• はてなブックマークに追加
  • Yahoo!ブックマークに登録
給料安くても、スーツで8:00出社でも、たまにはイイことあるサ!
周りはみんなお客サマ! 常駐SEの泣き笑い人生劇場
「客先常駐」――システム業界によくある取引先に常駐する業務形態。自社にいたらあり得ない職場の悩みもあれば、客先にいるからこそ身につくキャリアもある。常駐SE200人に聞いた、その赤裸々な泣き笑いシーンを紹介する。
(取材・文/川畑英毅 総研スタッフ/宮みゆき イラスト/きたみりゅうじ) 作成日:04.12.15
Part1 常駐SE200人に聞いた「客先で泣いて笑った」仕事の現場
自社で勤務するのと比べて「仕事の責任範囲」はどのくらい?
 エンジニアにとって、「どれだけの仕事を任せてもらえるのか」は、非常に大きな問題。自分が責任をもってできる仕事の範囲はどこまでなのか――その内容によって、仕事のやりがいも変わって来るし、自分が望む将来に向けてスキルを磨けるかどうかにもかかわってくるからだ。
 もちろん、自社で働いていても問題は同じなのだが、「お客様」の会社に出向いて仕事をしている常駐SEの場合はどうか。Tech総研では、25〜39歳の常駐SE200人にアンケートをとってみた。 客先での仕事の責任範囲
 仕事の責任範囲について、「完全に任されている」と答えたのは14%、「ある程度は任されていると思う」は48%だ。合わせて約6割以上の常駐SEが、任される仕事の責任範囲にはある程度満足を覚えているようだ。自社で勤務しているときより責任範囲の広い業務を任されることにやりがいを感じる常駐SEも少なくない。
 もちろん、「客先の指示がなければまったく動けない」という常駐SEもいる。そんな場合、「次の常駐先でいい会社にアサインされることに期待する」という常駐SEもいる一方で、「ある程度の仕事の自由度を勝ち取れるよう折衝中」という積極的な姿勢の常駐SEも見られる。それもまた、交渉力を磨く試練といえるかも?
客先との壁や、待遇差を実感するのはこんなこと
 常駐している先は「お客様」。仕事をある程度任されているとはいえ、その待遇には格差を実感することも多いようだ。アンケートで聞いた「客先企業で働く社員との待遇の差を感じるのはどんなときか」についての答えをまとめてみた。(※複数回答)
1位 情報共有を制限されている (48%)
 給与面での格差とほぼ同率、むしろそれをわずかに上回って、「情報共有の制限」を挙げている人が一番多かった。セキュリティ上仕方ないという納得感もある一方、情報がもらえないことでの「仕事のやりにくさ」や、「顧客との距離感を感じる」ことが大きな理由であるようだ。
「客先でのメール、ファイルなど、閲覧制限がある」(27歳/常駐1年)
「配布物が自分だけもらえない」(30歳/常駐3年)
2位 給与格差が大きい (47%)
 仕事で責任を持って任される――喜ばしいことではあるが、かえって浮き彫りになってしまうのが給与格差。「客先社員と同等、場合によってはもっと仕事をしているはずなのになぜ?」というわけだ。また、自社の上司にきちんと評価されているのか、その基準があいまいであることも、この不満のベースとなっていることが多いようだ。
「同じ仕事をしているのに、客先との給与・賞与が全然違う」(33歳/常駐5年)
「直属の上司が自社にいるので、成果が評価につながりにくい」(36歳/常駐8年)
3位 勤務時間の格差を感じる(40%)
 客先の体制に合わせて勤務時間が決められているケースが多いが、自社での勤務時間帯が当てはめられることもある。客先がフレックスタイム制や時間差通勤制なのに、自分は……となれば、不満を感じるのも致し方ない。また、仕事が立て込んでくると、そのしわ寄せで、早めに帰る客先社員を横目に残業ということも。どうしても存在するのが客先との力関係。「これ、やっておいて」と言われ、面倒な仕事を押し付けられるケースも多い。
「客先と休日が違うので、長期の休暇が取りにくい」(28歳/常駐2年)
「客先のメンバーのほうが早く帰ってしまう」(27歳/常駐3年)
「客先はフレックスなのに、朝8時に出勤しなければならない」(27歳/常駐3年)
4位 服装の不自由さを感じる (29%)
 特に顧客(客先にとっての)に出向く必要のない部署であれば、客先での規定にあわせてカジュアルな服装が許されることもあるが、一方では、「お客様のところに行くのだから」と、それが認められないケースも多い。だが、「むしろどんな格好をすればいいか、あれこれ悩まなくてすむスーツのほうが、ずっと楽」という声も。
「客先と自社でスーツとカジュアルに服装を変えなくてはいけない」(29歳/常駐1年)
5位 客先とのコミュニケーション (18%)
 同じ目標に向かって協力して頑張っているからと、会社を越えて、隔たりなく接してくれるのは理想的な客先。どうしても「上下」の関係、不自由な思いをすることもある。特に、仕事上必要な情報さえ与えてもらえない場合、その不満は大きい。また、ふだんは隔てなく接してくれるのに、行事や飲み会では員数外……というのも寂しい話。
「客先の社内行事に参加しにくい」(32歳/常駐2年)
「敬語でしか話をしてくれない。もっとストレートに話したい」(30歳/常駐1年)
「休憩がとりづらく、タバコが吸いづらい」(28歳/常駐1年)
Part2 常駐形態で違う!? 客先で「ストレス」「やりがい」を感じる瞬間
 ひと言に「常駐」と言っても、形態にはいくつかのバリエーションがある。密接な関係にある客先に専任で長期常駐するケースや、プロジェクト単位で派遣されるケース、親会社や関連会社に派遣されるケースなど。また、派遣される人数もさまざまだ。ここでは、代表的な3つのケースごとに、実際に働いているエンジニアの生声を紹介しよう。
CASE1 [常駐専門サービス型] 派遣された段階で、こちらは「プロ」意識を T.Mさん(26歳)
 常駐している会社には、以前にもほかの仕事で来たことがあり、その時に知り合った部長さんから、「ぜひまた来てほしい」という要請があり、現在の仕事をしています。
 仕事の自由度も高く、要件定義から自分でやって、客先の人と話し合って仕事を詰めていく。派遣されて行った段階で、向こうにとってこちらは「プロ」。それなりのランクで見てくれるし、仕事も割り振ってもらえる。それは一面では厳しいことかもしれないけど、やりがいはあります。  
 もちろん、それは行った先の環境がどうか、という運もあると思います。同期は20人いますが、いろいろ話を聞いたりしてみると、私が一番恵まれた環境にあるかも。私の場合は、最初に行った時に3年先輩の人が一緒だったんですが、その人が、何もなければすっかり任せてくれるし、困ったときにはしっかりサポートしてくれるといった調子。個人の特性もありますから、まったく一緒というのは無理ですが、その先輩が客先での仕事環境を整備してくれたおかげで力がつきましたね。その人は僕にとって目標です。  
 自社の上司からは「そろそろ別の客先で経験をしてみるか」と言われています。今の常駐先で得ている業務権限は、その先輩たちの努力があってのこと。新しいところへ行ったなら、今度は僕自身が、そういう環境と人間関係を築きたいと思っています。
T.Mさん
■T.Mさんのプロフィール
常駐先での仕事内容:
携帯電話システム開発会社の通信ネットワークシステム構築
役割:プロジェクトリーダー
常駐人数:2人
期間:3年以上
[常駐専門サービス型]SEが 「ストレスを感じるとき」 [常駐専門サービス型]SEが 「得したと思うとき」
「『金払ってんだから』と、強引に契約外の仕事まで押しつけられた」(33歳/常駐4年)

「エンドユーザに本当は別会社の社員であることをバレないように振る舞わなくてはいけない」(35歳/常駐4年)
「客先の会社の社員しか利用できないサービスが受けられる」(33歳/常駐2年)

「規模の大きいプロジェクトの一員として働けること」(35歳/常駐3年)
CASE2 [プロジェクト単位派遣型]自社以外の交流範囲が広がった! S.Hさん(28歳)
 派遣される先はソフトウェア系の会社が多いのですが、今回は初めて銀行のシステム部門。プロジェクト単位の派遣になるので、常駐の期間は短いときは1ヶ月、今回はシステムの規模が大きいので約9カ月間、同じところにいます。
 仕事のやり方も、職場の環境も、行った先でさまざまですね。職場での規制が厳しい会社もあれば、かなり緩やかな社風の会社もある。個人的には、あまり短期の仕事では、お客さんと仲良くなる前に仕事が終わってしまうので物足りない。今はどんどん1つのプロジェクトが短期化する傾向にあるんですが……。
 お客さんによっては、どうしても自分と「合わない」ケースもあります。ある程度気心が知れていれば対処のしようがあるかもしれませんが、目標の成果物について合意していたはずなのに、後になって「話が違う」とか。そんなときは、お客さんとの間に入ってくれるプロジェクトマネジャーが、どう話をつけてくれるかが頼りです。
 無理な仕事を頼まれることもある。夜7時くらいに、「これを明日の朝までに」とか。これから夜中の3時頃まで仕事をしなきゃいけないのかと、がっくりしたり(笑)。
 一方で、今の仕事ではトラブル対応に数多く従事しているので、そのぶん、作業見積もりに対する能力は上がったと思います。また、自社以外のいろいろな人と会って、交流範囲が広がるのは、こういう仕事をしていればこそ。別の仕事で別の会社へ行った時にも、顔見知りと会えたりしますからね。
SHさん
■S.Hさんのプロフィール
常駐先での仕事内容:
銀行システム部門の業務基盤システム開発
役割:プロジェクトメンバー
常駐人数:20人
期間:9カ月
[プロジェクト単位派遣型]SEが 「ストレスを感じるとき」 [プロジェクト単位派遣型]SEが 「得したと思うとき」
「他社の常駐SEが仕事せずにおしゃべりばかり。うるさくてイライラする」(28歳/常駐1年)

「顧客が会議のたびに決定事項と異なることを言う。おかげで忍耐力がついた」(30歳/常駐1年)
「業務を理由に自社の雑用や会議に戻らなくていい時、『得した!』と思う」(31歳/常駐9カ月)

「自社より常駐先の社員食堂がおいしい。まずそこがメリット!」(39歳/常駐3カ月)
CASE3[親会社などへの出向型] 「交渉術」を磨けるのが一番のメリット M.Yさん(34歳)
 現在は親会社で業務システムの構築を担当しています。今のテーマで1年半くらいの常駐になりますが、その前は別の会社に派遣されていたり、自社内で勤務していた時期もありました。それ以外は、親会社に常駐している期間がほとんどです。
 今回のプロジェクトで私の会社から派遣されているのは7人。これは時期によって異なり、2〜3人の時もあります。人が足りないときにはさらに別の会社から来てもらうこともあります。
 お互いに情報のやりとりが密になり、課題にすぐ対応できるところに「常駐する」メリットがあると思うのですが、こちらが相手に何か質問しても、その答えがすぐに返ってこないことがある。そんな時は、「自分が常駐する意味があるのか?」と思っちゃいますね。特に親会社のシステム部は体質が古い感じで、何かのたびに「資料を出せ」「会議をしろ」――そのためにかえって仕事が遅れたりする。
 また、相手がシステム関係の人だからといって、話が通じるとは限らない。さまざまな要因から、どうしてもできないこともあるけど、そこは親会社とはいえお客様。「なぜできないか」「それに代わるものは何か」をきっちり説明できないといけない。「何だ、技術力ないな」と言われるのも悔しいですから。そんな「交渉術」を磨けたのはメリットと言えるかもしれません。もっとも、親会社だからこそ、ズバズバといえる部分もあるんですけどね(笑)。
M.Yさん
■M.Yさんのプロフィール
常駐先での仕事内容:
電機メーカーの社内システム構築
役割:プロジェクトメンバー
常駐人数:7人
期間:1年
[親会社などへの出向型]SEが 「ストレスを感じるとき」 [親会社などへの出向型]SEが 「得したと思うとき」
「親会社でお客様の年少者に偉そうな態度をとられたことがある。悔しい」(32歳/常駐2年)

「親会社との給与面での差は明らか。退職金等は10倍以上の差がある」(37歳/常駐7年)
「自社にいては得られない社内情報を得ることができる」(36歳/常駐1年)

「さすが親会社?経費がゆるやか。タクシー代やホテル代が比較的自由」(36歳/常駐2年)
Part3 客先常駐のキャリアから、スキル向上のチャンスを掴む!
 
 時には不自由に思うこと、理不尽に思うこともあり、しかしその一方では、やりがいや役得を感じることもある。客先常駐SEの現場での様子が、紹介したケースからも感じ取れたのではないかと思う。では、こうした常駐経験を、自分自身のキャリアアップに、より積極的に生かしていくことはできないものだろうか。そこで、客先常駐SEの経験・キャリアを今後のキャリアに生かすポイントを、リクルートエイブリックのキャリアアドバイザー、東和代氏に話を伺った。
「客先常駐で働く場合、どうしても『仕事の範囲が限られる』『客先の要求に従って動いているだけ』といった不満を覚えるケースもあるのは確か。ただ、その半面で、『派遣先の企業の技術や手法を学べる』『自社内だけでは得られない情報を得られる』といったメリットもあります」
常駐先から「ウチの会社に来ないか?」と誘われた経験
客先常駐でキャリアアップできるポイント
 常駐で働くシステムエンジニアの場合、仕事に対する姿勢が受け身になってしまう傾向が強いという。転職の際の面接でも、客先でどれだけ広い視野をもって仕事をしていたかは、しっかりチェックされるポイントだそうだ。
「『こういう仕事のやり方を学んできました』『こんなポリシーで仕事に取り組んできました』と、具体的にその内容をアピールできることが重要です。常駐先での経験をうまくキャリアに生かせるかどうかは、その経験をどこまで自分で積極的に吸収していけるかにかかっています。そのためには発注側の社員との信頼関係を深めることも大切。それによって相手が自分に何を求めているのかということも理解できるし、自然に任される仕事の範囲も広がってくるからです」
 Tech総研のアンケートでも、「うちの会社に来ない?」と誘われたことがある常駐エンジニアは、半数近くいた。仕事を頼む側からすれば、やはりきちんと仕事を仕上げてくれるエンジニアがいれば、その人を次も指名したくなるのは当然といえば当然。逆にいえば、「この人になら任せられる、むしろウチに来てほしい」と相手に思わせることを目指すのが、客先でも快適に働けて、キャリアアップできる一番の近道といえそうだ。
客先で自分が成長したと思ったのはどんなとき?
「会社の顔として客に接することができ、責任感と自立性が向上した」(29歳/常駐2年)
「今までに経験したことのない分野で知識を得ることができた」(30歳/常駐1年)
「いろんな会社のやり方の中から、いいものを選んで身につけていけた」(34歳/常駐3年)
「常に緊張感をもって仕事ができ、プレゼンテーション力や顧客折衝力が向上した」(31歳/常駐3年)
  • はてなブックマークに追加
  • Yahoo!ブックマークに登録
あなたを求める企業がある!
まずはリクナビNEXTの「スカウト」でチャンスを掴もう!
スカウトに登録する
宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ
Tech総研にも、常駐でサイトのシステム管理や、開発の要件定義をまとめたりしてくれるSEの方がいます。ウチの会社は常軌を逸した行動をとる人間が多いせいか、その方たちの口癖は「それは、ウチの会社じゃあり得ない!」。自社とのカルチャーの差が大きいことにいつも驚かされるのだとか。でも、その違いを聞くのも結構おもしろいものです。みなさんの客先でのカルチャーショックな体験もぜひ教えてください。お待ちしております!

このレポートを読んだあなたにオススメします

俺も残業してるし、グチは聞くから、スーツくらい着てくれよ

常駐SEよ聞いてくれ!客先SEは顔で笑って心で泣くのさ

取引先に常駐する「客先常駐SE」特有の悩みやメリットを以前に紹介したところ、大きな反響が寄せられた。今回はそんな常駐S…

常駐SEよ聞いてくれ!客先SEは顔で笑って心で泣くのさ

Dr.きたみりゅうじの“IT業界の勘違い”クリニック

SEってなんでもネット頼りだよね?

Dr.きたみりゅうじのIT業界勘違いクリニック仕事や趣味の調べものはやっぱりネットが便利。特にSEは、ネットから必要な情報を抜き出してくるエキスパートが多いような。それじゃ、…

SEってなんでもネット頼りだよね?

踏んでからでは遅すぎる!法律グレーゾーンに潜む地雷

裁量労働制はよく理解していないと損をする?

法律グレーゾーンに潜む地雷日々の業務で「これってもしかして法律違反なんじゃ……」と、ふとわいてくる疑問。そこで今回、エンジニアが陥りがちな業務事…

裁量労働制はよく理解していないと損をする?

業務報告、人脈作り 今どきビジネスコミュニケーション手段は?

ゆるくつながりしっかり伝える、SNS×メール活用術

社内外問わず、コミュニケーションを交わしていくことは仕事の基本。今世紀以降、メールやチャット、SNSなどデジタルコミュニケーショ…

ゆるくつながりしっかり伝える、SNS×メール活用術

SE兼マンガ家よしたにの「理系の人々」

譲れない一線、にわかにも矜持/理系の人々

SE兼マンガ家よしたにの「理系の人々」イプシロンロケットが打ち上がりましたね!ロケットの打ち上げの瞬間はいつ見てもドキドキします――毎度おなじみ「理系の人々…

譲れない一線、にわかにも矜持/理系の人々

広める?深める?…あなたが目指したいのはどっちだ

自分に合った「キャリアアップ」2つの登り方

「キャリアアップしたい」と考えるのは、ビジネスパーソンとして当然のこと。しかし、どんなふうにキャリアアップしたいのか、…

自分に合った「キャリアアップ」2つの登り方

この記事どうだった?

あなたのメッセージがTech総研に載るかも

あなたの評価は?をクリック!(必須)

あなたのご意見お待ちしております

こちらもお答えください!(必須)

歳(半角数字)
(全角6文字まで)
  • RSS配信
  • twitter Tech総研公式アカウント
  • スカウト登録でオファーを待とう!
スマートグリッド、EV/HV、半導体、太陽電池、環境・エネルギー…電気・電子技術者向け特設サイト

PAGE TOP