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工場一体型、オープンコミュニケーション、有機的な人的ネットワーク/エンジニア心を刺激する「未来型」オフィス考

海や山など、美しい自然の中にいると、たいていの人は気分がいいと感じる。このように人を取り 巻く「環境」は非常に大事な存在だ。特に一日の大半を仕事に費やすエンジニアにとって、オフィ ス環境が精神面に与える影響は大きいと考えられる。エンジニアにとって快適なオフィス環境とは 何か、考察する。
(総研スタッフ/関洋子) 作成日:05.08.24
オフィスで変わる!? 仕事のモチベーション
長い時間過ごすからこそ、快適なオフィスで過ごしたい?
 エンジニアがオフィスに求める快適さにはいろいろある。「きれいである」「空間が広い」「眺望がよい」というオフィス設計・空間そのものの条件はもちろん、「駅からのアクセスがよい」「コンビニや銀行などが近くにあり便利である」と地の利のよさ、また「マシン環境が充実している」「リラックススペースがある」「いすの座り心地がよい」というオフィス什器や設備のよさまで、さまざまだ。

 もし、これらの条件がすべて整えられていたら、仕事へのモチベーションが向上するか、というとはっきりとは断言できない。しかし、これとは正反対のオフィスで仕事する場合と比較すると、おそらく多くの人がモチベーション高く仕事できると考えるのではないか。
画一的なオフィスからの脱却
 コンピュータやネットワークの普及によって、オフィスにいなくても、仕事のできる環境が整いつつある。また、SOHO、業務請負などワークスタイルの多様化により、従来の画一的なオフィスのあり方は、変革の時期にきている。
 未来を指向したオフィスとは、どんなものか。先端的な取り組みをしている企業を紹介しよう。
未来型オフィスはここまで進化している
Exe1.営業〜開発、工場までひと続き。まったく壁がないオープンな空間/株式会社サキコーポレーション
ガラスでも壁は壁
 プリント基板の外観検査装置を開発・製造・販売するサキコーポレーション。1994年創業というベンチャー企業でありながら、同社独自のコアテクノロジー IMV(Intelligent Machine Vision:インテリジェント・マシン・ビジョン)により、業界でもトップレベルのシェアを獲得している。

 その強さの秘訣のひとつが、オフィスの構造にある。同社のオフィスは工場一体型。だからといって、通常、私たちがイメージしがちな「工場」とはまったく違う。東京湾や羽田空港が見える高層ビル「品川インターシティ」の31階に、そのオフィスはある。

 同社のオフィスの特徴は、まったく壁がないこと。現在の場所に移転してきたのは2003年だが、「以前のオフィスにはガラスの壁があった」と、取締役の星野修氏は言う。ではなぜ、壁をなくしたのか。「顧客が思っている以上のものを提供するためです」と星野氏。
「顧客にとっていちばんいいのは、ひとりの人間がセールスからトラブルシューティングまで対応してくれることです。しかし、そうはいかない。そこで営業と開発があたかもひとりのようにしっかりと連携できるような仕組みを考えたのです。それが壁を取り払うことでした」(星野氏)。

 ガラスの壁であっても、人の声は遮断される。「例えばトラブルがあった場合、人は隠したがるものです。しかしオフィスをオープンにすることで、営業の電話の声が聞こえれば、顧客が怒っているのか、エンジニアも現場で何が起きているのか、自然と耳に入ってくるでしょう。その効果を狙いました」(星野氏)。
 
完全フリーアドレスで健全な情報交換が可能に
 同社のオフィスは壁がないだけではない。自席が固定されないフリーアドレスを導入している。「以前のオフィスで営業とサービスにフリーアドレスを導入したところ評判がよかったので、全社に導入しました」と、オフィス設計に携わった白川氏は語る。固定した席ではないため、引き出しはもちろんない。ロッカーから使う資料とPCを持ち出して仕事をするというスタイルだ。従って、終業後の机の上は何もない。「自席で図面を広げ、いつでもミーティングができるように仕切りもありません」(白川氏)という、装置メーカーならではの工夫も施されている。これにより、健全な情報交換が可能になったという。

 ひとりで考え事がしたい場合は、窓際のワークスペースも利用できる。
「いろいろな場所に座り、部署を超えたコミュニケーションを活発化させることで、クリエイティブな仕事を生み出す。そのための仕掛けがオフィスなんです」(星野氏)
取締役 営業グループ ジェネラルマネージャー 星野修氏 商品開発グループ システム企画室  プロジェクトマネージャー 白川由美子氏
取締役
営業グループ
ジェネラルマネージャー
星野修氏
 
商品開発グループ
システム企画室
プロジェクトマネージャー
白川由美子氏
 
株式会社サキコーポレーション

手前が執務スペースで、奥が工場スペース。柱やパーテーションなど、視界をさえぎるものは何もない
株式会社サキコーポレーション

机に仕切りがないため、大きな図面も容易に広げられ、自席で簡単な打ち合わせができる
株式会社サキコーポレーション

靴を脱ぐという、オフィスでは日常あまり得られない感覚が味わえる会議スペース。発想転換に役立つ
エンジニア・長友さんの証言  設計した装置の面倒を最後まで見られることがうれしい
ボファクトリグループ デザインラボチーム 開発担当 長友国利さん  オフィスの中でいちばん、いいと感じているのは、モノづくりの現場と営業が分かれていないところ。営業の話が自然と耳に入ってくる環境は、エンジニアにとってもいい刺激になります。顧客のことを知るために、わざと営業の近くに座ったりできますから。
 また工場一体型オフィスというのも、エンジニアにとってはうれしい環境ですよね。自分が設計した装置を最後まで自分で面倒を見ることができるという実感がありますから。実際、ファクトリースペースでハンダ付けをするなんてことも、あるんですよ。
 毎日、資料とPCを片付けることも、仕事の区切りがはっきりするので、仕事の効率という点からも、プラスに作用しているのではないでしょうか。
 なにより、オフィスの中で装置開発の全工程が完結する。エンジニアにとって、最もモチベーションの上がるオフィス環境だと思っています。

ラボファクトリグループ
デザインラボチーム 開発担当
長友国利さん
Exe2.エンジニアに誇りをもってほしい、それを具現化したハイセンスでクールなオフィス/株式会社シンプレクス・テクノロジー
ソフト開発の職場は3K、それを壊したい
代表取締役社長 金子英樹氏
代表取締役社長
金子英樹氏
 
   ディーリングやインターネット取引など、金融機関の収益業務に特化したシステムを開発するシンプレクス・テクノロジー。1997年9月設立、2004年には東証二部に上場するなど、着実に成長しており、昨年6月、現在のオフィス(コレド日本橋)に移転した。その際、オフィス設計にこだわったのが代表取締役社長の金子英樹氏だ。「システム開発の職場というと、“3K”というイメージが強い。私たちはそのような従来型のビジネスモデルを打破したいと考えています。従って、オフィスも従業員が誇りをもてるようなものにしたかった」と金子氏は語る。

 通常、顧客から見るとシステム開発会社は一業者という位置づけだ。しかし設立メンバーはすべて外資系金融機関出身。そのため同社は業界・業務に関して、顧客と同じ、もしくはそれ以上の専門性の高さをもつ点が、ほかのSI会社とは根本的に異なる。
「業界・業務知識の高さこそが、当社の付加価値です。そのため同社の社員にも、顧客と同等の報酬や地位を付与したいと考えています。そのひとつがこのオフィス環境なんです」(金子氏)

 同社のオフィスの特徴は、通路側からコミュニケーションエリア、ワークエリア、そして窓際にミーティングエリアが配置していること。特に注目したいのが、動線に配置したコミュニケーションエリアだ。

「エンジニアは外向的な人が少ない。それなら、コミュニケーションをとりやすくする仕組みをつくればいいと考えました」(金子氏)
 ここには大型のソファがいくつか設置されており、ラフな雰囲気の中で自由な会話が楽しめるだけではなく、近くには観葉植物が置かれており、気分転換も図れるスポットとなっている。    
席替えも容易に可能
 席替えの容易性も同オフィスの特徴だ。「強制しているわけではないが、プロジェクトのチームごとに、まとまって座ることが多く、頻繁に席替えが行われている」(金子氏)と言う。そのため、コンピュータや電話、セキュリティの設定などは席替えから2時間ぐらいで変更できるよう、インフラにも工夫がなされている。
「いいシステムをつくるための第一条件は、顧客のニーズを深く理解すること。そしてそれらを、チームで共有することが重要です。物理的に席を近づけることによって、チーム内の会話は活性化され、システムづくりにプラスの効果を与えています」(金子氏)

 また同社の役員は、従業員を見渡せるよう、一段高くなっている場所に席がある。その理由について金子氏は、「社員の顔や行動を見ることで、どのプロジェクトが危なそうか、失敗プロジェクトを事前に食い止めるため」と語る。これも、同社ならではの工夫といえよう。コミュニケーションに配慮した、プライドをもてるオフィス環境。それが顧客の求める以上のアウトプットを出す、源泉となっているようだ。
株式会社シンプレクス・テクノロジー

コミュニケーションエリアではちょっとした打ち合わせだけでなく、雑誌や新聞を読むなど、くつろぎスペースとしても活用されている
株式会社シンプレクス・テクノロジー

一段高くなっている役員席。ガラス張りになっており、従業員の様子がひと目で見渡せるようになっている
株式会社シンプレクス・テクノロジー

窓際に設置された会議室。窓からの眺めもよく、会議で煮詰まったときには、発想転換にも役立つ
 
エンジニア・鳥本さんの証言  広々としたワークエリアだから、的確なコミュニケーションがとれる
金融フロンティアグループ アソシエイト 鳥本祐二さん  前職のオフィスは、机と机の間隔もそれほど広くなかったうえに、周辺に資料が置かれており、ゴミゴミしていました。今のオフィスは広々としており、また資料を紙で管理するという慣習ではないため、非常に快適です。特にうれしいのは、プロジェクトのメンバーがひとつの小さな島に集まっているので、的確にコミュニケーションがとれること。先ほども話しましたが、オフィス空間が広いため、ちょっとした話ならだれかの机の周りに集まって、即、話ができます。これは時間の短縮にもつながっていると思います。
 あと気に入っているところは窓際にある会議室。見晴らしがいいため、気分よく会議ができます。煮詰まった会議でも、ふと窓のほうに目をやると、気分転換ができ、新しい意見が出てくるような気がします。
 最近、席替えで自席も窓に近くなり、毎日、気分よく仕事しています。転職時にはまったく気にしなかったオフィス環境ですが、メンタル面への影響は結構、あるものなんですね。

金融フロンティアグループ
アソシエイト
鳥本祐二さん
会話しやすい雰囲気とその工夫をしているかが、未来型オフィスの条件
  業態、職種、企業の成長ステージによっても違う
株式会社リンク アンド  モチベーション 取締役 佐藤浩也氏
株式会社リンクアンドモチベーション
取締役 佐藤浩也氏
「近代型のオフィスの代表例として、フリーアドレス制がよく取り上げられますが、本来、オフィスのあり方は業態や職種、企業のステージによって異なるものなんです」
 と語るのは、人事・組織コンサルの専門企業リンクアンドモチベーション・取締役の佐藤浩也氏。
 「例えば当社のように、従業員200人のうち50人が新卒1年〜4年目というような、若手が多い企業では、固定席で島型のレイアウトが有効だと考えています。というのも入社4年までの人材は、まだまだ一人前とはいえません。従って、日ごろの言動を上司や先輩が近くでウオッチしてフォローできる仕組みにしておくことが重要だからです。また、営業やコンサルタントなど外に出る職種の多い企業で、一人ひとりが一本立ちしている場合は、フリーアドレス制が有効だと言える。このように、それぞれの企業に合ったそれぞれのオフィスのあり方があるととらえることが大切なのです」(佐藤氏)
 だからといって、どんなオフィス環境でもいいというわけではない。「従業員にとっていい環境を与えることはプラスに働くことはあっても、マイナスになることはない」(佐藤氏)からだ。近年、多くの企業が意志を持ってオフィス環境の整備に乗り出しているが、執務エリアの整備に関しては、まだまだというのが現状だそうだ。
交流の場があることが重要
 エンジニア心を刺激するための未来型オフィスの条件とは何か。上記の2例から考えると、コミュニケーションする場が用意されていることだと考えられる。佐藤氏も「今後、エンジニアには技術スキルだけではなく、対人折衝能力なども求められる。エンジニアの多い企業では、机の周りをパネルなどで囲まれているようなオフィスをよく見かける。この場合、コンセントレーションは確保されるが、コミュニケーションはとりにくい。それを補う仕組みが必要です。エンジニアの中にはコミュニケーションが苦手な人も多いので、企業の側も意識して複数の人々が集まる場、交流の場を用意することが必要でしょう」と語る。
 場を用意するだけではなく、コミュニケーションを活性化させる仕掛けも必要になるだろう。リンクアンドモチベーションの場合、人や情報の交流を促すレイアウトとデザインの工夫やコミュニケーションのテーマに合わせた会議室の構築を行っている。会議室はそれぞれのテーマに合わせたデザインと偉人の名前が施されているという、ユニークなつくりだ。取材を行った部屋は「Columbus」で、「夢・冒険」をテーマとしている。壁は赤、テーブルは「コロンブスの卵」をイメージした卵形。「会議室にテーマを与え、そのテーマに合わせた環境を社員に提供することによって、会議に向かう準備段階での思考を促すなど、間接的な効果が得られる」(佐藤氏)からだ。

 エンジニアにとって未来型オフィスの最大の条件は、会話しやすい雰囲気とその工夫がなされていること。この一点につきるのかもしれない。
会議室「Ryoma」
会議室「Ryoma」。テーマは「和(異空間)」。部屋には掘りごたつを設置。坂本竜馬のごとく、大きな変革を生み出してほしいという気持ちから、名づけられた
会議室「Kennedy」
会議室「Kennedy」。テーマは「統率・魅了」。軸および方向性を意識させる空間となっている
会議室「Monroe」
会議室「Monroe」。テーマは「酒(異空間)」。ワインセラーやダーツが設置されている。唯一、喫煙も可能。ラフな会議室
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  関洋子(総研スタッフ)からメッセージ  
関洋子(総研スタッフ)からメッセージ
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今回、取材した企業のオフィスはきれいで、本当にうらやましくなりました。どの企業も、「資料が積み重なっている」という従来のイメージはなく、机の上もすっきり。「未来型オフィスは、紙がないってことも条件だ」と実感。取材から戻り、自分の机の周りもきれいにしようと試みましたが、なかなか。未来型オフィスへの道は遠そうです。そうそう、今週の「面接現場の舞台裏」で訪れた、サイボウズも未来型オフィスとのこと。みなさんのオフィスはいかがですか?
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