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業務知識で活路を開くか、開発技術を究めるべきか    コンサルタントのひと言で新たな進路を見つけたY・Tさん
Y・Tさんは文系学部を卒業後に新卒入社した企業で、経理部門とシステム部門の両方を経験。その企業の業績悪化に伴って転職を考えるが、経理スキルを売り込むか、開発スキルを売り込むか迷った末に……。
(取材・文/中村伸生 総研スタッフ/山田モーキン)作成日:05.10.26
Profile
業務ソフト販売会社コールセンターオペレーター Y・Tさん(38歳)
大学卒業後中堅生保に新卒入社。就職後に独学でPCのスキルを磨き、社内でもITに強い経理マンとして注目された。多様なスキルを吸収できる実力をもつが、鉄道旅行が好きという趣味性ものぞかせる。
転職活動1回目:業務のエキスパートか、“純”SEか。 最終的には待遇で決めた進路
 経理としてキャリアを磨く一方、PCにもハマった20代
転職1回目(33歳)業種:会計事務所/職種:社内システムサポート
転職理由
前職の会社が経営破綻に追いこまれた
企業選びの条件
中途半端な自分のスキルが生かせ待遇もアップ
転職で犠牲にしたこと
開発SEとしての可能性
転職活動で工夫した点
自分の意欲的な姿勢を見せること
活動期間
1カ月
活動方法
求人情報誌
内定社数/応募社数
1社/3社(2社は途中辞退)
転職活動の反省点
待遇面にこだわりすぎたかも
 保険会社A社の経理として働く傍ら、25歳のころにPCに興味をもった。Windows95が発売される前のことで、一般には今ほどPCが普及しておらず、多少はマニアの世界だったかもしれない。やがて、DOSの3.2やWindows3.51上で今から思えば単純な業務ソフトを動かしたり、簡単なアーキテクチャのネットワークを構築したりできるようになった。興味が高じてシスアドの資格まで取ってしまった。そんな私が社内のネットワーク管理部門への異動を命じられたのは、自然な流れだった。

 そして30歳になる直前に、今度はとうとう社内向けシステム開発部門に移ることになった。だが、実は開発言語は何一つ知らない。上司はそれでもいいと言う。それならば何とかやってみようという気になった。クリエイティブな仕事がしたいとも感じていたので、徐々にチャレンジする意欲が沸いてきた。
 業務知識を生かしてどんどん設計に参加
 本来はPCやネットワークの知識だけではソフトウェア開発はできないはずだが、データベース構築の基礎技術を学んだこともあり、より上流のシステムを設計するフェーズで力を発揮することができた。企業会計の知識があるので、要件の定義や仕様を確定させる際に、業務知識に基づいた意見が言えるので重宝されたのだ。ある案件では、大手コンサルティングファームのPMから裁量が与えられ、一メンバーに過ぎない自分の意見を大きく取り入れてもらったことから、結果的に自分が書いたような設計書ができたこともあった。

 このように社内SEとしてのキャリアアップを首尾良くスタートさせることができた。しかし突然、方向転換を余儀なくされる不幸に遭遇した。かねてから収支が悪化していたA社だったが、とうとう破綻に追いこまれそうになったのだ。少し前までは経理だったので状況は知っていた。驚くことではなかったが、転職しなければならないことになった(実際、転職後にA社は破綻した)。
 会計事務所かSI企業で迷った末に待遇で選択
 転職するにあたって自分の市場価値を冷静に考えたところ、暗澹たる気分になった。SEとして見ればプログラミングスキルがなく、エンジニアとしての経験年数も年の割には短い。さりとて入社時以来磨いてきた会計職のキャリアには約3年のブランクがある。つまり中途半端なのである。また、これといって他にやりたい仕事もなかった。その一方で待遇面でも妥協はしたくなかった。そんな迷いを抱えていたときに見た転職情報誌で、自分でも採ってくれそうな仕事を見つけられた。B会計事務所が社内システムのサポート要員として、PCおよびWindowsのネットワークがわかる人間を高給待遇で募集していたのだった。さっそく応募したところ見事内定。大手SI企業2社に応募していて選考の途中だったが、待遇面で突出していたこの会計事務所にお世話になることにした。
転職活動2回目:再度悩む将来の進路。しかしコンサルタントが口にした一言で道が開ける
 中途半端な立場に気疲れが続き病気に
転職2回目(36歳)業種:ソフト販売会社/職種:コールセンターオペレーター
転職理由
自分のスキルを生かして無理なく働きたい
企業選びの条件
 
自分らしさが出せる仕事がある会社
転職で犠牲にしたこと
高給
転職活動で工夫した点
職務経歴をコンサルタントに見てもらい市場価値を再確認した
活動期間
2カ月
活動方法
転職サイト
内定社数/応募社数
1社/1社
転職活動の反省点
転職理由を言った際に前の会社の批判に思われたかも
 待遇で選んだB会計事務所での仕事は思いのほか楽しかった。まずは事務所の中のインフラ整理に取りかかり、ケーブルの引き直しから仕事を進めていった。それが片付くと今度は新しいサーバーおよびソフトの導入。会計の業務知識があるからスムーズに進んだ。次いで担当したのは20台ものPCの入れ替え作業。ソフトのライセンス管理など大変だったが、ここまでは充実した時間を送ることができた。でも、やるべきことをやってしまったら、手がける仕事がなくなってしまった。ネットワークをキチンと整備したので、障害の対応なども希にしか起こらない。時間を持て余すようになった。

 そこで経営者である所長に、「私にも決算業務を見させてほしい」と言った。周りの会計士が忙しく働いているのを見て、少しでもサポートできたら……と考えたのだった。サポートするくらいの会計スキルはもっている自信もあった。しかし、所長の返事はNO。理由は、「君に会計スキルがあることは知っているが、もしも担当案件をもって忙しくなったときにシステムがトラブったら大変なことになる。少々暇でも給料はキチンと支払うから、そのまま我慢してくれ」とのことだった。

 所長はそう言ってくれたが、やはり肩身は狭い。高給なのにやる仕事がないのは苦痛だった。次第に気疲れすることが多くなり、そしてとうとう体が異変をきたした。
 自分らしい仕事は自分がいちばん知っているわけではない
 2カ月ほど休職し、静養に努めた。B会計事務所はゆっくり治して戻ってくるように言ってくれたが、戻れば再発するだろう。転職は不可避だった。でも、今度は前回以上に自分に何ができるのだろうと悩んだ。以前に増してSEなのか経理マンなのかどっちつかずの状態である。そこで、思いきって人材紹介の会社に登録してキャリアカウンセリングを受けた。そこで自分の職務経歴と培ったスキルを整理することができ、その結果として思わぬ仕事がコンサルタントから勧められた。「コールセンターのオペレーター」である。

 それまでコールセンターの仕事は、ユーザーの簡単な質問に答える程度のものだと思っていたのだが、業務ソフトのユーザー向けコールセンターでは、かなり実践的な業務知識や高度なPCスキルが必要であることを知った。確かに会計ソフトの有効な使い方やPC上での会計処理に対する疑問に加え、PC操作法やトラブルシューティングといった依頼への対応は、自分のようなスキルの持ち主がうってつけである。 また、勤務時間がある程度決まっているコールセンター業務は、重い病を患った経験から、肉体や精神への負担が少ないことも、この業界に対する興味関心を高めた。

 そうして、ネットの求人サイトで見つけたコールセンター業務の募集に応募したところ、すぐに内定が出た。その理由は、今まで業務知識も開発スキルも中途半端だったと認識していた自分自身のキャリアが、コールセンター業界では、どちらも“程よい”知識を有している、というプラスの評価を得たからだった。

 現在もそのC社で、業務系ソフトを対象としたコールセンターでオペレーターを続けている。やっと自分らしい仕事に落ち着けたと実感している。
考察:Y・Tさんの転職活動1回目/2回目を徹底比較 何が変わったのか?
 1回目は自分が採用してくれる会社という視点で仕事を探していたと語るY・Tさん。しかし、それは致し方ない。進路に悩んだのは、やりたい仕事が見つからなかったからであり、自分のキャリアを何とか生かせる仕事にチャレンジしようと考えるのは当然である。また、標準的なキャリアステップから踏み外さないようなビジョンを考えるのも間違ったことではない。ところが、2回目の転職はキャリアコンサルタントに職務経歴を整理してもらったところ、思いもよらなかった「自分らしく働ける」ポジションが浮かび上がった。消去法や採用してくれる会社という視点ではなく、納得して選んだ仕事は、より高いモチベーションで取り組める可能性が高いと言えるだろう。
Y・Tさんに学ぶ転職ノウハウ  いくつか指針を迷ったとしても、その範囲内に正解があるとは限らない。人材紹介企業の専門家に相談したりすることで、思いがけない展望が開けることも。
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