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今月のデータが語る エンジニア給与知っ得WAVE! Vol.18 「サービス残業」が減らないのはなぜか?
短期開発全盛の今、エンジニアにとって、逃げたくても逃げきれない残業。半数以上が「サービス残業」の経験があるという。エンジニア個人では制御できないものになりつつある「サービス残業」の実態を、今回は明らかにしてみよう。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき) 作成日:04.06.23
増えるサービス残業。労基法違反で5億円払った企業も
 サービス残業とは、正規の残業代が支払われない賃金不払い残業のこと。社員が会社に残業申請しないために、残業時間としてカウントされないのだが、決して社員のサービス精神という「善意」からばかりではない。職場全体が「サービス残業は当たり前」という雰囲気になっていたり、「残業代には上限があって、それ以上はいくら残業しても無視される」とか、「定時にタイムカードを押した後、深夜まで働いている」というような状態の中で、所定時間内に業務が終わらないために、サービス残業をせざるを得ない場合もあるのが現実だろう。近年は、厳しい競争と不況下での人員削減と賃金抑制で、サービス残業は増える一方だという。

 もちろんサービス残業は労働基準法違反だ。たとえフレックスタイム制などの裁量労働制を採用している企業でも、1カ月の所定労働時間などその要件をきちんと満たしていなければ、サービス残業は発生する。
 サービス残業の実態が判明すれば、企業は労基署から勧告・指導を受け、未払い分の残業代を社員に支払わなくてはならない。この5月にもある自動車部品メーカーが、2年にわたる社員約1700人に対する未払い残業代をなんと5億7600万円も後払いしたというケースが報告されている。都内18の労基署の調べによる2003年の勧告・指導例では、都内の180の企業が社員約6万人に対し、計約42億円の割増賃金を支払ったという。前年度に比べ、企業数で1.98倍、労働者数で2.45倍、割増賃金支払額で1.62倍と大幅に増加している。

「一定時間でカット」「みなし労働」「雰囲気」で申請できず
 
データ1 6割以上のエンジニアが「サービス残業」している!
データ1
 Tech総研編集部が行ったエンジニア500人に対するアンケートでも、サービス残業がまん延している実態が明らかになっている。「サービス残業をしている」人の割合は65%と多い。サービス残業時間は「月に20時間以内」が32%、「月に20〜40時間程度」が17%。なかには「月に80時間以上」という人が5%いる。(データ1)

 なぜ残業時間を申告できず、サービス残業となってしまうのか。最も多い理由が「一定時間を超えると、残業手当はカットされる」といういわゆる残業規則上の理由だ。自由回答では「一定時間を超えると事前申請が必要になるため、超過分を翌月に繰り越すようにしているが、超過が毎月続くと吸収できない」というナマの声も聞かれた。(データ2)

 
データ2 なぜ「サービス残業」となってしまうのか?
データ2

 ついで「残業代は支給されるが、申請しにくい雰囲気がある」「みなし労働時間制などによって残業手当相当分が固定額」などの理由が挙げられている。なかには「年俸制のために残業代は支給されない」「管理職のため残業代が出ない」という賃金制度上の理由もあるが、半面、「自分のために自主的にやっているため申請しない」という理由もみられる。
自主的にサービス残業、そのココロは?
 この“自主的”という理由の背景はいろいろと考えられる。人によっては「与えられた仕事が時間内に終わらないのは自分のせいだから」という心理が働くのかもしれない。しかし、仕事の量が多いのか、本人の力が足りないのかは判断が難しいところだ。

 また、「残業代を全部申請すると採算が取れなくなる」「プロジェクトの採算を赤字にしたくない」など事業の採算性に対する配慮もあるようだ。しかし、残業代を含めると赤字になるような仕事って、そもそも受注の仕方に問題はないのだろうか。上司から「残業になるのはおまえがトロいからだ」などと小言を言われるのがいやで、あえて申請しないという人もいる。「社内の査定にひびくため、申請できない」という理由も含め、自主的以外に、実際はそうせざるを得ない“半強制”の実態も浮き彫りになる。
今後もサービス残業は減らない!?
 
データ3 「サービス残業」は今後も
増える・変わらないが圧倒的多数
データ3
 今後、サービス残業は増えるのだろうか。「変わらない」が56%、「増える」が41%。(データ3)どうしたらサービス残業をなくし、より効率的に働けるようになるのか。即効性のある答えは手元にはないが、少なくとも長時間働きすぎて体調を崩したりすることのないよう、くれぐれも注意したい。
 一方、報酬の得られない残業を続けていると満足感が得られないばかりか、エンジニアの成長度にも影響する。不本意でもサービス残業をしなければならないという、企業と個人の“不平等な”関係。そこから脱するための自己防衛策はつねに講じておきたいものだ。
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