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立ちはだかる“部門間のカベ”を緩和する手掛かりはあるのか?開発VS製造 大手メーカーに未だ潜むセクショナリズム
大手メーカーに根深く残る「組織内部門間」の障害や問題。今回はその中でも「開発」と「製造」両部門間に潜むセクショナリズムをクローズアップ。業務を妨げる、目には見えない障壁を取り除くためのヒントを導き出したい。
(取材・文/嵯峨やよ 総研スタッフ/山田モーキン イラスト/駒見龍也)作成日:05.08.31
その1 業界別:開発VS製造の間に鎮座する「見えないカベ」をエンジニアが激白
 今回、組織内での各部門の間に「見えないカベ」を感じている、大手メーカーエンジニア300人にアンケートを実施したところ、「開発・設計」「製造・生産技術」両部門間のカベが最も“高く”“厚い”ことが判明した。 カベができてしまった原因として、「その会社ならではの企業風土」や「業界全体の風潮」がおよそ7割を占めるため(図1)、個人レベルでは改善できないのでは?と思いがちだが、実は自分なりに策を講じ改善させているケースも少なくない。 以下、自動車、電機、半導体の3業界に絞って問題事例を挙げ、障壁を改善した回答から部門間のカベを切り崩すヒントを探ってみたい。
図1:「カベ」ができてしまった原因・背景図1:「カベ」ができてしまった原因・背景
自動車業界編  シャーシ技術部VS生産技術部のケース(機械/金型設計・37歳)
「技術側と顧客の立場、視点の違いによるカベ」(開発側からの視点)
エピソード
 製品をつくるプロセス上、シャーシ設計部は「上流」に位置しており、生産技術部は「下流」に位置している。設計部は、顧客第一主義をモットーに設計しているが、一方、技術部は社内の事情、ひいては自分たちの都合しか考えていない。そのため、自分たちに都合のいい提案、顧客のことをいっさい考えていない提案を、量産出図間近に平気で提出してきたりする。しかも、その提案を受け入れなければ、「設計部は生産側のことをまったく考えていない」と陰口をたたく始末……。あまりにも視野が狭い技術部との間に見えないカベを感じる。
原因と対応策
 技術者としてのスタンスの違いがカベを生み出している。設計部側の考えを理解してもらうために、月に一度、互いの部署間において業務の棚卸しの場を設定して関係を密にしようと努めている。
ほかにもこんなケースで、部門間のカベを切り崩すヒントが・・・
実験部VS技術管理部 (品質/生産管理・33歳)
 開発のサイクルが非常に短くなっていて、実験部は常に忙しい状態。にもかかわらず、技術管理部は「開発工数がかかる」と文句を言ってきたり、余計な業務処理基準をつくってきたりして開発の邪魔ばかりする。対立部署に意見を言う時間すら惜しいが、問題が起こったときだけでも意見するようにしている。
車両開発部およびエンジン設計部VSエンジン実験部(機械/金型設計・31歳)
 設計部と実験部の関係は、いわば泥棒と警察。泥棒がしたことを警察が公正に裁くように、設計部がつくったものを実験部が正しく評価する関係にある。そのため、設計担当を会議に収集すると、「また実験部が根掘り葉掘り聞いてくる」と、露骨にいやな顔をするし、実験部の意見に耳を傾けようとすらしない。まさに敵対関係にあるが、月に一度は互いの部署間で業務の棚卸しの場を設けて、少しでも関係を緩和しようとこちらから歩み寄っている。
電機業界編  機器開発部VS生産技術部のケース(システム開発・36歳)
「粗探しに責任のなすりつけ、不信感が生み出すカベ」(開発側からの視点)
エピソード
 生産技術部は、機器開発部が開発したものを安定量産する部門。その技術部が開発部の設計の粗探しばかりした結果、時間だけが無為に過ぎてしまい、なんと発表そのものを大幅に遅らせてしまった。この一件によって、互いの信頼関係が崩れたのは当然のことながら、両部門とも営業の信頼すら失ってしまった。さらに技術部は反省する素振りもなく、量産時に問題が発生した際にも「設計に原因がある」と豪語し、責任を設計部になすりつけてきた。
原因と対応策
 技術部にいる特定の人物が原因なので、その人物をでしゃばらせないためにも、上司を交えて今後の展開を両部門で検討するようにした。さらに、量産化にむけての取り組み段階から開発部もかかわるようにした。
ほかにもこんなケースで、部門間のカベを切り崩すヒントが・・・
交通システム本部VS端末製造部(システム開発・27歳)
 端末製造部はいわゆる工場で、交通システム本部からの指示の下、具体的な設計や製造を担当している。製造部は顧客の要求がより高度なものになってきている現状をまったく認識しておらず、「とりあえず動けばいい」と作業だけを淡々とこなすため、製品の品質に関するトラブルが絶えない。しかも、問題解決のために協力する姿勢はまったく見せない。そんな工場の風潮がなかなか改善されなかったため、改善設計費用を設けて解決した。
開発部VS海外機器製造部(システム開発・28歳)
 海外機器の販売が少ない場合、海外機器製造部は暇であるにもかかわらず、国内機器製造部がどれだけ忙しくても「国内用の機器に関する仕事は自分たちの仕事ではない」の一点張りで手伝おうとしない。これではあまりにも不公平なので、会社全体の負荷を分散させることの重要性を上長に提案した。
半導体業界編  設計技術部VSメモリ製造部のケース(生産技術/プロセス開発・35歳)
「仕事の丸投げ・苦情をうやむやにするカベ」(生産側からの視点)
エピソード
 設計技術部が新しい製品のデザインルールを立ち上げ、メモリ製造部がそれをもとに量産していく。その際、新しいデザインルールが完全に決まっていなくても、決められた期日が来れば、設計技術部はメモリ製造部に仕事を丸投げしてしまう。そのせいで量産が遅れたとしても製造部の責任となってしまうため、技術部に苦情を申し立てた。しかし、技術部は両部門間に立ちはだかるカベを盾にして、いつも問題をうやむやにする。結局、歩留まりが上がらない場合はいつも製造部の責任になってしまってらちがあかない。
原因と対応策
 適当にその場を濁して問題解決を延ばし延ばしにしてしまう企業風土が原因だと思うが、いつまでもこのままでは何も変わらない。言っても仕方ないとあきらめずに、あえて自分が所属する部署の上長に意見してみた。
ほかにもこんなケースで、部門間のカベを切り崩すヒントが・・・
設計技術部VSメモリ製造部(半導体設計・32歳)
 設計技術部は顧客の要望にこたえるために、より高度な技術力を必要とする製品を設計する。しかし一方で、実際に製造する現場側の人間は、高度な技術力を要する設計は自分たちの歩留まりを落とすためにそのような製品をつくりたがらない。そのため、何かにつけて「設計が悪い」だの、子供じみた不平不満ばかりこぼして新しい設計になかなか取り組もうとしない。そのことを直接相手に言っても話がこじれるだけなので上長に相談した。
プロセス技術部VS製造技術部(半導体設計・29歳)
 業務内容は似ているが、製造技術部はプロセス技術部の下位に位置し、プロセス技術部が偉そうに振る舞う。仕事も完全に分離させているために情報交換すらまともにできない。そもそも、会社全体に製造部門を粗末に扱う傾向があり、至るところにカベを作り出している。カベを切り崩すきっかけを探しているが、ここまで部門間が断絶している会社も珍しいと思う。職場を変えるべきかもしれない。
その2 部門間セクショナリズム緩和のために、エンジニアができることは?
 同じくアンケートの回答をしたエンジニアのうち、実に40%が部門間のカベを取り除くための行動に移し、ある程度の成果を挙げている(図2)。これは、「部門間のカベをエンジニア個人が取り除くのはかなり難しいが、決して不可能ではなく、むしろカベを取り払える可能性が十分にある」ことをアンケート結果が暗に示している。

 では実際に部門間でカベを感じ、そのことが原因で生じたトラブルにエンジニア個人がどう対処していけばいいのか、企業内組織のトラブル事情に詳しい(株)スコラ・コンサルタント代表の柴田氏によると、 「昔に比べて、人と人とのつながりが極端に減っている現代。その結果、コミュニケーション不足によって個人間のカベはもちろん、部門間のカベもますます厚くなる傾向にあります」と、両者の恒常的なコミュニケーション不足が、部門間セクショナリズムに拍車をかけていると指摘する。

 そんな現状において、あえてそのカベに立ち向かい取り払おうとする人とは、いったいどのようなタイプなのだろうか。 「本気でカベを取り払おうとしている人は、『このままでは会社が数年後につぶれてしまう』と心底考えています。つまり視野が広く、目先の仕事だけではなく、会社全体のことを考えられる人がカベに立ち向かえるのです」。

 そこで実際にカベを取り払うためにエンジニア個人ができることはないのか、柴田氏にヒントをもらい、以下にまとめてみたので参考にしてもらいたい。
図2:「カベ」を取り除くことは可能か?
柴田昌治氏
柴田昌治氏
スコラ・コンサルト代表。1983年にビジネス教育の会社を設立後、企業の風土・体質問題に目を向けて変革支援を始める。文化・風土といった人のありようの面から企業変革に取り組む「プロセスデザイン」というやり方を実践の中で結実させてきた。
著書に、『なぜ会社は変われないのか』(日本経済新聞社)、『会社を変える「日本式」最強の法則』(ダイヤモンド社)など多数。
部門間セクショナリズム緩和のための4つの糸口
1.	目先のトラブル・問題にとらわれず、物事に対する関心や視野を広げることで、会社内の人脈づくりにつなげる
2.	カベを取り除く余地はあるのかどうか。上司にカベを取り除く意思があるかどうかを見極める
3.	同じ価値観をもつ上司や同僚を巻き込んで、問題提起を行う。愚痴を言うだけでなく問題の当事者になって改善していくために意見交換する
4.	自分の5年後を常に考え、どんな人生を送るかを真剣に考える。どんなに努力してもカベが取り除けない場合は、より働きやすい環境を求めて転職も視野に入れる、素早い意思の切り替えも重要
 長い間、日本では我慢が美徳とされ、その美徳を社員に押し付ける企業もいまだに多い。しかし、部門間のカベを取り除く努力もせずに、社員に我慢を強いる会社は今後、確実に淘汰されていく、と前述の柴田氏は強調する。今必要とされるのは、エンジニア一人ひとりが自分たちの問題として、企業内にはびこるセクショナリズムに真っ向から立ち向かう“ちょっとした勇気”なのかもしれない。
 
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山田モーキン(総研スタッフ)からのメッセージ  
山田モーキン(総研スタッフ)からのメッセージ
本文でも触れられていますが、巨大組織内部の問題は、なかなか個人で簡単に解決できるものではありません。しかしその原因をアンケート結果からたどっていくと、「人と人との密なコミュニケーション」が鍵を握っているケースがほとんどです。どんなに大きな組織も、しょせん、人が集まって成り立っていることを考えれば、問題解決の道のりは、一般的な概念よりも決して遠いものではないと思います。

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