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850人の本音調査でわかった「どっちが幸せ?」
管理職or専門職 エンジニア35歳の決断


   
技術進化のスピードは速まる一方で、成果主義のもと、企業はドライな評価をエンジニアに下しはじめた。時代の波に翻弄されながら、20代、30代のエンジニアたちは、将来キャリアについてどんな展望をもっているのかを探る。
(取材・文/荻野進介 総研スタッフ/宮みゆき イラスト/サダヒロカズノリ)作成日:04.09.01
Part1:誰もが悩むエンジニア将来のキャリア選択
 かつていわれた「エンジニア35歳限界説」。技術サイクルが、年々短くなっていることにより、エンジニアとしての限界を感じる一般的な年齢も、さらに早まっているのではないか。だが、Tech総研が25〜34歳のエンジニア850人に実施したアンケートによれば、その年齢限界を「50歳以上」という回答が44%と半数近くを占めた。また、何歳までエンジニアを続けたいかという問いに関しても、「50歳以上」という回答が46%と、これも半数近くを占めている。多くのエンジニアがそれだけ自分の仕事に愛着とやりがいを感じていることを伺わせる数字である。
 では、そこまでエンジニアを続けるために、悩んでいることは何か。将来のキャリアプランをどう考えているか、この2点について詳しくデータを見てみよう。
Q1.現在、エンジニアとして不安に思っている最大の悩みとは?
 予想通り、技術進化の速いソフト・ネットワーク系職種は、その「スピードに取り残される」ことを最も恐れ、電気・電子・機械系職種は、専門が限定されていることにより、「新しい技術が吸収できない」ことを憂慮している。また、これはエンジニアに限らず永遠のテーマであるが、「40代、50代の生きがい探し」の数字もやはり高い。また、「エンジニアの不安」の中身は次の3つに集約できる。
エンジニアの将来キャリアの不安

Q.2将来のキャリアプランとして考えている選択肢は?
 企業のなかで、専門職あるいは管理職として活躍する道を選ぶ率が最も高くなっているが、詳しく見ると、ソフト・ネットワーク系職種と電気・電子・機械系職種の違いが出ている。ソフト・ネットワーク系職種は管理職やプロジェクトマネジャー志向が、電気・電子・機械系職種は専門技術を極めたいという志向がそれぞれ強いようだ。
Part1:管理職VS専門職 それぞれのキャリア選択をしたエンジニア
 ここでは、自らのキャリアパスを選択できる「プロフェッショナル制度」を導入しているTIS社で、組織マネジャー、そして専門スペシャリストの道を選んだ2人のエンジニアを紹介する。彼らが、それぞれのキャリアを選択するまでの紆余曲折とは、一体どのようなものだったのだろうか。
CASE1 管理職を選んだエンジニア
人事への抜擢をきっかけに方向転換。技術より組織マネジメントを追求したい
加藤三郎氏
TIS株式会社
金融・カード第2事業部
ファイナンシャルシステム第7部
部長 加藤三郎氏(41歳)
   私が新卒でこの会社に入って今年で19年目。もともとはマスコミ志望だったのですが、どこの会社にも受からず暗澹としているとき、まだ新卒募集していた会社のひとつがTISだったのです。もともと、大学での専攻は電気・電子工学だし、雰囲気もよさそうだからここで頑張ってみるか、と入社を決め、それから10年ほど、システムエンジニアやプロジェクトマネジャー、あるいはリーダーとして、主にメインフレームの基盤技術の設計・構築業務に携わってきました。その間、クレジット会社の国際業務のインフラ構築、企業のネットワークに関するコンサルティング、通信カラオケ事業など、挑戦しがいのある、エキサイティングな仕事にずい分恵まれてきたと思います。
70人の部下をどうまとめるか。新しい課題に挑戦中
   その後、1997年に人事部に異動しました。以前、同じプロジェクトで一緒に開発の仕事をしたエンジニアの女性が人事のマネジャーになっていて、その人から誘われたんです。会社をより客観的に見られるし、エンジニアとしての経験の幅が広がるのではないかと思い、申し出に“渡りに舟”と乗りました。
   人事では主にキャリア採用を担当し、年間1000人もの面接をこなしました。目から鱗でしたね、世の中にはこんなに優秀な人がいるんだ、と。おまけに人事にいると、社内のエンジニアのレベルもわかってきます。
 それまでの私はどちらかといえば、エンジニアとしての自負がかなり強かったのですが、この頃から、組織を管理する仕事のほうが自分には向いていると思いはじめたのです。年齢でいえば34、35歳のころでした。それから再び開発現場に戻り、統括マネジャーを2年半やり、現在は部下70人を束ねる部門長に就いています。会社の経営計画を達成させなければならないのですが、なかなか思い通りにいかないですね。もっと軽やかに部長職をこなす。これが私の当面の目標です。
CASE2 専門職を選んだエンジニア
 
小島繁幸氏
TIS株式会社
金融・カード第2事業部 
ファイナンシャルシステム第7部
主査 小島繁幸氏(38歳)
転職という選択肢で、エンジニアとしての強みを強化し弱みを補完

 大学を卒業して就職したコンピュータメーカーに15年在籍し、2004年1月、TISに転職してきました。前の会社では、最初にSEとして金融関係の基幹システム構築の仕事を任され、さらにネットワーク系、クレジット会社のマーケティングに関するシステム構築に携わりました。クレジット会社の仕事についたのは入社7年目。大手の会計コンサルとの協働で、殺人的な忙しさでしたが、すごく勉強になりましたよ。
 2003年の秋、大台の40歳を前にして、自分の強み・弱みは何だろうと、キャリアの棚卸しをしてみたのです。そこでわかったのは、弱み(=経験不足のこと)は、クレジット会社の基幹系の業務知識であり、逆に強み(=既に会得していること)は、先述したようなマーケティング関連の方法論や技術、ということでした。
 強みを生かすことができ、弱みを補完してくれるような企業はないか。いくつか当たりましたが、最終的に決めたのが、私の弱みを最大の強みにしている企業、TISでした。

徐々に太くなる、エンジニア職という一本の線

 私はプロジェクトマネジャーとして、現在、3つのプロジェクトを統括しています。テーマ、方向性、予算、人事、期日すべてをみています。ひとつのプロジェクトに属するメンバーは協力会社の要員を含めると20〜30人にもなります。エンジニアと対等か、それを上回る知識や経験がないと皆がついてきません。専門職寄りの管理職といった意味で、プレイング・マネジャーといった役割でしょうか。
 これまでのキャリアを振り返ると、前の会社から今まで、連続した一本の線で続いているイメージです。線の太さは徐々に太くなっており、エンジニアとしての仕事の幅を広げている感じですね。40代前半まではこの道を歩み、その後は、TISの社内ベンチャー制度を使うにせよ、外に出るにせよ、得意な技術を核にした起業という選択肢も考えています。
   
 
職種選択の自由を社員に。専門分野のスペシャリストにも組織マネジャーと同等の待遇を
山崎知郎氏

TIS株式会社 
人事部 企画グループ 
シニアマネジャー 山崎知郎氏

     TISの人事制度「プロフェッショナル制度」では、社員一人ひとりがプロフェッショナルとして自らのキャリアを自らデザインし、自らの力で切り開くことが期待されます。「キャリア宣言」とは、そんな社員の決意と努力を応援するシステムです。キャリア養成期間中を除くすべての社員が、毎年、自分がつきたいキャリアを「宣言」し、自分が取り組みたい領域で経験を積み、キャリアアップを目指します。(※図1)
  また、管理職層(グレードのG5)には、組織マネジャーのほかに、専門分野でのスペシャリストである「エキスパート」というポジションがあります。エキスパートと組織マネジャーは全く同等の処遇体系であり、専門分野において卓越した能力を発揮し、全社的に重要なテーマに取り組むスペシャリストの活躍にも期待しています。
 
図1 自らの「キャリア宣言」で決まる TIS社のキャリアパス
キャリア分類
Part3 技術への夢と好奇心を忘れずに、キャリアの本当の意味を考えよう
 アンケートによれば、将来のキャリアプランを決める年齢が35歳と答えた数が半数近くを占めている。それはなぜだろうか。そこから、専門職あるいは管理職というようにきれいに道が分かれるものなのだろうか。そこで、エンジニアとして活躍、米国で起業経験もある一橋大学イノベーション研究センターの藤村修三教授に、エンジニアの将来キャリアプランを考える上で必要なことについて、話を伺った。
「テクニカル・ラダーorマネジメント・ラダー」は、意味ある議論か

藤村修三氏
一橋大学 イノベーション研究センター
藤原洋ベンチャーファイナンス寄付研究部門 
客員教授 藤村修三氏
 あるキャリアに達したエンジニアが、それ以後もエンジニアとしての専門を深めるか、それとも管理職としての道を選ぶか、これは米国でよくいわれるテクニカル・ラダー、マネジメント・ラダーの問題ですね(ラダーとは階段の意)。最近、日本でもこの手の議論がよくされていますが、果たして議論の前提条件がしっかり考慮されているでしょうか。
 米国では日本と違って、両者のすみわけが非常に明確です。専門職には専門に関する組織の人事から戦略、予算まで、かなりの権利が付与され、一方の管理職はそれらに口出しできません。教授会と事務方の機能が峻別されている大学のような組織を思い浮かべていただければよい。
 日本はどうでしょう。管理職の地位が圧倒的に高く、最近増えている技術部門のトップであるフェローという職も、現時点では一種のアドバイザースタッフといった名誉職的な意味が強い。その結果、日本企業では、自分の専門技術を深掘りし、より大きな成果をあげるためには、予算や人事の権限をもつ管理職にならなければならないという“逆説”がおこるのです。
 
いつでも、一エンジニアに戻れる管理職に
 さて、エンジニアに限らず、「キャリア」の本来の意味を考えてみましょう。それを、会社での地位や収入を上げるためのステップ、というように、自己本位に捉える人がいますが、私はそうは思いません。あくまで社会を基準に自己をとらえる、エンジニアでいえば、技術への夢と好奇心を軸に、社会にどんな新しい価値を提供できるか、という基準で考えるべきだと思います。
 多くの人がキャリアチェンジに最適な年齢を35歳と答えていますが、ちょうどそのあたりで社会と自分の関係がわかってくるのでしょう。最近、MOT(技術経営)やMBA(経営学修士)を学ぶエンジニアが増えていますが、それもよいきっかけになるはずです。社会と自己の関係を自分なりに認識したうえで、転職という選択肢を選んでもいい。たとえ、同じ日本企業にいても、そうした視点でキャリアを見直せば、テクニカル・ラダーか、マネジメント・ラダーか、などという単純な二極思考には陥らないはずです。私としては、いつでもエンジニアに戻れる管理職を目指せ、と言いたい。
  そういう意味では、35歳が大きな節目になるのかもしれませんが、その節目の過ごし方次第で、その後、いろいろな形でのキャリアチェンジが行われてしかるべきです。技術進化のスピードはますます加速し、エンジニアも変化に対応しなければ生き残ることができません。今のエンジニアに最も必要なのは、技術への夢と好奇心、それに「自己変革力」ではないでしょうか。
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宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ
管理職に昇進しなければ高額の報酬や、地位、権限が得られなかった従来の昇進制度から、専門性の高い分野で活躍できるプロフェッショナル制度が、これまでとは違う形で進化している気がします。とはいえ、成果主義制度とともに、企業側もまだまだ試行錯誤中のようです。技術を核に将来を考えた場合、あなたはどんな道を選びますか?

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