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話がかみ合わない、技術の習得が遅い、自分で考えないetc. 若手に悩む上司必見! 育て上手なエンジニアの条件 イラスト
第二新卒採用ブームで若手人材が転職市場で人気だ。だが、最近まで新人がなかなか入社せず、部下を 指導する経験も少なかった中堅世代は、若手指導に戸惑いがち。どうしたら若手をうまく育てられるの か、リーダーたちの悩みからその解決法を探る。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき イラスト/タラジロウ)作成日:05.02.09
 
Part1 若手人材ブームの陰で急増する若手育成に悩む上司エンジニア
「若手に悩んだことがある」は73% 企業の「教育力」に衰えはないか?
「十分理解していると思って任せたがちょっとしたことが抜けて事故につながりそうになった」「同じ失敗をなんども 繰り返すので、もしかしたら自分の教え方がまずいのかと悩んだ」……そんな声が、聞こえてくる。
 Tech総研が、2004年12月にエンジニア300人に行ったアンケートによれば、「若手・新人の指導や扱いに悩んだ経験がある」人が全体の73%。年代を追うごとにその比率は高まり、25〜29歳では60%なのが、40〜44歳では81%と増えている。その悩みの内容は、「コミュニケーション面での悩み」が40%と最も多く、「相手のスキル・能力や理解度に合わせた指導ができなかった」「なかなか相手が成長しない」「自分と同じレベルを期待しすぎてしまった」などが続く。 図1:若手・新人の指導法や扱い方に悩んだ経験は? 図2:若手・新人の扱い方、指導で失敗したと思うことは?
2004年12月 「Tech総研」がエンジニア300人に調査
 しかし、近年耳にする若手指導の悩みには、これまでとは違う特性も散見される。
「最近とある大手製造会社で聞いた話ですが、新人を工場や事業所に配属すると、ときにものすごいブーイングがあるのだそうです。新人の配属は会社の専決事項、若手はまずそこで修業するという考えが通りにくくなったと嘆く人事の声を聞きました」
 というのは、リクルートワークス研究所の豊田義博主任研究員だ。「以前の大企業にはOJTなど、若手を育てる“教育力”があったが、それが崩れつつあるのかもしれません。この何年か新卒採用を減らしたり、ストップする企業があり、会社に入ってもすぐ上の先輩とは10歳以上年が離れていることもマレではありません。これでは、なかなか話が通じないでしょう」。
 かつては若手人材にひと通り職場をローテーションさせ会社全体のイメージをつかんでもらったり、“飲みにケーション”を含むコミュニケーション重視で行われていた研修のスタイルが、近年は知識・スキル偏重になっていることも変化の一つだと、豊田氏は指摘する。さらに個々の組織が小さくなり、設計と製作の現場が離れるなど、技術者集団の変化も、若手とのコミュニケーションがうまくいかなくなる原因、とも言う。
「かつて若手への指導がうまくいっていたとしたら、それは個々のマネジャー、リーダークラスが優れていたという ことだけでないと思います。組織全体に中間層の厚みがあり、その中で暗黙知を含む知の共有の仕組みができていた からではないか。いまはその中間層が“歯抜け”になっており、さらに若手人材も現場の一次情報に接する機会が減って、経験やノウハウが伝わりにくくなっているのかもしれません」
 こうした若手とリーダー層とのギャップは、大きくいえば、日本企業における技術の伝承問題にもかかわってくる。
「そこに危機感を感じた企業のなかには、あらためてエンジニア育成工程表のようなものを作成して、技術者のスキルアップの段階を明示し、それに基づいた指導を強めるところも出てきました。ほっておいても若手が育つという時代では、もはやないかもしれませんね」と、豊田氏はいう。
Part2 どうして上手くいかない? 若手指導法「ここがNG!」
若手の指導に自信を失いがちなリーダーたち。もしかしたらふだんの指導法にとんでもない勘違いがあるのかもしれな い。実践的な企業研修で知られ、『強いリーダーはチームの無意識を動かす』(VOICE刊)などの著書があるエヌエルピーパワーズの橋川硬児氏に、リーダーエンジニアの悩みに回答してもらった。
■橋川硬児(はしかわ こうじ)氏 ■橋川硬児(はしかわ こうじ)氏
エヌエルピーパワーズ(株)代表取締役社長。広告代理店プロデューサーなどを経て、2000年携帯コンテンツ事業の(株)ザッパラス設立に参画。コンテンツ開発統括PLとして、自立・自己責任の現場主義と少数精鋭主義を追求。2年あまりで売上30億円の事業基盤をつくった。2003年10月、エヌエルピーパワーズ設立に参画し、トレーニングプログラムを経営者やリーダー予備軍に提供している。「スタッフは光、リーダーは影」が座右の銘。(http://www.nlppowers.com)
CASE1 ちょっと厳しく注意したら次の日から出社拒否。 どうして、こんなことぐらいで?/(32歳・Webシステム開発) イラスト
 20代半ばの転職者。真面目に仕事をするタイプだったので、試しに少人数のプロジェクトのリーダーを任せたら、どうもチームのコミュニケーションがよくない。一度呼んで話を聞き、「こうしたらいいのに」とアドバイスしたら、次の日から会社に出てこない。その理由が「社内の冷蔵庫に入れておいた僕のジュースを勝手に飲むヤツがいたから」。これからは、こういう若手の面倒も見なくてはいけないのかと、暗澹たる気持ちになった。
回答/プライベートやメンタル面への気配りも重要
 この場合は一種の被害妄想でしょうけれど、似たような経験が私にもありますね。最近の若手のコミュニケーションレベルには愕然としたものです。上司が若手を注意したり、叱るということを、役目としてやっているわけですが、若手のなかには叱られると、全人格を否定されたかのように激しく落ち込むタイプがいるんです。そういう人の扱いは十分気をつける必要があります。
 これからのリーダーは、メンバーからの報告を待って、その成長を遠くから眺めるというのではダメです。技術面だけでなく、プライベートやメンタル面にも積極的に関与していく必要があるでしょう。それだけ、チームの中の人間関係を熟知しておかないといけません。そのうえで人間のタイプ別のアプローチを変えていく。
 つまり、叱って育つ人と、褒めて育つ2つのタイプがいる。後者の褒めることが必要な人には、だましだましでもいいから、少しずつやらせてみて小さな成功体験を積み上げ、自信をもたせてやることが大切です。そこは徹底的につき合うしかない。たえず、自分を見てくれる上司や先輩がいるということだけでも、彼らは安心して仕事に取り組めるようになるはずです。
CASE2 わかったふりをするプライドの高い若手とのコミュニケーションに疲れた……/(35歳・金融系システムエンジニア) イラスト
 最近の若手は「スキルがないくせに、プライドだけは一丁前」という人が多いような気がします。最近、教育担当として第二新卒の若手技術者を指導したが、その場ではわかったような態度と受け答え。「理解が速いな」と思って、仕事をどんどん先に進めたが、そのうちそれまでに教えたことがほとんど身についていないことが露見した。頭で理解していたとしても、実際はその通りにはならない。だったらすぐにSOSを発してくれればいいのに。「聞くは一時の恥……」という言葉もあるぐらい。若いうちはわからないことは徹底的に聞いて覚えるものだと私もかつて教わったが、最近の子はどうもそうじゃないみたいだ。

回答/今の若手は「わかったふり」がうまい
 その通りですね。最近の若い人は、「わかったふりをする」のが上手ですよ。一種の自己防衛の反応かもしれないし、心の底で年上の言うことをバカにしているのかもしれません。「この人は自分のことを理解してくれていないな」と思い込むと、自分から丁寧に理解を求めるよりも、適当に「取り繕う」ような態度も示すことがあります。だからこそ、そうした表面的な態度にだまされてはいけないのです。本当にわかっているのかどうか、理解のプロセスを一つひとつ丁寧に確認することがまず大切。仕事で直面する問題点を迅速に過不足なく報告する訓練をさせることも重要な指導ポイントになるでしょう。

 人間、自分に不利な問題については過小または過大に報告する癖がありますが、現場からの報告に虚偽や過剰が含まれていると、リーダー自身のミスリード、ひいては組織全体の判断ミスにつながります。「悪いことは先に言う」という習慣、「ミスをしたらとがめるが、それはあくまでも仕事のためであって、おまえの人格を否定しているのではない」という考え方を、共有することが必要です。
 ただ、教える側も、「昔はこうだった、オレの若いときはこうだった」という過去の成功体験にしがみつくのはやめたほうがいい。そういう物言い自体が、若手の不信感を増幅させてしまいます。
CASE3 自分と同じレベルで指導してしまった結果、新人が音を上げてしまった……/(30歳・半導体設計エンジニア) イラスト
 これは私も反省するところしきりなんですが、新人に一つひとつこと細かく教えるのが面倒になって、つい「なんでわからないんだよ。もっと勉強しろよ」という言い方で接してしまいました。最初の数カ月は彼も頑張っていたみたいですが、そのうちとうとう根を上げて、「もっと丁寧に教えてくださいよ、僕は素人同然なんですから」と逆ギレ。そういえば、若手の指導の仕方について、これまで体系的に考えたり、教育されたりしたことがなかったな、と。相手のスキル・能力や、理解度に合わせた指導というのは、考えてみればとっても難しいことなんですね。

回答/仕事を「他人ごと」ではなく「自分ごと」にするきっかけづくり
 近年の開発スピードの速さや、教育のための余裕がないなどの事情で、新人技術者教育のベースがいきなり現場に任されてしまっているという現状があります。ただ、それでも現場のリーダーは若手を育てないと自分が苦しくなるだけなので、ここは踏ん張りどころ。
 まず新人に「先輩や上司が時間を割いて教えてくれるのは自分のためなんだ」「そのためにこそ自分はしっかり指導を受けるんだ」という意欲をもってもらうことが大切。これがないとすべては他人ごとになって、教える側も教えられる側も身が入りません。
 若手のモチベーションを引き出すきっかけになるのが、「キミはこれからこの会社でどういう仕事をしたいの?」という将来の夢やビジョンについての問いかけ。「○○できるようになりたいです」という本人の答えを引き出すことができれば最初の難関はクリアです。

 次に、その夢の実現のためには、いつごろまでに何と何をどういう順番で勉強し、そのうえでどういうスキルを積み上げていくか、つまりスキルの広がりと将来イメージを指し示すことが大切です。いわば、時間軸と空間軸でのキャリアプランを示し、それを「他人ごと」ではなく、「自分ごと」としてイメージしてもらうのです。
 ここで大切なのは、「○○できるようになれば、仕事もこんなふうに広がるから、すごく楽しくなるぞ」と、将来の苦しさよりは楽しさや彼にとってのメリットを強調することでしょう。苦あれば楽あり。未来への明るい展望が、若手のやる気を引き出します。
コラム/MeかWeか。リーダーはメンバーのタイプを見抜け!
 エヌエルピーパワーズ(株)でトレーニングディレクターを務める石井裕之氏は、NLP(神経言語プログラミング)などを実践するセラピスト。その経験をベースに社員のモチベーションやコミュニケーションスキル向上のためのノウハウを指導している。石井氏の唱える「Me―We」のタイプ分けとは――。
▼Meは自分が一番エライ、Weは協調型だが他人依存の面も
石井裕之氏
(いしい ひろゆき)


エヌエルピーパワーズ(株)
トレーニングディレクター。セラピスト。大卒後、SEとして外資系コンピュータメーカーに勤務。監修本に『なぜ、「頑張っている人」ほど、うまくいかないのか?』(フォレスト出版)、橋川氏との共著に『強いリーダーはチームの無意識を動かす』(ヴォイス)などがある。現在、『週刊ビックコミックスピリッツ』(小学館)にてコラム「ホムンクルスの目」を連載中。
 技術者に限らず、ビジネスパーソンの集団は、「Meタイプ」と「Weタイプ」という2つに分けることができます。Meとは「私」のこと。「冷静・冷徹」「自分をしっかりもっている」半面、「利己主義的」で「何を考えているかわからない」という印象を人に与えることもあります。たとえ外見的には謙虚に見えても、心の中では「ほんとは自分が一番エライ」と思っていて、人間関係においても「リードを取りたがる」タイプです。普段は無口なのに、自分の専門分野の話になるととたんに饒舌になる傾向があります。技術者に多いタイプです。
 もう一つの「Weタイプ」は「私たち」の意で、「つき合いやすい」「だれとでも友達になれる」タイプですが、逆にいえば「他人に影響されやすい」「感情の起伏が激しい」という面もあります。調和を大切にするため、「コイツには何をいっても大丈夫だろう」と思われがちですが、それゆえ人間関係の悩みが多いし、それが深刻化することもあります。
▼タイプによってアドバイスの仕方を変える
 部下の指導にあたっては、対象者がどちらのタイプなのかがわかると指導もしやすくなります。「Meタイプ」の人は相談にやってきても、実は自己アピールしたいだけということがあり、下手に細かくアドバイスするよりも、話を聞いてやるだけで自己解決できるケースが多いものです。反対に「Weタイプ」の人には、シンプルなアドバイスや励ましが効果を上げます。Weタイプにとっては、アドバイスの内容よりも、「アドバイスしてもらった」ということそのもので、気持ち的に満たされるからです。
 プロジェクトチームを構成するときも、全員を同じタイプにするのではなく、違うタイプを組み合わせたほうがうまくいきます。最もMeタイプらしい人物をリーダーにすえるのが理想的ですが、一つのチームに強力なMeタイプを2人置くとチームが分裂してしまうという危険性もあります。
Part3 若手をうまく育てるリーダーエンジニアの条件
褒められればうれしい、合理的でないと納得しない若手を理解
 最後に、若手をうまく育てられるリーダーエンジニアの条件を、考えてみよう。そのためには育てられる側の若手の意見も聞いてみなければならない。
 若手が「仕事に手ごたえを感じるとき」はどんな瞬間だろうか。若手社会人のためのキャリア支援サービスである、リクナビCAFEが22〜24歳の若手社会人309人に行ったアンケートから拾うと、「上司・先輩に褒められたとき」(45%)「業務評価が実際に高かったとき」(14%)、「自身の工夫やアイデアが認められたとき」(40%)、「他の人を頼らずに仕事を完結できたとき」(30%)、「プロジェクトなどが一区切りしたとき」(22%)などとなっている。
また、ソフト系技術者とハード系技術者とでも、いくつか特徴的な違いがある。(※右のグラフ参照)   反対に「仕事が辛いと感じる」のは「仕事の中身に意味が見出せないとき」(38%)、「理不尽な慣習を踏襲しなければならないとき」(38%)などだ。この傾向は職種を超えて共通である。

 もちろん給与が上がったり、昇進したときもうれしいには違いないが、それ以上に若手エンジニアは上司や先輩、あるいは顧客・ユーザーとの関係を重視していることがわかる。顧客もまた会社の外部にいて、若手を指導・育成する存在だとすれば、やはり指導者に褒められ評価される瞬間こそ、自身の成長の手応えを最もよく感じるときということがいえる。
仕事に手ごたえを感じるのはどんなときか?
出典:リクナビCAFE(2004年11月調査)
ソフト系・ハード系技術者(22〜24歳)119名を再集計
 さらに、若手人材は、指導の仕方の“合理性”にも敏感であることがこのアンケート回答からは見えてくる。逆にい えば「これは習慣だから、黙って仕事をしろ」というような“無意味性”“不合理性”が、若手からモチベーションを 削ぎ、仕事へのやる気をなえさせているということだろう。昔のような、体育会系的な根性論はもはや通用しない。先 輩や上司が、結局は自慢話に過ぎない過去の成功体験をひけらかすだけでは、もはや現代の若手エンジニアはついて こないのである。
将来のビジョンやキャリアの方向性を可視化させる
 むろん褒めるだけが能ではないし、手取足取りアドバイスすれば全員がやる気になる、というものでもないことは、 これまでの話からも明らか。重要なのは、若手の個性を一人ひとり理解しながら、それぞれの伸びようという意識を引 き出し、そのうえで将来にわたるビジョンやキャリアの方向性を可視化してやることではないだろうか。実際の仕事の なかでは、メリハリをつけた褒め方・叱り方をしながら、小さな成功体験を積み上げていくこと、そのことで自信をつ けさせることが大切だ。
 ただでさえ、対人コミュニケーションが苦手といわれる若手人材。ただ、振り返ればリーダー世代も新人時代にコミュニケーション力はなかったのではないだろうか。経験を積み重ね、上司・先輩の指導を受けるなかで培ってきたは ず。今の若手世代に非があるのではなく、教えられる機会が激減しているところに本質的な課題があるのではないだろうか。彼ら もこちらが一歩歩み寄れば、必ず心は開いてくれるはずだ。そのとき、若手エンジニアが思わず耳を傾けたくなるよう な、豊富な技術体験やノウハウを、リーダーの側が用意しておくべきことは、言うまでもない。
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「若手をうまく指導できなかった」結果、若手の指導をあきらめた経験がある上司エンジニアはなんと3割。専門技術と併せて現場の指導をしなければいけない20代、30代の中堅エンジニアたちの悩みは昔も今も深刻なようです。技術の「伝承」の危機が叫ばれるなか、若手への技術指導、コミュニケーション力のテーマは今後も探っていきたいと思います。
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