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カミナリ型、理論攻め型、気まぐれ型… 「オマエのせいだ!」暴走顧客のクレーム撃退法

顧客志向ブームの波にのってか、わがまま放題の顧客たち。その結果、プロジェクトの軌道修正や納期に追いまくられるのはエンジニア。納品したと思ったら、今度はバグや欠陥が──。相手をこれ以上怒らせない言い訳、だれか教えて!
(取材・文/関洋子 総研スタッフ/宮みゆき イラスト:蛭子能収)作成日:04.06.09
Part1 吹き荒れる“クレーム嵐”にエンジニアの苦難も止まらない
「お客様は神様です」──。いつの時代も、ビジネスにおいて、顧客は最も大事な存在。もちろん、そんなことは、エンジニア自身も百も承知。しかし、「気分で仕様変更を繰り返す」「自分の提案はないが、文句はいう」「バグや欠陥を発見すると、ネチネチと責めてくる」など、扱いづらい顧客がいるのも現実。そんな状況にエンジニアは、「顧客を満足させ、ありがとうといわれる」ことに、幸せを感じる余裕さえなくなり、疲弊感を感じている。

 そんなクレーム地獄の日々から、抜け出すためにはどうしたらいいのだろうか。ここでは、「コスト(見積もり)」「タイムスケジュール(納期)」「コミュニケーション(顧客との折衝)」「品質(バグや欠陥)」という4つのシーン別に、最適な言い訳法を考えていこう。
シーン1 コスト(見積もり)のクレーム

POINT 1
 見積書のクレームには、項目一つひとつに対する細かいチェックや計算ロジックに対する説明が求められる場合が多い。解決方法は、顧客が納得するまでその内訳を説明すること。上司に応援を頼み、相手の上司まで巻き込んで対処するのも得策。
POINT 2
 製品納入後のクレームは、顧客のニーズをうまく満たせなかったことから起こりやすい。お金で解決しようとする場合は、仕様書や契約書を見直し、顧客に解決方法の選択権を任せよう

事例1 価格は変えず、機能は10倍にしてほしい(Webシステム開発 34歳) 事例2 調達先まで注文をつけてくる(運用 27歳)
オンラインシステムのサービスインから1カ月後、「処理時間を現状の10分の1以下にしてもらわないと、仕事にならないよ。もちろん金額はそのままで」と言われた。
 
最初の見積もりから価格交渉されたので、打てる手はすべて打って出した見積書。しかし担当者は、調達先までチェックし、嫌がらせのようにダメ出しを連発した。
 
撃退法 顧客自身に解決の選択権をゆだねる 撃退法 上司をうまく使ってトラブル回避
システムの予算から対応可能な方法および費用対効果を説明し、予算内での対処方法を顧客に選択させた。顧客の満足度を高めることはできなかったが、結果的にその後のクレームはなくなった。
実は相手側の担当者が見積もり内容を理解できていなかったのが原因。話をしてもラチが明かないので、プロジェクト責任者に相談し、責任者から相手側の上司に見積書の決済を依頼したところ、無事解決できた。

シーン2 タイムスケジュール(納期)のクレーム

POINT 1
 納期遅れに対するクレーム処理は、とりあえず上司に相談のうえ、顧客先に誠心誠意謝ることに尽きる。その後その場で善後策を提示し、スケジュールの遅れをカバーする。
POINT 2
 顧客の無理な要求による納期遅れのクレーム対応は、ベストな方法をとったことを理解してもらえるよう、説明すること。しかし、多くの場合、顧客側に納得してもらえず、損失をかぶったり、ほかのフェーズで回収したりという結果になる。

事例1 「遅れてもいい」は本音じゃない(サービス 36歳) 事例2 打ち合わせの準備不足が命取り(回路設計 28歳)
工場のメンテナンスを、定期修理時間で完了してほしいと無謀な依頼があった。多少は若干遅れても構わないといっていたのに、少し遅れただけでクレームを受けた。
 
打ち合わせの準備が間に合わなかったので、顧客に延期を申し出た。すると顧客から「それではスケジュールが守れなくなるだろう」とネチネチ言われた。
 
撃退法 誠意ある態度で丁寧に説明しよう 撃退法 顧客に謝った後、挽回策を提示しよう
腹立たしさを抑え、メンテナンスにかかった作業工程を明らかにし、私たちがとった方法がベストな方法であることを説明。誠意ある対応により、顧客は満足。その後も継続的に仕事がもらえた。
中身のない打ち合わせをしても仕方がないので、顧客に謝り、こちらの希望する期間より少し早めに次の機会を設けた。顧客には不満が残ったが、とりあえず怒りは収まった。

シーン3 コミュニケーション(顧客との折衝)のクレーム

POINT 1
 最も多いのが、仕様に対する理解の差によるクレーム。くどいと思われるぐらい丁寧な説明を心がけること。また、顧客との会話は、常にメモをとることも重要。もめたとき、それが証拠になる。
 また「顧客は気まぐれな存在である」ことを頭に入れておくといい。しかし、あまりにもひどい顧客の場合は、取引をやめてしまうのもよい。その場合は、必ず上司に相談すること。

事例1 自分のミスを人のせいに(回路設計 30歳) 事例2 顧客の気まぐれに振り回されて(機構設計 27歳)
顧客自身のリソース不足が原因で開発が遅れた。原因は明らかなのに、何かと言いがかりをつけて、私たちの側の責任にされそうになった。
 
設計の変更依頼が何度もあった。しかも突然。それに対応して徹夜で仕上げたら、また気まぐれで、最初の設計に戻すようにいわれた。
 
撃退法 やり取りの履歴をとっておこう 撃退法 顧客の言い分を黙って受け入れる
普段から顧客とのやり取りはすべて、履歴をとっておいた。それを証拠として示して、それがどちらの責任なのかを明確にした。顧客も納得。円満に解決できた。
泣く泣く、依頼どおりの設計にした。顧客は満足したようで、その後の取引も順調。しかし、気まぐれな人であることを見抜いていればこのクレームは防げたかも。

シーン4 品質(バグや欠陥)のクレーム

POINT 1
 仕様書どおりのパフォーマンスが出ない、スペックを満たしていなかった、製品に欠陥があったなど、品質に関するクレーム対策は、まずはその原因を追求し、早急にそのクレーム内容を解決することが先決だ。
POINT 2
 また、顧客のイメージとは違った、使いにくいことが判明したなど、顧客の感性や感覚、気分によるクレームもある。その場合は論理的な根拠を提示し、納得してもらおう。それができなければ、日を改めて顧客と最善策を考える。

事例1 機能が満たされていない(Webシステム開発 26歳) 事例2 サービスへの理解不足?(ネットワーク 31歳)
ショッピングサイトの構築を行った。カットオーバーしてしばらくしたら、予想以上のアクセス数により、レスポンスが遅いというクレームがあった。
 
「品質はよくない」という前提のうえで導入したXDSL回線。しかしそれに対し、顧客は専用線並みの品質を要求。品質を上げるにはサービスを変えないと……。
 
撃退法 素早く対処し、結果をレポートで提出 撃退法 サービスの詳細について詳しく説明
パフォーマンスを上げる対処方法を具体的にあげながらプログラムを修正。その後、パフォーマンスがどのくらい上がったかというレポートを提出したところ、信頼を得て多数の依頼を受けている。
ベストエフォートタイプの回線を、あたかも専用線のように使える説明が誤解を生んでいた。インターネットやADSLの仕組みをじっくり解説し、誠意をもって対応。理解が得られたが、今後のビジネスは不安。
Part2 顧客クレーマーのタイプ別に対応ノウハウを考える
 クレームの種はどんなところにも潜んでいる。それを未然に防ぐのはなかなか難しい。しかしクレーマーにもタイプがある。その特徴をつかみ、対処すればうまくいくはず。そこでTech総研ではクレーマーを、「傲慢なお役所型」「気分支配型」「神経質な小姑根性型」「権力志向型」「技術に詳しい理論型」の5タイプに分類。さて、これらのタイプ別にはどんな対処法が有効なのか。
傲慢なお役所型 特徴:高いプライドから自分の非を認めない。さらに、そのミスを相手のせいにする。それを悪いとは思っていない。
事例:(システム開発・30歳) 撃退ノウハウ
顧客側が用意したプロジェクトメンバーのスキルが低いのにもかかわらず、役人タイプで非常に横柄な態度をとる担当者に、予定以上にかかった工数を持ち出しにしろといわれた。
原因はあきらかに先方にある場合でも、それを指摘すると関係が切れてしまうので要注意。とりあえず、下手に出るふりをして、損をしないよう改善策を提示しよう

わがままな気分屋型 特徴:その日の気分でクレーム内容をころころ変更する。自分の思いどおりにならないと感情を爆発させることが多い。
事例:(システム開発・29歳) 撃退ノウハウ
途中に何度も確認も兼ねて打ち合わせを重ねて決定した仕様にもかかわらず、納品したシステムが意図どおりに動かないとヒステリックに怒鳴られた。
密にコミュニケーションをとり、相手の本音を見抜くこと。感情的になっている場合は、とにかく時間をおくのが得策だ。

神経質な小姑根性型 特徴:かなり細かい部分までチェックし、しかもネチネチと言いがかりをつけてくる。人のあら探しがうまいタイプ。
事例:(機械設計・32歳) 撃退ノウハウ
機械設計書を提出したところ、構造や寸法などに関して、驚くくらい一つひとつに対して事細かにクレームを受けた。よくいえば几帳面だが……。
できる限り細かく相手の意思を確認し、提出書類も念入りにチェックする。とにかく丁寧に誠意をもって対応することで、相手の満足と信頼を増すことが可能。

ワンマン社長型 特徴:自分の優位な立場を利用して、権力を誇示しようとする。ミスを発見したクレームの場面ではかなり高圧的。
事例:(運用保守・34歳) 撃退ノウハウ
竣工から1年以上の経過後、製品に対して明らかに仕様変更と思えるクレームを、こちらに非があるかのように、高圧的で一方的に申し渡された。
とにかく誠心誠意謝る。早急な対応だけではなく、特典をつけることもお忘れなく。コミュニケーションを密にとり、相手の権力志向をくすぐるツボを抑えよう。

技術に詳しい理論型 特徴:技術の知識が深いため、クレーム自体もっともなことが多い。技術者にも容赦なく理論的に責めてくる。
事例:(運用監視・31歳) 撃退ノウハウ
冗長構成を取っているシステムであるのに、サービスの停止が伴う作業が発生するのが納得いかないとつめられた。
解決策は原因をとにかく論理的に解明、説明し、技術的な対策案を提示することで、納得感・信頼度も増し、その後の関係も良好になる。
Part3 クレームにのみ込まれず、エンジニア的世渡り術で乗り切る
 クレームにのみ込まれず、いかに相手を怒らせずに解決させるか──。
まずは「とりあえず、誠意をもって謝る」──。これに尽きる。たとえ相手にミスがあっても、それを謝る前に指摘すると、逆ギレを起こす場合が多いからだ。「申し訳ありません」と言ったのち、顧客の言い分をひととおり聞いてみよう。

 だが、そのまま「相手がいうがまま」に聞き入れているだけでは先へは進めない。逆襲はその後。論理的にクレームの原因と、その対処法について丁寧な解説を心がけよう。注意したいのは、相手のクレームに巻き込まれ、感情を高ぶらせないこと。しかし、どんなに冷静に説明しても怒りが解けない場合は、ひとりで抱え込まずに上司に判断を仰ぐ、または任せてしまうこと。処理できないことによる自身の評価を恐れるより、客先とのトラブルを避ける方が先決だからだ。

 このような手段をとりながら、相手を納得させ、クレーム対応の悪夢サイクルを断ち切る。クレームから顧客ニーズを探ることも重要ではあるが、それをうまくかわすことで、その疲弊を軽減し、開発に専念できる環境をつくるための世渡り術も、これからのエンジニアには必要な時代になってきているのだ。
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宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ
 今回、エンジニア500人に聞いた「顧客からのクレーム」をご紹介しましたが、実はそのアンケートの中で、自分が顧客の立場でクレームを入れた経験についても聞いてみました。客観的に双方を見比べると、自分がクレームした経験のほうが、かなり具体的でリアルな描写でその内容が書かれていたように思います。発注する側、される側の両方の立場でエンジニアの苦難が多いのだなぁと感じました。みなさんはどちらのケースが多いですか?

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