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SEも半導体技術者も「何の仕事してるの?」に、もう困らない! イラスト
決め手は例え話☆エンジニアの仕事
ソフトウェア開発、半導体開発、機械設計……。技術にかかわるエンジニアの仕事はなかなか人に話すのは難しい。特に相手が技術を知らない場合は、なおさらだ。でもどんな人に聞かれても、わかるように説明したいのが本音。しかもこのテクニックは転職のシーンでも生きてくる。そこで、技術素人にもわかる仕事の説明術を探ってみた。
(総研スタッフ/関洋子 イラスト/アライ・マサト) 作成日:05.01.19
Part1 エンジニアの仕事は誤解されやすい!?
証言 ネットワークの構築・設定に携わる 福本弾さんの場合
福本弾さん
株式会社ネットブレインズ
ネットワークシステム
技術部
福本弾さん(26歳)


文学部英文科卒。大学3年生のときにインターンシップ制度を利用し、ITの世界に触れる。卒業後、SI企業に入社、エデュケーション部でトレーナーを1年半務める。ネットワークの構築に携わるため転職を決意。IP電話の販売会社、ISPなどを経て、2004年ネットブレインズに転職。現在に至る。
●システムエンジニアはパソコントレーナー?
「ネットワークやシステムを作る仕事をしているんだよと友達に言ったら、パソコンの操作はもちろん、表計算やワープロソフトなどの使い方について聞かれたことがありますよ。パソコンの専門家、いわゆるパソコントレーナーだと誤解されたようなんです。別に表計算ソフトやワープロソフトの使い方に詳しいわけじゃないんだけど……」

 そんな福本さんは現在、自分の仕事を説明する際には、説明する人が知っていることを例に挙げて説明するようにしているという。
「例えば友達には、普段自宅や会社でインターネットを使ったり、データベースを使ったりしているでしょ? そういう環境を用意するのが私の仕事だと紹介しています。まあ、インターネットやデータベースなら知っているという条件は付きますけどね」
●相手の視点に合わせた説明を
 福本さんは人に説明するのは苦にならないタイプ。というのも学生時代、インターネットマンションシステムを提案する会社でインターンシップを経験した。そのとき、マンションの住民にインターネットについての説明を行った経験があるからだ。1999年当時は「インターネット」は今ほどに普及しておらず、知らない人も多かった。そういう環境で知らない人に説明するコツをつかんだという。そしてそれが今に生かされている。

「やはり専門用語はなるべく使わずに普段の生活でなじみのあるものに結び付けて説明することが、一番理解してもらいやすい方法だと思います。また、その人なりのイメージを利用するとさらに効果的です。例えば何か専門用語を説明する場合でも、一度話しただけでは伝わらないことも多いですが、相手はなんとなくこんなものかなとイメージを持つと思います。そのイメージを使って言い直したほうが、自分の言葉を押し付けるより理解してもらいやすくなりますね。でもやっぱり、エンジニアの仕事を説明するのは難しいですよね」
 福本さんに限らず、「仕事を説明したところ誤解された」「説明してもわかってもらえなかった」という経験のあるエンジニアは多いはず。ではなぜ、エンジニアの仕事は理解されにくいのか。それは仕事に「技術」や「技術用語(専門用語)」が付きまとっているからだろう。ではどうすればうまく、自分の仕事が説明できるのだろうか。
Part2 目からウロコ? エンジニアたちの説明術
 今回、Tech総研では「彼女や家族など、技術のわからない人たちに自分の仕事をどのように説明していますか」という調査を行った。すると大半の人が、「何かに例える」という結果が得られた。どんな職種をどのような例えを使って説明しているのか。見ていこう。
身近なものに例える系
■ソフトウェア・ネットワーク
システム開発を建築業界に例える。SEは家を建てるときに図面をひく人。プログラマは実際に家を建てる人というふうに説明する。(汎用機システム開発・40歳)
ソフトを、コンピュータを使うための手足に例える。それを作っていると説明している。(Webシステム開発・38歳)
大規模ネットワーク管理を地球防衛軍に例える。地球防衛軍は宇宙からやってきた怪獣が暴れる前に倒すため、世界の平和が守られる。ただし、怪獣の倒し方は誰も知らない。自分で見つけるしかないという難しい仕事だと説明している。(ネットワーク設計・39歳)
■電気・電子・機械
制御設計を脳や心臓に例える。筐体部分(目に見える部分)を人の体に例え、それを動かすための部分(制御・プログラム)を脳や心臓に例えて説明。(制御設計・34歳)
プラモデルの説明書を作っていくような作業をしている、と説明している。(プロセス開発・40歳)
センサーの研究開発を目や鼻に例えている。「〜を感じて(PCの)画面にその様子を映すことができるもの」とか、「人の目のようなもの」とか「鼻のようなもの」と説明して理解を得た。(研究開発・41歳)
■化学・素材
化学品の研究開発をシェフに例える。いろいろな調味料(薬品)を調合して希望している味(モノ)を作るため。失敗したら捨てればいいので、食べ物を作るより気が楽な仕事だと説明したことがある。(素材開発・39歳)
薬のスクリーニングは砂金採取のようなものと説明している。(創薬研究・28歳)
最終製品に例える系
■ソフトウェア・ネットワーク
実際に○○銀行のモバイルバンキング画面を見せ、「こういうモノを作るのが私の仕事だ」と言っています。(Webシステム開発・28歳)
イメージしやすい車の製造ラインを例にとり、ボディーを組み立てるという動きを機械に命令する仕組みをつくっているんだよと説明している。(ファームウェア開発・31歳)
実際に電子メールを使ってもらい、こうやってメールが滞りなく送受信できるような環境を整えるのが、僕の仕事だと言う。(ISPインフラ設計・34歳)
■電気・電子・機械
具体的な商品名を挙げて、細かい部分まで触れず、これを作っているという。(機械・機構設計・36歳)
テレビのリモコンを例にとり、「このボタンを押して、こうやるとチャンネルが変わるでしょ。このような仕組みにするための回路をつくっている」と言っている。(回路設計・40歳)
金型とは何かをパイプいすなどを用いて知ってもらう(このパイプはどうやって曲げるのかというように)。そしてそれを製作していると説明する。(金型設計・30歳)
身近な最終製品を例にとり、その品物がどのように作られるか説明する。そして、その中で自分がどの部分を担う仕事をしているか説明する。(機械設計・44歳)
■化学・素材
化粧品メーカーに在籍しているため、実際の商品を前に、大きく中身と包材に分けてその成り立ちを一から説明していく。(素材開発・38歳)
比較的なじみのある最終製品の名前を出し、その一部に使われる材料であると説明する。(半導体素材開発・33歳)
実際に体験させる系
■ソフトウェア・ネットワーク
実際の成果物(Webサイト)を見せて、「こういうのを作っている」と説明し、HTMLを書くなど、簡単なホームページを作ってもらう。(Webシステム開発・32歳)
■電気・電子・機械
電話の原理を理解させるため、糸電話を使った。なぜ、音が伝わるのかを理解させた。そのうえで、デジタルという原理を文字に置き換えたり数字に置き換えたりして、その伝えるスピードがそれだけ速いからこそ、時間差もなく相手に聞こえることを教えていた。(研究開発・43歳)
■化学・素材
方法をマニュアル化して実際にやるところを見せる。(素材開発・40歳)
図式化する系
■ソフトウェア・ネットワーク
システムの仕組み図を描いて日常のものに置き換えて説明する。(ミドルウェア開発・31歳)
■電気・電子・機械
社内の発表で、作成した資料を見せる(具体的に自分が設計した設備の写真や機能を説明したもの)。(生産技術・37歳)
実際に回路図や基板を見せながら(会社の守秘義務を考慮した範囲内で、携帯で写真撮影したもの)を見せ、人の進化論のように順をおって説明する。(回路設計・36歳)
■化学・素材
模式図を示したうえで、各部分の機能について、身近な例を出しながら説明する。例えば、噴射装置なら霧吹きの原理などを教えながら説明する。(半導体素材・37歳)
Part3 技術のわからない人に仕事を説明するコツ
技術と仕事を分けて説明しよう
 まず、今回300人のアンケートでもわかったのが、説明のレベルが人によって違うこと。例えばSEを「形ある目に見えないものを作り出す仕事である」と説明することもできる。しかし、これはSEという大枠を説明しているに過ぎず、実際の仕事のイメージを連想することはできにくい。

 一方、携わっている技術(もしくは製品)から説明するという方法も考えられる。例えば「ネットワークのデータの流れは交通手段のようなもの。車もあれば電車もあるし、電車の中にも高速な新幹線がある。車であれば、ナビゲーションを使用して目的地までのルートを知っていることもあれば、道路標識に従って目的地まで行く方法もある」というように技術を説明し、その後に「こういうモノを作っているんだよ」というようにすると、「ネットワーク設計」という仕事をイメージしやすい。
 上記の例でも示したとおり、何か身近なもの、目に見えるものに例えて説明すること。そのとき、必ず技術と仕事(業務)は分けて説明することが重要だ。
自分なりの例えを編み出して理解を得よう
 Part2でも紹介したように、エンジニアの仕事はいろいろなものに例えられる。素材や部品、システムなど、実際には見えない部分のものであっても、身近なものに例えたり、具体的な製品例を出したりすることで、仕事への理解が深まる。その際には、「どんな目的」でその製品の「どの部分」に携わっているのかも説明したい。
 その際の注意事項として、「専門用語は使わない」「相手の理解にあわせた説明を心がける」は鉄則。

イラスト
 自分なりの例え術を編み出し、携わっている仕事をうまく説明できれば、彼女(彼氏)や友達、家族の理解は深まる。そしてあなたの評価もきっと高まるだろう。もちろん、守秘義務の範囲内でというのは条件付きだが……。
オブジェクト指向で複雑なものをやさしく説明
萩本順三氏
株式会社豆蔵
取締役
萩本順三氏


「難しい技術をよりわかりやすくすることが、挑戦すべき難しい技術なのだ」ということをモットーに、豆蔵にてビジネスとITをつなげるためのOp'enThologyという方法論(いわゆる開発ガイドライン)を開発中。著書『初歩のUMLモデリング』ほか。
 私たちが夢を見るとき、どんなイメージが現れますか? おそらく夢の中であっても、現実世界と同じような「モノ」をイメージしているはずです。これは、人間の思考が「モノ」を単位として思考しているという証明です。

 したがってエンジニアの仕事を、技術はもちろん業界を知らない人に説明する場合は、「モノ」に置き換えて説明すると連想しやすくなります。といってもSEの仕事をパソコンやソフトウェアなどをまったく知らない人に説明するのは至難の業になりますけど……。私の親は私の仕事をずっと「機械」をつくることと思っていましたから。
 この「モノ=オブジェクト」を単位とする思考法が、いわゆる「オブジェクト指向」です。複雑なものをやさしく説明するには、オブジェクト指向を取り入れることです。

 エンジニアはどうしても、機能から説明したり考えたりしてしまう傾向があります。しかし問題が複雑になればなるほど機能だけを取り上げて説明すると、人に理解させにくくなります。テレビを例に説明しましょう。テレビにはさまざまな機能があります。その一つひとつの機能を軸に、テレビを連想することは非常に難しい作業です。しかしテレビを主体に機能を連想するのは、容易にできますよね。つまり私たちは「オブジェクト」を中心にすると、今までの経験や知識が生かされ、それから連想することによって、機能を理解しやすくなるのです。

 実は、私の思考法もオブジェクト指向を応用しています。それは、物事を「目的」「概念」「実体(機能)」の3段階に分け、それらをつなげて考えることです。決して、技術を理解する際に、技術用語に踊らされてはいけません。例えば「分散システム」を構築するのであれば、「どうやって分散するか」ではなく、「何のためにこれが必要なのか(=例えば分散されたリソースをつなげるため)」から考え、概念(コンセプト)と、現実機能をつなげる努力をするのです。このように目的やコンセプトから考えることで、利用目的が明確となった真の機能が見えてくるはずです。目的ベースの思考法を身につける訓練をすることで、人に目的ベースで機能を説明できるようになります。これが私の説明能力をアップする秘訣です。
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関洋子(総研スタッフ)からのメッセージ
実は私も、自分の仕事を説明するのは苦手です。「記事を書いています」というのは簡単ですが、「Tech総研」を説明するのが難しい。「エンジニアのための情報発信サイト」などといったりもしますが、Webサイトをよく知らない親からすると「??」です。みなさんは自分の仕事をどう説明していますか。「こんなふうに説明するとわかってもらえる」というのがあれば、ぜひ、教えてくださいね。

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