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独立志向のSEが巻き込まれた労使闘争

一発逆転で新会社のリーダーに、リベンジを果たしたA・Yさん

情報システム業界は技術も顧客も人につくといわれ、本当に実力のあるSEは独立も可能だし引く手もあまた。大手SIerでキャリアを磨いたA・Yさんにも、知人から経営に参画できるポジションというオファーが届いたのだが……。
(取材・文/中村伸生 総研スタッフ/山田モーキン)作成日:05.04.27

キッカケ編
SE20年後のキャリアを考えて大手SIerから転職

今の会社ではこの先チャンスがないかもしれない

 専門学校を卒業して新卒入社したA社には、とてもお世話になった。大手SIerだけあって、技術レベルも高い。プロジェクト案件も時代の最先端のものが多く、貴重な経験が積めた。高校時代からパソコンを趣味とし、コンピュータ業界で活躍したいと考えてきた自分にとって、A社は申し分ない企業だったのである。

 でも、30歳を前に別の考えが頭をもたげてきた。「このままここに居続けていいのだろうか」という疑問である。父親が事業をしていたこともあって、コンピュータと同じくらい経営にも興味があったのだ。理想をいえば、A社で頑張って経営に参画できる立場まで上り詰めたい。でも、それはとても無理に思えた。大手だけに人材は豊富。上が詰まっているのでなかなか昇進できない。実力が認められて昇進できたとしても、50歳を過ぎてせいぜい部長止まりだろう。

渡りに船だったオファー

 このような現状に対する、うっ積した感覚は、スキルがつき顧客から認められるようになるにしたがい、だんだん膨張していった。そんなとき、趣味で知り合った人から魅力的な提案が舞い込んだ。彼が営業として勤めている地方のソフトハウスが東京に進出して事業を展開したいらしく、その中核メンバーを探しているので、ぜひ加わらないかという内容だ。なんとタイミングのよい話だろうか。よくよく聞いてみると、経営にも参加してもらいたいとのこと。それから構想を具体化していった。どういうことをやりたいか。どのような戦略を実行していくべきか。仲間も集めた。そうしてでき上がった構想は、「客先に常駐する案件が多くなる。当初は大変だろうが、皆で頑張って利益が出れば還元していく」というやりがいの大きなものだった。そして新会社のスタート直前に、お世話になったA社を退職した。
PROFILE
情報システム開発企業
システムエンジニア
A・Yさん(32歳)

情報処理の専門学校を卒業後、大手SIerに入社。COBOLによるレガシーなシステムの開発からクライアント/サーバー型システム、Webシステムの開発へと順調に経験を積む。スキルを買われて2001年に1回目の転職を行った。
A・Yさんの転職活動DATA
前勤務先 情報システム開発企業
システムエンジニア
転職した時期 2004年 4月
活動期間
(決意〜内定)
約半年間
転職理由 経営陣の方針に疑問を感じ、待遇面でも約束違反があった
会社選びで優先したこと 経営側の事業方針や人材に対する考え方
実際に応募した社数 1社
内定社数 1社
落ちた社数 0社
辞退した社数 0社

転職準備編 
話が違う!

約束が反故に

 こうして船出したB社で私は奮闘した。プロジェクトリーダーとしてメンバーを集めるところから始め、客先では技術営業的なこともやれば、メンバー教育はもちろん、顧客の若手エンジニア教育まで引き受けた。すべてB社を軌道に乗せるためである。当初は自分の会社を動かしているという実感は大きかった。誘ってくれた営業もどんどん案件を取ってくる。業績は順調に伸びていった。人員も拡大し、利益もかなり出てきたはずだった。営業から契約額を聞いていたから確かである。

 ところが、なかなか昇給しない。ボーナスもわずかな額だ。自分だけではない、全員がそうだ。つまり社員に利益が配分されていないのである。仲間たちからも「どうなっているんだ」という声が上がってきた。そこでメンバーを代表して、営業所を取りまとめていたマネジャーに詰め寄った。仲間を集めた責任もある。しかし回答はちぐはぐなものだった。

交渉に次ぐ交渉

 営業とともに何度かかけ合ったが、逆に怒鳴りつけられてばかりだった。マネジャーは銀行出身で経営に強いという評判で、東京支店立ち上げ直前に突然参入してきた人物である。でも、会社内で踏んぞり返っているばかりで実質的な仕事は何もしていない。それなのに、「自分は会社の代表だ、待遇が適正なのは自分がいちばんよく知っている」と、高圧的な態度に終始した。
 社長に電話をかけても、マネジャーに一任してあるという返事だけで、のらりくらりとはぐらかされるばかり。立ち上げ当初の約束はどこにいったのか……。

再度の転職をしようか……

 こんな会社になるとは思ってもみなかった。やはり“おいしい”話には裏があるものなのだろうか。仲間を集めた手前、簡単に放りだすわけにはいかなかったが、現状ではらちが明かないと判断し、転職を考え始めた。仲間だけで新会社を立ち上げるという話も出たが、資本と後ろ盾がなければ難しいと判断した。今度は失敗できない。そこで熟慮した結果、やはり「経営陣がしっかりした企業でなければ転職しない」と心に決めた。転職サイトに何度もアクセスしながら、次の進路を絞っていった。一方、常駐先の開発現場の方から「ウチに来ない?」という誘いもあった。状況が状況だけに、うれしかった。
活動編 
リベンジ成功

再度舞い込んだチャンス

 いよいよ辞めようという決意が固まってきたある日、例の苦楽を共にした営業がまた新たなオファーを持ってきた。彼も私と同じく、だまされた人間なのである。その話とは中堅SIerであるC社のグループ会社が休眠状態にあるので、自由に経営してみないかというものだった。またまたおいしすぎる話だと思ったが、聞くに値する内容である。今度こそ失敗したら、仲間たちに合わせる顔がない。そこで慎重に慎重を期して、話を少しずつ進めることにした。

 まず、営業が入社して、C社に探りを入れることになった。そこから数カ月、彼が言うには「言っていることに間違いはなさそう」。そこで満を持して、先方の会長や役員と会うことにした。待遇、経営方針、雇用条件、就業規則etc……と、ありとあらゆることについて事実を細かに確認するつもりだった。ところが先方の回答は「自分たちで決めてもよい」とのこと。基本的なガイドラインはあるから、後は自由に決めてほしいと言われた。先方も期待をかけてくれているようだ。株も売るから買ってほしいとまで言われた。話半分ではなく、本当に経営にかかわれるのである。今度こそ本当に魅力的な話のようだ。もう心は決まった。

極秘裏の行動
 自分一人がおいしい思いをするわけにはいかない。苦労させてしまった仲間たちも救わなければならない。この春、まずは営業に続いて私がB社を辞め、C社に転職したのだが、徐々に仲間たちを転職させる計画なのである。向こうでは、一人辞め、二人辞め、というように、マンパワーがどんどん落ちていく。気づいたときには経営が回らなくなっているだろう。反対にこちらは徐々に人員を拡大し、成長していくはずだ。今ではB社に対する怒りは収まったが、現場の活躍や意欲をないがしろにすることが、大きなしっぺ返しにつながることを身をもって学んだ。新会社のリーダーとなった今、これからのマネジメントにとって貴重な反面教師として、B社での経験は忘れることはないだろう。
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