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昇格時から2倍以上の年収アップ、転職時から即専門職転身も可能/オムロンの新専門職制度を選んだ現場エンジニアの証言
オムロンが導入した専門職制度はエンジニアの専門能力を高く評価し、技術力の貢献度しだいで収入2倍アップも可能という。オムロンならではの専門職制度の特徴とエンジニアにとってのメリットについてレポートする。
(取材・文/栗原知女 総研スタッフ/山田モーキン)作成日:05.05.18
その1 2005年4月より導入された、オムロンの「専門職制度」とは?
 制御機器から電子部品、公共交通、健康機器などさまざまな事業を展開しているオムロンが、2005年4月から新たに「専門職制度」を導入した。
 一般的に専門職制度は、企業競争力を高めることを目的に、エンジニアのような専門性の高い人材に対し、社内でその能力を最大限引き出すために処遇する制度で、オムロン以外にも既にほかの多くの企業で導入されている。(管理職VS専門職 給与はどっちが高い?参照)
 その中でオムロンの専門職制度には、いったいどのような特徴があるのか? まずはその具体的な制度内容について、オムロン人事勤労部の中道部長にお伺いした。
飛び級昇格に指名面接官制度etc……  オムロンの専門職制度はエンジニアに最大限配慮したシステム
中道教顕さん
人事勤労部部長
中道教顕さん
 部下管理が苦手などマネジメントに向かないと思うエンジニアの中にも、特定の専門分野では他者の追随を許さない能力をもつ人もいます。そういう人たちも、この専門職制度なら得意分野で能力を存分に発揮していただけると思います。専門職の昇格試験は30歳から受験できます。「主事」の階層の30歳代の人が、その上の「主査」を飛び越えて昇格できるわけです。昨年実施した第1回目の試験では49人が受験し、合格者は27人、うち4人が「飛び級」で専門職に昇格しました。管理職から専門職に移った人も6人います。最年少は36歳……今後はもっと若い人にもチャレンジしてほしいですね。

 書類審査の後は論文および面接試験で適格者を専門職に認定します。受験者は、自分の専門能力をよく理解している上司や先輩を面接官として指名でき、自分にとって有利な、つまり「自分の魅力を最大限引き出してくれるベストクエッション」を事前に準備できます。専門外の面接官にもわかりやすく専門性をプレゼンして、より高い評価を得るための配慮です。

 技術、生産、品質環境、SEなど、合計20の分野で専門職認定を行いました。専門職は成果しだいで昇格時の2倍以上の年収も可能です。不振が続けば降格もあり得ます。野球の監督よりもスター選手の年俸が高いのと同様に、専門職の給与の上限を管理職よりも高く設定しています。

 また現在は「専門職」のランクのみ認定ですが、今後は制度が定着するにつれ、「専門職」「専門職」そしてその上のノーベル賞クラスの人材である「フェロー」も現れてきてほしい。エンジニア一人ひとりが自分の将来の成長イメージを思い描けるように、オムロンの中での到達点と「がんばっただけ報われる」処遇を明示したのがこの専門職制度です。その結果、自分で考え、判断し、行動できるエンジニアが増えれば、グループの企業力が大きくアップすると期待しています。
従来の管理職制度 新専門職制度
従来(左図)は「管理職」の枠の中に「専門職」が設置されていた。つまり専門職になるためには、一度管理職に昇格した後でなければなれなかったが、今回の新制度で(右図)、専門職と管理職が完全に分離。管理職を経ず、直接専門職に昇格できるシステムに大きく変更した。
その2 二人の専門職エンジニアが証言/オムロンの専門職制度はあらゆる可能性を飛躍的に高める
 続いて今春から新しく専門職に認定された二人のエンジニアから、「エンジニアにとってのオムロン専門職制度のメリット」について聞いてみた。
特許を取得した高効率液晶バックライト技術を専門職の立場で 長期的に育てていきたい
飛び級によるスピード昇格と給与アップに魅力を感じた
篠原正幸氏
篠原正幸さん(37歳)
セミコンダクタ統括事業部
マイクロレンズ事業部
専門職(電気電子)
篠原正幸氏
篠原正幸氏
 管理職の適性を問われるのではなく、専門職制度は技術主体で昇格が決まるので魅力を感じました。自分より1つ上のポストだった主査を飛び越え、さらにその上にランクされるから給料も大きく増えるし、ポジションが上がれば、より責任ある仕事をすることができ、多くの人や情報との交流のチャンスが広がるだろうと思ったのです。そして主事だった私も飛び級昇格して、こうして専門職に認定されました。
手がけた発明が補償制度の対象に。補償金の支給上限も撤廃
 専門は光技術です。携帯電話の液晶画面などに使われるバックライトで、従来の方式よりも明るく、低消費電力で効率のいい方式を96年に発明して特許を取得しました。虫眼鏡とは逆の発想で、LEDの点照明を同心円状に拡散して垂直方向へ直進させ、画面を明るくする仕組みです。オムロンには発明管理考案制度があり、特許が年間売り上げ10億円以上で業界シェア40%以上の製品になれば、補償金をもらえます。1年分の売り上げに応じて支給され、私の場合、今ではボーナスよりも多い金額を手にしています。1億円だった支給制限が今年から撤廃されたので、今後が楽しみです。
6カンデラ→6000カンデラへ 常に高度な技術にチャレンジできる
 バックライトの発明から製品化までには4〜5年かかりました。当時の携帯電話はモノクロ表示だから6カンデラ程度の明かりでよく、高性能のバックライトの市場が成立していませんでした。事業化を危ぶむ声もありましたが、私は自分の発明の可能性を信じてあきらめませんでした。オムロンは「どんどんチャレンジしよう」という雰囲気があり、少々の失敗を気にせず取り組めます。やがてカラー、動画へと液晶画面のニーズが高度化し、私が育てた製品の優位性が評価されるようになったのです。今では専門職としてさらに高度な技術にチャレンジできるようになったので、現在、6000カンデラの明るさに挑戦しているところです。
大きなやりがいと大きなリスクを背負うプレッシャーが私には合っている
 私が専門職に認定された理由として、これまでの業績だけでなく。将来、私の技術がどれだけ会社に貢献できるかという将来性が評価されたからだと思います。今後は長期的視野でバックライト技術を育て、携帯電話以外の分野にも広げていきたい。専門職でなければ、ローテーションがあるので、自分の意思に反した部門へ異動になる可能性もありますが、専門職は自分の専門分野に集中して取り組めます。全社的観点で貢献性の高い技術を開発するために、他部署と連携を進めていきます。ただし、失敗すれば単に私の給与が下がるだけでなく、1から築き上げた事業分野をゼロにしてしまうリスクがあります。プレッシャーはありますが、私の性格には合っている制度だと思います。
専門職は技術優先で自由に動けるから、 他部門の技術との融合で新事業につなげたい
肩書よりも専門性を選んだことで 自分の技術が「会社の柱」になるやりがいを得る
内藤丈嗣氏
内藤丈嗣さん(45歳)
交通ソリューション事業部
専門職(情報工学)
内藤丈嗣氏
内藤丈嗣氏
 それまでは管理職だったのですが、今春から専門職になって課長と呼ばれなくなりました。管理職から専門職へキャリア転換することには悩みましたが、私は肩書で仕事をしていたわけじゃないから、肩書に未練はないです。管理職は組織運営のための付帯的な仕事がどうしても多くなりますよね。その点、専門職なら自分の専門技術により深く注力できます。私は入社以来ずっと画像処理の技術に取り組んできて、この分野で会社のひとつの柱になりたい、競争力のあるビジネスにつなげていくことに専念したいと思ったのです。
1年間の探求休暇を利用して自分の好きな道にチャレンジできる
 エンジニアにはマネジメント能力が全く不要だとは思いません。置かれた立場によって、技術力とマネジメント能力のウェートが6対4だったり、3対7だったり変化します。今の私は、画像処理の新技術を伸ばしていくことに専念するタイミングだと思ったのです。まだ定年まで15年あります。試験を受け直して管理職コースに戻る可能性もなきにしもあらずで、もしも私が手がけた新しい画像処理技術を事業化するために分社化したほうがいいとなったら、経営者として携わりたい。また、専門職に与えられる最長1年間の探求休暇(その間の3カ月は有給)を利用して、大学で先端の理論を学ぶのもいいかなと思っています。
自分の専門技術を新しい事業に結びつける可能性が格段に広がる
 以前に会社からもらったプロフェッショナル認定よりも、今回の専門職認定証はひと回り大きいサイズで、そのポジションの重みを実感しています。昇格試験の面接で、私は自分の所属するソーシャルシステムビジネスのカンパニーの中で今後どのように専門技術を深めていくかをアピールしましたが、「もっと全社的に広げてほしい」と注文をつけられました。技術をいかに新しい事業に結びつけるか、その能力を期待されているのです。
他の部署とのコラボレーションを仕掛け、高度な人間型ロボットも開発できる
 私は現在、交差点の車の流れ具合に応じて信号を変える自立分散制御システムの研究開発に取り組んでいます。交差点では当然車と車が重なり合うことになり、その1台1台の車をカメラが的確に識別するのが難しい。この問題を解決するために「時空間マルコフランダムフィールド」という確率場の理論を応用しています。車の固まりの時間的な変化を追跡し、そこに含まれる車の台数や進入方向を確率論的に推計するもので、物を大ざっぱにとらえて認識する人間の目の働きに倣ったものです。
 機械が人間と同じように見て判断する技術は、その難易度の高さが一般的に理解されにくいのが残念ですが、いずれは怒りや悲しみといった人の表情の意味を読み取れる人間型ロボットの目につながるでしょう。個人認証技術に取り組むエンジニアたちと連携すれば、そんな技術が可能になるかもしれません。専門職は自由に動きやすいので、他部署に出向いて積極的にディスカッションを仕掛けていきたいですね。
その3 オムロンの専門職制度を利用して活躍できるエンジニアの条件と可能性
 今までの話から、あらためてオムロンならではの専門職制度のメリットを利用して活躍できるエンジニアの可能性についてまとめてみた。
オムロン式専門職エンジニアが持つ6つの可能性
 冒頭でも紹介したとおり、専門職制度は多くの企業で採用されているが、その中でオムロンの専門職制度は、“自分の専門技術の成果が最大限評価され、本当に自分がやりたいことにチャレンジできる”エンジニアのニーズにうまくマッチしたシステムではないだろうか。
 今後オムロンへの転職を考えている若いエンジニアの方には、積極的に専門職にチャレンジして、エンジニアとしての可能性を大いに飛躍させてほしいとのこと。
 また既に自分の専門技術領域に関して豊富な経験と高いスキルを有するエンジニアの方には、場合によっては転職したその日から即専門職になることも可能である。オムロンとしても今後全社員の1/4を目標に専門職を増やしたい意向があり、そういった意味でも若手だけでなく、中堅エンジニアにとっても要注目といえる。
今回登場した二人の専門職エンジニアのように、自分の技術を追求し続けたい方にとって、オムロンの職場はひとつの大きな魅力といえるだろう。
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  山田モーキン(総研スタッフ)からメッセージ  
山田モーキン(総研スタッフ)からのメッセージ
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普段何げなく使っている携帯のバックライトの発明者にお会いすることができて、あらためてこの仕事のありがたみをしみじみ実感。やはり今回のエンジニアのお二人も、ご自身の技術を語っているときや「現場」にいるときが、いちばん生き生きした表情をされていました。こうした、「エンジニアでよかった、エンジニア人生を楽しめる」制度が、今後もっと世の中に普及することを、今回の企画を通して願ったしだいです。
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