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自動車、家電、通信、SI、半導体業界etc.500人に聞いた 8業界比較☆好業績企業で働く エンジニアは本当に得か? イラスト
もはや大手であっても横並びではなく、業績によって待遇も将来の安定性も千差万別となったエンジニア業界。
やはり好業績企業で働くほうが何かと得なのだろうか。今回は500人のアンケートと識者の意見をもとにその実態に迫る!
(取材・文/中村伸生 総研スタッフ/宮みゆき イラスト/大寺 聡)作成日:05.03.09
Part  1 業界でこんなに違う! エンジニアの企業業績に対する意識
 かつて大手企業に就職すると一生安泰といわれた時代があった。大きくなる市場パイを大手各社が分け合っていたからだ。ところがここ十数年は、限られた内外の市場を各社が取り合う過酷なサバイバル時代。売上順位やシェアの変動は著しく、業績が落ちた企業の社員は、さまざまな面で好業績企業の社員に差をつけられる。一見、エンジニアにとっては自分の実力が会社の業績に貢献できる“やりがいのもてる時代” にも思えるが、開発や設計の現場では何を考えているのだろうか。
そこで、Tech総研では、会社の業績に対する業界別の意識調査を行った。
会社の好業績に対するエンジニアの意欲業界別ランキング
好業績に対しモチベーションや誇り、使命感を感じている業界 好業績に貢献している意識が高い業界 好業績が給与に反映されていると感じている業界 好業績企業で働くことは
キャリアアップにつながると感じている業界
2005年2月 Tech総研が25〜39歳のエンジニア500人に調査
これら業界による企業業績に対する意識の違いはどこからくるのだろうか。その理由を探るため、自動車、家電・AV機器・精密機器、通信、SI、半導体の8業界におけるエンジニアの意識をさらに詳しく見ていこう。
自動車業界は個人のプライドが見え隠れ?
 世界でも数の多さで知られる日本の完成車メーカー。新聞の経済面やニュースでは、上位企業の海外市場での健 闘ぶりや、かつてない好業績を記録していることが伝えられている。また、この業界はエンジンやトランスミッショ ンといった機械系エンジニアにとって憧れの開発領域をもつとともに、クルマの電子化が進むにつれ、電気・電子、 情報系のエンジニアにとっても関心が高い業界となっている。

 そんな自動車業界に所属するエンジニアのアンケートデータからは、興味深い結果が見えてくる。業界シェアが 高いことに関するモチベーションや、業績への貢献意識に関しては他業界より高めでありながら、「技術者の貢献が 給与・賞与面に反映されているか」という質問の回答では、平均的な数字で終わっているのだ。それでいて、給与面 の満足度は決して低くない。リクルートエイブリックで、製造業を専門とするコンサルタントである瀧田幹氏は、 次のような傾向を述べてくれた。

「自動車業界のエンジニアは、転職の際に企業の業績についてはそれほど大きな関心を寄せていませんね。通常 でも昇給やボーナスの際に多少は意識しますが、それよりもエンジニアとして何を実現したいか、自分自身にどれ ほどの市場価値があるのかを考えています。言い換えれば、この技術領域を離れたくない。それほど仕事自体に魅 力があるということではないでしょうか。その中でも上位企業にいるエンジニアは、より仕事にプライドをもってい ます」
 自動車業界は完成車メーカーだけで成り立っていない。その下に搭載製品メーカーや部品メーカーが続いていく。 最終形である完成車を市場に投入するということのやりがい、意気込みはやはり強いようだ。

自動車業界エンジニアの 会社業績に対する意識 好業績企業エンジニアがやりがいを感じる理由
会社が成長していろいろな国へ進出すれば、自分も海外で経験を積む機会が増える。
(生産技術/28歳)

設備投資により新しい設備・技術が導入されるため、技術力向上につながる。
(制御系システム開発/27歳)

業界シェア、業績がアップはヤル気、意欲につながり、すべてにおいて向上すると思う。
(研究/34歳)
家電・AV機器・精密機器業界はコンシューマ製品開発が人気
 情報家電の勢いに陰りが見えつつあるといわれるが、次世代製品のロードマップを考えれば、将来性はまだまだ明るいように見える家電・精密機器業界。
特にAV機器の分野は製品・技術ごとに2つ以上の陣営が対立し、どちらか一方だけが市場に残るという競争を繰り返している。競争に敗れた陣営は、部門ごと撤収してしまう可能性をはらんでいるから、エンジニアにとってシェア争いは大きな関心事であるはずだ。

 この仮説は、アンケート結果で確かに証明された。「勤務先企業の業績や業界シェア率が上がることは、あなたの今後の技術力やキャリアが上がることにつながると思うか?」という質問で、AV機器が「つながる」と答えた割合がトップなのに対して、家電(この場合は白モノ家電になる)が最下位なのである。

 所属企業が同じであっても、製品分野によって意識に差が出るこの分野のエンジニア像を、前述の瀧田氏に聞いてみよう。
「電子回路・IC設計、液晶、光学、通信など、コピー機やプリンターをつくる精密機器のエンジニアに求められるスキルは、AV機器のそれと大きくかぶります。一方で白モノ家電のメーカーのほとんどがAV機器も開発しています。そこでこの分野をひとまとめにエンジニア共通の志向をいえば、ズバリ、コンシューマ製品が人気です。自分が携わった製品を街中や量販店の店頭で見られるということが、大きな満足感につながるからです。だからAV機器の開発に移りたい、あるいはAV機器でシェアの高い企業に移りたいという転職希望者は多いですね」

 自分がかかわった製品が市場でヒットして社会の話題になるのは、やはりエンジニアにとって大きなモチベーションとなるのだろう。しかし、製品の売れ行きシェアはめまぐるしく変わる製品分野でもあるので、現時点のシェア上位にこだわる必要は、実はそう大きくないといえるのではないだろうか。

家電・AV機器・精密機器業界エンジニアの 会社業績に対する意識 好業績企業エンジニアがやりがいを感じる理由
先端の技術・情報をより多く集めることが可能となり、その情報密度の向上が開発力・キャリアアップに有効。
(生産技術/39歳)

業界シェア率トップ、イコール技術面、経営面でも高い水準にあると考えて間違いない。
(機械設計/39歳)

自分の手がけた商品の認知度が上がることは自己のキャリアが認知されることだから。
(システム開発/34歳)

通信業界はエンジニアもシェア競争に高い関心を寄せる
 このカテゴリーは、通信キャリアやインターネットの接続サービス。無線技術、伝送技術、設備開発技術、システム・インフラ構築技術、画像処理技術など、多数のエンジニアが活躍している分野だ。そんな彼らのアンケート結果を見れば、自社の業界シェアに対する関心が高いことが伝わってくる。「勤務先企業の業績や業界シェア率が上がることは、あなたの今後の技術力やキャリアが上がることにつながると思うか?」「今後もし転職するとしたら、企業業績や業界のシェア率が高いことにこだわるか?」という設問で、「つながる」「こだわる」と答えたエンジニアの割合が、それぞれ1位(同率)と3位なのである。

 この理由をリクルートエイブリックのキャリアアドバイザーである酒井美和氏が語ってくれた。
「この業界はシェアを取った者勝ちの世界だからです。一度獲得したシェアは動きにくいうえ、市場影響力を大きく行使できます。上位企業とそうでない企業では、エンジニアの働きやすさは大きく違ってきます。また、近年は買収、統合・分割、新規参入・撤退、外資参入などがめまぐるしかったこともあり、エンジニアの安定指向に拍車をかけています。でも、新規参入で大きくなった企業もある業界なんですよ。その点を見落としてほしくありません」
 ハードルは高いが安定した上位企業に狙いを定めるか、あるいは将来の安定を目指してチャンスにかけるか、エンジニアにとっては悩ましい業界でありそうだ。

通信サービス業界エンジニアの 会社業績に対する意識 好業績企業エンジニアがやりがいを感じる理由
シェアが上がればユーザーへのネームバリューも上がり販売増につながり、それが給与などの待遇面の向上につながるため。
(コンサルタント/31歳)

常に新しい技術に接することができ、また、プロジェクト管理業務を通し予算管理・日程管理・人員管理などに精通できるから。
(ネットワーク設計/36歳)

多くの顧客と接せる機会が増え、必要な技術が身につく。(運用・監視/27歳)
半導体業界はエンジニアが次の時代を虎視眈々と狙う
 半導体メーカーと半導体製造装置メーカーから成り立つ半導体業界。4年ごとに好景気の波がくるといわれる独特の分野であり、家電や通信、自動車など他産業の影響も大きく受ける。そして、絶え間ない高集積化など技術の進化も著しい業界だ。この世界のエンジニアは次の転職先に、業績やシェアの高さを求めるようだ。「今後もし転職するとしたら、企業業績や業界のシェア率が高いことにこだわるか?」という設問で、「こだわる」と答えたエンジニアの割合がトップなのである。それに対し、前述の瀧田氏は次のように語る。

「この分野は、低いコストで、なおかつ高性能な製品をつくった企業がシェアを取れる市場です。その競争から遅れた企業は撤退や合併の波にのまれます。ですから、エンジニアたちは、次に、どの企業が安くていいものがつくれるのか、各社の技術格差を真剣にウオッチしていますよ」
この業界で転職するのであれば、以上のポイントを外してはならないということなのだろう。

半導体業界エンジニアの 会社業績に対する意識 好業績企業エンジニアがやりがいを感じる理由
技術面ではシェア向上・維持のために差別化された技術が必要だから。経営面では、業績向上がなされれば研究開発に回される費用も多くなる。
(半導体設計/30歳)

シェア率が上がれば必然的に仕事の幅が広がり、技術力も向上すると思う。
(半導体設計/31歳)

市場からも認められることで、会社経営も向上、新しい技術に触れることも可能。
(FAE/36歳)
情報サービスはなぜか相対的にシェアに無関心?
 自社の業績・利益が待遇に反映され、それに対する満足感が高い半面、自社や転職先に対するシェアの高さを気にしないエンジニアの多いことが判明した情報サービス業界。なぜ、彼らは相対的にシェアに無関心なのだろうか。リクルートエイブリックのキャリアアドバイザーとして活躍する江川理絵氏は、次のように説明してくれた。
「決して無関心というわけではなく、それ以上にこの分野はエンジニアが企業軸ではなくて、個人軸で動くことが大きいという背景があります。常にキャリア形成を考え、市場価値を身につけることを第一に考えているからです。もちろん大規模システムを手がける売上上位のSIerは人気です。でも、そこに所属するSEであっても、ユーザー側、つまり一般の大手企業の情シス部門に移ってシステム企画をしたいという意識や、プロジェクトのマネジメントではなく、実装技術を磨きたいという根っからのエンジニアもいます。コンサルファームや有力パッケージをもったベンダーに移る場合も少なくありません。また、ユーザーやベンダーや実装開発を担うソフトウェア開発企業は、そうした大手SIer出身のエンジニアのプロジェクトマネジメント力を欲しています」
 目的をしっかりもったエンジニアであれば、有意義な転職が可能であり、市場価値の高いスキルをもったエンジニアであれば、活躍できるフィールドは広そうだ。

情報サービス業界エンジニアの 会社業績に対する意識 好業績企業エンジニアがやりがいを感じる理由
個々人の技術面の成果が企業の業績、シェアに貢献していると思う。
(システム開発/36歳)

仕事が増えれば経験も増え、経営面で余裕ができれば研修などの投資もできる。
(社内SE/37歳)

業績を上げれば多くの会社からより高度な依頼がされ、自分のキャリアアップにつながると思う。
(システム開発/33歳)

Part  2 業績上位企業に何としてでも入るべきか、市場価値の高い技術・スキルを身につけるべきか
イノベーションへの意識の高い企業が業績上位を続ける
和氣 忠氏
和氣 忠氏
マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパン

東京大学工学部土木工学科卒業後、日本道路公団に勤務。米スタンフォード大学にてMBAを取得後、1996年にマッキンゼー入社。生産財・ハイテク分野を中心に事業戦略、マーケティング、組織改革、新事業開発などを手がける。

 Part1で5つの業界のアンケートを分析してみたが、何より業績上位の企業で働くことが望ましい場合と、それよりも市場価値の高いスキルを身につける意識のほうが重要な場合と、業界別に二通りあることが見えてきた。しかしながら後者の場合であっても、業績の良い企業で働くに越したことはない。では今後、業績上位企業になるか、あるいは上位企業であり続けるか、どのような視点で企業を選別したら良いのだろうか。マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパンの和氣氏がエンジニアの視点で見るべき内容を教えてくれた。

 「企業寿命は30年という説が流れたことがありますが、私は成功したビジネスモデルのライフサイクルであっても、その寿命はもっと短いと見ています。技術革新のスピードが高まり、製品やサービスの賞味期限が早くなる一方ですから、このライフサイクルはますます短くなっていくはずです。それでも業績上位をキープしている所があるとすれば、創意工夫を重ね、断続的なイノベーションを行っている企業です。こうした現状不満足と絶え間ない革新意欲を風土に持つ企業であれば、高い業績をキープすることが可能なのです。皆さんが思い当たる業績上位企業の多くは、そうした社風で知られているのではないでしょうか」

  さらに、成果主義がうたわれる中、イノベーションにおいて成果主義をいかに運用しているのか、あるいは、導入していないのかというところにイノベーションに対する企業の考え方の片鱗が垣間見られると語る。
「短期プロジェクトが主体で、成果が客観的に計りやすい事業であれば、成果主義の運用はそれほど難しくないはずです。でも、5年後、10年後にようやく業績につながる研究や開発を行っている分野は、短期的で計りやすい成果指標は本来的ではない場合が多く、成果主義の運用が難しいのです。製薬などは代表的な分野といえるでしょう。ですからマイルストーンの置き方が適切で、失敗からの学びも評価する効果的な制度運用を導入している企業を選ぶとよいでしょう。外からはわからなくても、面接などである程度は聞けると思います」
やはり好業績をキープする企業は、人事制度も秀逸ということになるのだろうか。

各業界別、伸びる企業の見分け方

 最後に和氣氏に、業界別で未来の好業績企業を見分けるヒントを教えてもらった。

「自動車はテクノロジーシフトが進み、今後ますます技術開発力の差が業績に反映されるようになると思います。クルマの電子化はますます進むでしょうし、ハイブリッド車が普及し、いよいよ燃料電池自動車も市販に近づくでしょう。そこで技術リーダーシップを取れる企業が強いことは言うまでもありません。
情報サービスと通信サービスは、儲ける仕組みが大きく変わると思います。そこで新たなビジネスモデルを早く巧みに構築した企業が強いでしょうね。
家電は中国が要になるでしょう。膨大な需要市場かつ生産拠点ですから、中国企業との付き合い方も含めた中国戦略の確かな企業が生き残ると思います。
半導体は、これからも技術革新が続き、それこそイノべイティブな技術基盤と技術開発力で時代の半歩先を手がけられる企業が残っていくこととなるでしょう」

 市場価値の高いスキルを持っていれば転職戦線で優位に立てるのは言うまでもない。でも、入社してそのスキルを中長期的に活かせる企業、つまり未来の好業績企業を選ぶことも肝要ということなのだろう。
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  宮みゆき(総研スタッフ)からメッセージ  
宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ
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自分の技術の市場価値が気になるエンジニアにとって、好業績企業で働くことは会社への忠誠心というよりも、自身の技術力向上のための環境として認識されているようです。また、企業側もこの変化の激しい時代を勝ち抜くために、技術力の高いエンジニアを常に求めています。好業績企業にどれだけ自分のキャリアが通用するかウオッチしておくことで、技術力の市場価値が測れるともいえるでしょう。好業績企業に自分がどれだけ注目されるか、ちょっと試してみませんか?
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