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自社サイト運営会社での開発を希望する中堅エンジニアのケース

転職4回目のSEが「ビッダーズ」のディー・エヌ・エーへ

インターネット・オークションサイト「ビッダーズ」で知られるディー・エヌ・エー(DeNA)は、ショッピング分野を強化する一面をもちつつ、携帯電話専用サイトなど事業を拡大している。今回は、同社の事業拡大期に応募した中堅SEの面接現場を再現する。
(取材・文/須田忠博 総研スタッフ/高橋マサシ) 作成日:05.02.23
ディー・エヌ・エー
応募したエンジニア 企業の面接担当者
篠原さん
篠原 宏さん
(応募時30歳)
城戸氏
システム開発グループ
ディレクター
城戸忠之氏
当時の職種
SE・プロジェクトリーダー
募集職種
SE・Javaエンジニア
業務内容
Web系アプリの開発。特にiモードサイトのシステム構築とコンテンツ作成。小規模プロジェクトのリーダー。
仕事内容
オークション/ショッピングシステムの機能追加、変更。Java、Cを使ったアプリ設計、開発、データベース設計。
職務経歴
大学の情報管理学科を卒業後、システム開発会社、SI会社など4社で計6年半、運用保守、プログラマ、SEを経験。
応募資格
Java、Cを使ったアプリ開発、オープン系システム開発、Webシステム開発の経験者。
志望動機
自社サイトの運営会社でシステム構築・アプリケーション開発に携わりたい。
募集背景
システム開発体制の強化、および携帯電話版「ビッダーズ」立ち上げのため。
面接の流れ
応募書類はすべてシステム開発グループに集められ、ディレクターが選考する。シニアエンジニアが加わる場合もある。
ディレクターとシニアエンジニアとで面接する。所要時間は1時間〜1時間半。
通常はサービス開発部の部長が1対1で面接する。所要時間は40分〜1時間。
社長が応募者と1対1で面接する。所要時間は30分〜1時間弱。
基本的に応募者へメールで連絡する。
【通過率:1割程度】
【通過率:2〜2.5割】
【通過率:3〜4割】
Part1
職務経歴と得意な開発言語
Javaの使用頻度は開発の95%以上
城戸:
 はじめまして。システム開発グループの城戸です。
篠原:
 はじめまして。篠原宏と申します。よろしくお願いします。
城戸:
 こちらこそ。まず、篠原さんのこれまでの職歴をご説明ください。【Point1】特別に深く取り組んだ点など、特徴がわかるようにお願いします。
篠原:
 提出書類のとおり、私は今までに4社を経験していますが、仕事らしい仕事をしたのは1社目と3社目です。2社目と4社目の現職は仕事内容が入社前の話と食い違っていたりしたため、すぐに転職活動を始めました。従って、職歴は2社と考えていただいて結構です。

 新卒で入社した会社では、UNIX系のシステム構築、Oracle環境のセットアップとチューニングなどのインフラ系の仕事をしました。その次はWeb系の開発です。【Point2】特に、Javaをベースにした携帯電話向けWebアプリの開発が多かったです。
 その会社には4年弱勤め、後半は開発の取りまとめやプロジェクトマネジャーを任されました。各プロジェクトの規模としては、4〜5人で3〜4カ月の工期です。得意分野はiモードアプリの開発で、公式化などの知識には自信があります。
城戸:
 経験言語を使用期間で見ると、何がいちばん長いですか?
篠原:
 CとJavaです。C++は業務上ではあまり使ってきませんでした。そのほかには、社内システムの運用管理と個人的な勉強から、Perlをはじめとするスクリプト言語はひととおり使えます。
城戸:
 最も得意な言語は何ですか?
篠原:
 【Point3】やはりJavaですね。
Point1
[面接官]このようにクギを刺すのは「だらだらと話さないでくださいね」という意味がひとつ。もうひとつには、われわれが「トンガリ」と呼ぶ得意な分野や技術を、積極的にアピールしてほしいからです。
[応募者]面接の最初は、何度体験しても緊張します。うまく話せる自信はありませんでした。ただ、面接官の興味がインフラ系とWeb系のどちらにあるのかを探りながら、そのあとの答え方を変えていくつもりでしたから、まずは2方向での経験をはっきり伝えました。また、携帯電話向けWebアプリという点が、面接官の興味の試金石になると思っていました。。
Point2
[面接官]弊社での開発は95%以上がJavaですので、最初の経歴説明でこういう話が出てくるとうれしくなります。篠原さんの採用選考当時は、ちょうど携帯電話版ビッダーズの立ち上げ時期でしたので、なおさらそう感じました。
Point3
[面接官]職務経歴書にはたいてい使用言語が書かれていますが、どれを最も得意とするのかはわかりません。それで尋ねるわけですが、このように肉声で答えが返ってくると、こちらの判断も一歩進みます。
Part2
担当プロジェクトの詳細

通信キャリア向け試験環境構築の経験
城戸:
 携帯電話向けのWebアプリ開発に関連した仕事について、具体的にプロジェクトを挙げて話してください。どんなシステムのどこをつくったのかがわかるようにお願いします。
篠原:
 それでは、直近に完了したプロジェクトについてお話しします。記憶が確かですし、いろいろな要素が詰まってもいますから。
城戸:
 職務経歴書にある「通信キャリア移動機SSL用クライアントの認証検証用試験環境構築」ですね?
篠原:
 はい、そうです。これは、通信キャリアさんが新しい携帯端末にSSLでのクライアント認証機能を搭載することになり、発売前の機能検証の必要から、その試験環境をつくるというプロジェクトです。ただ、より実際的にということで、コンテンツプロバイダーさんが使うような機能をもつ、ダミーサイトを構築してテストするものでした。

  環境選定の意図としては、コンテンツプロバイダーさんが実際に使用する環境を想定しなければいけなかったので、UNIXとWindowの両方の環境を用意する必要がありました。Webサーバとしては、Apache(Solaris)、IIS(Windows)を使用して、それぞれの開発言語はPHPとASPでした。データベースにはMySQLを使用しました。
  また、クライアント認証をテストする方法としては、機能を想像しやすく、端的に機能を表しているという理由から、シングルサインオン(SSO)を使用しました。
ホワイトボードを使った説明で技術力を判定
城戸:
 なるほど。【Point4】そこのホワイトボードにシステムの概念図を書いて、もっとわかりやすく説明してもらえませんか?
篠原:
 はい、わかりました。
(篠原さんは立ち上がり、5分ほどホワイトボードに向かってシステム概念図を書いた。書き加えながら説明をする。途中で城戸氏が図を指差しながら確認的な質問をした)
 ……つまり、ダミーのサイトとしてチケットの予約サイトと壁紙ダウンロードのサイトを作り、それぞれの課金のための認証専用サーバを用意して、クライアント認証を行う形になっているわけです。

 私のチームが担当したのは、バックエンドとフロントエンドの両方の認証を行う仕組みでした。この試験環境は、普通のブラウザとJava環境のiアプリの、両方に対応できるようになっています。私自身は、試験システム全体の仕様検討と認証部分を含めた諸々の設定、各プログラマーの管理とサポート、工程管理を行いました。
おおまかな要求から提案と構築ができるスキル
城戸:
 この試験システムは、通信キャリアさんから仕様書がきたのですか?
篠原:
 いえ、今度実装する携帯端末はこういうものだから試験環境をつくってほしい、という話からのスタートです。実際的なサイトを構築して試したいというお話でしたので、こちらから仕様を提案しました。【Point5】技術的にはオープンソースを組み合わせてカスタマイズすればいいとわかりましたから。
城戸:
 ダミーのチケット予約サイトは、どの程度のつくり込みだったのですか?
篠原:
 データベースを用意して不自然さを感じさせない程度です。
城戸:
 普通のサイトっぽいサービスが行われる感じ?
篠原:
 そうです。
城戸:
 何かをコピーしたのではなく?
篠原:
 はい、オリジナルです。
城戸:
 短い期間なのに、それはすごいですね。



Point4
[面接官]ホワイトボードを使っての説明は、当社独特の方法かもしれません。その理由は、さまざまな判定に役立つからです。例えば、かかわったシステムへの理解度、担当範囲の把握力、論理的な説明力の有無、あいまいな点を突っ込んで聞くことで見えてくる技術レベルなどです。ここが1次面接を通過するかどうかの山場でもあります。
[応募者]面接の場でホワイトボードに書いて説明せよといわれたのは初めてでした。実際の面接では面食らいました。面接官の得意な技術分野がわからないので、どこまで書き込めばよいかが即断しにくかったのです。
Point5
[面接官]開発した試験環境の内容とこの言葉を考え合わせると、篠原さんはアバウトな要求仕様からでもシステムを案出してつくれる人材とみなせます。技術レベルは抜きんでて高いとは思いませんでしたが、この時点で十二分に当社の開発グループでやっていけるとほぼ判断しました。



Part3
失敗体験、転職理由、キャリアパス

失敗したプロジェクトから学んだもの
城戸:
 ところで、【Point6】これまでの仕事での失敗体験を何か話してもらえませんか?
篠原:
 そうですね。いちばんの失敗というと、あるWebアプリの運用場面で原因不明の文字化けが起こったことです。こちらから人を張り付けてリカバリーしました。
城戸:
 それは、この職務経歴書にあるプロジェクトですか?
篠原:
 1ページ目の下から4番目にある○○キャンペーンサイトです。
城戸:
 土日も出て対応した?
篠原:
 【Point7】ええ、夜もです。
城戸:
 その失敗から何を学びましたか?
篠原:
 そのころにはプロジェクトマネジャーになっていましたから、実際に開発したのは私ではなく、メンバーです。仕上げの段階でのチェックが甘かったのかなと反省しました。それで、以後は念入りにチェックすることを心掛けています。
(このあと城戸氏は、【Point8】転職回数が多い理由と、今回の転職の志望動機を尋ねた。志望動機について篠原さんは、自社のシステムを開発・運用していく仕事に就きたい旨を伝えた)
心掛けているのは「手離れのよい仕事」
城戸:
 当社は小さな会社ですが、自社サイトを運営し、サービス事業を行っているので、ひととおりの部署が社内にあります。自分でキャリアパスを選択していける環境です。篠原さんとしては、【Point9】今後のキャリアパスをどのように考えていますか?
篠原:
 少なくとも今後数年間は、システム開発に直接かかわる仕事をしていきたいと考えています。そこから先は、システムに触れない部署とシステムとの間に入って、付加機能や新規サービスなどの企画を、システムに組めるように調整・変換する役回りをしたいです。
城戸:
 わかりました。そういうキャリアパスは可能です。最後にもうひとつ質問します。【Point10】開発の仕事をするうえで、篠原さんのモットーあるいは信条は何ですか?
篠原:
 以前から心掛けているのですが、手離れのよい仕事をすることです。お客さんへ渡して仕事から離れてしまったり、お互いの担当が変わったりしますから、口での説明を要しないくらい簡潔な仕事をすべきだと思っています。
城戸:
 それは重要な点です。よい心掛けだと思います。
(このあと、城戸氏は自社のサービス内容と社内の開発体制について簡単に説明し、篠原さんからの質問を促した)
 
Point6
[面接官]長く仕事をしていれば失敗もあります。失敗が大きいほど、学べるものも大きい。それだけ成長の糧になる。そのあたりを知りたくて尋ねた質問です。
[応募者]過去に何度も転職のための面接を受けてきて、この質問がポピュラーなことを知っていました。特に答えを用意していたわけではありませんが、戸惑いはしませんでした。
Point7
[面接官]IT業界のトラブル対応では当たり前のことですが、仕事の姿勢として当たり前のことを当たり前にできることが大切だと、私は思っています。
Point8
[面接官]過去に転職が多い応募者の場合、それぞれの転職理由を尋ねます。それに筋が通っていれば、回数自体は気にしません。また、今回の転職理由と当社への志望動機はワンセットでとらえ、前向きな考えかどうかを判断します。


Point9
[面接官]この質問へはどのように答えてもらっても構いません。当社では見込めない希望でない限り、評価に影響しません。ただし、腰を据えて開発に取り組む意思が薄そうな場合は警戒します。


Point10
[面接官]この質問は、いうまでもなく人物判定のためです。仕事上で重要なポイントは何か、自分の考えを的確に伝えられるか。そのあたりを見たい。
[応募者]この質問に対しては普段考えていることを答えましたが、思い返してみると、とっさには答えにくい質問だろうと思います。他社の面接では尋ねられた記憶がありません。
 
面接官はココを見た!
●JavaかCが得意で、Webアプリかオープン系の技術経験があるか。
●質問に対する答えが論理的で、的確に説明する能力があるか。
●仕事に対する自分なりの考え方がしっかりしているか。
 JavaかCを得意としていることが大前提。そのうえで、Webアプリ開発やオープン系システム構築の経験内容を具体的に問う。技術レベルを判定するため、ホワイトボードに実績の中からシステム概念図を書かせて説明させる。その際、システム全体の理解度と果たした役割を重視する。ヒューマンスキルでは、面接の全体を通じて論理的思考力と説明能力を見る。人物面では、仕事への取り組み姿勢やポリシーの有無を探る。
篠原さんはコレで決めた!
「ホワイトボードを使った説明を求められたのには、
軽い衝撃を受けました。
面接官からは開発の最前線にいるにおいがし、うれしくなりました」
 面接の場でホワイトボードにシステム概念図を書かせて、その説明をさせるという審査法には、ちょっと驚きました。常識にとらわれない社風なのかと興味が増しました。また、面接官の言葉の端々から、開発を外部に委託せず自社内で行っている様子を感じました。開発の最前線にいるにおいがしたのです。面接の最後で開発現場について突っ込んだ質問をしたのですが、丁寧に答えてもらえました。私の開発志向とのマッチングを確認できたことが大きな収穫でした。
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自社のシステム開発を手掛けて、完成後の運用の面倒まで見たい。お客さんの喜ぶ顔もいいけれど、同じ会社の仲間全員で達成感を味わいたい。篠原さんはそんな動機で転職活動を始めました。基本にあったのはステップアップの実現です。そんなエンジニアをこれからも応援していきます。
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