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厳選★転職の穴場業界 第1回バイオインフォマティクス 最先端の要素技術を駆使したバイオ装置産業に期待
現在人気の業種や業界の5年前を考えたとき、その萌芽に気づいていた人はどれほどいただろうか。そんな将来性豊かな「穴場業界」を先取りする新規連載の第1回目。今回はバイオ産業の中でも、特にその製造装置業界にターゲットを絞って紹介する。
(取材・文/伊藤憲二 総研スタッフ/高橋マサシ) 作成日:05.06.08
業界動向 トップを走るアメリカにスピードを上げて追いつけ
 2000年、日米欧の国際コンソーシアムによるヒトゲノムの粗解析を機に、一気に実用化の機運が高まったバイオサイエンス。今後、ゲノム創薬による医療技術革新、バイオを利用した新環境技術、農作物の品種改良など、一大産業を形成することが確実視されている。

 ゲノム、ポストゲノム(SNP、プロテオームなど)などを軸とするバイオ関連市場が急伸するなか、解析装置、解析ソフトウェア、データベースなどのバイオインフォマティックス機器が注目を浴びている。政府はポストゲノムの国内市場規模について、2010年に6兆8000億円に達すると予測しているが、そのうち約2兆円を解析、データベース機器が占めるものと見られている。

 ゲノム、タンパク質シーケンサー、マイクロアレイヤー(DNAやたんぱく質などのチップ製造装置)をはじめ、バイオインフォマティックス向け装置の開発には光学、制御、微細加工、センシング、統計ソフトウェアなど、さまざまな分野のテクノロジーが投入。異業種参入も活発だ。現時点で世界をリードしているのはアメリカだが、要素技術の多くは日本が最先端を走っているもの。逆転の目は十分にある。
注目企業 技術転用でDNA事業に参入したカケンジェネックス
 バイオ研究に欠かせないDNA、抗体チップの製造装置を手がけるカケンジェネックス。創業時には刷毛メーカーだったが、メカトロニクス分野に転身。さらにそのノウハウを生かしてマイクロアレイヤーの開発に成功し、主軸事業に成長させた。
■マイクロアレイ製造装置「Genex2005Arrayer」
製品写真 製品写真
ゲノム創薬などバイオ研究開発に欠かせないDNA、抗体、たんぱく質などのマイクロアレイ製造装置。ピンを用いるスタンフォード方式を採用しながら、同方式の難点だった精度の低さを克服。DNAだけでなく扱いの難しいたんぱく質までをカバーする柔軟性、1時間あたり3万スポットという高速性、小型化および低コストを実現。 25.4mm×76.2mmのスライドガラス(写真左)に、最大12万9600スポットが打てる(記事タイトル横の写真参照)スライドの中には正方形の島(セル)が48(4行×4列×3)並び、写真のような標準的な2万3232スポットの場合で1つの島に484スポットが入る(写真右)。
うちの精密制御技術を使えば実現可能だ

 幅1.2m、高さ78cmのケースの中で、32本のピンを備えたヘッド部がかすかな音を立てて動き、特殊なコーティング処理が施されたプレパラートに触れ、DNAやたんぱく質などのチップ(マイクロアレイ)を製造していく。制御を行うのは、ごく普通のラップトップコンピュータ――カケンジェネックスが今春にデビューさせたばかりの新型DNA/抗体/たんぱく質マイクロアレイヤー「Genex2005Arrayer」だ。

 窒素ガス発生装置、ガスインジェクションによる樹脂射出成型装置を主事業としてきた同社は、1998年に東京大学医学部とのコラボレーションでDNA事業をスタートさせた。国際コンソーシアムがヒトゲノム解析をほぼ終了させたと発表した2000年には、早くもバイオの応用分野に欠かせないDNAチップ製造装置の初代モデルを発売した。
 その後も射出装置で得た利益をほぼすべてバイオ関連開発に投入し、事業を拡大。プロテインチップも製造可能となったGenex2005Arrayerの発売によって、2005年度はバイオ事業単体で黒字化を果たす。

「自動化機器で培ったメカトロニクス技術がバイオに転用できる」。このことに気づいたのは、装置の販売を請け負っていた商社の担当者が、バイオ研究の前線での技術的ニーズをよく理解しており、研究者を紹介したのが始まり。開発を手がけたエンジニアのひとり、後藤征人専務はこう語る。

「うちは精密制御によるプロセス加工に強みをもっていましたが、それがDNAなどのマイクロアレイ製造に応用できることを知る機会があったことは、本当に幸運でした」

すべてを自社で開発して既に特許も取得

 Genex2005Arrayerは、顕微鏡に使うものとほぼ同じ大きさである25.4mm×76.2mmのスライドガラスに、実に12万9600個ものDNA、抗体、たんぱく質、ペプチドなどのスポットをつくる。スポット1個あたりの直径は100μだが、特に変質しやすく、定量性が厳密に求められるたんぱく質のマイクロアレイ製造にあたっては、そのすべてをきれいな円形で描くことが要求される。

 後藤氏は「このスポットの均質性の確保こそ、マイクロアレイヤー開発で最も苦心した部分」という。ピン先には万年筆のように溝を切る必要があるため、細径化には限界があり、スポットと同じくらいの直径とせざるをえない。つまり、ガラスにピン先が触れるだけで、真円に近い形にならなければならないのだ。
 安定した円形のスポットを作るため、DNAやたんぱく質などを流し込む溝をスクリュー状に切ったピン、32本のピンすべてを同じ圧力でスライドガラスに接触させるピンのマウント部、ガラスに塗布する薬剤などは、すべて同社のオリジナルで開発。特許も取得した。これにより、DNAからたんぱく質までをフレキシブルに扱うことのできる、マイクロアレイヤーが実現したのである。

 マイクロアレイ製造の安定性が非常に高いことから、既に大手製薬会社への納入実績もある。さらに「医療現場でリアルタイムに使えるバイオセンサーを開発中で、来年には製品化します」(後藤氏)と、今後も新製品の投入に意欲的だ。
 バイオ事業を育てるにあたり、社長以下、多くのエンジニアが遺伝子工学について必死に勉強したという。参入のための努力を惜しまなければ、独自技術を活用させたビジネスチャンスは大いに広がっている。
専務取締役 後藤征人氏
専務取締役 後藤征人氏

株式会社カケンジェネックス
刷毛メーカー「化研」として創業後、射出成型装置分野に業種転換。その技術を生かしてバイオ分野に進出し、バイオにちなんで現社名に変更。営業部門のほとんどをアウトソーシングする研究開発型企業。今後はバイオと並行し、水素エネルギーなどの環境技術開発にも取り組む考え。
スポットの拡大図
スポットの拡大図。真円度が装置の精度を表している。標準的な2万3232スポットの場合で中心間の距離は0.2mm
穴場求人 ハードは精密機械・制御、ソフトは高等数学が生きる
 バイオ産業の注目度がアップしているなか、バイオインフォマティックス関連の求人も徐々に増えてきている。リクナビNEXTでは「職種」や「経験」でゲノムを選択するか、「ゲノム」でキーワード検索をかければ求人情報をゲットできる。
 バイオインフォマティックス業界の特徴は、異業種参入が多いことだ。積極的なエンジニア募集をしていなくても、研究開発に乗り出している企業はかなりの数にのぼる。企業情報を調べて検索するのもいいだろう。
 ちなみにアレイヤーの場合は、ピン方式のほか印刷技術を利用したリソグラフィー方式、インクジェット技術を応用した噴射方式などがあり、それぞれ固有のテクノロジーをもった業界・企業が開発を手がけている。

 エンジニアに要求されるスキルはきわめて広範だ。ハードウェア系ではまず精密機械、精密制御の経験があると有利。具体的には工作機械、マイクロNCや感光方式などによるマイクロプロセス、印刷技術、インクジェットプリンター、センシング技術、それらに付随する精密機械系の電気制御など。レーザー、画像処理などのオプトメカトロニクスも有利なスキルだ。

 データベース、解析などのソフトウェアの需要も増えている。既存の統計ソフト開発、アルゴリズム構築などの実務経験は前提。膨大なデータから一定の統計情報を割り出すソフトウェア開発に向け、カオス時系列解析、フラクタル次元解析など非線形力学系のニーズも高まっている。高等数学に自信のあるエンジニアにもチャンスだ。
 
バイオインフォマティックス業界のエンジニアニーズ
・ ハード系では精密制御・加工の経験が直接生かせる
・ 画像処理など光学系エンジニアにもチャンスあり
・ ソフト系では数学、統計力学などの需要も拡大中
・ 医学知識がなくても技術力で採用となる場合も多い
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  高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ  
高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
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転職を考えるエンジニアに接して感じるのは、多くの方が大手・安定志向であることです。それはそれで構わないのですが、転職先の業界や企業選びに、もう少し柔軟性があってもよいと思いました。そこで考えたのが、今後の成長が見込まれる、半歩先を行く業界の連載記事です。風変わりで技術力の高い企業と一緒に紹介しますので、今後もお楽しみに!
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