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メーカー3社を経験し、コンサルタントとしていよいよ起業

半導体プロセス技術習得のための転職を経て、独立したH・Kさん(28歳)

H・Kさんは起業を見据え、世界的にも高い技術力で知られる企業やワールドワイドで知られる大手企業を通過点とし、華麗にステップアップしていった。その原点は、大学卒業時のある挫折だった……。
(取材・文/中村伸生 総研スタッフ/山田せいめい)作成日:04.08.25

キッカケ編
スポーツのプロに代わる次の目標は独立起業

やるからには頂点を目指したい

 大学時代、高分子化学を専攻する一方で、あるプロスポーツチームにも籍を置いていた。毎日の練習と定期的な試合、それと授業や試験の両立に目まぐるしい毎日だったが、充実もしていた。ところが卒業を前に戦力外通告をされる。まだまだやれると思って他チームのテストも受けたが全滅。その一方で、かつて共にプレーをしたこともある選手がスター街道を上っていく。負けたくない。しかし、もはやほかの道で頑張って頂点に上りつめるしかないと思った。

 そう考えた途端、捨てる神あれば拾う神あり。自分のホームページを見た人から、半導体エンジニアとして頂点に立たないかという打診があった。声をかけてくれたのは技術者派遣会社A社の社長。会ってみると、単なる社員集めではない、経営パートナーとして見込まれていることを感じた。独立起業か……新たな活路として、彼の会社に入社した。

この会社で習得できる技術はすべて吸収した

 最初にA社からの派遣で、半導体製造装置メーカーB社に装置開発およびプロセス開発のエンジニアとして勤務した。高分子化学出身だから、半導体も機械もまったくの未経験だ。足りないスキルは(といっても当初は全部だったが)努力で埋めるしかなかった。また海外市場でも高いシェアをもつ企業だったので英語力も要求された。ここは学業とスポーツを両立させていたときの、集中力や効率的な時間の使い方がモノをいった。2年半後には、先輩を頼らなくても仕事を遂行できるレベルに達していた。

 主要な半導体製造地をそろえるB社だったが、ある工程の装置と技術にだけは手を出していなかった。
 この部分を手に入れたい。そこでA社社長の理解を得て、該当する技術のトップブランドともいえるC社に転職した。ここでも技術習得に励んだ結果、1年に満たずして欲しかった技術を得ることができた。こうして半導体プロセス技術を全般的に習得したことにより、技術コンサルタントとして独立できるめどがついた。自分の会社を立ち上げたいという欲求が表に出てきたが、まだ最終プロダクトを市場に送り出す半導体メーカーの経験が足りないと感じた。
PROFILE
半導体技術コンサルティング企業
半導体プロセスコンサルタント
H・Kさん(28歳)

2000年に国立大学理工学部を卒業。専攻は高分子化学。在学中は人気スポーツのプロ選手としても活躍。卒業後に技術者派遣企業A社に入社。半導体製造装置大手B社に出向。次に半導体プロセス分野では世界的に知られるC社に転職後、CPUからフラッシュメモリの開発・製造まで総合的な技術力をもつ大手メーカーD社を経て、この夏に独立起業。
H・Kさんの転職活動DATA
前勤務先 電子材料製造会社
プロセスエンジニア
転職した時期 2004年 2月
活動期間
(決意〜内定)
約5カ月
転職理由 半導体製造における全体的視野をもちたい
会社選びで優先したこと 仕事内容のみ
実際に応募した社数 4社
内定社数 1社
落ちた社数 0社
辞退した社数 3社

応募からの日数
 E社:大手総合電機会社
 F社:大手総合電機会社
 G社:大手総合電機会社
 D社:大手総合電機会社
 
E社
F社
G社
D社
1次
面接
翌日
辞退
翌日
辞退
返信
せず
当日
内定

転職準備編
さあ、いよいよ独立に向けた最終ステップの転職だ

オファーを積極利用

 常に今どんなスキルを獲得すべきか明確に認識しているので、該当する企業だけを選んでアクセスしたい。そんな私の転職手段は、いつもリクナビNEXTスカウトである。最初にキャリアやスキルのすり合わせをしなくてもいいので、面接でいきなり技術的な会話に入れる。効率的だ。
 結果的にこのオファーを通して4社と面接することになった。いずれも日本を代表する企業であり、半導体開発部門をもっている総合電機メーカーだ。
活動編
3社を見送って納得のいくD社に到達

面接は対等な立場。だからこちらからお断りもした

 最初に会ったのは幅広い製品ラインアップで知られるE社。事前に同社をよく知る友人に聞いてみたところ、技術力はそれほどでもないらしい。実際に地方の開発拠点に行って面接したのだが、どうやら友人の意見は大きく間違っていないようだ。面接はスムーズに進んだが、翌日にお断りの電話を入れた。
 こちらとしても安売りはできない。独立に向けた重要な最終ステップを踏む企業なのだ。だからといって自分は相手に損をさせる人材だとも思わない。在籍期間中に、給与以上の貢献ができるという自信をもっているからだ。
まだまだ……

 オファーの効果は高い。1カ月後にF社との面接が入った。世界的に技術力の高さで知られる企業だ。半導体技術シーンを大きく動かす実力ももつ。しかし、ここは若い人の技術力は高いが、管理職のスキルが低いとほかで聞いた。30代後半になると開発を離れる社風なのだろう。長年勤めるつもりはなかったが、得るものも少ないと感じた。面接では技術力の片鱗が見えたが、翌日、丁重にお断りした。

 その1カ月後、今度も世界的に知られるメーカーG社から打診があった。この会社はブランドバリューは大きいが、こと半導体技術になると前2社より劣っているとの評判だ。面接でもこの疑念を晴らす回答が聞けなかったので辞退した。
ここだ! 私が入りたかった企業は

 G社辞退からまた1カ月ほどして、半導体大手D社から打診があった。まずは会社説明会に行くことにした。実は明確なイメージがなかったからだ。ただ、CPUからフラッシュメモリまで開発・製造できる実力には期待していた。

 説明会後に個人面談に入った。相手は部門マネジャーの人とプロジェクトのリーダークラスの人。この会話が弾んだ。プロセスに関してさまざまな角度からの意見交換ができたのだ。こちらの質問にも滞りなくエンジニアとしての意見が返ってくる。この会社なら、自分をさらに高めてくれると思った。相手も手応えを得たのだろう。面接の終わりごろには半ば入社が決まっていた。
転職にもっとも必要なのは、自分の技術に自信をもつこと

 実はD社には数カ月しか在籍しなかった。私を見いだしてくれたA社社長と共同で、半導体プロセスに関する技術コンサルティング会社を立ち上げたからである。そう、とうとう独立起業したのである。ちなみに、収入は一挙に5倍になった。
 短期間だったが、D社では有意義な経験がたくさんできた。さすがだ、と思う技術にも触れられた。また、私ももてる技術をすべて開発・製造現場に提供してきたので、円満退社できた。双方にメリットの大きな転職だったことは間違いない。

 そんな私が転職成功ノウハウとして語れることがあるとすれば、「エンジニアとしてプロ意識をもって挑むことで、結果的に最適な企業にたどり着ける」ということだろうか。まずは自分の技術に自信をもつこと。自信をもつために何かが足りなければ全力で獲得すればいい。それからでも転職は遅くないはずだ。
 付け加えるとすれば、自分の市場価値を知る努力を重ね、相手(企業)が欲する人材の理解に務めることも重要だろう。そうして採用面接という交渉に臨みたい。何とか雇ってもらおうと取り繕っても、転職できたところで後日の満足度は低いだろう。

 転職手段として自分に合った媒体を選べばよいが、私の場合はリクナビNEXTスカウトを利用した。また、募集情報、企業情報、自分の市場価値を測る情報、業界周辺の技術情報などに関するニュースソースは何でもいいから、できるだけ取り込んでおきたい。面接に役立つからだけではない。そうした行為が後々にエンジニアとして役立つからだ。「明確なキャリアビジョンに沿った転職活動によってエンジニアは成長できる」とさえ、いえるかもしれない。
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