ従来の技術の中では、赤外線の規格、IrDAと同じような使い方をイメージするのがいいかな。ポータブルゲーム機や家電のリモコンなどで使われているよね。IrDAと比べるとBluetoothは、障害物に対して強い、消費電力が小さい、製造コストも低い、といったメリットがあるんだ。
総務課担当者
 じゃ、結局ウチの無線LANにはWi-Fiを使うってことかな?
社内エンジニア
 そう、今のところはね。ただ、無線LANの規格は、セキュリティとも関連して、次々に新しいものが登場しているんだ。コストや信頼性、機器の普及度などもみてウチのシステム部できちんと選ぶよ。
ありがち質問3 「ウチも携帯で有料コンテンツを配信したい!」
解答のツボ
携帯サイトは流行だが、有料コンテンツの配信に関しては高い障壁がある。単に「思いつき」で試すようなものではないことはわかってもらおう。
顧客の広告担当者
 エンドユーザー向けに、携帯サイトを立ち上げたい。特に、うちのマスコットキャラはそれなりに人気だし、ミニゲームとか待ち受け動画とかを、携帯を通して売れないかなあ?
エンジニア
 まず、携帯サイトで有料コンテンツを流すというのは「ものすごく大変」と思ってください。
 最初に技術的なことから言えば、携帯サイトを立ち上げて、文字で何かを流すだけなら、PCサイトのHTMLの代わりにCompactHTMLを使うといった違いがある程度で、割と容易なんです。でも、アプリケーションを組み込むとなると、事はとたんにややこしくなります。
 アプリケーションのプログラム自体は、一般的にはJavaで、auならbrewプラットフォーム上で、C/C++で書けるので、エンジニアにとってさほど難しいものではありません。面倒なのは、大容量のアプリやデータもあらかじめユーザー側に落としておけるPCと違って、携帯端末はメモリ容量がものすごく限られている、ということです。プログラムにしろデータにしろ、ある程度以上のサイズになると、細切れにしておいて、必要になるたびにダウンロードし直すように設定しないといけないわけです。
 また、携帯のプログラムは機種依存度が高い。キャリア別にプログラムを組まなくてはいけないのはもちろんのこと、同じキャリアでも端末の機種ごとに仕様が違い、多くのユーザーに使ってもらいたいと思えば、検証項目がものすごく多くなるんです。開発現場としては、スケジュールにもデバッグの期間を十分見込んでいただけるとうれしいですね。
広告担当者
 PC向けのサイトみたいに簡単にはいかないんだね。でも、例えば1つのキャリアのユーザー向けにプログラムを流してお金を取るくらいなら、できるんだよね?
エンジニア
 最大の課題は、どのキャリアでも、正式の課金コンテンツプロバイダーとして申請・登録するのには、詳細な企画書や綿密な収益シミュレーションなどが要求され、非常に手間がかかるということ。この手間を軽減するには、既に登録されているコンテンツプロバイダーを通して配信する方法がありますが、代わりに手数料がかさみますし、いずれにせよ、簡単に「試しに立ち上げてみよう」といった具合にはいきません。
 もちろん、それをきっちり御社でクリアして、本格的に立ち上げるなら……あるいは、有料コンテンツの配信ということではなく、無料で、プロモーションサイトのようなものを立ち上げるのであれば、技術についてはご相談に乗りますよ。
ありがち質問4 「『モバイル・セントレックス』って、単に『みんなが携帯を持ってる』だけ?」
解答のツボ
内線電話の最大の特徴は、「保留」と「転送」。携帯電話であってもこれが使えるというのがモバイル・セントレックス。しかし一方で不自由な点が出てくることもあり得るのはきちんと説明したい。
顧客の管理部門担当者
 内線を携帯に切り替えたらどうかという上からの指示で調べてるんだけど、「モバイル・セントレックス」の中身がよくわからない。単に「みんなが携帯を持ってる」のと、どう違うの?
エンジニア
 みんながてんでんばらばらに携帯を持っているのとは違って、「社内では内線電話として使える」というのが「モバイル・セントレックス」です。一番の違いは、「保留」と「転送」の機能があるということですね。
 例えば広い工場や、席に座っているよりも社内での移動が多いタイプのオフィスでも、電話が「場所」でなく「人」に付随するので、“電話番”の必要がなくなる。オフィス内の配線もなくなりますよね。また、「社内では内線、社外では普通の携帯電話」として使えるのも大きなメリットです。
 ただ、方式は提供する各社で差があります。通常の携帯電話の通信網を企業内で使う方式、これは例えば、「インターネット」と「イントラネット」の関係と近いと思います。また、無線LAN基地局をオフィス内に設置して、その域内では、VoIP方式で通話する方式もあります。「IPセントレックス」とも呼ばれるこの場合には、IP化される部分、つまり内線通話は無料。ただし、専用の端末が必要になります。
管理部門担当者
 携帯だけじゃなくて、PHSでも似たようなことができるって聞いたけど。
エンジニア
 携帯電話の陰に隠れがちなPHSですが、企業内の内線電話として使うなら、PHSの事業所用コードレス・システムが、モバイル・セントレックスよりもむしろ先行してあります。
 これは、ほとんどの場合、現在の内線のPBX(構内交換機)の内蔵モジュール、あるいは外付け装置の追加だけで対応できるので、代替が楽。しかも、イントラネットとの親和性も高いのがメリットです。
 ただ、いずれにしても、一括して導入する対応端末では、使える機能が限られてしまうことがあります。常に最新サービスに対応しているのは、モバイル・セントレックス対応端末よりも、普通の携帯電話端末ですから……。
 せっかく導入したのに、結局、みんな自分用の携帯と、内線としての携帯の2台を持ち歩いているという事例もあるようです。よく事前調査して、本当にこの形式が必要かどうかをじっくり検討するのがいいと思いますよ。
ありがち質問5 「ICタグとRFIDタグって何が違うの?」
解答のツボ
将来は、商品タグとしても普及が考えられるICタグ/RFIDタグ。単に「はやりで導入」というものではないが、綿密な工程・流通の管理や、詳細な情報の付加など、今後の戦略しだいでは重要性が増すことを説明したい。
顧客の営業課長
 今、商品に付けるタグはバーコードを使ってるんだけど、これって、将来はICタグになっていくんだよね……。でも最近、RFIDタグっていう言葉も聞くんだけど、これ、何?
エンジニア
 RFIDというのは、Radio Frequency Identificationの略で、要するに無線を利用してモノの識別をするという意味。その識別のための媒体としてICチップを使っていれば「ICタグ」ということになります。現状ではIC以外の媒体は使われていないので、基本的にはほぼ同じものを指すことになっているんですよ。
 タグは、用途や、付ける対象物の形に応じて、ラベル型、カード型、コイン型、スティック型などさまざまな形状があります。通信距離も数mm程度のものから数mのものまであり、これも用途に応じて使い分けます。
 例えばJRで使われている「Suica」や「ICOCA」、電子マネーの「Edy」などは、もともとソニーが開発した「FeliCa(フェリカ)」で、カード型で非接触のICタグ。話題の「おさいふケータイ」も、同じ仕組みを携帯電話の中に組み込んだもの。商品タグ以外にも、日常消費者が使うものの中に、この技術は広まりつつあるんです。
営業課長
 商品に使うタグとして考えれば、結局、バーコードを光で読み取るか、それともチップから無線で受け取るかだけの違いだよね。
エンジニア
 でも、扱える情報量が格段に違いますよ。今でも、生産現場からバーコードで管理を行っているところがあると思いますが、ICタグを使えば、より詳細な管理が可能です。
 さらに、生産・流通段階での管理だけでなく、消費者の手に渡ってからIT技術と連動する可能性が大きいのが、注目されている理由です。例えば、スーパーで買ってきた食料品を冷蔵庫に入れるだけで、自動的にリスト化されて携帯の画面でも見ることができる、とかね。ITの技術が生活の隅々に行き渡って利用できるのが、よく言われる「ユビキタス・コンピューティング」の世界像ですが、ICタグはその核の一つになるんですよ。
 もちろん、そうなるのは将来の話ですが、そんなことも考えながら、ICタグ化の戦略を考えるといいですよ。
 
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根村かやの(総研スタッフ)からのメッセージ  
根村かやの(総研スタッフ)からのメッセージ
ひと口に「無線」といっても、無線LANと携帯通信とは異なる領域。構内LANと公衆LANとでは用途も周辺技術もまったく違う。でもそんなことはお構いなしなのが素人の「ありがち質問」というもの。専門外だと困惑したり、はねつけたりせずに「模範解答」を返せれば、ぐっと好印象になり、仕事もしやすくなるのでは??

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