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卒業N年目の転職事情 千葉大学工学部'98年春卒・Iさん(29歳)千葉大で出会った仲間とシステム会社での経験から、特許技術者という仕事へ
ハードな仕事でプレッシャーも多く、あまりのストレスで忘れかけていた“普通の生活”。ただ同僚とは仲がよく、一見すると恵まれた職場にいたIさんは、あのころの自分には得られなかった“普通の生活”を取り戻すため、転職を決意。
(取材・文/綿谷禎子 総研スタッフ/山田せいめい)作成日04.08.04
写真提供:千葉大学
PROFILE
特許事務所
特許技術者
Iさん(29歳)
薬学を目指して理系を歩んできたが、信頼できる高校教師の言葉から工学部を目標に。千葉大学工学部電気電子工学科(現:情報画像工学科)に入学し、今ではそのときの仲間がかけがえのない存在に。
千葉大学 工学部 '98年春卒業生の進路状況
図
千葉大工学部の卒業生の進路傾向は、例年、ほぼ同じ割合。平成11年度のデータによると、過半数が進学の道を選択している。電気電子工学科(現:情報画像工学科)では、「女性はキヤノンやソニーといった大手メーカーの名前がついたシステム会社、男性はNTT系が多かった」というIさんの言葉どおり、システム会社に就職する学生が圧倒的に多く、次いで電気機器や製造業という割合になっている。'98年といえば依然、就職難が続いていた時期ではあるが、9学部で構成される国立総合大学の千葉大学では、多数の工学部学生が大手企業やメーカーに就職できていたようだ。
千葉大での充実したキャンパスライフでかけがえのない出会いが得られた
  「高校の先生から『これからは女の人も手に職をもつ時代。特にやりたいことがないんだったら、就職がしやすい工学部がいい』と言われ、進路を決めました。その先生って、バブル期に『もうすぐバブルは崩壊する』と予言(!?)して、実際にそのとおりになったので、とても信用していたんです」。Iさんは地元の千葉大学工学部に入学。電気電子工学科の学生100人中、女性は6人という環境ながら、とても居心地がよかったと言う。

「特に男女を意識せず、いつも10人くらいで集まって行動していましたね。先生から女の子だけにっていろいろ目をかけていただいて、メリットは多かったですね。しいてデメリットを挙げるとすれば、女性は少ないだけに目立つので、出席を取らない授業でも、欠席できないということでしょうか(笑)」

 Iさんは在学中に、通信データの雑音を取り除く信号処理の研究を行った。その合間にサークル活動をしたり、春にはお花見をしたりと、キャンパスライフも謳歌。彼女は千葉大で過ごした時間の中で、かけがえのない出会いを得られたと言う。そのひとつは、今も2カ月に一度は集まる信頼できる仲間たち。そしてもうひとつは、大学時代からつき合い始め、24歳のときに結婚したご主人だ。

「転職をするときに、『辞めようと思っていると上司に言った』と仲間に伝えたら、自宅に転職情報誌がいっぱい送られてきたんですよ。みんなが応援してくれていると思うと、うれしかったですね。それに主人も同じ工学部でエンジニアなので私の仕事に理解があって、忙しくて食事を作れなくても、文句ひとつ言わなかったですね。あのときの私はいつもイライラしていて、主人はビクビクしていたみたいです。後からわかったことですが、そんなストレスから10円ハゲができてしまったとか……」

 Iさんが言う“あのとき”とは、就職して3〜4年目、仕事がとても忙しくなったときのこと。多いときは月に150時間もの残業で、帰りは深夜、休日も出勤と、すれ違いの生活がずっと続いていたと言う。
あまりの忙しさから“普通の生活”を忘れかけていたあのころ
  「就職難だと先生から聞かされていたので、私は早々に就職活動をして、GW前にはメーカー系のシステム会社に内内定をもらっていたんですよ。今から思えば、もう少し後に就職活動をしたほうが、大手企業やメーカーの採用がたくさんあったのですが、そのときは早く安心したかったんですよね。採用された同期は50人で、その中には同じ千葉大出身の人も2人いました。3カ月の研修後、ネットワークシステムのメンテナンスの仕事に就き、入社2年目の終わりころに防衛システムの開発に。プロジェクトの人数は200〜300人ととても多く、打ち合わせを23時ころから行ったり、ほかの人の作業を待ったりと、とにかく時間の無駄が多かったように思いますね」

 徐々に手掛けるシステムの規模が大きくなり、防衛という国家規模のプロジェクトだけに、のしかかるプレッシャーも並々ならぬものがあった。とはいえ、なかなか辞められなかったのは、残業代や深夜タクシー代などがちゃんと支給され、尊敬できる憧れの女性主任もおり、悩みを相談できる仲のいい同期がたくさんいるという恵まれた環境だったからだ。同期たちの結束がいかに強かったかは、50人中30人が転職した今でも、「集合がかかれば用事がない限り、ちゃんとみんな集まります」というIさんの言葉からもうかがえる。

 憧れの女性上司はIさんが入社して3年目に転職してしまったのだが、「その主任から『この会社は長くいるところじゃない。ステップアップするためには、資格を取っておいたほうがいいわよ』と言われていて、まだ忙しくなる前にテクニカルエンジニア/ネットワークを取得しました。資格を取得する費用もちゃんと出してくれる会社で、合格したら一時金で10万円もらえたんですよ。世間では不景気が叫ばれる時期だったのに、まったくそんな様子を感じさせない職場でしたね」

「表面的には居心地がいいけど、時々、何かがおかしいと思うこともありました」というIさんが転職を決意したのは、ある日、たまたま日曜日に休みが取れたときのこと。ご主人とのんびり食事をとりながら、「これが普通の生活なんだろうな〜」と感じたことがきっかけだったと言う。それは彼女が、あまりの多忙さに忘れかけていた、優しい気持ちを取り戻した瞬間でもあった。
転職で自分らしい普通の生活と、ずっと続けていきたい仕事に出合えた
  「最初は事務職に就こうと思ったのですが、『千葉大で培った知識や今までの経験を無駄にしないように』という主人のアドバイスもあって、特許技術者という職に就き、今は主にカメラの特許の説明を技術者から聞き、その話を元に申請書を作成しています。新しい発明の特許を申請するので、わからないことばかりですが、聞いたことがある言葉も多く、今までの経験が役立っていますね。自分のペースでできる仕事なので、18時ころには帰宅するという、普通の生活ができるようになりました」

 休みの日には、ご主人と実家までドライブ。「以前は私の立場が上になっていて、主人にストレスをかけていました。今は対等な立場で、ようやく普通の夫婦になれたように思います」と言うIさん。大学の仲間とも定期的に会い、お花見は千葉大のころからずっと同じ場所。そんなプライベートの充実が仕事にも反映され、今は「弁理士の資格を取得して、年収1000万円を目指したい」と意欲を燃やす。Iさんは転職を通じて、「自分らしい生活と、ずっと続けていきたい仕事に出会えた」と言う。
千葉大学 工学部 '98年春卒 Iさんの卒業後の転職事情
  卒業・就職時 転職時 転職後・現在
給与・待遇 月給約20万円 月給約50万円(うち残業代約27万円) 月給約25万円
(ボーナス年間約200万円)
地位・役職 なし なし なし
仕事内容 気象レーダーのシステムメンテナンス 防衛機器のシステム開発 特許事務所で特許技術者
仕事環境 同期は50人。同じ千葉大出身の人も2人おり、とても仲が良く、結束も固かった。 残業が徐々に増え、最高時は月に150時間。時間の無駄が多くストレスがたまる。 特許技術者は12人で女性はIさんだけだが、何らやりにくいところはない。
やりがい 就職時に「女性らしい仕事のほうがいいのかも」と思ったこともあり、最初は戸惑いの中から仕事を始める。 大規模のプロジェクトで防衛システムを作るだけにやりがいはあったが、その分、プレッシャーも多かった。 仕事は出来高制。自分のペースで仕事に強弱がつけられ、頑張れば頑張っただけの成果が得られる環境。
私生活 大学の仲間とは卒業後も定期的に会っていたが、仕事が徐々に忙しくなり、参加できないことが多くなる。 入社3年目で大学時代からつき合っていた男性と結婚。帰宅時間がご主人よりも遅く、会うのは朝くらいとすれ違いの生活。 18時ころには帰宅し、土日も自宅で過ごせるので、週末は主に夫婦でドライブ。趣味でホームページ作成も始める。
将来展望 信頼できる上司が資格取得を勧めてくれたこともあり、テクニカルエンジニア/ネットワーク取得を目指して勉強する。 忙しすぎて将来のことなど考えられない状況。とにかく目の前にある仕事を片付けることに精いっぱいだった。 入社5年目には年収1000万円になることが目標。そのために現在、弁理士の資格取得に向けて勉強中。
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山田せいめい(総研スタッフ)からのメッセージ
今回、このコーナーではじめて女性エンジニアの方にご登場いただきました。千葉大でも、また就職後も基本的に「男性社会」の中で生活を送ってきたIさんですが、そのことに不自由さを感じることもなく、逆にご自身から多くの仲間と積極的に交流を持ち続ける、Iさんのポジティブな姿勢に感心してしまいました。ちなみに現在のご夫婦仲は良好だそうです。

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