技術誌から逆読み！エンジニア生息ＭＡＰ

500人アンケートでわかった自信・年収・幸せ度　技術誌から逆読み！エンジニア生息MAP

新しいものに敏感なエンジニアは、技術情報が大好き。特に技術誌は編集部の個性が出やすく、情報以外の「楽しみ」を求める読者も多い。おのずとエンジニアの選択眼はシビアになる。ならば逆に、技術誌からエンジニアの生態が分析できるはず。その結果は……

（取材・文／総研スタッフ　高橋マサシ）　作成日:04.06.16

アンケートで尋ねたのは「主に実務のために読む技術雑誌」（最大3冊まで）。同時に、「購読理由」「現在の幸せ度」「専門技術への自信度」「キャリアでの重視項目」などを併せて聞いた。調査対象は25歳～39歳、ソフト、ハード、化学などあらゆる職種のエンジニア500人だ。

　回答総数704冊、総雑誌数129冊、読まない人が33人。その中で得票の多かった人気雑誌ベスト10を、全体分布と比較してマップにした。縦軸は自分の「専門技術への自信度」、横軸は「毎日の実感から思う幸福度」（ともに5段階で選択）。ちなみに500人の全体分布は以下だった。

　かなりある：8％、多少ある：30％、人並み程度：45％、あまりない：14％、全然ない：3％

　絶好調：3％、いい感じ：27％、可もなく不可もない：44％、不満のほうが多い：22％、何のために生きているのかわからない：4％

　特徴的なのは「技術誌を読まない」と答えた人。マップでわかるように、技術に自信がなく、不幸せと思う割合が高かった。逆に購読者は、幸不幸は別にして、平均以上に技術力に自信をもつ人ばかり。読むから自信がつくのか、自信がないから読みもしないのか？

アンケートでは職種を21種類に細分化して尋ねた。また「重視するキャリア」は、「専門能力の発揮」「管理能力の発揮」「創造力の発揮」「リスクのない安定性」「自立・独立志向」の5つから選択してもらった。読者傾向が強かった4誌を紹介！

機械設計（9人）と回路設計（8人）が多いが、SEがWeb・オープン系で13人、汎用機系で8人と相当数いる。

30代が85％、35歳以上で50％と高年齢が多い。39歳が21人で最多だった。

600万円台、700万円台が多い。900万円以上も11人いる。

重視キャリアは「創造力」。幸せ度も技術力も高いが、特に幸せ度5と4の人に限れば、重視キャリアで「安定性」と「独立志向」はゼロ。逆読みすると……クリエイティブな仕事をこなし、ときには危ない橋も渡るが、企業を飛び出す気持ちは弱い、典型的な大手企業のハイパーエンジニアだ。

コンサルタントが6人と割合でかなり多い。ソフト開発系は合計8人となぜか少なめ。　

28歳以降おおむね同数だが、年齢が上がるにつれて多少人数が増加。

400万円台、500万円台、700万円台が多い。600万円以上が40％超。

技術への自信度は10誌中ナンバーワン。重視するキャリアは「専門能力の発揮」。毎日が幸せ。そんな技術おたく（!?）の購読理由は意外にも、「学生時代からの愛読書」「故竹内均が好きだから」「雑学の宝庫」とピュアなマインドに溢れている。そのイメージは……永遠の理系少年！

Web・オープン系SEが20人中16人と突出。ハード系は当然（？）ゼロ。

20代が25％、25～35歳の間に平均して分布。

世代が若いせいか400万円台が多い。あまり高所得者はいない。

技術に自信をもつ若手エンジニアが読者。購読理由は「情報収集のため」がほとんど。そして、キャリア志向は「管理能力」。幸せ度の中庸さから逆読みすると、優秀な自分がなぜか恵まれない環境にあり、現状から脱出するためにプロマネを目指している……。深堀りしすぎ？

回路設計者が8人。総数が13人なので回答者の60%以上になる。

30半ば以降に平均して分布。

600万円台と700万円台が多いが、800万円台以上はいない。

なぜか不幸せ感がかなり高い。技術の自信度は4と2が多くて両極端。年収はいいほうだがずば抜けてはいない。購読理由からは「きちんとした本だから」というメッセージが読み取れる。環境はそれぞれだが、「トラ技」の読者は、典型的なマジメ系ハードエンジニアではないか？

最も回答の多かった技術誌は『日経エレクトロニクス』。ダントツ人気で得票数105を集めた。しかも幸福度、技術自信度がともに高く、幅広い職種のエンジニアが購読中。その秘密を探るべく、日エレ編集部を取材した。

　日エレの編集者は30人弱。2人を除いて全員が理工系学部の出身。しかも、その半数がマスター。そんな理系人間が常に新ネタを探し回っているのだ。浅見編集長は語る。
「企画会議はもう『吊るし合い』です（笑）。皆思い入れが激しいから、『それ、ウソじゃない？』なんて相手を罵倒するのは日常茶飯事。企画が通って構成、取材、執筆となりますが、特集記事で合計4週間ほどかかります」

日経エレクトロニクスの編集者たち。
手前中央がお話を伺った編集長の浅見直樹氏

　そんな同誌の特集記事は、ページ数が多くて内容が濃いので有名だ。
「うちの読者は問題意識の高いエンジニアが多いから、『知識』なら既にネットで検索している。だから載せない。伝えたいのは『考えるための材料』です。どうしても各記事の内容は厚くなります」
　編集部の調査によると、勤務先で読む読者は4割弱。いちばん多く読まれるシチュエーションは週末の自宅、次が平日の通勤電車。読者の平均年齢は41歳だそうだ。

　入社後一貫して日エレで18年。そんな浅見編集長には業界内での知己も多い。ソニー・コンピュータエンタテインメント（SCEI）の代表取締役社長、久夛良木健氏もそのひとり。
「国際学会でSCEIがLSIの発表したとき、うちで『プレステに組み込むと見られる』と書いた。そうしたら久夛良木さんから電話があって、『でたらめな記事を書いた記者を出せ』と。当時副編集長だった私が対応したら、謝れというわけです。間違っていると思わなかったので、『謝りません』と答えたら、『出入り禁止だぞ』というから、『結構です』（笑）」

　しかしその後、浅見氏は発行前の最新号を、直接SCEIに届けに行く。いい加減な雑誌と思われたくなかったのだ。5、6回目に帰ろうとすると、受付の社員が「社長が会う」という。驚いて向かうと「記者会見があるので来い」。その記事を書いてから親交が深まり、創刊30周年記念式典では、読者代表として久夛良木氏があいさつをしたという。そう、実は彼も日エレの愛読者だったのだ。

『日経エレクトロニクス』の発行部数は約4万部、同誌を引っ張る浅見氏の口癖は「エンジニアであれ」だ。
「編集者には常々、マスコミではなく、エレクトロニクス業界に就職したと思えといっています。われわれはエンジニアなんです。だからこの仕事、面白くてやめられない」

日エレ読んで技術力アップだ！

性格分類には数多くの手法があるが、ここでは分析心理学の祖といわれるスイスの精神学者、カール・ユングの考え方を参考にした。質問内容は「初めての絵を見たときのあなたの反応」。選択肢は8つ。どこまで当たることやら……。

　ユングは心理機能を思考、感情、直感、感覚の4つに分けた。一例だが、初めての絵を見たときに、絵の意味を客観的に考えようとする人（思考型）、絵が好きか嫌いかを主観的に判断しようとする人（感情型）、絵から何か別の発想を得ようとする人（直感型）、絵の色や形を的確に把握しようとする人（感覚型）に分かれる。4つの機能にはそれぞれ外交的、内向的性格に分類されるので、合計8つになるわけだ。
　アンケートの全体分布は以下で、「内向的・思考型」が4分の1を占めた。

　外交的・思考型：12％、外交的・感情型：16％、外交的・直感型：11％、外交的・感覚型：8％
　内向的・思考型：25％、内向的・感情型：14％、内向的・直感型：4％、内向的・感覚型：10％

「内向的・思考型」は典型的なエンジニア像とも思えるが、雑誌別の傾向は大きく分かれていた。この理由は読者の職種や年齢よりも、個性や感性のベクトル差のようだ。しかし、技術誌によりこれほどエンジニアの生態が違うとは……。やっぱり技術誌は熱い！

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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ

　生息MAPはいかがでしたか？　出版不況などといわれる昨今ですが、やっぱり雑誌には独特の味があるもの。各誌を読みましたが、立ち位置やスタンスはそれぞれですね。ちなみに日エレは、「打倒ITメディア」を合言葉にしているそうです（Ｔｅｃｈ総研も？）。次は第2弾として、『趣味の技術誌でわかる僕って幸せ？」度』を計画しています。お楽しみに！