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卒業後N年目の転職事情 東京工業大学工学部'85年春卒・Kさん(41歳)東工大でICと出合い、IC技術の変動とともに邁進してきた20年間
真空管からICに変わる変動期に就職し、製造技術のエンジニアとしてICの開発に携わったKさん。その技術を武器に一流企業への転職を果たし、IC技術の変動とともに邁進してきた。そんなKさんの今までを振り返ってもらった。
(取材・文/綿谷禎子 総研スタッフ/山田せいめい)作成日04.09.01
写真提供:東京工業大学
PROFILE
半導体メーカー
IC開発エンジニア
Kさん(41歳)
アマチュア無線が趣味でもともと電気関係に興味があった。高校は悩んだあげく文系を選択したものの、大学では理系を選び、第一志望の東京工業大学工学部電気・電子工学科に進学する。
東京工業大学 工学部 '85年春卒業生の進路状況
図
前年に引き続き、いくぶん加速気味に拡大を続けた1984年の景気動向。実質経済成長率は5.7%と高く、鉱工業生産は対前年比11.1%という高い伸び。電気機械など輸出関連業種も好調な拡大を示し、新規求人数は製造業を中心に大幅な増加がみられた時期だった。「電機業界が上り調子だったので、就職に困った人はいなかったですね」とのKさんの言葉どおり、東工大工学部の進路状況も製造業がほとんどで、就職者の実に62.9%が製造業。なかでも電機機械器具が22.7%と、群を抜いて高かった。
東工大で最新技術に触れ、今後の人生を左右するICとの出合いがあった
  「私とICとの出合いは東工大がきっかけでした。私は高周波の電波について研究していたのですが、その部品の一部にICが使われていたんですよ。初めて目にしたときには、『これは何だ?』という感じで、非常に興味をもちましたね」

 ICは今では家電製品や携帯電話など、あらゆる製品に使われているものだが、当時はまだ真空管を使ったボードが全盛期の時代。「東工大は学校レベルではトップクラスの設備があり、学会でも発表されていないことを実験できたので、ICについても中身を見せてもらえたんですよ」とKさん。東工大で最新の技術に触れられたことが、Kさんの今後を決定づけることになる。

「東工大では、ほかの大学に赴いて、そこで行われている研究や最新設備に触れたり、すでに研究所などで働いているOBらと話をしたりと、とにかく刺激を受けましたね」
その結果、Kさんは大学時代に研究してきた電波通信を仕事にする道は狭いと判断し、IC技術のあるワールドワイドなベンチャー企業に就職。エンジニアとして産業機器などの製造技術に携わり、特殊なICのノウハウを身につけた。そして3年後には、念願の開発部門へ異動。

 しかしその4年後には、順風満帆だったKさんの人生に、不安の陰が押し寄せることになる。「バブル全盛で好景気だったことで会社が事業を広げすぎた結果、ほかの会社に買収される事態になってしまったんですよ。だからといって辞める気はなかったのですが、このまま今と同じ仕事をやっていられるのか、将来に不安を感じましたね」
7年のキャリアを武器に転職。不安な気持ちを先生が取り除いてくれた
   そんなとき、ちょっとした好奇心から、人材バンクに登録してみたところ、現在の会社を紹介されたという。「面接に行くと思っていたよりも大きな会社で、今まで私がやったことがないICメモリーの仕事ができると聞き、転職を決意しました。ですが正直、転職は怖かったですね。自分で決めたこととはいえ、だれかに背中を押してほしかったので、研究室の先生に事後報告に行ったんですよ。先生は、『これから伸びる会社なので、頑張りなさい』と言ってくれて……。とても安心できました」。

 卒業後も、何かとメールで一般人向けの公開講座のスケジュールを教えてくれ、相談事などにものってくれる。そんなきめ細かな配慮の先生を中心に、定期的に集まる同期やOBたちとの縦と横のつながりは、「私にとって貴重な財産」だとKさん。大学の先生や仲間から得られる情報は、常にKさんを刺激し、仕事へのバイタリティーを奮い立たせた。
IC業界の変動を、ずっと最初から見て、接してきた20年間
   転職してから現在までの12年間は、めまぐるしくICの技術革新が行われた時期。ICの需要が高くなり、マーケットが広がるにつれ、大量生産ができるようになり、生産コストが激減。便利な開発ツールも誕生し、最新のIC技術がどんどん導入された。

 そんな激しい技術革新に対応しながら、Kさんは今や6人の部下を抱える主任に。ずっとICの世界で渡り歩いて来られたのは、衰退した汎用性のあるICではなく、特殊性のあるIC事業に携わってきたからだ。「今の会社では常に刺激のある、面白い仕事をさせてもらっていると思いますね。当時は転職することが不安でしたが、今から振り返ってみれば、あのとき、転職していてよかったと思います」。

 自分が開発したICを使った商品が店頭に並んだり、大ヒットしたり。またその逆の出来事なども繰り返しながらの20年間。東工大で出合い、興味を抱いたICは、Kさんの人生のすべてだともいえる。

 現在、Kさんは、ずっと現場でICに接していたいものの、そろそろ管理職の扉が見え始め、悩ましい日々を過ごしているという。長い人生を共にしたICとKさんの、新たな関係がこれからまた始まろうとしている。
東京工業大学 工学部 '85年春卒 Kさんの卒業後の転職事情
  卒業・就職時 転職時 転職後・現在
給与・待遇 月給約19万円 月給約35万円
(他残業、食事手当など)
年俸約900万円
地位・役職 なし 技術員 主任
仕事内容 IC開発 ICメモリーの商品開発 カスタムIC設計
仕事環境 入社後3年間は製造技術のエンジニア。その後、開発部門に異動 メモリーの部署でIC製作メンバーに入ることができる 部下6人、上司は課長という8人のチームで中間管理職的な役割
やりがい これからの分野の仕事に携わることができ、毎日が刺激の連続 ICメモリーは初めて手掛ける仕事だけに苦労はしたが、とても面白かった 技術革新の激しいIC分野で20年間渡り歩いてきた自負を感じる
私生活 担当教授がマメで、年3回くらい声がかかり、学生時代の研究室の仲間と飲み会 転職2年目で結婚。その2年後に待望の息子が生まれ、その後、娘も生まれる 休日は遊園地や公園などへ。趣味で「御神輿の会」に入り、異業種の人と交流
将来展望 興味のあるIC技術がある第一志望の会社に就職でき、希望に満ちあふれる 今までのキャリアを生かして、ICメモリーという新しい分野の道が開ける 管理職のポストが少なく、現場には若い人材が増え、リストラの・・・・・・。
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山田せいめい(総研スタッフ)からのメッセージ
Kさんが過ごしたその当時の東工大の生活や就職のお話を聞いていると、20年という時の隔たりをあらためて実感しました。現代の私たちの生活の根幹を支えるIC技術が、わずか20年前までは東工大のような、ごく限られた研究施設でしか接することができなかったのですから。きっと今も東工大では、KさんのころのICのような次世代の新技術が、これから世の中に飛び出そうとしているのかもしれません。

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