エンジニアの株式投資額は月10万円以上が3割！

個人の株式投資がブームになって久しい。ネット経由の取引は増え続ける一方。ちまたには株式売買の極意書があふれ、ネット上でも盛んに情報がやりとりされる。エンジニアの間にも、株式投資を趣味と実益の双方で楽しんだり、嘆いたりする人が増えてきた。さて、その実態は──。

（取材・文／広重隆樹　総研スタッフ／宮みゆき　イラスト／kucci(クッチー)　撮影／加納拓也)　作成日：05.06.01

利益目標は投資額の10～20％

　儲かるときもあれば、損をするときもあるのが、株式投資。
　Ｔｅｃｈ総研が何らかの形で株式投資をしているエンジニア100人に聞いたアンケートによれば、月平均の投資額は、「10万円以上」が28％と最多。以下、「1万～2万円」（17％）、「2万～3万円」（14％）などと続く。

　利益目標を年間１億円と“夢想”する人もいるが、たいていは「年間投資額の10～20％の利回り」という回答が多い。なかには「目標は特に決めていないが、年間を通して損を出さないように心がけている」「今は、まだ勉強中みたいなものだから、プラスになればいい」「利益目標よりも貯金と考えている。年率１％以上あればいい」といった慎重・堅実派も。

　株式投資のための資金調達法はほとんどが「給与」や「預貯金」からだが、なかには「自分のWebサイトのアフリエイト・プログラムで稼いだお金」や「へそくり」と答える人もいる。「貯蓄のうちから、損失を出しても差し支えのない金額を株式投資額として確保している」（28歳、システム開発）という回答もある。給与所得をベースにした個人投資家にとっては、これが最も堅い方法というべきだろうか。

「自分が働いてみたい会社に投資」

　株式投資を続けていくうちに、おのずとその人なりのルールが生まれてくるもの。「損切りは10%マイナスで強制実行、ナンピン買いはしない」（35歳、サービスエンジニア）などの防衛的ルールもそのひとつ。銘柄の選び方でも「自己資本比率の高い企業に投資する。投機ではなく投資をする」（28歳、機械設計）という心がけはよし。
　あるいは、「自分が実際関係する企業に投資する」（28歳、システム開発）、「自分が働いてみたいと思える会社に投資する」（25歳、ネットワーク関連）というのもひとつのポリシーだろう。「短期値幅取りか、長期安定志向の両方を考えながら投資する。また、自分自身の時間の振り分けを参考に決める」（33歳、ネットワーク関連）というのは、趣味や副業に振り回されて、本業をおろそかにしてはならないという戒めだろうか。

成功と失敗を重ねながら

「株式投資で最も利益を上げた経験」については多くの回答が寄せられた。

■株式投資で最も利益を上げたエピソード

・	「某IT関連企業の株が急騰したことに乗じて短期売買をし、1週間で20万円儲けた」（25歳、生産管理）
・	「某地銀の経営破たんの際に1円で買った株が10円程度で売れた。しかし購入数が些少だったので利益は数十万円程度だった」（28歳、ソフト関連）
・	「建設業不況時に大手ゼネコンに投資、2年で3倍になった。」（28歳、機械設計）
・	「嫁が愛用しているマイナーな化粧品会社を嫁の強い勧めで買ってみたら、1年で2倍近くまで上がった。期待していなかっただけにうれしかった」（28歳、半導体設計）

　もちろん、「まだ初心者なので利益までは出ていない」という回答も全体の２割程度を占める。
　反対に、「株式投資で損をしたり、失敗したと思った経験」と尋ねると、みなとたんに寡黙になる。「損切り時期を間違った」「売った途端に暴騰した」などはよくある話。なかには、泣くに泣けない話もいくつか。

■株式投資で損をしたエピソード

・	「よく調査をしないでネット掲示板の情報のみで買ったとき」（29歳、研究開発）
・	「仕事が忙しく注文を出せないときに下がり始め、次の日には売れたが利益が全くなくなってしまった」（27歳、サービスエンジニア）
・	「香港上場の株式で、持っていた株がある日突然90％以上値下がりしたうえ、取引停止となった」（29歳、システム開発）

「株式投資を始めたころは、値動きの大きい株式を選んでいたが、儲かることもあれば損をすることもあった。また、市場に目を向ける時間、勉強する時間が多く、個人的な時間を大幅に使い、失敗したと思う」（33歳、ネットワーク関連）というこの人は、それでも月に10万円以上を投資するベテランの一人。市場に関心をもつことで、ビジネス動向の勉強になるという側面も無視できないが、それもこれもバランスが大切。あまり熱中するのもほどほどに、ということだろうか。

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宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ

株式投資を勧められることがしばしばあります。その理由は利益を得るためというより、世の中の動きを意識的にウオッチするようになるからということ。たしかに自分が株を買った会社の動向は気になるし、ひいてはその業界全体も自然に勉強することになりますよね。よ～くわかるのですが、まだ行動に移せません。夏のボーナス出たら試してみようかな。