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厳選★転職の穴場業界 第3回バーチャルリアリティ 人間をリアル空間から解き放つVRインターフェ-ス
ひと昔前までは夢物語だったバーチャルリアリティ(VR)が、IT技術の急速な発展でにわかに現実味を帯びてきている。既に3D技術をベースとした視覚的VRやCADはかなりのハイレベルに。そして今、仮想空間において人間その他の動きをアクティブに再現する、動的なVRが続々登場している。
(取材・文/伊藤憲二 総研スタッフ/高橋マサシ) 作成日:05.08.10
業界動向:3D-CAD、シミュレーター、遠隔操作医療…広がるVRの用途
 多くのエンジニアにとって、VR(バーチャルリアリティ・仮想現実)という用語は耳慣れたものだろう。そのVR関連テクノロジーの市場価値が今、急速に増大しつつある。
 製品開発や建築物設計向けシミュレーター、遠隔医療や福祉機器、ナノデバイス加工、バイオ開発などの各種作業支援システム、GPSやGIS(地理情報システム)など、活用のステージは枚挙にいとまがない。

 そのVRのコアとなる技術は、言うまでもなくシミュレーションを行うためのソフトウェアだ。一般によく知られているものとしては、3D-CADによる設計支援システム「CATIA」や「I-DEAS」が挙げられるが、それ以外にもさまざまな分野で、用途に応じた無数の高度なVRソフトが存在する。

 VRの進化が期待されているのは産業、医療・福祉用途といった実用技術分野だけではない。ゲーム、アトラクション、映画などのアミューズメント分野、研究・教育分野、広告・宣伝までその用途は幅広い。 また、デジタルコンテンツの高度化を図るうえでも、VRは欠かせない技術だ。
 このように硬軟を取り混ぜ、多くの業界で横断的に使われるVR技術は、先端技術のなかでもかなりの期待を集めており、それは経済産業省が数多くの産官共同開発プログラムを展開していることからもわかる。
 ただ、VRソフトやハードウェアの機能、性能的な拡充はまだまだこれからだ。さまざまな分野のエンジニアのスキルが今、VR業界に求められている。
注目企業:脳からの筋電位をインターフェースにするソリッドレイ研究所
 VRといってもその用途や種類はさまざま。その中で近年注目度が高まっているもののひとつが、人間の動きを検出し、VRの世界でそれを再現するというVRインターフェースだ。今年6月、ソリッドレイ研究所がリリースした「マッスルトーク」は、人間の「意思」を検出する。
■筋電位パルス計測装置「マッスルトーク」
筋電位パルス計測装置(マッスルトーク) 筋電位パルス計測装置(マッスルトーク)
筋電位センサーを装着して脳からの筋電位パルスを検出し、PCでデータ処理を行う。数100μV〜数mVという微弱なパルスを、センサー内のヘッドアンプで250倍に増幅。このタイプの弱点だった耐ノイズ性を格段に高めた。曲げ伸ばし、ひねりなど、1自由度(動作)につき2つのセンサーを使用。右にあるのがコントロールボックス。 センサーで増幅されたパルス信号を、コントロールボックス内で100倍に増幅。アナログ量に変換して、PCのディスプレイ上で波形として表示する。その波形のパターンから、動作の立ち上がり、大きさ、持続時間など、多くのファクターを再現することができる。データの蓄積によって、VRは今後さらに高度化していくという。

腕を失ってもドラムをたたける!? 驚異の筋電位VRインターフェース

 ドラムのスティックを握った手を動かすと、ディスプレイ内にポリゴン表示されたスケルトン(骨格)の腕が動き、シンセサイザードラムのサウンドが鳴り響く――VR開発を手がけるR&D型企業、ソリッドレイ研究所がリリースした「マッスルトーク」だ。体の動きがそのままインターフェースになることを狙いとして、東京工業大学の小池研究室の研究成果を受けて、開発されたシステムである。

 腕の筋肉を動かすための脳からの指令を伝える神経から、筋電位と呼ばれる微弱かつ高速なパルス信号が流れる。それを2つの筋電位センサーで検知して増幅し、PCで波形の振幅や長さを解析して、人間の腕の動きを忠実に再現するのだ。

「筋電位によるVRというのが、『マッスルトーク』のコアテクノロジーです」と、開発を手がけた徳永健一氏は語る。人間の動きをVRで再現するには、従来は位置・角度や加速度をセンサーで検出したり、モーションキャプチャーで動きをスキャンするといった方法があった。
「それらの方法では処理速度や機器の複雑さという難点がついて回ります。筋電位を検出する方式は、センサー自体の開発や解析アルゴリズム構築は決して簡単ではありませんが、機器自体は非常に小型ですみますし、何より多彩なパターンのシミュレーションが可能なんです」

 筋電位は前述のように、神経を通るパルス信号である。「マッスルトーク」は筋肉の動きの結果を拾うのではなく、いわば筋肉を動かそうとする「人間の意思」を検出する。
 健常者の場合は現実の動きをトレースすることになるが、仮に何らかの障害で腕が動かなくなったり、事故で腕を失ってしまった場合でも、神経が残っていれば、失われた筋肉を動かそうとする意思でその動きを具現化できるという。

仮想空間を自由に歩き回れる時代がやってくる

 意思を神経に伝えることさえできれば人間の動きを再現できるというインターフェースは、間違いなく画期的なものだ。「マッスルトーク」は今年6月にリリースしたばかりだが、既に多様な企業や研究機関から問い合わせが相次いでいるという。
 モニタ画面に健常者の筋電位の波形を表示させ、障害者がそれに合わせて体を動かすリハビリ用途、腕の動きをセンシングしてのロボットアーム制御、プロゴルファーの筋電位の波形に自分の波形を重ねて動きを矯正するといったスポーツレッスンなど、応用のアイデアも既に多数出てきているという。

「今は腕の伸び側、縮み側の2つを検出しているだけですが、今後はもっと複雑な動きを計測、VR化したいと思っています。例えば首は、おおむね6カ所の筋電位を測定することで、回転、うなずき、傾きをベースとした複合的な動きをシミュレートできるとわかっています。また、人間の体の中でもきわめて高レベルなインターフェースである、手の動きを徹底的に究めていきたいですね」

 ソリッドレイ研究所はVRのための基幹ソフト「オメガスペース」をリリースしている。3Dで構築した都市の中で人間が動きやすいかどうか、マルチ光源によって光がどう当たるか、これらの動作や現象をVRで簡単に検証できるというシステムだ。
 「マッスルトーク」は、「オメガスペース」のプラグインとしても機能する。将来はVRの世界を、人間が自由に歩き回れる時代が来るかもしれない。

開発部 京都大学博士(理学)
徳永健一氏
開発部
京都大学博士(理学)
徳永健一氏

株式会社
ソリッドレイ研究所
1987年設立。立体映像装置のパイオニアとして、視覚的VR装置の開発をメインに手がけてきた。イベント向けなど展示用VR装置のほか、人工衛星のドッキングシミュレーターなどの先端機器、愛知万博の会場シミュレーションでも利用されたPC用VR空間構築ソフト「オメガスペース」もリリース。
マッスルトークの基本セット
マッスルトークの基本セットはコントロールボックス、センサー(2個)、各種ケーブルのほかにサンプルソフトなどが含まれる。
穴場求人:ロボット・映像系からプログラマまでの幅広いニーズ
 IT技術の進化によって急速に高度化し、脚光を浴びているVR業界。人材ニーズも今後、増加していくと予想されている。リクナビNEXTでは「バーチャルリアリティ」「VR」などをキーワードに検索をかけるといいだろう。
 また、3D-CADや3Dスキャナを手がける企業もVRと深いかかわりをもっており、3D関連の用語や業種でも検索可能だ。

 エンジニアに要求されるスキルは、実に多種多様だ。ハードウェアでは視覚デバイス向けとしてデジタル映像機器、モーター、油圧ほかロボット関連全般、各種センサーなど、コントロールユニットから可動部まで、ありとあらゆる部分のエンジニアが求められる。

 ソフトウェア関連については一転、数学や物理学の素養が重視される。VRは常にイレギュラーなイベントを処理する必要がある。自然現象や動物の動きなど、連続・不連続双方の現象を数値化し、プログラムに仕立てるためのイマジネーションのベースになるためだ。
 3Dと密接な関係があるため、OpenGLその他、光源やポリゴンに精通したプログラマも歓迎される。デバイスの実装ではマッチング、通信、I/Oのためのプログラム、ドライバ開発経験者のニーズもある。

 ソリッドレイ研究所の神部勝之社長は言う。
「VRはこの世にないものをゼロから作り出す、非常にクリエイティブな分野です。スキルもさることながら、何より大切なのは映像に飽くなき興味をもっているということ。SF映画が好きで好きでたまらないという人なら、きっと前向きな仕事ができますよ」
バーチャルリアリティ業界のエンジニアニーズ
・ ソフト開発はC++ができればOKだが、数学や物理の高い見識も必要
・ ハード開発は回路、ロボット、ディスプレイ、センサーほか広範囲
・ 未来型VR開発では無線、I/O、ドライバなどPC関連のニーズもあり
・ 仮想現実をゼロから作り出すという性質上、SF・映像好きが高ポイント
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  高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ  
高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
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「マッスルトーク」を知ったのは「産業用バーチャルリアリティ展」でのこと。会場の一角に人だかりのブースがあり、スティックをもった青年が宙をたたくとドラムが鳴る。腕にはセンサー、背後にはモニター。話を聞くと、腕がなくてもドラムがたたけるという。「こりゃすごい!」と思って取材を申し込んだわけです。このような「ネタ」をお持ちの方、ぜひメールをください。
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