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厳選★転職の穴場業界 第2回デジタル映像機器 高精細デジタル技術の源をプラネタリウムで発見
映像のデジタル化は今後本格化が予想されるが、将来需要を見越した技術開発と人材採用がいよいよ動き出してきた。市場拡大が確実視される分野なだけに、数多くの企業参入が予想される。そこで生まれるのが多様で大量なエンジニアニーズだ。
(取材・文/伊藤憲二 撮影/早川俊昭 総研スタッフ/高橋マサシ) 作成日:05.07.13
業界動向:映画、映像、コンテンツ……膨大な更新需要が発生
 デジタル化の波が押し寄せている映画、放送など映像コンテンツの世界。それを受けて業務用デジタル映像機器業界では、特需発生への期待が高まっている。
 単に映像がアナログでなくなるだけと思うことなかれ。現時点では、デジタル映画といってもデジタル化されているのは撮影だけで、映写には35mmフィルムを用いている。だが、将来的には撮影だけでなく、映写までフルデジタル化される見通しである。その際には、世界中の映画館の設備がデジタル投影への対応を迫られる。

 つまり、従来の映写機に替わり、デジタルハイビジョン(HD=High Definition)対応のプロジェクター、オーディオのサラウンドシステム、デジタルコンテンツ再生装置など、多くの機器について更新需要が発生するのだ。
 映画館数は映画産業がもっとも盛んなアメリカは実に4万館近く、日本でもバブル崩壊後の低迷期を脱して3000館弱にまで回復している。さらに開発途上国など、これから映画館が増えるという地域ももちろんある。

 業務用デジタル映像機器が使用されるのは映画館だけではないが、潜在需要は世界の映画館数を下回ることはないだろう。単価も、大型映画館の案件では機材の更新だけで数千万円クラスと、かなりの額である。
 もちろん映画に限らず、スタジアム、水族館、博物館、テーマパークのアトラクションなど、極論すれば映像を使用するありとあらゆるところで需要が発生する。2004年の業務用デジタルディスプレイの国内市場規模だけでも1000億円強。映画のデジタル化が今後、市場を大きく拡大させることは間違いない。  
注目企業:デジタル技術で宇宙を再現するコニカミノルタプラネタリウム
 HDの登場は、映像表現の可能性を大きく広げた。編集やVFX(後加工による効果処理)が容易で、MPEGなど固有映像だけでなく、リアルタイムで生成されるCGも表示できるからだ。この特性を生かして、斬新な商品開発に成功した例も増えてきている。その一例が、コニカミノルタプラネタリウム株式会社である。
■Super-MEDIAGLOBE(スーパーメディアグローブ) ■GEMINISTARV(ジェミニスタースリー)
写真は光学式のINFINIUM L(インフィニウム エル)
スーパーメディアグローブ インフィニウム
デジタルハイビジョンのプラネタリウム。土星、海王星などの惑星やその衛星から銀河系内の恒星、さらには数千万光年離れた銀河団などの遠距離天体まで投映可能。また、独自開発による画像圧縮技術により、1500×1500ピクセルの全天周高画質動画映像も滑らかに再生できる。右写真下部の光が投映中のもの。 光学式とデジタル式のハイブリッドプラネタリウム。光学式プラネタリウムでは、高輝度光源によって今日のデジタルではまだ難しい「リアルな降るような星空」を表現できる。デジタルプロジェクターは天文現象の投映などに使用され、表現幅をさらに拡大。まさに「究極のプラネタリウム」だ。右写真は光学式で投映した星空。

職人技の魚眼レンズとHDプロジェクターで実現

 コニカミノルタのグループ企業、コニカミノルタプラネタリウムは、世界に5社しかないプラネタリウムメーカーのひとつ。2001年に世界に先駆けて、HDプロジェクターを使ったフルデジタルプラネタリウム「メディアグローブ」をロールアウトさせた。

  コニカミノルタの光学部門が製作した巨大な魚眼レンズとHDプロジェクターを組み合わせ、半球ドーム全面にシームレスに映像を投映することを可能にした。レンズ径は小型ドーム用の「メディアグローブ」で約23cm、さらに中型ドーム用の「スーパーメディアグローブ」では約30cmに達する(レンズ径は鏡胴を含む)。
 魚眼レンズとしては、世界に類例を見ない巨大さ。この高い光学技術とHDのコラボレーションが、実現が難しいとされてきたデジタルプラネタリウムを完成させたのだ。スーパーメディアグローブの解像度は2048×1536ピクセル(QXGA)だ。

宇宙空間に身を置いて惑星や恒星を堪能できる

  開発を指揮した西垣順二氏は「HDを使うことで、既存の光学式プラネタリウムでは表現不可能だったものを、自由自在に映し出せるようになりました」と語る。
  中型館用の「スーパーメディアグローブ」は、目視限界をはるかに超える12.4等星までの天体11万8000個を表示できる。それら無数の天体にはすべて色、宇宙空間内の位置などの情報が与えられており、さらに太陽系内の衛星や惑星については表面の様子も投映できる。それらの映像はすべて高精度3D-CGだ。

「地球から見た夜空を映し出すだけでなく、宇宙空間を自由に飛び回ることもできます。その際の星の見かけの位置は、すべて専用ソフトを搭載したPCによって正確に演算されます」(西垣氏)
  地球以外の惑星、あるいはほかの恒星系で空を見上げたら、星がどのように見えるかということも、瞬時に演算して表示できるのだ。また、星空のみならず、ドーム全天に独自開発の画像圧縮技術を用いた、CG動画映像を投映することもできる。ドームスクリーンを利用した3D映像は迫力満点。HDの表現能力をフルに生かしたプラネタリウムである。

光学式とHDを組み合わせたリッチなプラネタリウム

  既存の光学式プラネタリウムについても、デジタル映像機器を組み合わせることで表現力をアップさせている。同社自慢の「ジェミニスターV」だ。開発を担当した大谷健一氏が「輝くような星像の美しさが自慢」と語る光学式独特のクオリティの高さはそのままに、恒星の固有運動などさまざまな天文現象やアニメーション、映像などをデジタル映像機器で表示させ、より科学的、先端的、娯楽的な表現を可能とした。
  光学式プラネタリウム「インフィニウムL」の特徴は、光源から光ファイバーにより光を導く導光レンズ投映方式と、太陽とほぼ同じ色温度のメタルハライドランプ。一つひとつの星がくっきりと明るく投映され、ほぼすべての恒星がランダムにまたたく。
「プラネタリウムの進歩はまだまだこれから。デジタルと光学式両方で、表現の可能性を追求していきたい」(大谷氏)

 HDというと、単なるデジタルコンテンツへの対応ということに目がいきがちだが、表現の可能性を広げるという面でも貢献度が高いことを、コニカミノルタのケースが端的に示している。

課長 西垣順二氏
技術部 新製品プロジェクトリーダー
課長 西垣順二氏

プラネタリウム開発志望で旧ミノルタに入社。複写機の画像処理システム開発を経てプラネタリウム部門へ。既存のプラネタリウムでは出せない仮想現実をハイビジョン方式で表現する「メディアグローブ」シリーズを開発。
担当課長 大谷健一氏
技術部 生産プロジェクト
担当課長 大谷健一氏

旧ミノルタに入社後、一貫してプラネタリウム畑を歩む。機器制御のためのメカトロニクス設計を経て光学プラネタリウム「インフィニウム」シリーズ開発。デジタルプロジェクターとの組み合わせで表現力拡大を狙う。
Super-MEDIAGLOBEの操作室
Super-MEDIAGLOBEの操作室。プラネタリウムの演算やCG生成などは、すべて独自開発ソフトによって行われる
穴場求人:光源、生成デバイス、光学部品のスキルで転職
 デジタル映像機器業界では、既に次世代映像コンテンツへの対応を軸に開発競争が始まっており、人材ニーズも徐々に増えてきている。リクナビNEXTでは「デジタル映像」をキーワードに検索するか、業務用映像機器、プロジェクター、ディスプレイなどを手がける企業名で直接検索をかけると、求人情報をゲットできる。

  エンジニアに求められるスキルは多様で、民生用AV機器と重なるものも多い。民生用と業務用の違いは、技術の差というより、より大画面で高解像度を実現するといった規格の差が主だからだ。
 小型シネマコンプレックス向けは既存の大型FPD、それ以外はHDプロジェクターがメインとなる。HDの中でも有力視されているのは米社が提唱するDLP方式だが、これは民生用リアプロジェクターと共通する技術だ。

  プロジェクターのスキルはおおむね、3つの分野に分かれる。ハロゲン、キセノン、LEDなどの光源関連、映像生成のためのデバイス(デジタルマイクロミラーなど)および制御回路、コニカミノルタプラネタリウムのケースでも見られた、投映のための光学部品だ。
 光源では発光体や電源供給回路システム、映像生成デバイスではマイクロマシンや液晶制御の経験があると転職に有利。もちろんハードウェアだけでなく、制御アルゴリズムをはじめソフトウェアの知識も生かせる。光学部品は高い専門性が要求されるだけに、カメラや望遠鏡、顕微鏡などの光学設計経験は歓迎される。

  デジタル映像機器は、21世紀のエンターテインメントのあり方を一変させるだけの潜在的可能性を秘めたデバイス。だが、コントラストや映像の美しさなど、進化の余地はまだまだ大きい。R&D志向のエンジニアにとっても、十二分にやりがいを感じられる分野といえるだろう。

デジタル映像機器業界のエンジニアニーズ
・ 要求されるスキルはFPDなど民生用映像機器との共通性が高い
・ 光源ではLED、ハロゲン、レーザー向け発光体など材料工学がメイン
・ 他分野のスキルを生かすならマイクロミラーなど映像生成デバイス
・ カメラ、顕微鏡、レーザー受光部など光学設計経験は歓迎される
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  高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ  
高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
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プラネタリウムを見たのは15年ぶりだったと思います。取材なので全編を通して見たわけではありませんが、感動しました。「生の星空」といったビジュアル面はもちろん、宇宙空間に身を置いた星々の映像や動き、何百万年後の星の位置など、コンテンツ面でも圧倒されました。エンジニア的にも大きな「穴場」だと思います。紹介する業界のご要望などがあればぜひメールをください!
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