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厳選★転職の穴場業界 第6回3Dサラウンド 超小型スピーカーが生み出す立体的臨場感
リスナーを360度包み込むような音場を作る3Dサラウンドオーディオテクノロジー。これまではホームシアター、映画館需要が中心だったが、新たに携帯型オーディオ、携帯電話、PCといった小型デバイス向けの新規需要が発生。市場の急成長も見込まれている。
(取材・文/伊藤憲二 総研スタッフ/高橋マサシ) 作成日:05.11.09
業界動向:携帯型オーディオの大ヒットで3Dサラウンドに新需要
 目前のディスプレイに映し出された映画のシーンに合わせ、前後左右、まるで自分を取り囲むように音声が鳴り響く――2チャンネルステレオを超えた立体音響技術、3Dサラウンドシステムの進歩が止まらない。
 音響業界をホットにさせているこのコアテクノロジーは、仮想サラウンドと呼ばれるものだ。

 サラウンドシステムといえば、従来はチャンネルの数だけスピーカーが必要だった。例えば映画の立体音響に使われる5.1chドルビーサラウンドシステムを再生するには、文字どおり5個のスピーカーと1つの低音用ウーファーを、リスナーの周りに配置していた。
 だが、音響理論の発達によって生まれた仮想サラウンドは、2個のスピーカーで360度音場を実現してしまうのである。

 この仮想サラウンド技術は、低コストでシアターシステムを構成できるという部分で注目されてきたが、ここにきて需要を強力に後押ししているのが携帯電話だ。
 ゲームなどのアプリケーションや映像配信の普及に伴い、立体化超小型の2スピーカーを使ったサラウンドシステムを実装する携帯が急激に増加。そして今後は、iPodなど新世代MP3プレーヤーにも、仮想サラウンドLSIが搭載される可能性がきわめて高い。

 仮想サラウンド技術で大げさなシステムを必要としなくなった3Dサラウンドは、今や次世代Hi-Fiの台風の目となっている。正確な市場規模などのデータはないが、携帯端末やMP3プレーヤー向けなど小型デバイス向けの増加が見込めるだけに、相当な成長性を秘めていることは間違いない。
注目企業:デジタル信号処理技術で驚異の仮想サラウンドを生むダイマジック
 サラウンドシステムといえば、通常は4チャンネル以上のマルチスピーカーを思い浮かべる。しかし、ダイマジックは独自のデジタル信号処理技術を駆使し、2スピーカーによるサラウンドシステムを完成させた。とてもスピーカーに見えないような超小型機から流れる本格3Dサラウンドは、「オーディオ革命」と呼べる。
■3Dサラウンド関連製品「Reo」と「beat shock」 ■音響再生システム「Stereo Dipole」
3Dサラウンド関連製品 図1
Reo(右)は世界最小のドルビー5.1chサラウンドヘッドで、スピーカーやヘッドホンなどをつなげるだけで5.1chオーディオが楽しめるという優れモノ。専用ミニスピーカーの「PEANUTS」(中央)は、ゲーム機のコントローラーに装着しても使える。beat shock(左)のほうは横長のエンクロージャーに2チャンネル分のヘッドを装着したもの。小型ラジカセ大ながら、リスナーの真横や後方にまで音楽や効果音が回り込むような高い性能をもつ。 2スピーカーで5チャンネル仮想サラウンドを成立させる核となる技術は、左右の音が耳に到達するわずかな時間のズレの制御だ。ダイマジックのStereo Dipoleは、原音に擬似的に左右チャンネルでずらすなどの加工を施す仮想音源創成信号処理技術により、高いラウンド効果を得ている。左右のスピーカーの間隔が極小であるため、リスナーとスピーカーがトライアングルの位置関係となる通常の2チャンネルオーディオに比べ、音像定位のよさが際立つ。

手のひらサイズで本格シアター再生、新たなビジネス展開へ

 プレイステーション2のコントローラー上に装着された、「PEANUTS」という名の小さなスピーカー。小型マイクと見間違えてしまいそうな大きさ、デザインだが、その再生音は「本物」の3Dサラウンドだ。 「PEANUTS」を本格サラウンドシステムたらしめているのは、音響関連のR&D企業であるダイマジックが開発したサラウンドユニット「Reo」。「PEANUTS」に限らず、普通のスピーカーやヘッドホンなど、2チャンネル再生装置を何でもサラウンド化してしまうという装置だ。

 同社は本格的な次世代ホームシアターも手がけるが、主力は「Reo」や箱形2チャンネルスピーカーで本格的な仮想ドルビーサラウンドシステムを実現させる「beat shock」、コンサートライブなどのプロ用ヘッドホン「EST-PRO」など、2スピーカーサラウンドだ。浜田晴夫会長兼社長は、今後のビジネス展開に自信を見せる。
「2スピーカーによるサラウンドのユーティリティは抜群。弊社が開発した世界初の3Dサラウンド用プロセッサが搭載された携帯電話も生まれ、着メロもサラウンド再生になった。今後も携帯電話での音楽再生やMP3プレーヤー向けの需要が急増すると思います」
 ダイマジックは99年、浜田氏が教授を務める東京電機大学の、日本初のTLO承認ベンチャーとして設立された。英サウザンプトン大学音響技術研究所との共同研究によって生み出した仮想音源テクノロジー「Stereo Dipole」が基盤技術である 。

初めて触れる若い世代に、高品質の音楽を聴かせたい

 Stereo Dipoleの特徴は、通常の2スピーカーステレオと異なり、2つのスピーカーをリスナーの正面に並べて配置するという点。5.1chドルビーサラウンドから2チャンネルステレオまで、さまざまなソースをプロセッサで加工。人間が左右の耳に届く音の時間差で音源の方向を認知するというシステムを利用して、立体音像を物理的に創り出すのだ。
 2つのスピーカーが近接していることが必要という特性は、ポータブルオーディオのために生まれてきたようなもの。携帯電話やMP3プレーヤーはもちろん、ノートパソコンの内蔵スピーカーを本格的な3Dサラウンドに変身させることも可能。また、リアルな音場を作るのが困難なカーオーディオも格好のターゲットだ。

 開発を手がけている技術部の村山好孝氏は、
「小さいデバイスに3Dサラウンドを実装するのは非常にやりがいのある仕事です。例えばゲーム機向けであれば、どのような音響効果を優先したスペックにすればいいのかなどを、第一線のゲームクリエイターとディスカッションします。サウンドはデザインでもあるんです」
 と、その面白みについて語る。
「今の若者が最初に音楽に触れるのは、PCのスピーカーやヘッドホンからというのが一般的。しかし、現在のPCのサウンドは、音楽を聴くには粗末すぎる。私は音楽が好きなので、特に若いユーザーには最初によい音質を体験してもらいたい。これが3Dの開発を進めている動機です」(浜田氏)

 音楽や映像などのコンテンツビジネスは21世紀の巨大産業になるといわれているが、配信方法は店頭でのメディア販売から、ネットワークを介したダウンロードへと変わってきている。
「今まではクリエイター、コンテンツホルダー、ユーザーの3極ビジネスでしたが、今後は複数の再生プラットホームに対応するコンテンツプロバイダーが必要になってくる。サウンドテクノロジーは、その流れの主導権を握るうえでも重要です」(浜田氏)
 音の世界を舞台としたダイマジックの技術開発とビジネス構想は、まさに果てのないチャレンジである。

浜田晴夫氏
代表取締役会長兼社長
浜田晴夫氏

東京電機大学情報通信工学科教授を兼任。英サウザンプトン大学の音響技術研究所と共同で2スピーカーサラウンドを実現するStereo Dipole、および音響、振動に関するデジタル制御を研究中。
村山好孝氏
技術部
村山好孝氏

東京電機大学および同大院で情報通信工学を専攻。浜田研究室で3次元音場再生システムの研究に携わる。ゲームが好きで、サラウンド機能の高度化による効果音など、演出のファクターを魅力的なものにすべく奮闘中。
P2DiPOLE
Stereo Dipole技術を投入した初めての市販品「P2DiPOLE」。超小型のコーン型スピーカーを連装し、迫力のサラウンドを演じる。プレイステーション2と同日に出荷され、販売台数は3万台を突破した。
穴場求人:ハードはDSPおよび回路設計、ソフトは人材不足からポテンシャル採用も
 急速に技術革新が進む3Dサラウンドシステム。エンジニアのニーズも決して小さくない。リクナビNEXTでは「サラウンドシステム」「音響」「ホームシアター」などをキーワードに検索をかければ、求人情報をゲットできる。
 求められるスキルは幅広く、ニーズはハードウェアとソフトウェアにまたがっている。
 ハードウェアではサウンドに限らず、電気信号を扱うDSPの開発経験があればベスト。また、そのほかの回路設計全般も転職に有利で、特にアンプなどで商用アナログ回路の開発経験があると評価が高い。

 ソフトウェアでは、音声信号をサラウンドとして成立させるためにどういう処理を行うかといった、アルゴリズムを書ける人材は即戦力。だが、DSPを使用した仮想サラウンドの技術が進歩したのは近年のことで、当てはまる人材は少ないのが実情だ。
 そこで、プロセッサの基本を理解しつつ、組み込み系などソフト面で回路設計に携わった経験があれば、あとは入社後の猛勉強をアピールしていくという方法もある。まだ新しい業界だけに採用の可能性は高いし、技術的にも対応可能だろう。

 その意味では、ハードとソフトを問わず、中途半端な知識よりどういう音を作りたいかといったサウンドデザイナー的な探求心、熱心さをもっていることのほうが重要だ。
 サラウンドシステムのエンジニアとして、デジタルクリエイターの一翼を担いたい。そんな意思があれば、成長性十分と期待されている業界だけに、門戸をたたいてみる価値は十分にある。
3Dサラウンド業界のエンジニアニーズ
・ 業務経験や技術スキルも大事だが「音楽好き」がまず求められる
・ DSP関連の開発経験は有用。サウンド関連以外でも採用可能に
・ アナログ、デジタルの回路設計経験は機器開発に役立つ
・ 信号処理のアルゴリズムや組み込みソフトなどプログラマにも道
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  高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ  
高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
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試作品の携帯電話で、3Dサラウンドを聴かせていただきました。左右の耳で聞き取る音が異なってボリューム感と立体感が生まれ、「えっ」という驚きでした。やはりすごいのは、2チャンネルの音源も5チャンネルにしてしまうこと。「スターウォーズ」で試させていただきましたが、まさに映画館にいるようでした。3Dサラウンドが一般化する日はそんなに遠くありません。
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