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Java、セキュリティ、AV技術、サーバー技術……生かせるスキルは幅広い 次世代モバイル向けアプリ開発☆最新採用事情
日本では2001年にFOMAが登場し、3G(第三世代)サービスが始まった。それが今年、欧州、アジアなど世界のあらゆる地域で本格的な3Gサービスが始まっている。そんな3G元年を迎えた今、次世代携帯向けアプリ開発の採用事情は以前と比べてどう違うのか、探っていこう。
(総研スタッフ/関洋子) 作成日:04.05.19
高速化、定額制で変わるアプリ開発
めまぐるしく動く!携帯関連ニュース
2003年
10月14日 ボーダフォンが、地上アナログテレビチューナーを搭載した携帯端末発売を発表
10月27日 ソニーとNTTドコモが合弁で、非接触ICカード技術「FeliCa」を搭載した携帯電話向けのサービスを実現するため、フェリカネットワークスを設立
10月22日 KDDIと沖縄セルラーが、11月から最大2.4Mbpsのデータ通信が可能な3Gサービス 「CDMA 1X WIN」とパケット通信料定額サービスを提供すると発表
12月12日 KDDIと日立製作所 が、CDMA 1Xをベースに差し替え可能な接触・非接触デュアルインタフェースICカードを搭載した携帯電話の共同開発を発表
2004年
3月11日 ボーダフォンが、MMS(マルチメディアメッセージングサービス)対応の海外携帯との間で、「写メール」「ムービー写メール」などが送受信できる「グローバル メール」の開始を発表
3月15日 KDDIと沖縄セルラーが、3Gサービス「CDMA 1X WIN」における最大2.4Mbps通信対応エリアの全国人口カバー率は約77%になると発表
3月17日 KDDIと沖縄セルラーが5月から韓国でのデータローミングサービスの提供を開始 3月18日 NokiaとRoyal Philips Electronics、ソニーが、「Near Field Communication (近距離無線通信技術)」を推進するフォーラム「NFC Forum」の設立を発表
3月20日 NTTドコモがテレビ電話対応FOMA端末から家電製品の遠隔操作を可能とする コントローラーの試作機を発表
3月24日 NTTドコモが、6月1日よりFOMAにパケット通信定額制を導入4月13日東日本旅客鉄道が「モバイルSuica(Suica機能付き携帯電話)」のサービスを 2005年後半から開始すると発表
 現在の携帯電話の契約者数は2004年3月末現在で約8100万人(電気通信事業者協会)。日本ではすでに「飽和状態にある」といわれる携帯マーケットだが、2003年3月末が約7600万人だったことから考えると伸びている市場だといえる。

 さらに携帯マーケットの成長性はこの「契約者数」の伸びだけで語るわけにはいかない。というのは、これらの人が、端末を2年以内に買い換えるということ。つまり携帯市場は、契約者数も伸びているうえに、買い替え需要もかなり大きい、まだまだ成長している業界だといえる。そのうえ世界に目を向ければ、さらなる広大な市場が約束されている。

固定と携帯が拮抗する世界の電話加入数

 それに拍車をかける一要因となっているのが3Gサービスの本格普及だ。情報通信分野専門のシンクタンク、情報通信総合研究所のリサーチャー、竹上慶氏は3Gの特徴についてこう語る。

「今後の3Gの特徴は2つ、高速化と定額制です。高速化については例えばNTTドコモのFOMAは384kbsp、KDDIは最大2.4Mbpsを実現しています。つまり、より大容量のアプリケーションの提供・流通が可能になるわけです。実際NTTドコモのアプリ容量は既に400KBと大容量化しています。大容量化に伴い、当然より高機能なアプリ開発が可能になるため、より高度な技術をアプリに組み込むことができるようになります。

竹上 慶氏
株式会社 情報通信総合研究所
移動・パーソナル通信
研究グループ リサーチャー
竹上 慶氏
 また定額制によって、これらの高機能なアプリケーションの利用も促進されるようになるでしょう。つまりこれからが、本当にアプリケーション開発に携わる人にとって、面白い時期になるといえるのではないでしょうか」

 ではどんなスキルをもつエンジニアが求められているのか。携帯アプリケーション開発の現場で求められるエンジニア事情について、各社のケースから探っていこう。
携帯向けアプリケーション開発企業の採用事情
CASE1 パナソニック・モバイルコミュニケーションズが提供する3G携帯端末「FOMA」 「いつでも、どこでも、だれもが使える」ー携帯の特徴を生かしたアプリの開発
岡田憲武氏
ソフトウェア開発センター
グループマネージャー
岡田憲武氏

3G携帯端末「FOMA」
パナソニック・モバイルコミュニケーションズが提供する3G携帯端末「FOMA」

可能性の広がりで重要になるアプリ開発
 携帯端末メーカー、パナソニック モバイルコミュニケーションズ。同社の端末に搭載されるアプリケーション開発を行っているソフトウェア開発センターの岡田憲武氏は、これからのモバイル市場をこのように見ている。

 「世間では『今年は3G普及元年だ』というような話題に注目が集まっていますが、アプリケーション開発において、3Gだからといって特別なことは何もありません。むしろ、携帯はいろいろな可能性をもっていることが重要なのです。例えばカメラはもちろん、電子財布にもなればカラオケ予約、AV連携もできるというように……。これからますます、いろいろなサービスを実現するアプリの開発が求められているというわけです。私たちの仕事は、『いつでも、どこでも、だれもが使える』という携帯のもつ本質を生かすものを生み出していくことなのです」
グローバルに活躍できる、夢のある分野
 ではそんなアプリ開発においてどんな人材が求められているのだろうか。

「携帯はいろいろな可能性を秘めています。そういう意味ではチャレンジャブルな人を求めています。携帯電話ソフトの開発経験がある人はもちろん、例えばカメラや動画などのAV技術、モバイルECやセキュリティなど、今後の携帯に求められる技術を有している人もいいですね」

 また今や携帯向けとはいえ、「アプリ開発は型の開発にシフトしている」という。シンビアンもしくはLinuxをシミュレートしたパソコン環境で開発されているのだ。

「この分野の経験がなくても、オブジェクト指向の知識やコンピュータ型アーキテクチャの開発経験のある人ならウエルカムです」と岡田氏。また語学力に長けている人もポイントが高いという。
「海外のオペレータやサーバーベンダーと折衝をするためには、それなりの語学力がなければならないからです。またグローバルなプロジェクトの経験がある人もいいですね」

 自分で携わったものが商品として世界中の人の目に触れる。そのうえ、活躍できるフィールドはグローバル。

「いろいろな人と出会い、視野を広げるチャンスがたくさんある。そんな夢のある業界なんですよ」
CASE2 アプリ開発専業ベンダー:株式会社アプリックス これからは海外がターゲット。得意分野を生かして、新規分野を開拓
小林 章氏
研究開発本部
ES研究開発部
部長代理
小林 章氏

海外がこれからのビジネスフィールド
 携帯電話やデジタル家電向けミドルウェア「JBlend」を提供しているアプリックス。このブランドは国内外の80種類以上の携帯電話に搭載されている。
「日本の携帯市場はすでにゆるやかな変化となっているため、海外への展開が重要なポイントだと考えています」

 と語るのはES研究開発部部長代理の小林章氏。同社はアメリカ、ヨーロッパ(ドイツ)にも現地法人を設立。日本のエンジニアもこれらの拠点と連携して、お客様への密接なサポートを行っている。

 また最近のソフトウェア開発は、「一社ですべてをまかなうことは難しい」と小林氏。同社のようなミドルウェアの開発企業が、端末メーカーに採用されるためには、いち早く高品質かつ低コストなものの提供がポイントとなる。そこで、同社では他社に先駆けて協業体制を確立し、開発を行っている。
OS、Java、UI……。得意分野を生かしてほしい
 そういう同社で求めている人材は、「何かひとつ、技術で得意分野をもっていること」と小林氏は言う。

「OSをつくるのがうまい、OSを使うのがうまい、Javaでの開発が得意、Java自身の構成を考えるのが得意、またUI(ユーザーインターフェイス)、グラフィックス、通信などの技術分野に長けているなど、なんでもいいのです。しかしこのことに関しては誰にも負けない、負けたくないという気持ちを持ち、またその技術を自分で伸ばしていること。中堅以上のエンジニアであればそれプラス全体を見通す視点を持っていること。また若手だと学習意欲や能力などポテンシャルを重視します」

 スキルとして問うのは「ソフトウェアの知識・経験があること」と小林氏。実際、組み込み経験のない、元サーバー系エンジニアやビジネスアプリ開発系エンジニアも多数活躍しているという。もう1点が「チームへの貢献・協力ができる」こと。もはや組み込み業界でも一人で作業をすべて行うことはなく、チームでの成果が重要視されるからだ。

「当社では今、『JBlend』を軸に、枝葉を伸ばそうとしています。エンジニアには新規分野を開拓する力が必要です。つまり、新しい分野、製品を開拓できるチャンスがある。また、海外展開を積極的に進めていくため、グローバルな視点も身につきます。得意分野を生かして新しいものを生み出したい人にとっては、今がチャンスですね」
サーバーサイドの技術者など、幅広い人にチャンスがある
 携帯向けアプリケーション開発エンジニアのニーズについて、リクルートエイブリックのITCA1グループキャリアアドバイザーの山本信行氏は「ずっと人が足りない状態が続いていますが、各企業とも量ではなく質を重視する傾向に変わってきています」と語る。

 しかし右図でもわかるとおり、携帯は今後、さまざまな使われ方がある。そのうえ、顧客ニーズの多様化に対しても、マーケットセグメントをきちんと行い、的確なサービスを提供していかなければならない。つまり同じデザインの携帯であっても、そこに搭載されているアプリケーションは異なるケースだってでてくる可能性があるというわけだ。そのためこれから求められる人材も幅広い。

「これからはJavaサーブレットなど、サーバーサイドの技術に長けたエンジニアも、求められていくでしょうね」と語るのは前出の竹上氏。
拡大する携帯電話の機能

 というのも、アプリケーション自体にサーバーとやり取りする通信機能を付加したものが増える可能性があるからだ。

「例えばテレビの番組で、携帯から投票を行うものがありますが、このような場合、サーバーに集中的なアクセスがきます。今後、コンテンツ事業者では高負荷対応サーバーの設計ができるエンジニアも必要になっていくはずです。そのほか、決裁や認証の知識のあるエンジニアのニーズも高まるでしょう」(竹上氏)
その後のキャリアパスも拡大する?
 「携帯向けアプリ開発の知識があるエンジニアは、その後のキャリアパスも拡大するのでは」と言うのは竹上氏。というのもこれからの携帯は、企業情報システムとの連携も視野に入っている。すなわち、ITソリューションビジネスを提供している企業の多くが、携帯アプリ開発の知識をもつエンジニアを求めることが予想されるからだ。
この業界に携わることは「ステップアップにもなるのでは」と竹上氏は予想する。

 携帯向けアプリ開発はまだまだ人が足らない状況。しかも求められているのは、組み込みJavaのエンジニアだけではない。さまざまな技術のスペシャリストが求められているのである。

 パソコン型の開発が浸透しつつある今、企業向けシステムの開発者にも、この分野への転身可能性も見えてきた。いちばん身近なものになりつつある携帯電話。しかもサービスを搭載することによって、可能性は無限に広がっていく。このような携帯の可能性を広げるサービスの開発に携わるには、今が絶好のチャンスといえるのかもしれない。
Javaを基本に各社異なる開発環境
 現在の携帯向けアプリ開発はJavaで行われるのが一般的。サンマイクロシステムズが提供しているMIDP(Mobile Information Device Profile:携帯向けのJava仕様)が基本となっている。
 しかし、各事業者はこのMIDPをピュアなまま使っているわけではない。それぞれ機能追加して使っているのが現状だ。NTTドコモ向けのアプリ開発は、これをもとに独自に機能拡張した「DoJa」を使用する。また最近、企業情報システムとの連携の強化を打ち出しているKDDI向けには、C++を使う「BREW」が使われている。
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関洋子(総研スタッフ)からのメッセージ
 私の携帯は2.5G。カメラも搭載されていますが、実はあまり活用していません。それなのに今後、ますます携帯はリッチになっていく。本当に使いこなせるか、不安です。でも、やっぱりいろいろなサービスが搭載されているモノが欲しくなってしまうんですよね〜。みなさんはいかがですか?

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