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決算シーズン到来! 著名アナリストが指南 株価が評価する意外な技術力 株価が評価する意外な技術力
株価が評価する意外な技術力
株価は企業業績を反映するひとつの数値。転職先企業を研究するうえでも、株価の変動を無視することはできない。決算シーズンの今、改めて株価の動きから、企業のどんな技術力、戦略が見えるかを探っていく。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/関洋子 イラスト/takashi kuwahara) 作成日:04.06.30
株価の変動にはこんな視点が含まれている
株価を動かす4つの要因とは
 企業決算の発表が相次ぐシーズン。それを受けて株式市場も値動きが活発になる。日ごろ、「株」に縁遠いエンジニアにとっても、「株」への関心が高まるころといってもよいかもしれない。

村口和孝氏
村口和孝氏
日本テクノロジーベンチャーパートナーズ投資事業組合(NTVP)
ゼネラルパートナー
NTVPは日本を代表するVC(ベンチャーキャピタル)のひとつ。技術資産をもつベンチャーに投資し、上場後のキャピタルゲインを得ることがビジネスの柱。証券アナリストの資格も持ち、企業株価への視点は冷徹で奥深い。
 そもそも株価とはどのような要因で動くのか。日本テクノロジーベンチャーパートナーズ投資事業組合の村口和孝氏に解説していただいた。

 一般に企業価値を判断するには、その企業がもつ特許や技術の独創性、マーケットシェア、実際の業績、財務諸表データなどを理解する必要がある。これらを総合的に判断して、「この会社は本来これだけの力がある」と投資家が判断することを「ファンダメンタルズ分析」という。ファンダメンタルズが強い企業は、理論的には株価も高いことになる。

 しかし株価とは不思議なもので、このファンダメンタル的な要因だけでは決まらない。右肩上がりに上昇が続いていると、いつか相場はピークを打ち、下落するだろうという判断も生まれる。逆に底を打つ時点を見越して買いに走るというのも投資家心理としてはよくある。そうした投資家の集合心理が株価チャートに反映される。これらのチャート、移動平均など株価データのパターンを基礎に、相場の先行きを予測するのが「テクニカル分析」だ。

 ファンダメンタルズ、テクニカル共に、フォーマル(公知)な情報だが、投資家はそれだけで判断するわけではない。アナログでインフォーマル(非公式)、例えば「この会社の製品がよく売れているらしい」「最近この会社のCMが話題になっている」という情報も重視する。「ひと言でいえば、世間で受け止められているその会社の評判ですね」(村口氏)。

 さらに企業の代表者の考え方も、投資家には重要な材料になる。
「とりわけ技術系ベンチャーの場合、社長が何を思って製品を作ろうとしているのか、自社の技術にどこまで本気になっているのかという意欲の部分は、きわめて重要な情報になります」(村口氏)
事業のプロセスごとに投資判断
 製品やサービスが私たちの目に触れるまでには、企画、研究・開発、仕入れ、製造・加工、販売などのプロセスがあり、それらの商取引の結果として売上、利益などの財務数字が生まれる。これまで述べた投資判断の4つのポイントを、事業化プロセスに沿って図式化したのが下図だ。
図:株価に反映される4つの視点
 投資家は技術の独創性を評価する一方で、「価格が高い」「量産化が難しい」など事業化のリスク(ボトルネック)も同時に見ている。こうした情報収集を踏まえた総合的な判断が株価を形成するのだ。
コラム:要注意!株価を上下させる“特殊要因”


 株価が高いからといって、それらがすべてよい会社とは限らない。株価を押し上げる特殊要因のひとつに“仕手筋”というものがある。仕手筋とは特定の銘柄に狙いをつけて大量の買いを入れ、意図的に株価をつり上げようとする投資家グループのこと。彼らの標的になって、理由もないのに極端に値上がりする銘柄のことを“仕手株”という。

 また、投資家心理はうわさや思惑でも動くので、これも要注意だ。「あの企業は買収されそうだ」という話が広まると、株価は短期に変動する。中にはあえて流される虚偽情報、誹謗中傷もあり、極端な場合は“風説の流布”といって証券取引法違反の犯罪に問われる。短期的・極端な値動きに惑わされないことが肝心だ。

株価と技術力の相関関係を見てみよう
 技術力を売り物にする製造業の場合、その技術力をどのような情報から判断するかがポイントになる。NTVPの投資対象のひとつ、ノース(東京・豊島区)の東証マザーズでの株価を例に、その値動きがどのような情報によって左右されるかを見ていこう。
事例 株式会社ノース
  会社概要
 
従来手法に比べ低コストのプリント基板多層接続技術「NMBI」などに強みのある開発研究型ベンチャー企業。基板メーカーに技術供与し、初期契約料やロイヤリティ収入を得るビジネスモデル。設立は1990年。2002年12月マザーズ上場。2003年9月期の決算では、約5億円の最終赤字を計上。
図:株価推移グラフ

「驚き」を与える技術・事業の突然の発表が株価を刺激
 例えば、発明が特許化された、賞を取った、販路をもつ企業と提携したなどは「買い」のサインで株価が上昇し、反対に技術は優れているのに決算の数値が上がらないのは「売り」のサイン(株価の下落)になる。むろん投資家によってはその反対行動を取る人もいるが、その相反する行動のもみ合いの中から、次第に適切な株価が導き出される。投資家の中には企業から発表されるニュースにも、「すでに織り込み済み」として反応しない人もいる。マーケットが反応するのは、ニュースの内容の良否を問わず、投資家に「驚き=サプライズ」を与えた場合だ。

エンジニアが評価する優れた技術も売れなくては評価されない
 ノースの場合は、同社のコア技術である「NMBI」が発明大賞(池田特別賞)を受賞したり、米国特許を取得したりというニュースを受け、上場後、約半年間までは株価も高水準で推移していた。そして、その技術のポテンシャルが高く評価されたためだ。しかし、その後、四半期ごとの決算数字が芳しくないため、株価は下落傾向に。時折、前向きな設備投資や海外有力メーカーとのライセンス契約などのニュースが伝わり、株価は一時反騰するものの、「織り込み済み」として市場全体としては冷めた反応を示している。

 同社の半導体実装技術への評価は決して低くないが、技術を収益につなげるにはまだ時間がかかると、マーケットは見ているということだろう。
株投資の視点を転職時にも活用しよう
株価上昇局面の企業は、転職にもプラス
 ここまで読まれて、勘のいい読者は気づかれたかもしれないが、実は株式投資と会社選びはよく似ているということ。転職時の会社研究に株式投資的な視点も入れることを、Tech総研はお勧めしたい。

図:株価と業績で企業を分析
これはあくまでも一般的な傾向で、
すべての企業に当てはまるわけではない。
「株式投資は企業の将来性の予測です。安い株を買って、上昇したときに売って利ざやを稼ぐというのが基本パターン。最もよいのが株価水準はまだ低いが上り調子の企業。ファンダメンタルズは優れているので注目はされているが、それが十分、市場に反映していないという企業です(1)。将来は利益が出る、つまり株価ももっと値上がりすると判断すれば、即買いでしょう。

 半面、現時点で業績のよい会社、将来も安定していると考えられ、株価が順調に推移している企業
(2)。こういう株は人気がありますが、たいてい既に高値で安定しているため、なかなか買いにくいし、将来大化けする可能性もあまりない。つまり、投資行動のパターンというのは、転職を考えるときの思考と似ていますよね」(村口氏)
● 業績好調なのに評価されない企業とは
 企業の中には、そこそこ利益が出ているのに株価が低いままだったり、ほとんど変動のない企業もある(3)。これは、今は儲かっているが将来の成長を支える新しいネタ=技術がないと判断されているケースが多い。転職先としても一般的には不適といえる。また赤字続きで、評価が下がる一方の企業は、株価は買いやすいが、投資判断にはかなりのリスクがある。転職判断としてもリスクを覚悟しなければならない(4)

 どのタイプを選んでも、リスクがゼロということはありえない。ただ、転職が株式投資と違うのは、自分がその会社に入って、会社の将来軌道を変えることができる可能性があるということだ。
エンジニアならファンダメンタルズ分析を
 技術や事業化の分析を通して、「将来はもっと売れる」、あるいは「この部分がボトルネックになっているかぎりは、将来も苦しい」といった結論を引き出すのが、ファンダメンタルズ分析。転職時にはその視点をぜひ、活用したい。というのもエンジニアであれば、自分がもつ技術やスキルで、そのボトルネックのいくつかを改善することをアピールできれば、採用される可能性が高いからだ。
常に時系列、他社比較で考えよう
 またもうひとつ、会社選びで重要なのは、“比較思考”をもつことだ。 「投資判断では、時系列的な推移で見ることと、同業他社と比較することが大切だといわれます。同業の中でその会社だけが伸びているのなら、それはなぜかと考える姿勢も大切でしょうね」(村口氏)。

 もちろん株価はあくまでも企業を見るひとつの指標にすぎない。しかし、転職判断にも役立つ指標だともいえる。 「転職を考えるときは、投資家向けのIR情報も見てほしい。企業はここでは決してウソをつけませんから。さらに自分で少しその会社の株を買ってみることも企業研究のうえでは大変勉強になるでしょう」(村口氏)

 興味や関心のある企業の株価を、1年以上のレンジでグラフ化し、その企業が発表した技術的なトピックスを当てはめてみよう。そこからはエンジニアの視点とは違う、株価ならではの意外な技術の評価がきっと見つかるはずだ。市場がポテンシャルを感じている企業の技術を自分の技術でさらに評価を高くする──。エンジニアのみなさん、これを機に「株式投資思考での転職」を実践してみては?
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関洋子(総研スタッフ)からのメッセージ
みなさん、株価の変動をどういうふうにとらえていましたか? 株価は、技術力も大きく影響を及ぼします。もしかしたら、読者自身の技術力が、株価を大きく変動させているかも……。そんな期待をもって、株価を眺めてみるのも面白いと思いませんか?

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