好況のデジタル家電・自動車業界の転職給与はいくら？

今月のデータが語る　エンジニア給与知っ得WAVE！ Vol.24 好況のデジタル家電・自動車業界への転職給与はいくら？

好況業界に転職するとやはり年収はアップするのか。Ｔｅｃｈ総研では、最近１年以内に転職した635人のエンジニアに、転職前後の年収調査を実施。今回は景気回復を牽引してきたデジタル家電・自動車業界に転職したエンジニアにスポットを当て、その増減額と満足度を紹介する。

（取材・文/広重隆樹総研スタッフ/宮みゆきイラスト/Onsel BEHICH）作成日：04.09.22

100万円年収アップのエンジニアも


	今回は、電気・電子・機械関連のメーカーへの転職者を、大きくソフト系とハード系の技術分野に分けた上で、さらに職種別に細分化し、年収増減を調べてみた。技術分類では、ハード系職種には半導体技術、プロセス開発、回路・システム設計、機械・機構設計などの技術者が、ソフト系職種には主にマイコン・ファームウェア・制御系、汎用機系のシステム開発などの技術者が含まれる。　まずは、データ１のハード系職種から見ていこう。年収のアップ額が高いのは、「生産技術／プロセス開発」（100万円）、「セールスエンジニア／FAE」（70万円）、「回路・システム設計」（60万円）、「機械・機構設計／金型設計」（56.7万円）などだ。多くのエンジニアが年収増を果たしているが、「研究・特許」「サービスエンジニア」が年収減となっており、平均すると「24.9万円」の増額になっている。「100万円の年収アップ」と聞くとかなりインパクトがあるが、転職時の年齢が若くて、かつ前職の企業規模が小さいところから大企業への転職の場合、“転職バネ”が大きく作用して、３ケタ台の増額につながることが多い。もちろん、ベテラン技術者が、その経験を評価され年収アップにつながったケースもある。だが、一概に満足しているとは限らない。年収がダウンしても転職をした人のなかには、「年収よりも、仕事内容や職場環境を優先した」という例が少なくないのだ。

ITエンジニアの製造業企業への転職は

　　一方、ソフト系エンジニアの場合は、「社内情報システム／MIS」「システム開発（Web・オープン系）」「システム開発（汎用機系）」などが平均して３ケタ台の増額となっている。この“人気”の理由は何だろう。

　製造業にとっても基幹系システムの再構築やWebマーケティングなどシステム力強化は今後の競争力の源泉だ。そのため、外部のシステム・インテグレーターを統括する立場の社内エンジニアを確保したいという意欲は強い。こうした採用意欲が、高額の年収アップの提示につながっていると想像することができる。ちなみに、ソフト系全体での平均増加額は「52.2万円」でハード系職種を上回っている。

　データを見る限り、職種によってかなりの開きがあることがわかる。これだけのデータをもって、それぞれの職種の市場価値を結論づけることはできないが、転職マーケットのおよその傾向は読み取れるのではないだろうか。

データ１

職種別に見た転職前後の年収増加ランキング　（※金額単位：万円/小数点第2位を四捨五入）

職種		転職前年収	転職直後年収	平均増減額	回答者平均年齢
ハード系職種	回路・システム設計	430.0	478.0	48.0	32歳
	セールスエンジニア、FAE	551.7	596.7	45.0	34歳
	機械・機構設計、金型設計	413.5	452.5	39.0	31歳
	品質管理、製品評価、品質保証、生産管理	379.3	409.3	30.0	33歳
	制御設計	394.0	410.0	16.0	32歳
	半導体設計	492.9	507.1	14.3	31歳
	生産技術、プロセス開発	475.0	478.0	3.0	31歳
	研究、特許、テクニカルマーケティングほか	631.7	609.3	-22.3	34歳
	サービスエンジニア	595.0	542.5	-52.5	36歳
ソフト系職種	システム開発（Web・オープン系）	416.7	550.0	133.3	31歳
	システム開発（汎用機系）	500.0	600.0	100.0	31歳
	システム開発（マイコン・ファームウェア・制御系）	454.6	503.8	49.2	31歳
	社内情報システム、MIS	606.7	583.3	-23.3	32歳

　全体にデジタル家電・自動車業界の転職例では、年収が「増えた」という回答が70％に達しているが（データ２）、その満足度は「とても満足」「やや満足」を足しても46％止まりで（データ３）、増額と満足度は必ずしも一致していないということもできる。

データ２

メーカー転職者の７割が年収増！

データ３

年収増加だけでは測れない満足度

製造業への転職、年収アップの方程式とは

　こうした調査結果を、日々転職者のアドバイスにあたっているリクルートエイブリックのキャリアアドバイザー・柴田淳二氏に聞いた。柴田氏によれば、製造業界の転職で年収をアップさせるためには一定の“方程式”がある、という。
「サプライヤーからセットメーカー、中小規模から大規模、派遣から正社員、業績悪化企業から好況企業というのが、年収アップの基本パターン。この方程式に沿って転職すれば、年収で30万～40万円は上がるケースが多い。また、デジタル家電や自動車といっても、個々の企業の業績によって、その差は出ているようだ。同じ職種でも業績好調企業へ移ることで、大幅な年収アップにつながることがある」

　車の両輪のようにして、景気回復を先導してきた両業界だが、村山氏の実感値からいうと「自動車はエレクトロニクス系職種、ソフト系職種とも相変わらず旺盛な求人意欲がみられる一方、デジタル家電ではやや一服感が出てきている」という評価。デジタル家電業界ではデジタルカメラの売れ行きに少し飽和感が出てきて、DVDやFPD（フラットパネルディスプレイ）の需要予測もこれまでどおり堅調ながらも、少し弱含みになってきている。もちろんほかの業界に比べれば求人は多いが、自動車と比較したときには今後弱含みで推移するという見方だ。

　ただ注意が必要なのは求人スペック。好況業種だけに人が欲しく、技術力や経験年数などの採用条件は緩くなっていると思いがちだが、実際は違う。「上位企業に行けば行くほど、スペックは高い傾向にある。ただ、個別の職種によると転職マーケットの相場観もあり、比較的スキルレベルが緩めのところもあるので、しっかりと相場を見極めて転職活動を行っていただきたい」（柴田氏）。