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豆蔵・萩本順三氏のITエンジニアキャリア相談LIVE 「IT業界はまだ未熟。技術の本質を見抜けば成長に繋がる」
オブジェクト指向技術のカリスマエンジニアで、業界のオピニオンリーダーでもある(株)豆蔵・萩本順三氏。若手エンジニアから募ったキャリアの悩みに、自らのエンジニア人生や仕事観からアドバイスした「リクナビNEXT エンジニア適職フェア」特別LIVEを再現レポートする。

(取材・文/総研スタッフ 宮みゆき 撮影/平山諭) 作成日:05.05.25
萩本順三氏
オブジェクト指向のカリスマ・萩本氏がエンジニアの悩みに答える

2005年5月15日、東京国際フォーラムで開催された「豆蔵・萩本順三氏のITエンジニアキャリア相談LIVE」。 スキルアップや職場の人間関係などについて、事前に投稿してもらったエンジニアの悩みに萩本氏が答えてくれた。進行はTech総研編集長の前川孝雄が務めた。

株式会社豆蔵 取締役
27歳でソフトウェア業界に飛び込み、エンジニアに転身。オブジェクト指向を用いるための方法論「Drop」を公開するなど精力的に活動。 現在は豆蔵にて要求開発コンサルティング、方法論(enThology)開発などに従事。
Tech総研編集長
1989年リクルート入社。『ケイコとマナブ』『ビーカム』など社会人向け学習誌の編集長を歴任。04年4月より現職。リクナビCAFE編集長、リクナビNEXT副編集長兼務。

技術だけを追いかけていては視野が狭くなる


3年前から独立を考えていますが、日々の仕事に忙殺されており、 なかなか準備が進みません。萩本さんが起業されるまでのステップや、その過程での失敗エピソードなど教えてください。

(IT・通信系/システム開発/30歳)

萩本 : 私自身の経験でいえば、特に経営者を目指して活動はしていませんでした。 プロジェクト単位で「プロマネをやってくれないか」と声をかけてもらうことも多かったのですが、すでに内容が決められた仕事よりも、 自分にしかできない仕事ができるような転職や起業を考えていましたね。
前川 : どのような経緯からプロマネの声がかかったのですか?
萩本 : 突然スカウトの電話がかかってきたり、ヘッドハンターの方に声をかけてもらったり。 話をいただいたときは必ずお会いして、情報だけは集めるようにしていました。チャンスは絶対逃さないどん欲さはありましたね。 ただ、人よりは慎重に会社選びをしていたと思います。
前川 : 萩本さんの慎重な会社選びのポイントとは?
萩本 : やはり一緒にやっていける人たちかどうかですね。 その会社の経営陣が自分に求めていることは何なのか。単にオブジェクト指向技術を求めているだけならお断りです。求められていることが、 私にしかできないことであるかが重要でした。やはり自分を活かしたいという気持ちが強かったですから。

でも、理想だけを追求してたらきりがありません。本当に一緒に会社をやっていける人たちなのか、覚悟を決められるかどうかが決め手でした。
豆蔵を始めたのは、オブジェクト指向技術をビジネスに繋げていこうという集まりのメーリングリストに参加したことがきっかけとなりました。

前川 : その起業までの過程で失敗はありましたか?
萩本 : 起業前はなかったんですが、起業してからはいろんな意味で失敗がありました。 ジャッジメントが慎重になりすぎたり、抱いていたイメージと違う決断をしてしまったり。技術者は技術へのこだわりから視野が狭くなりがちです。 理想だけではビジネスはできません。起業やベンチャーに転職する場合は、技術も重要ですが、周囲とのコミュニケーションをうまく図るという観点も大事です。



一個人と会社は対等であるという意識を持ってみる


社内の部署間の競合にこだわった組織体系に所属しています。 このままでは自己の目標、会社の利益とは異なった方向性で仕事に携わらなければならず、他社に移りたいのですが、打診する手順がわかりません。

(管理職/エグゼクティブ/39歳)

萩本 : 大企業に長く勤めるとどうしてもしがらみが増え、 誰から転職の話をしていいかわからなくなるんですね。優秀なエンジニアが自分の方向性と違う仕事しかできずにくすぶっているという話はよく聞きますし、 すごくもったいないなと思います。
 
でも、個人が転職したいといえば、会社は止められない。私なんかは「だったら、ほかで技術を吸収してもらって、 また機会があれば一緒に仕事ができればいいじゃない」と思いますね。気持ちが離れているのに無理やり引き留めてもいい結果にはなりませんから。
転職したいと思ったら、まず一番信頼できる上司から話をしてみることです。

前川 : 社内のしがらみにはどう対処したらいいのでしょう。
萩本 : 会社の利益に反するのであれば、自ら部署間のいざこざをなくすなど、 組織を変える努力を積極的にしたほうがいいですね。私は起業する前から、一個人と会社は対等であるというポリシーを常にもっています。 社長であろうが対等に話します。上下関係を意識しすぎると自分の考えが適切に伝えられないことが多いですから。
 
停滞感を感じる会社や、体質が古い会社にいるというのはチャンスですよ。そこで、組織を改善できれば、 起業したときや転職先でその経験が必ず役立ちます。会社はむしろ社内に改革を起こす人材こそを求めていますからね。




表面的なことに捉われず、本質的なスキルアップを目指すべき


入社2年目ですが、モチベーションが上がりません。1年目は、満足感や達成感を感じることができましたが、 最近は新たな技術を学ぶわけでもなく、知っている知識の中で解決できるような仕事しかしていません。新たな技術を身につけてスキルアップを図りたいのですが、 今の環境では難しいと感じています。

(IT・通信系/汎用機系システム開発/23歳)

前川 : 次は新しい技術を学ぶ環境について、若手エンジニアからの悩みです。
萩本 : 私も27歳で異業界からこのIT業界に入ったのですが、 新しい技術を学ぶ環境ではありませんでした。ですが、5年先に役立つ技術を身につけようと、自分で開拓して会社の外で勉強していました。 この方も仕事で使う技術と、自分が学びたい技術を別にして考えたほうがいいですね。
前川 : 会社以外でも技術を身につけたほうがいいということですか。
萩本 : 最新技術を身につけたとしても、技術はいわば調味料の存在。 技術をマネジメントし、適材適所で技術を使い、人の問題や、価値とつなげること。そのコアな部分が確立できていないと、技術だけを追求してもだめなんです。 もっと本質的なことのスキルアップをすべきです。
前川 : 本質的なスキルアップとは具体的に?
萩本 : 難しいプロジェクトと、簡単なプロジェクトってそんなに違いはありません。 プロセス化、プロジェクト管理、イメージ化、効率化などをどうやって作り上げていくか。それらをいかにきちんとやり遂げるかどうかだけ。

また、IT業界は何でも分けることに着目します。ソフトウェアレイヤー、開発工程、ロール……。分けたものをどうやってつなげるか、 そこにはまだ技術として認知できていない領域があるのです。分けたものを、どんなインターフェイスでつなげるかという、 人間と人間のつながりを含めた問題解決の技術として取り扱うことを痛感しています。でも現状は、それぞれがロールに分けられた担当者が、 作業領域という牢屋に閉じ込められた世界で技術を使っているという状態です。
 
IT業界はまだまだ未熟です。完成のレベルに達していないからこそ追求すべき。ここをきちんと理解して学べば40年先でも使えるような技術を身につけられる。 簡単なプロジェクトだからとか、新しい技術が身につけられないからくだらないと思ってしまえば、そこで本質的なスキルを身につける習慣が消え去ります。
技術を追いかけるだけでなく、技術の使い方をイメージし、頭の中でストーリーが作れるか、技術を使って価値を出せるシーンが描けるかが大事です。 表面的な技術を学ぶことだけで戦うと5年後には伸びなくなる。技術だけを追いかけている人は器用貧乏になりがちです。

前川 : 技術に対してまじめな人ほど器用貧乏に陥ると?
萩本 : 技術は技術で学ぶべきですが、 書籍に書いてあることはある意味で文章にできているレベルのものです。文章に書けないこと、書きにくいことに本当の重要さがあるように思います。 だからこそ、最近のビジネスは、カタチにできないと考えられていたものをカタチにして価値を出しているものが多い。 本を読んで理解して技術力を高めるだけでは、技術を知っているが、どう使っていいかわからないという器用貧乏に陥りがちです。 例えば、その技術をどう利用するかというイメージを沢山持つことも重要だと思うのです。そういう観点で書籍を読み、 自らの考えを生み出し、行動に繋げる努力が必要です。

そういった意味で、私は若いうちから技術の勉強をやっていればよかったと思っていません。むしろ他業界での経験も含め、 さまざまな実体験を多くもち、その中で人が技術をつかってどのように問題解決をしたり、価値を出したりしているか常に考える習慣をもつ人が、 エンジニアとして伸びる可能性が高いように思っています。





目指すべきゴールはできるだけ高く設定する


客先常駐の業務が多く、自社での評価や上司との会話に温度差を感じます。 目の前の仕事に対するモチベーションは高いのですが、今の会社にいる意義はまったく感じられません。転職や独立・起業を考えるべきなのでしょうか。

(IT・通信系/システム開発/28歳)

前川 : 客先常駐の形態で働くエンジニアの悩みは、Tech総研読者からもよく寄せられます。
萩本 : 私も以前の会社で、客先常駐を経験しました。でも、悩んだことはなかったですね。 お客さんに価値を提供できれば自分を認めさせることができる。そんなチャンスだと思っていました。
会社に評価されれば残るし、評価されなければ転職すればいいのではないでしょうか。

前川 : この方は起業も視野に入れているようですね。
萩本 : 技術の価値を理解し、お金に換えることができるかですよね。 この方は「目の前のモチベーション=技術」なのだと思いますが、技術だけでは起業は難しいと思います。 まずは会社を出るか出ないかを決める。その間は修業だと思います。あんまり細かいことは考えないほうがいい。
前川 : 自社の上司の評価も気にされていますね。
萩本 : 起業したいと思うならサラリーマン的な考えは捨てたほうがいいです。 今は修業だと思って、目の前の仕事で成果を出すべきです。自分だけの利益は考えずに、違うビジネスだと割り切ったほうがいいと思います。
前川 : 起業するステージを探すための転職というのも考えられますか?
萩本 : それが得られるのであれば前向きだと思うし、有効なのではないでしょうか。 自分がどういうところを目指すのか、ゴールに向かってやるべきことを見つけるべきですね。
前川 : 自分の目指すゴールがなかなか見つけられない人はどうしたらいいでしょう。
萩本 : できるだけ高い目標をもつほうがいいですね。 毎日将来自分がどうなっているかを考え、イメージすること。私の場合は、「IT業界を健全にし、自分が変えていく」でした。 その前は「SEになりたい」がゴールだった。ゴールはどんどん変わっていっていいのではないでしょうか。 夢を信じてやっていけばそれがモチベーションになると思います。




対談を終えて
柔らかな物腰の向こうに宿る熱い志

どんな悩み相談に対する回答も、私は一貫した萩本さんの志を感じました。それは主体的に自分のキャリア目標を考え、行動に移すこと。 そしてその結果を常に楽観的にとらえ、目標すらも柔軟に変えていくこと。

その有効性は、エンジニアとしては遅咲きながら業界のオピニオンリーダーにまでなられた萩本さんご自身が身をもって証明されています。 会場に来られたエンジニアのみなさんの食い入るような視線も印象的でした。

Tech総研読者のみなさんにも高い支持を集める萩本さんとのLIVE対談。満を持しての機会、私の拙い表現力では言い尽くせないほど高揚がまだ続いています。 本当にありがとうございました。


Tech総研 編集長 前川孝雄
次回の転職フェアに参加してみよう!
次回のエンジニア適職フェア ≫ 2005年7月23日(土)東京国際フォーラム(地下展示ホール)

エンジニア必見の優良企業が多数出展予定!企業の担当者に直接会って話が聞けます。ここでしか聞けないエンジニアのための転職セミナーも同時開催します。
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  宮みゆき(総研スタッフ)からメッセージ  
宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ
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多くのエンジニアに共通する悩みに対し、萩本さんはそれは逆にチャンスなのだと説きました。 マイナス思考の私にはうらやましい発想転換。もちろんその自信の裏側にゆるぎない技術力があってこそのことですが、もっと先の自分を見据えてゴールをイメージせよという言葉に、改めて目先だけにとらわれている自分を反省しました。Tech総研では、今後も話題の技術者・経営者を招いて、こうしたライブセミナーを引き続き展開していく予定です。みなさんのご要望をお待ちしています。
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