採用企業が教えるメリット【意外な企業に出合える】

採用企業が教えるスカウト転職のメリット２　異業種・異職種の意外な企業・求人と出合える

自分のキャリアを匿名で公開し、企業からのメールを待つスカウト。従来の転職活動とは違うメリットについて、採用企業に聞いてみた。第２回目は、「異業種・異職種での適性も発掘してもらえる」メリットについてレポート。

（取材・文／栗原知女　総研スタッフ／山田せいめい）作成日：04.09.22

はじめに

スカウト登録とは？

スカウト登録の手続きは簡単だ。リクナビＮＥＸＴスカウトに自分のレジュメを登録すると、その内容を見て関心をもってくれた企業からオファーが届く。レジュメには、今までに経験した仕事、身につけたスキル、取得した資格、今後やりたい仕事についてなるべく詳しく書こう。企業のニーズとマッチする部分が１カ所でもあれば、オファーを送ってもらえる可能性がある。またレジュメを頻繁に更新して詳細に書くほど、それだけ企業からの注目度が高まる確率も上がる。

事例

「スカウトのメリットは異業種・異職種からの人材発掘だ」　　京セラ(株)のケース

　スカウト企業は、レジュメのどの部分に着目しているのだろう。オファーを送りたい人材とそうでない人材を、どのように見分けているのか。オファーを送った相手に対して、採用の本気度はどの程度あるのか。その結果、エンジニア個人にとってどんなメリットが生まれるのだろうか。企業のホンネを探ってみたい。

「自分ではダメだと決めつけていた意外な企業からスカウトされる」

　京セラと聞けば、多くの人は携帯電話や太陽電池を思い浮かべるだろう。だが、実はほかにもさまざまな事業を展開中で、多種多様なスキルをもつ人材を求めている。「全く異なる分野でも、経験を生かせるかもしれませんよ」と、人事部・渡辺修治さん。実際、製薬会社に勤務していたエンジニアの採用例もあった。「セラミックも製薬同様に粉体を扱います。意外な共通点に、スカウト登録者も私も驚きました」。粉体の物性に関する知識や経験を生かし、いかにして不良品を出さず、歩留まりを良くするかという点で力を発揮してもらいたい――そんな期待にズバリと応える人材だったわけだ。

　このエピソードは、スカウト登録時に自分のキャリアを詳しく書けば、意外な企業からのスカウトにつながる可能性を示している。渡辺さんは言う。「年齢のわりに２、３行ぐらいしか書いていないレジュメは候補から外すか保留にします。経験した仕事を具体的にすべて書き並べてくれると、ニーズに合うかどうかを判断しやすい」。応募者から見れば、「自分の実力では無理」あるいは「全く異なる分野だからスキルが生かせない」と決めつけていた予想外の企業から注目してもらえるというメリットがある。

「オファー＝１次選考通過と同じ、だから面接は余裕をもって」

　実は採用担当の渡辺さん自身、スカウト登録を通じて入社した経歴をもつ。「スカウト登録の皆さんとは事前にオファーで何度もやりとりするので、一般公募の方よりも仲良くなれる気がしますね」。１カ月に100通以上のオファーを書いて送るという。企業にとっては費用のかかることだから、バラマキ式にはできない。「この人のキャリアなら、あの事業部のニーズに合いそうだ」と思える登録者を、渡辺さんが絞り込む。事業部の責任者に打診してさらに厳選する。それだけにオファーを送った相手に対する期待値は高い。「うちでは書類選考に合格した人と見なしています」。

　オファーを受け取ったエンジニアの中には、「事業の内容についてもっと詳しく知りたい」と質問してきたり、電話で問い合わせてくる人も多くいるという。「そのやりとりの中から、お互いの意外なマッチングや、ポテンシャルの掘り起こしができます」。面接の前の段階で、お互いのことをよく理解し合えているので、応募者も緊張せずに余裕で取り組めるだろう。

京セラ株式会社　人事部　人材開発課
キャリア採用グループ責任者
渡辺修治さん

京セラ株式会社

1959年にファインセラミックスの専門メーカーとして京都で創業。現在は世界各国に170社以上の関連会社をもち、全体の従業員数は約5万人、売上高は1兆円を超える。携帯電話などの通信情報産業、太陽光発電、燃料電池などの環境保全産業、ファインセラミック技術を応用した宝飾応用商品などの生活文化産業、以上３つの市場に経営資源を集中している。通信システム、太陽光発電、コンデンサー、液晶、機械工具、医療用具といった幅広い事業分野で、生産技術職を中心に、研究開発、設計職等の求人を行っている。スカウト採用は従来から行っているが、特に今年に入ってから積極的に活用するようになったという。

「知られざる“採用の穴場”を発見できる」

　一般公募は企業にとっては「待ちの姿勢」で、「必ずしもニーズにマッチした人だけが応募いただけるわけではない」という。その点、スカウト採用は「攻めの姿勢」でいい人材を発掘できる。逆に応募者側から見れば、「いいぞ」と思えるオファーがくるまでは「待ちの姿勢」でいられるから、時間や手間をかけずにすむメリットがある。

「攻めの姿勢」だから、企業側からすれば「地味で目立たない事業分野」「意外に知られていない採用ニーズ」を積極的に応募者へアピールできる。京セラの場合、液晶や医療器具、機械工具の分野でもエンジニアを求めていることは、意外に知られていない。つまり、応募者にとってはスカウトで「採用の穴場」を教えてもらえるメリットがある。「直接応募を打診するだけでなく、セミナー参加のお声がけをさせていただくこともあります。なかなか応募までは踏み込めない、でも関心はあるという方には、ぜひセミナーにお越しいただき、京セラにご自身の活躍の場があるのかどうか、見極めていただきたいと思います。」


	１．	自分では「ダメだ」と決めつけていた企業から誘われるチャンスがある

	２．	企業によってはオファーの到着＝１次選考合格だから、余裕をもって面接に臨める

	３．	多くの人が見逃している「採用の穴場」をオファーで教えてもらえる

あなたを求める企業がある！

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山田せいめい(総研スタッフ)からのメッセージ

オファーを送る人もさまざま。本文でも触れましたが、京セラでスカウトを担当されている渡辺さんも、実はスカウトがきっかけで入社された方。だからこそオファーの文面や問い合わせにおいても、応募者側の気持ちを十分考慮して対応できるといいます。そんな方からメールを受け取ったら、またひとつ、転職の壁が低くなっていくのかもしれません。