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業界未経験・高年齢のハンデによる“焦り”が引き起こすミス 雇用契約の事前確認失敗をバネに理想のポジションを勝ち取ったH・Mさん
H・Mさんは飲食業出身。友人の話からプログラマに興味をもち、思い切って29歳でITの世界に飛び込んだ。当然、好条件で採用してくれるところはなく、焦って入社した会社では不当な待遇に辛酸をなめた……。
(取材・文/中村伸生 総研スタッフ/山田モーキン)作成日:05.09.28
Profile
フリーランス ソフト開発エンジニア H・Mさん(33歳)
簿記の専門学校在学中にアルバイトで入った飲食業界に、そのまま8年間在籍。店長や調理責任者も経験。現在はフリーランスのソフト開発エンジニアとして活躍中。
転職活動1回目:プログラマになりたい! 待遇は二の次の転職活動
 ユーザーとしてITに対する不満がありエンジニアを志す
転職1回目(29歳)業種:ソフトハウス/職種:プログラマ
転職理由
プログラマになりたかった
企業選びの条件
プログラマとして採用してくれるところ
転職で犠牲にしたこと
飲食業界でのキャリア、同年代の中では多めの収入
転職活動で工夫した点
自分の意欲的な姿勢を見せること
活動期間
2ヵ月
活動方法
転職サイト、求人情報誌
内定社数/応募社数
1社/12社
転職活動の反省点
雇用契約を書面でキチンと取り交わすべきだった
 簿記の専門学校時代からアルバイトとして始めた飲食業の仕事だったが、気がつけば8年もたっていた。それだけいれば、それなりの仕事をこなすようになっていた。大手洋食系チェーンでは店長として活躍できたし、その後に転職した大手居酒屋チェーンでは調理責任者も任された。後輩や部下も慕ってくれたし、本部の上司の評価も高かったと聞く。年の割には収入も結構あったと思う。でも夜の勤務が中心の不規則な勤務形態、それに始終立ちっぱなしの仕事は体力的にキツかった。

 そんなある日、久々に会った友人との飲み会で、彼がプログラマという仕事をしていると聞き、強い興味をもった。実は働いていた店舗のPOSシステムの使い勝手に不満があり、こうしてほしい、こうなればいいのに……と、常々考えていたからだった。プログラマになれば自分で改善できる。そして同時に、「コイツができるのだから自分だってプログラマになれるだろう」と、直感的に思った。
 応募を重ねて転職市場における自分の位置を痛感
 さあ、転職活動だ。まずは転職情報誌を買う。ネットの求人サイトでもいろいろと検索した。たくさんの企業がプログラマの求人をしている。果たして自分はどこに行けるのだろうか? ともあれ、最初はだれでも知っているような大手一流メーカー系のシステム会社を何社か応募してみた。履歴書を送ったのである。ところが全部から不採用通知が届いた。

 やはり29歳という年齢と未経験者ということで大手は採用してくれないか……。今から考えれば当たり前のことに気がつき、未経験者歓迎と表記している企業にターゲットを絞って応募活動を続けた。今度はいくつかの会社が会ってくれた。面接までこぎ着けるようになったのである。でも、面接でうすうすわかったのは、自分が強く求められていないことだった。この点は過去に飲食業界の転職で面接を受けた時と相手の反応が大きく違うので確信を持った。年齢の割にキャリアが無いからだろう。話も弾まない。そして、やはりどの会社も最終的には合格できなかった。

 ただ、面接を繰り返すことによって、自分の何に興味を持ってもらえるかわかってきた。簿記の専門学校に行っていたことは、会計システムの開発にかなりプラスになるようだ。教育を期待するのではなく、自分から勉強しますと言ったほうが、反応がよいことも知った。

 そしてとうとう、十何社目に受けたA社が採用してくれた。社員数わずか30人の客先派遣の業務形態だったが、焦りが頂点に達していたときだったので救世主のように感じ、心からホッとした。
 極度に下がった収入、口約束による雇用契約に対する後悔
 焦ってA社に入社したのだったが、それゆえ現実の厳しさに直面。何より収入が極度に下がる厳しさが身に染みてきた。とにかくプログラマへのスタートラインにつきたいと渇望しながら、なかなか転職は厳しいと悟ってきた矢先のA社からのオファー。飛び乗ったのはいいが、待遇や勤務条件などの雇用契約を確認することまで頭が回らなかった。本来ならキチンと書面で交わしておくべきだろう。ところが基本給を言い渡すだけの簡単な口約束ですませてしまい、そのことが結果的に、雇用条件がA社の言いなりになってしまったのだ。

 まず、配属するプロジェクトが決まらないと給料が出ないという、派遣社員のようなシステム。後で知ったが正社員の場合は違法である。加えて、残業部分が大幅にカットされる計算式。ただでさえ残業の多い仕事なのに、いくら仕事をしても稼げないのがつらかった。さらに先輩に聞いたところ、ボーナスなど過去2年も出ていないと聞いて、がく然とした。今から思うと、もっと事前に下調べしておくべきだったと反省しているのだが。

 教育などもほとんど施されなかった。「自分で勉強します」と自分から口にしての入社だから、これは仕方がないかもしれない。現場で年下の先輩に面倒がられながら、あるいは自分で書籍を買ったりネットで調べたりしてJavaによるプログラミングを勉強しながら、スキルアップを図った。ただし苦労した分だけ、着実にスキルは身についていった。
転職活動2回目:スキルに自信が出てきたころに「引き抜き」の声が
 数々のプロジェクトを経験し、プログラマとして自信がつく
転職2回目(32歳)業種:ソフトハウス/職種:プログラマ
転職理由
スキルアップで自信がつき相応の収入がほしかった
企業選びの条件
 
好条件を提示してくれるところ
転職で犠牲にしたこと
特にナシ
転職活動で工夫した点
後悔しないように雇用の諸条件を書面で交した
活動期間
1ヵ月
活動方法
引き抜き
内定社数/応募社数
1社/1社
転職活動の反省点
特にナシ
 何も教育らしきものを受けなかったA社だったが、新しいプロジェクトに参加するごとに、必要とされる技術スキルをOJTで獲得していった。もちろん基本は独学である。顧客企業の社内の情報系システムなどを手がけ、Java関連の開発に関しては、もうだれにも頼らなくなった。だが、待遇条件はわずかに上がったにすぎない。

 そんなある日、某クライアントのプロジェクトで知り合った別の受託会社B社の開発リーダーから声がかかった。ぜひ、うちに来ないかと言う。「やった、とうとう自分も引き抜かれるような存在になれたんだ」と、心が躍った。でも、すぐに気を引き締めた。この業界に入るときも、最後の最後に内定が出て、雇用条件を詰めないままに契約して大変な目に遭ったことを思い起こしたからだ。
 過去の不満を話して、納得できる雇用契約を結ぶ。そしてフリーランスとして好条件を引き出す
 スキルがついて自信が生まれると自分を売り込むのにも余裕が出る。B社からのオファーにも、慌てずに対応しようと思った。まずは過去に遭遇した雇用契約に際しての不満を、面接の際に先方の取締役に正直に述べ、公正な雇用を要望した。案件が発生しないと無給に加えサービス残業を強いる、雇用サイドに有利な給与支払い規定、何年たってもスキル向上や成果を昇給として反映しない契約方針……。そんなA社で辛酸をなめた不利な雇用が、B社でも再度繰り返されることのないように確認したかったのだ。

 すると理解を示してくれたばかりか、それならばと、フリーランスとしての業務委託契約を結ばないかと打診された。プログラマのプロとして認められたからこそのオファーである。今の自分の市場価値が決して低くないことを知っているだけに、思いきって提案に乗ることにした。リスクは大きいが、実入りも増える。そして何よりひとつのプロジェクト単位で、自分自身の判断で契約を交わせることができるのも魅力的だった。また、既にプロジェクトが用意されていることが不安を解消した。

 そこから話がとんとん拍子に進んで、晴れてA社を辞めることになり、すぐにB社が用意していたプロジェクトに参画した。条件は望外の好条件だった。実際、収入は倍増。成果さえ残せば、途中のプロセスも自由度が増した。また、フリーランスということで、ビジネスの感覚ももつようになった。たとえば客先で顔を売るように努力したり、プロジェクトの収益性にも興味をもったりした。変なストレスも感じなくなった。この先、フリーのプログラマを続けようか、それとも大手SI企業に転職して上流工程の経験を積もうか迷っている。この業界に入ったころのことを思えばぜいたくな悩みだ。4年の時を経て、ようやくこの業界で、自分で未来を決められるようになったのだ。
考察:H・Mさんの転職活動1回目/2回目を徹底比較 何が変わったのか?
 H・Mさんの1回目の転職と2回目の転職は状況が大きく異なる。何より違うのは、スキル。最初の転職時は未経験者で、次の転職時にはJavaのエキスパートだ。転職に臨む条件がまったく違うといえばそれまでだが、慎重に臨んだ2回目の転職活動の進め方は、多くの転職希望者にとって参考にすべきポイントは多い。まず基本ではあるが、給与の支払い規定や額面、残業手当の計算方法、ボーナスの支払い実績等は入社前に確認しておくこと。そしてその他の契約条件全般についても書面でキチンと取り交わすということ。後で泣きを見ないためには必須だ。それに、未経験者であっても事前に転職先やその業界のことを少しでも知っておきたい。たとえば業界の賃金相場や仕事の内容だ。
 30歳間近の未経験者を採用してくれる企業は決して少なくないが、前職と比べて不利な条件を飲まなければならないかもしれない。だがキチンとした契約を取り交わすことに、業界経験やスキルのある・なしは関係ない。転職とは新たに雇用契約を結ぶということでもある。言われるがままの不本意な契約にならないよう、慎重を期すように心がけたい。
H・Mさんに学ぶ転職ノウハウ 未経験や高年齢というハンデを背負った転職では、その焦りから詳細な雇用契約の確認を怠りがち。雇用条件に関してはキチンと書面で取り交わす冷静な対応が、転職成功への条件となる。
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