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増えたボーナス、職場に戻った活気×過酷な残業、先行き不安 緊急座談会 デジタル景気はエンジニアを幸せにしたか
今年に入って電機・半導体メーカーを中心とした、デジタル業界では景気のいいニュースが後を絶たない。この「デジタル景気」、果たして渦中にいるエンジニアはどれほど実感しているのか? 緊急座談会を実施し、その真意を検証してみた。
(取材・文/シミズカタシ 総研スタッフ/山田せいめい) 作成日04.10.27


新規事業へのやりがい、業績で賞与20〜30万up etc.大手メーカーエンジニア3人の本音とは?
 今回は大手電機メーカーから2人、半導体メーカーから1人の方に、昨今の「デジタル好景気」を受けた給与面での恩恵ぶり、仕事の忙しさなどを本音で語ってもらった。さらに電機・半導体業界で働くエンジニア200人に緊急アンケートを実施。好景気に沸く同業界の実情とエンジニアたちの本音を検証した。これらが導き出す事実を、あなたはどう感じるだろうか。
匿名座談会に登場した3人のエンジニア

佐川さん(仮名・34歳)
2年半前に通信関連会社から大手電機メーカーへ転職。今年1月から関連会社に出向しセキュリティに関するソフトウェアの開発設計を担当している。

加藤さん(仮名・41歳)
半導体メーカー勤務。IC開発エンジニア。20年近くIC畑一筋で開発に携わってきたベテランエンジニア。

平本さん(仮名・27歳)
3年前に大手電機メーカーへ転職(前職も同じ業種)。現在は映像系のLSIソフトウェアの開発設計を手がけている。
まずはズバリ、デジタル景気の恩恵を受けてますか?
佐川:
担当している業務がまだ利益に結びついていない時期なので、給与への反映もありませんし、それほどでも……。ただ、業績が伸びるであろうセキュリティに関連する新規事業を担当させてもらっているので、その意味では技術の変遷を目の当たりにできる仕事へのやりがいは実感しています。
平本: 今回のデジタル景気ではいちばんおいしい立場にいる会社だと思うので、お金の面では幸せです(笑)。賞与とは別に「会社業績給」という形で利益に応じた社員への分配があるんですけど、業績最高記録を更新し続けているような状態ですので、社員への支給金額の見直しを毎年やっているんですね。昨年は賞与一回につき20万〜30万円が支給されましたね。
加藤: 売り上げの好調な液晶テレビなどにわれわれベンダーが作ったデバイスが採用されて、当然、会社としての業績は上がっています。ただ、年俸制度が導入されて時間外手当も付きませんし、いち社員としてはデジタル好景気を実感できていないのが正直な感想です。
みなさんの周りであった、景気のよいエピソードを聞かせてください。
佐川: 同僚の同年代の人間で「家を買った」という話はよく聞くようになりましたね。6000万円くらいの物件を購入した、とか。私は今年になってデジタル家電、デジカメとかDVDレコーダーなどを購入したくらいですかね。
平本: 家を購入しました。戸建ての4LDK。転職してきてそれこそ半年くらいで購入する同僚もいますよ。ウチの部署がたまたまなのかもしれませんけど、既婚者の9割くらいは家を買ったんじゃないかな。貯金もだいぶ増えましたけど、(自宅購入資金借り入れの)繰り上げ返済に充てようかな、と。
加藤: 臨時ボーナスの支給が年に2回ありました。あと、私は新人の教育担当なのですが、新卒者の初任給が本当に高くなりましたね。マスタークラスで700万円の人間がいます。ただ、これも「いい人材を囲い込みたい」という会社がほかに追従してそうしている感があるので、そのしわ寄せが組織内のほか、例えば私のような中堅クラスにきているようには感じているんですが。
デジタル景気の影で業務繁忙など、大変になったことは何かありますか?
佐川: 開発設計の担当なのに「どういったものが必要なのか?」という、従来は企画担当が考えていたこともこちらへ投げられるようにはなりました。製品の開発スパンも短くなりましたし、新しいスキルを身につけなければならないという焦りと裏腹に、通常業務に追われる厳しい現実を実感しています。
平本: 「新機能はソフトでやる」っていう部分で負荷はものすごく増えました。新機能の提案から機能開発までやって、さらにハード構成にまで口を出すという場面も多いですね。以前のように「ソフトのことだけ考えていればいい」というスタイルは通用しません。
加藤: 週休2日制ですが、そのうちの1日は確実に業務があったり、社外トレーニングに参加することでつぶれています。また社内の雰囲気に非常に緊張感が出てきました。その結果、お互いが競争に負けないように情報やスキルを共有するという意識が希薄になったように思います。グループ内では最低限の情報交換はありますが、課が違うと別組織のような雰囲気です。
電機、半導体メーカーそれぞれの立場で感じていることは?
佐川: 自社製品を見ても、今までは市場の中で人気のある製品がある一方で、取り組みに遅れている部分もありました。シェアが落ちてしまうと利益低下に直結しますから、原価率を下げるといった方向へいかざるを得ない厳しさは実感しています。まだまだデジタル景気が続いてくれないと困るな。
平本: 映像に関していえばアナログからデジタルというふうにフォーマットが変わる過渡期っていうのは、シェアの順位が入れ替わる場合があるんですよね。競争が激しくなってきている今がチャンスなので、開発部隊は活気づいていますよ。やっぱり売れている商品を作っている、っていうのは仕事へのモチベーションも上がりますし。
加藤: ICについては今まで「量産機種で大量生産」という体制だったのですが、今では少量のものを早めに短いスパンで開発することが命題になり、そのための情報収集への負荷は増えましたね。「多品種少生産」になり、数の時代ではない、というか。
デジタル業界の今後の見通しと、今、現場が求めているエンジニア像とは?
佐川: 電機メーカーについては二極化が進んで、たとえば2008年の北京オリンピック時には今のメーカー数は残っていないのでは、と思います。部品も共通化されて外資も参入してくる中で、差別化ができるメーカーのみが勝ち残るはずです。そうした中でウチのIC関連だとチップの開発者、あとは製品開発のサイクルが短くなってきているので、品質管理のできるマネジメント要員は求められています
平本: まだまだ好景気は続くと思いますよ。デバイス寄りのソフトを組める人はニーズが高いと思います。しかもハード構成を理解しながら、効率のよさであったり、リソースの軽減まで提案できる人が理想。ただ単にIT系企業でパソコンソフトを開発しているだけだと、これからはちょっと厳しくなるかもしれないですね。
加藤: 程度の変化こそあれど、好景気は続くと思います。ICなどデバイスの性能も向上していくはずですが、そこへ投入される人材は海外からの流入もありますし、淘汰されていくのでは。新しい情報を貪欲に吸収し、技術変化の対応に柔軟さをもったエンジニアだけが生き残っていくのだと思います。
電気・半導体業界エンジニア 200人アンケート
図1.デジタル景気、ズバリその実感は?
図1
程度差こそあれ「実感している」と答えた人の合計は約半数。ほぼ同数の人にまったく実感値がないという結果が意外だ。家電・半導体メーカー内でも「勝ち組」と「負け組」の明暗が分かれた結果なのだろうか……。

表1.デジタル景気を感じた出来事
1:仕事が増えて忙しくなった(残業増加など)
66人
2:給与・賞与のアップ
28人
3:職場の雰囲気がよくなった(活気が戻った)
17人
4:社内に新規の部署・プロジェクトが増えてきた
13人
5:大量採用が積極的に行われるようになった
12人
6:会社からの各種補助手当・臨時ボーナスなどがあった
6人
7:景気のおかげで私生活が以前より充実した(家・車を購入など)
5人
8:社内の人事評価が変わってきた
4人
9:自分自身あるいは周りが予想外(予定外)の昇進をした
3人
圧倒的なのが「仕事量の増加」。右肩上がりの景気を受けての歓迎すべきことなのだろうが、それが給与・賞与に反映されている人がほんの一部、という現実をここでも確認できる。新規プロジェクト立ち上げ、大量採用の実施など、会社側が環境を整えることに注力している点も浮き彫りになった。

図2.労働時間の増減(昨年度との比較)
図2

図3.年収の増減(昨年度との比較)
図3
労働時間の増加体感者合計が50.5%に対し、年収アップ体感者合計が60.5%。座談会では「新聞で目にしたこの莫大な収益はどこに?」と嘆くエンジニアのコメントもあったが、繁忙になった人にはそれに伴った金額的な恩恵があったようだ。
デジタル景気によるメリット・デメリット
好影響
ここ数年横ばいだった賞与の基本給が上がった
ボーナスが2倍近くになった
一律特別ボーナス
特定の製品では、応じきれないほどの受注がある
なんとなく上司の悪口が減った気がする
景気がよいのでケーキが配られました……
悪影響
お客の要求、納期などが厳しくなった
クレームが多い。変な忙しさがある
コストダウン要求が厳しい
人員削減でめちゃくちゃ
マーケットがはっきりと見えない研究開発に対する風当たりが強く、言い訳の資料作りや会議が多く本業が進まない
大手に価格競争で負ける
開発のサイクルが極端に短くなってきたこと
残業との体力勝負
デジタル業界の人材動向と今後のゆくえ
 「幸せか否か」という二者択一の問いには「幸せになった」と座談会の出席者は口をそろえた。その中の一人は「この3年で部の人員が2倍になった」とも。同時に実施したアンケート結果を見ても年収のアップが見られ、「デジタル景気」は、そこで働くエンジニアたちに程度の差こそあれ何らかの変化を与えたといっていいだろう。しかし、座談会出席者のエンジニアの発言はいずれも好景気を反映してのものだったが、印象的だったのは彼らが例外なく「でも……」と、二の句を続けたこと。短い製品開発スパンに追われるように向上が求められるスキル、過熱する価格競争を受けた生産体制の見直し、そしていつかは淘汰されるのではという不安……。賞与が大幅にアップしようが、彼らは決して手放しに好景気に浮かれているわけではないのだ。

 エンジニアの転職活動サポートを手がけるリクルートエイブリックの高貝浩也氏は「製品の開発サイクルの短縮と開発数の増加でデジタル家電業界は慢性的な人材への渇望感があります。一方のエンジニアにも民生品の開発に携わりたいとの欲求があり、昨今の好景気も受け同業界の人気は高まっているようです」と語ってくれた。そうした中「企業側の求人数と市場の求職者数にはまだまだ大きな開きがあり、チャンスは多い」とも。30歳前後のLSIシステム、光学設計、画像処理、生産技術、プロセスエンジニアであれば、まだまだ十分な「売り手市場」なのだと高貝氏。しかしながら、そこでアクションを起こすエンジニアの絶対数が少ない点も指摘し「それだけ日々の業務に追われている、ということなのでしょうか」と続けた。

「売れるものを作っていると仕事へのモチベーションも上がります」。これは座談会でのあるエンジニアの発言だ。負荷を実感しているとはいえ、市場の拡大を実感できるのはエンジニア冥利に尽きるはず。それを「幸せ」と感じるのは、それぞれのマインドにゆだねられるもの。業務負荷を自身のスキル向上のためのチャンスなど、ポジティブに転化できるか否かに、「幸せ」を実感できる分かれ道があるのではないだろうか。
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山田せいめい(総研スタッフ)からのメッセージ
今回のテーマに私自身、マスコミで騒がれているのとは裏腹に、現実はシビアでは?という見方をしていましたが、実際の座談会の話やアンケート結果を見てみると、どうやら当てが外れていたようです。ただ決していいことばかりじゃないのがこの世の常。結局は「仕事のどの部分に幸せを求めるのか?」ということになると思うのですが、みなさんはどう思いますか?

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