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新統一基準公開で他人事ではなくなる!?ITSS始動!あなたの技術レベルが丸裸に

言葉だけが先行し、実態を伴っていないとの見方もあるITSS。しかし水面下では、確実に業界内に根づき始めている。ITエンジニアの査定や採用にITSSが導入され、他人事ではなくなる日もそう遠くはない。
(総研スタッフ/太田百合子)作成日:04.09.08
ITSSは確実に業界内に根を下ろし始めている
 経済産業省がITスキル・スタンダード(ITSS)を公開してから1年半余り。これまでなかなか普及が進まなかった背景には、ITSSの定めるスキル基準が抽象的でわかりにくく、現場に即していないということがあった。例えば、ITSSでは各スキル項目のスキル熟達度を、レベル3は○○ができる、レベル4は××ができるというように定めているが、この○○や××には特定のベンダー名や、製品名が一切記されていない。これに対し、実際に現場で求められている技術スキルの多くは、特定の製品やソフトウェアをどのくらい使いこなせるかということだ。

 このため、「ITSSを導入したくても、どのように導入すればいいのかわからないという企業が多い。その一方で、各社がITSSを独自に解釈してしまい、せっかくのスキル・スタンダードがスタンダードではなくなってしまうという危惧も出てきた」と、ITSSユーザー協会専務理事の高橋秀典氏は語る。大手ITベンダーを中心に多くの企業が参加する同協会では、ITSSをベースに具体的なベンダー名や活用スキルまでを落とし込んだ、新統一基準ともいえる「Standard Skills Inventory for ITSS(SSI-ITSS)」を構築、公開してきた。この9月からは、さらにこのSSI-ITSSをベースに、各企業独自の環境を作り込め、スキル管理システムとして利用できるASPサービスの展開も予定されている。

「SSI-ITSSを活用することで、企業は人材・スキルの現状を把握し、適材適所に有効活用できると同時に、事業戦略に沿って効率的な人材育成を行うことができる。一方エンジニアは、自分にどんなバリューがあるのか、また目指す将来像とそのために必要なスキルが明確になる。企業、個人、双方にメリットがあり、かつ業界標準を目指すものだから、ASP展開が始まれば、一気に普及する可能性もある」という。

 こうした動きの一方で、すでに人事・教育制度にITSSを導入した企業も登場し始めている。次からは、具体的な企業への導入事例を見ていこう。
ITSSユーザー協会の目指すITSS活用法
ITベンダーのITSS導入事例
エンジニアのモチベーションを高める育成体系の確立を目指す   NECソフト株式会社
人事部 人事シニアマネージャー 福嶋義弘氏  NECソフトでは今年4月から、ITSSに則った新しい人材育成制度をスタートさせた。同社ではこれまで、ITエンジニアを業務内容に応じた人材タイプ別に分類した「矢車型人事制度」を展開してきたが、この人材タイプをITSSの定める専門職種をベースにして再配置。さらに各専門職の職務要件を、ITSSのスキルフレームワークとマッチングさせた。

「専門性と成果を重視したこれまでの人事制度を、ITSSと連携する形で刷新し、あらためて個々の役割の見直しを行いました。さらに各専門職の評価や処遇も、ITSSのレベルにリンクして決定する形とし、業界標準に基づく評価・処遇・育成を目指します」と、同社人事部の福嶋氏は語る。

 エンジニアは、各職種ごとの職務要件書に基づいて自らのキャリアパスを設定し、そのために必要な教育を受け、実務経験を積む。職務要件書がITSSに対応することで、レベルアップのためのルートも広がり、職種の転換も含め、自らの適性に応じて多様な選択肢が描けるようになるという。

 また評価・処遇の面では、半期ごとに職務要件書に基づいた目標を設定し、これを達成できたかどうかを組織長が面談などを通して直接アセスメントすることで、より公正な処遇の実現を目指す。この結果は賞与に反映され、管理職以上では賞与の100%が、目標に対する成果によって決定されることになる。

「ITSSに基づく職務要件書をベースにすることで、社内のみならず個々の市場価値を高める目標設定、スキルアップができる。これが社員のモチベーションを高めることにつながると確信していますし、すでにそうした効果も出始めています。そのためにも目前の課題は、正当かつ公正なアセスメントが行える評価者を育成すること。2005年度からの新制度の本格展開を目指し、現在、評価者研修を進めています」(福嶋氏)

 さらに将来的には、社内の人事・育成制度だけでなく、「パートナー企業との連携や、採用を含む人材調達の分野でも、ITSSを活用していくことになるでしょう」と福嶋氏。すでにそういった先を見据え、ITSSを中心にした産学連携での人材教育といったテーマの話し合いも、大学側と活発に行われているという。
ITスキル標準のスキルワーク
NECソフトの「新矢車型人事育成制度」
事業の中核を担う専門職種を分類し、それぞれの専門性を高めることと、成果に基づく公正な処遇を目指してきた「矢車型人事制度」。この職種をITSSに則った形に整理し直すとともに、職務要件書の見直しを行い、専門職ごとの職務要件書に沿った、人材の育成、評価・処遇を行う。
エンジニアのキャリア実現をサポートするシステムを導入  株式会社日立システムアンドサービス
人財開発部 部長 石川拓夫氏  日立システムアンドサービスでは、ITSS準拠の「Human Capital Management(HCM)システム」を構築。4月から全社に導入している。このHCMシステムは、エンジニアがこれまでの実績を入力することでスキルの棚卸しができ、さらに新たな目標に向かってどう取り組めばいいかをナビゲートするもの。簡単にいえば、自身の持つスキルのセルフアセスメント、目標・行動計画設定、実績管理ができる、キャリアアップサポートツールともいえるものだ。

 最大の特長は、エンジニア自らが自身の進みたい方向に向かって、キャリアプランを組める点。「スキルを管理するためのシステムではなく、あくまで自己実現をサポートするシステム。もし、自身の方向性と上長が求める方向性に相違があった場合は、問題解決をサポートする体制も整えています」と、同社人財開発部の石川氏は語る。

 HCMでは、実績に基づいたスキルのセルフアセスメントを踏まえた上で上長との話し合い、目標とそのための行動計画を設定するが、ここで食い違いが生じた際には、社内のキャリアカウンセラーがジョブマッチングも含めて支援を行うという。

「社員の持つスキルをITSSと照らし合わせて、どの分野が強い、弱いということを把握できるのは、経営戦略イコール人財戦略といえるITベンダーにとって、とても意義のあること。しかし、だからといって、企業の都合だけで人財育成を進めれば、社員のモチベーションは上がらないし、結果的に会社にとってもデメリットです。そうではなく、社員が自主的にキャリアパスを描き、その目標達成を企業がサポートする。社員が成長することで、会社も成長するという方向を目指したのがHCMです」(石川氏)。
同社では社員を、効果的な投資を行うことでその価値を高められる「会社の財産」と考え、「人財」と表現しているが、HCMはまさにこうした「人財」を高めることを目指したものだ。

同社ではHCMで設定した目標達成を、処遇や評価とは直接結びつけていない。処遇は従来通り、実績や成果をベースに決定されるという。「目標達成のために行動すれば、その行動に実績も伴う」という考え方だ。「どんなスキルを持っているかではなく、スキルを活かしてどういう結果を出したかが評価されるべき。また、HCMを処遇や評価から切り離したことで、業界標準のITSSに忠実に構築することができたと考えています」(石川氏)。
日立システムアンドサービスの「Human Capital Management(HCM)」
日立システムアンドサービスの
「Human Capital Management(HCM)」

エンジニアが自身の実績を入力してスキルのセルフアセスメントを行い、それをもとに目標を設定。ナビゲートされる能力開発方法を参考に、行動計画を立てて実行し、その実績を再び入力、検証するというしくみ。目標設定の際には、上長との話し合いが行われ、そこで相違が生じた場合は、社内のキャリアカウンセラーが問題解決をサポートする。
2005年には、レベル認定制度もスタート!?
 導入方法に違いはあっても、企業がITSSを導入することで最も期待を寄せているのは、業界標準に沿って育成することで、自社のエンジニア、さらにはそれを包括する企業の市場価値を高めたいということだ。また同時に、「調達基準」という次のターゲットを具体化していく必要もある。そのためには、ITSSの定義するスキルレベルを、いかに企業間で誤差が生じることなく共通化するかが課題といえるだろう。

 ITSSユーザー協会でも「調達」を次にステップとしてフォーカスし、認定制度の核になるアセッサーについて、アセスメント手法や仕組みなどを具体的に検討している。「上位レベルの認定には面談などが必要で、かつ、どうアセスメントするかも難しいが、現在、ITエンジニアの80〜90%は、1〜3の下位レベルに属している。SSI-ITSSをベースに、これをオンラインテストのような形で実現する方法を検討しています。またこの中には、実際に現場で必要なベンダー資格をうまく取り込むことが重要だと考えています。情報処理技術者試験という資格制度が官主導で運営されていますから、このような現場主体の認定制度は、ITSSユーザー協会のようなNPO団体が主催するのが現実的でしょう」(高橋氏)。
また、各種ベンダー資格については、「資格が認定するスキルが、ITSSのどの分野、レベルをカバーするのかといったマッピングをする必要がある。引き続き、ベンダーや主催団体に協力を呼びかけていきたい」という。

 認定制度の発足はITSS普及の起爆剤ともなりうるだけに、「多くの企業やエンジニアが認定制度についての答えを求めています。ITSSがリリースされて1年半以上たった今、明確な回答が必要だと思います。
また、ITSSの位置付けをさらに明確にし、普及を促進するためにも、年内には何らかの形で発表して、来年度には動き出せるようにしたい」と高橋氏は語る。

 企業のITSSを導入が進み、さらに認定制度の発足や資格のマッピング作業が行われれば、エンジニアはいやでも、自分のスキルをITSSに基づいて棚卸しすることになるだろう。自身の市場価値が丸裸にされてしまうのは、ある意味で厳しいことではあるが、「スキルを正しく認識することで気づきが生まれ、目指す方向性やそのために必要なものも見えてくる」と高橋氏。「ITSSの普及は、さらに上を目指すエンジニアにとってもメリットがあることだと思っています」。
ITSSユーザー協会が考えるITSSのレベル区分と評価方法
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太田百合子(総研スタッフ)からのメッセージ
「官主導のプロジェクトは実を結ばない」というのが定説ですが、ITSSに関しては国も、また普及を推進するITベンダーも本気のようです。その背景にあるのは、中国の追い上げに対する危機感もさることながら、「人月商売ではなく、スキルに応じた適正価格を」という強い思い。エンジニアに対しても、より一層、スキルアップが求められることになりそうです。

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