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本格的な製品設計開発を志すメーカー経験1年の若手エンジニアが転職

最先端のモノづくりに参加するためトランスコスモスへ

トランスコスモスは最先端のIT技術を駆使して、さまざまなアウトソーシングサービスを手掛ける。そのひとつがエンジニアリングソリューション(ES)。製造業への製品開発工程における、設計支援・シミュレーションによる構造解析支援サービスだ。構想設計から量産化までをカバーする。今回は、その分野へ応募した若手エンジニアを紹介する。
(取材・文/須田忠博 総研スタッフ/高橋マサシ) 作成日:05.01.09
トランスコスモス
応募したエンジニア 企業の面接担当者
菅野さん
菅野隆明さん
(当時24歳)
庄司さん
開発運営サービス総括
採用・研修部 採用課
ESサービス担当
庄司道郎氏
当時の職種
開発技術者(前職。退職して転職活動をした)
募集職種
3DCADエンジニア
業務内容
光通信用部品光カプラの製造歩留まりを向上させる、製造方法の開発と信頼性の評価。
仕事内容
主に自動車・航空・家電メーカーの開発現場での3DCADによる基本・詳細設計支援、CAEによる構造解析支援など。
職務経歴
大学院修士を中退後、光通信機器メーカーに1年勤務。光分岐モジュールの不良品・原価低減、光スプリッタの小型化開発などを担当。
応募資格
理工系の大卒以上、3DCADを使用しての開発経験、構造・流体解析でのCAE経験、製造業での生産技術・実験の経験など。
志望動機
最先端のモノづくりの現場で本格的な開発設計をしたい。先々は解析業務にも携わりたい。
募集背景
受注量の増加に伴い、ESサービス部門を増強するため。
面接の流れ
ESサービス本部の採用担当者と技術を理解するサービス責任者の2人で選考する。
ESサービス本部の採用担当者が1対1で面接する。所要時間は30〜40分。1時間の筆記試験も行う。
ESサービス本部の責任者と採用担当者(1次面接官とは別)の2人で面接する。所要時間は30〜40分。
1週間以内に、通常はメールで通知する。
【通過率:約9割】
【通過率:約7割】
Part1
職務経験と具体的な実務内容
生産技術の経験も採用ポイントになる
庄司:
 本日はわざわざお越しいただき、ありがとうございます。よろしくお願いします。
菅野:
 こちらこそ、よろしくお願いします。
庄司:
 では早速ですが、【Point1】職歴を簡単にご説明ください。
菅野:
 私は、2004年5月までの1年間、○○○という会社に勤めました。光通信機器メーカーです。最初の半年間は生産技術課で、製品の低価格化と高品質化を目標にしたプロジェクトに参加しました。そのあとで開発課に異動し、生産技術の知識を生かしつつ新製品の開発に携わりました。
庄司:
 1年の間に2つのタイプの仕事を経験したということですね?
菅野:
 はい、そうです。
庄司:
 【Point2】生産技術の仕事は、どんな製品のどんな部分についてでしたか?
菅野:
 光通信で使われる光分岐モジュールの、主に光コネクタの研磨不良低減と作業工数の低減です。光分岐モジュール製造における原価低減プロジェクトにも、メンバーとして参加しました。
庄司:
 菅野さんが具体的に任された仕事はどのようなものでしたか?
菅野:
 物理学科卒ということもあり、不良という現象が起こる原因までさかのぼって、不良品を少なくする仕事です。原因を見つけて対策を講じるわけです。
庄司:
 そうすると、製造現場の人と直接やり取りをしたのですね?
菅野:
 はい。製造従業員の意見を取り込みながら、不良率を見つつ改善策を検討しました。
庄司:
 その改善作業の中では、何かの機器を使いましたか?
菅野:
 機器を使うこともありましたが、主に不良が出るごとに従業員に手書きでチェックをしてもらい、パソコンへ入力して点数・グラフ化するやり方でした。それによって、一つひとつの不良現象の原因を分析するわけです。
CADスキルがなくとも開発経験は評価
庄司:
 では、そのあとで担当した開発業務についてうかがいます。光スプリッタの開発に携わったと職務経歴書にはありますが、実際に担当した開発業務はどんな内容でしたか?
菅野:
 【Point3】パッケージの小型化がテーマでしたから、試作品を作り、支障を調べながら部品を変えて、完成型を目指すというものでした。特に私はファイバーでできた光分岐の部品を担当したのですが、ファイバーを伸ばすためにバーナーの火であぶるんです。そのバーナーの条件を適合させる実験を繰り返しました。
庄司:
 その製品はラインで組み立てるというものではないのですね?
菅野:
 いえ、従業員の手で作る部品もあるということです。
庄司:
 菅野さんはそんな部品を条件別に試作して試作ユニットに組み込み、性能を検証したと?
菅野:
 はい、そうです。そうやって一応の試作品が完成したら、信頼性評価に移ります。
庄司:
 どんな信頼性評価を行いましたか?
菅野:
 衝撃、高・低温、湿度などの実験解析です。
庄司:
 なるほど。ということは、2Dまたは3DCADでの設計経験はないのですね?
菅野:
 【Point4】はい、残念ながらCADによる設計の実務経験はありません。
Point1
[面接官]CADでの設計経験、またはCAEでの解析経験がある人は、最初にきちんと話していただきたい。2つの経験の有無が採否に直結するものではありませんが、少なくとも加点要素にはなりますし、このあとで聞く質問の内容にも影響します。
また、CADの実務経験がなくても製品設計開発の実務経験や、学校で工学系の専門知識を学んだ方は、ぜひアピールの材料としてお話しいただきたい。スキルに合った職種を検討します。
[応募者]面接の最初に職務経歴を聞かれることはわかっていましたから、事前に練習しました。細かな点は、短い時間で説明しきれるようにと、キーワードを整理していたのです。おかげで、本番ではスムーズに話すことができました。
Point2
[面接官]3DCADエンジニアの採用なのに生産技術の経験内容をチェックしたのは、当社では生産技術のサービスも行っているからです。生産技術なら、特定の製品に関する狭い範囲の経験であっても、全くの未経験者とは相当の違いが出ます。それは、開発の実験評価についても同様で、試作品の実験評価もまた当社のサービスのひとつです。
 入社後、当面は研修を経て3DCADエンジニアとして活躍してもらいますが、将来は生産技術や実験評価の仕事をしてもらう場面があるかもしれません。その意味でプラスに評価できるのです。
Point3
[応募者]このあたりの経験はしっかり説明しなければと思いました。1年間の勤務だったとはいえ、コストダウンを図る生産技術と開発実務の両方で、それなりの仕事をしてきたことを伝えたかったのです。
Point4
[面接官]3DCADエンジニアの採用ですから、この答えだけを聞くと印象が悪い。ただ、菅野さんは短い勤務期間ながらも、生産技術の経験と設計以外の開発経験に見るものがある。若手の経験としては評価すべきものです。ちなみに、1次面接を通過するかどうかは、職務経歴の内容をチェックし終えた時点で5割方決まっています。
Part2
転職理由・志望動機・入社意欲

CAD開発の次は解析業務に携わりたい
庄司:
 ところで、菅野さんは進学して間もない大学院を中退し、○○○に入社したと経歴書には書かれています。これはどうしてですか?
菅野:
 家庭の事情が変わったからです。春先から急いで職探しをして、入社を決めました。
庄司:
 その○○○を1年で退職したのはなぜですか?
菅野:
 理由は2つあります。ひとつには、生産技術課から開発課へせっかく異動になったのに、新製品開発がストップされ、業務が既存製品のコストダウンばかりになってしまったことです。私の希望としては、とにかく開発をしたいのです。
 もうひとつの理由は、会社自体の存続が危うくなったからです。企業グループ内での大幅なリストラも始まりました。その一方で、幸にも家庭の事情が解決して、私が自由に動いてもよくなっていました。
庄司:
 わかりました。【Point5】それでは、当社に応募した動機を聞かせてください。
菅野:
 クライアント企業のエンジニアと一緒に本格的な開発に取り組むことができ、エンジニアとして成長できると思うからです。また、私は学生時代に解析シミュレーションを勉強しており、解析というものにとても興味があります。御社ではCAE解析もサービスのひとつにしていると知り、入社後にCAD技術をマスターしたら、先々は解析のほうも手掛けたいと考えています。
アウトソーシングサービスと人材派遣との差
庄司:
 【Point6】菅野さんは当社について情報をおもちのようですが、何によって得ましたか?
菅野:
 ひとつには人材紹介会社の担当者からで、もうひとつには御社のホームページからです。
庄司:
 【Point7】当社はアウトソーシングサービスの会社です。特にESサービスの場合は、お客様企業の施設へ出向き、常駐して委託された開発業務を行う関係から、外見的には登録スタッフによる人材派遣に似ています。両者の違いはわかりますか?
菅野:
 人材派遣はある種定型的な業務のお手伝いであり、雇用体系も異なります。
庄司:
 そのとおりです。【Point8】当社のESサービスはお客様企業に出向いて仕事をするのですが、その仕事内容はお客様企業のエンジニアと変わらず、高いレベルの設計・開発系の仕事です。
Point5
[面接官]転職の理由、当社への志望動機、入社後に希望する仕事。この3要素をワンセットで判断します。筋が通っているか、開発への志向性が強いか、当社への入社の意思が真剣かなどを見るのです。
Point6
[面接官]当社への関心の強さは、応募の真剣さと正比例すると考えています。当社についてよく理解したうえで入社した人は、仕事への取り組み姿勢が違いますし、定着率もよいのです。
Point7
[面接官]開発分野のアウトソーシングサービスと、エンジニアの人材派遣を混同している応募者が多いので、確認のための質問です。当社のエンジニアがメーカー系のお客様企業のところで仕事をするのは、新製品開発においては機密保持の必要性があるからにほかなりません。
Point8
[応募者]トランスコスモスのESサービスが人材派遣と違うことはわかっていましたが、このようにはっきり語っていただいたのは収穫でした。入社の意欲が増しました。
Part3
希望する仕事内容と人物素養

自動車と航空機への興味、解析経験が評価に
庄司:
 当社に入社したら、具体的にどんな仕事をしてみたいですか? あくまでも希望で結構です。
菅野:
 【Point9】自動車や航空機の開発をしたいです。それと、大学時代に興味をもった解析、特に流体の解析をするような仕事もしてみたいと思っています。
庄司:
 大学で研究したテーマはどういうものだったのですか?
菅野:
 ゲルマニウム溶液の原子の運動です。拡散係数の測定をしました。地上で実験すると対流の影響が出ますから、シミュレーションで実験し、解析するわけです。
庄司:
 そのために既存の解析ツールを改良したとか、独自にプログラムを組んだとか、そういう経験はありますか?
菅野:
 【Point10】『Winmasphyic』という、原子運動をシミュレートするソフトを使いました。ただ、検証し切れない部分があったので、要素を取り出してプログラムを作り、解析を行いました。
勤務地にこだわるより仕事に集中したい
庄司:
 ところで今、菅野さんは×××に親御さんとお住まいですね?
菅野:
 はい、そうです。
庄司:
 当社のサービス地域は関東だけでなく、中部や関西など全国に広がっています。【Point11】場合によってはプロジェクト優先で転勤もあり得るのですが、大丈夫ですか?
菅野:
 まったく問題はありません。家族の了解を得ています。
庄司:
 【Point12】「まったく問題がない」というのは、どんな思いからなのでしょうか?
菅野:
 経済的には自宅から通勤できるに越したことはありませんが、とにかく仕事に熱中するという時期があってもいいと思っています。
(このあと、庄司氏は性格の自己分析、入社希望時期を聞き、菅野さんからの質問を促した)
 
Point9
[面接官]ESサービス事業で同業他社より明らかに強いのは、まさに自動車と航空機のメカ設計開発の分野です。その開発を望む応募者については、マッチングという観点から1ポイントプラスの評価をします。
Point10
[面接官]この話を聞けたのは有意義でした。解析の基礎学習ができているとわかっただけでなく、解析への興味がうわべのものではないと確認できたからです。
Point11
[面接官]首都圏から離れたくないという応募者は割と多いもの。その場合には必ず理由を尋ねます。ただ、「転勤したくない」「転勤できない」という回答が採否に及ぼす影響は、以前に比べて小さくなりました。地域ごとに採用できる体制が当社で整い、転勤の頻度が下がってきているからです。
Point12
[面接官]「転勤は可能」という返答があっても、そのまま終わりにせず、突っ込んで理由を尋ねます。人物面の判定材料を得られるケースが多いからです。菅野さんの答えからは、正直さと前向きさがうかがえました。
 
面接官はココを見た!
●学校での勉強や企業での職務経験から見て、技術適性はあるか。
●真剣な入社意欲はあるか。入社後の希望業務は明確か。
●必要なコミュニケーション能力はあるか。
 技術適性については、学生時代に学んだ製図・読図、力学などの基本的な技術知識と、実務経験を通じて得た技術スキル、開発ノウハウ、商品知識などをチェックする。CAD設計や解析の経験があれば、その内容とレベルを判定する。入社への意欲と入社後に希望する業務内容はワンセットで判断し、自社への関心度や開発志向の度合いを指標とする。ヒューマンスキルではコミュニケーション能力が必須の条件。面接全体を通じて判定する。
菅野さんはコレで決めた!
「いろいろな開発に携われる。
CADからCAEへとステップアップしていける。
面接を通じてそのことに納得ができました」
 入社したらCADでの設計スキルを身につけて、いろいろな開発に携われる。このことが面接を通じて確認できました。解析へ進むにしても、CADからCAEへのステップアップがその前提だとわかり、入社への意欲がわきました。また実際の面接では、私のほうから研修制度や事業展開について質問をしました。その答えを聞いて、エンジニア個々人の成長と事業ビジョンを見据えた企業であるとの印象をもちました。
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
ここ数年で、派遣社員として、あるいはアウトソーシング企業で客先常駐社員として働くエンジニアが増えてきました。さまざまな雇用形態が出てきたわけですが、大切なのは菅野さんのように、そのシステムを理解すること。これからも多様な面接現場を取材します。

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