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あなたの知らないうちにその差は広がる一方 高収入エンジニアに学ぶ 技術力を腐らせない!マル秘習慣
エンジニアの多くは、技術力陳腐化の焦燥感を抱いている。特に30代はマネジメントなどの日常業務が多忙で、スキルアップに時間を割けないのがその理由。そこで今回、優秀な高収入エンジニアから技術力を腐らせないマル秘習慣を学ぶ。
(取材・文/植村恒有 総研スタッフ/山田せいめい)作成日:04.05.19
その1 高収入エンジニア直伝 大きな挫折から得た、技術を腐らせない方法
 高収入エンジニア3人が登場。彼らはいずれも、技術を腐らせない方法をいくつか身につけ、高収入を獲得している。その中からマル秘習慣として3つを選んでもらい、それぞれの習慣の背景、具体的な方法、続けるコツなどを紹介してもらった。
CASE1 20代で倒産に直面。そこで身につけた、自分を客観視する能力が技術力陳腐化を防ぐ
習慣1 自分を客観視するためのキッカケづくりとして、いろんな人に会ってコミュニケーションするのが最も有効
 自分を客観視する習慣が身についた発端は、新卒で入社し、約6年間勤めたソフトハウスの倒産でした。そうなると、自分の資質やスキルについて冷静に分析せざるを得ない。いろいろなソフトウェア開発を手がけたお陰で器用にはなったが、特定の業種・業務のスキルが身についていない。その後、意識して自分を客観視する習慣を身につけました。客観視するためのキッカケづくりとしては、いろんな人に会ってコミュニケーションするのが最も有効です。自分の世界を閉ざしていると、期待や思い込みが膨張したり、劣等感にさいなまれたりするからです。できるかぎりいろんな人と会ってコミュニケーションする。これが、私の大切な習慣となっています。

習慣2 どんな技術でも100%極めることは不可能。過信せずに謙虚な気持ちで、さらなるスキルアップに努める
 2年間の浪人生活の後、これから有望な通信系とメディア系に絞って転職活動を行い、運良く通信系のベンダーに転職できました。最初の1年間はスキルがゼロで大変でしたが、無我夢中でやっている間は技術の陳腐化は起こらない。危ないのは3〜4年目からで、自分の技術を過信したときに陳腐化が始まります。どんな技術でも100%極めることは不可能です。その技術に自信があっても、「自分には足りない部分があるはずだ」という謙虚な気持ちを忘れず、米国の先進的なサイトから情報を収集したり、その分野のエキスパートの話をよく聞くことです。技術にかぎらず、人は自分が得意とするところでつまずくとよくいわれています。この教訓を肝に銘じています。

習慣3 若い人が新しい技術を使って何かを作っていたら、そこから新しい技術を理解・吸収していく
 マネジャーになって現場の第一線を離れると、新しい技術に触れる機会が少なくなり、放っておくと技術は陳腐化します。それを防ぐ方法は、若い人と技術を共有することです。若い人が今困っていることを聞き出し、自分の経験から解決の糸口をアドバイスする。また、若い人が新しい技術を使って何かを作っていたら、詳細まで聞き出し、新しい技術の内容を把握する。実際に自分で作ったら時間がかかりますが、理解するだけならその数分の1、数十分の1ですみます。ここでものを言うのがコミュニケーション力です。ふだんから若い人の意見をよく聞き、自分の経験に基づく客観的な考えを述べていれば、若い人は喜んで体験を共有してくれるはずです。
N・I氏
N・I氏(39歳)。
米国系通信シミュレータベンダーの販売サポート部マネジャー。

N・I氏の年収変動チャート
N・I氏の技術力陳腐化を防ぐマル秘習慣
CASE2 自分の力で会社を変えられないことを実感。転職を繰り返すことでスキルアップを図る。
習慣1 スキルアップを意図して3回の転職を経験。自己責任で挑戦する転職にはそれだけの価値がある
 転職を3回経験していますが、いずれもスキルアップを意図しての転職です。エンジニアの中には会社を動かして自分のスキルアップを実現している人もいるかもしれませんが、私の経験では会社を動かすことはまず不可能。Yesと言って会社の意思に従うか、Noと言って会社を辞めて環境を変えるか、これ以外に選択の余地はない。3回の転職の中には、転職した外資系メーカーが日本から撤退してしまうという不運なケースもあり、すべての転職でスキルアップが成功したわけではありません。転職には、その都度、転職先を探して先方の担当者に会うなど、相当のパワーが必要です。しかし、自己責任でチャレンジする転職にはそれだけの価値があります。

習慣2 転職先の意図と自分のスキルアップの意図が微妙にずれることがあるが、まずは会社の意図に挑戦してみる
 転職によるスキルアップで注意しなければならないのは、スキルアップの方向が自分の意図から微妙にずれることです。何度か転職するとわかりますが、会社の意図と自分のスキルアップの意図がピタリと一致することは、まずあり得ない。だからといって、すぐさま転職するようでは元も子もありません。まずは会社の意図に挑戦してみることです。スキルの幅が広がり、さらなるスキルアップの目標が生まれてくるからです。最初は通信事業会社の運用部門への転職でしたが、そこで運用のマネジメントだけでなく、回線の仕入れも担当しました。やがてオペレーションセンターの運営が面白くなり、次の転職の面接ではその経験やスキル、志向が評価されました。

習慣3 30代エンジニアはスキルの幅を広げるためのスキルチェンジよりも上流へのスキルチェンジを優先すべきだ
 現在の会社には音声系通信のスキルが認められて転職しましたが、自分自身のスキルの幅を広げるために、グループにデータ系通信を取り入れるように働きかけました。しかし、なかなかGOサインが出ない。そうこうするうちに部長が交代し、新しい部長から「ビジネスプロセス設計のグループを作るが、やってみないか」との打診があり、すぐさま承諾しました。データ系通信への取り組みは横へのスキルチェンジですが、ビジネスプロセス設計への挑戦は上流へのスキルチェンジ。30代のエンジニアは、上流へのスキルチェンジの機会があったら、リスクを恐れずに挑戦すべきです。上流のスキルを身につければ、市場価値が全然違ってくるからです。
Y・T氏
Y・T氏(36歳)。
テレマーケティング会社ビジネスプロセス設計グループのマネジャー

Y・T氏の年収変動チャート
Y・T氏の技術陳腐化を防ぐマル秘習慣
CASE3 留学を機に挫折から脱出。外部研究会への積極的な参加で技術の陳腐化を防ぐ。
習慣1 スキルアップを図るため、思い切って米国大学のコンピュータサイエンス学部修士課程に留学する
 前の会社で、自分が提案して任されたプロジェクトが宙に浮き、悶々と日々を送っていました。両親に愚痴を言ったら、「それなら留学でもしたらどうか」。思いがけない提案に驚きましたが、コンピュータサイエンスを体系的に学びたいし、読めるだけの英語力のレベルアップも図りたい。退職して2001年4月に渡米。語学学校に通い、入学資格のTOEFL550点をクリアして、コンピュータサイエンスで評価の高いニューヨークの大学の修士課程に入学しました。研究テーマは、得意技の「ソフトウェアの高速化に関する研究」。充実した生活を送ることができ、スキルアップと英語力のレベルアップの両方で成果をあげ、2003年5月に修士課程を卒業しました。

習慣2 留学で獲得したスキルアップを生かすため、大手電機メーカーソフトウェア事業本部OS開発センターに転職
 転職活動は、もともとLinuxに興味があったので、OSまわりの研究開発に従事することができるところに転職先を絞りました。幸い米国大学コンピュータサイエンス学部修士課程での体系的な学習と「ソフトウェアの高速化に関する研究」の成果が評価されて、大手電機メーカーソフトウェア事業本部OS開発センターに転職できました。現在は、希望どおりOSまわりの研究開発に従事でき、仕事としては充実しています。コンピュータには小学生のときから親しんできましたが、大学での専攻が機械工学だったこともあって、新卒で従事できたのはアプリケーション開発。留学してコンピュータサイエンスを体系的に学ぶことは、スキルアップを図る方法としてきわめて有効です。

習慣3 30代のスキルアップには外部の研究会に参加するのが有効、たとえばLinuxのコミュニティやメーリングリスト
 米国留学でコンピュータサイエンスを体系的に学ぶことはスキルアップにきわめて有効ですから、会社が行かせてくれるというのなら喜んで行くべきです。しかし、私費留学の場合、会社を辞めて行くことになりますから、30代では難しいでしょうね。私費留学のコストやリスクを考えると、30代のスキルアップには外部の研究会などに参加するのが有効だと思います。私の場合、留学する前から関西地区のLinuxのコミュニティに参加していますが、多くの友人ができ、お互いに啓発し合っています。また、Linux関係のメーリングリストにも参加し、刺激を受けています。技術力の陳腐化を防ぐには、刺激を求めてフットワークよく動くことが大切だと思います。
S・S氏
S・S氏(30歳)。
大手電機メーカーソフトウェア事業本部OS開発センター

S・S氏の年収変動チャート
S・S氏の技術力陳腐化を防ぐマル秘習慣
その2 技術力陳腐化を防ぐために考えるべきこと
 リクルートエイブリックのコンサルタント・細井智彦氏は「30代の場合、先端技術に詳しいことだけが必ずしも市場価値にはならない。例えばグリッドコンピューティングのスペシャリストと、業務知識の豊富な人や顧客接点の豊富なコミュニケーション能力に長けた人では、後者のほうがより汎用的な転職市場価値があります。30代エンジニアの意識と企業側の求人の実態に相当温度差があるようです」と、30代エンジニアの意識のズレを指摘している。20代のエンジニアに求められるスキルと30代のエンジニアに求められるスキルは明らかに異なる。それを認識すれば、いたずらに技術力陳腐化に焦燥感を抱くこともなくなるはずだ。

 では、30代エンジニアに求められるスキルとは何か。細井氏は、「技術習得は、それを無理に勉強して極めることを目的にするのではなく、手段の一つといったとらえ方が必要。それよりも業務知識やコミュニケーション力を高めることを心がけることが重要」とアドバイスしている。例えば、業務知識を身につけるために中小企業診断士の資格取得に挑戦する。あるいは、プロマネ育成のプログラムを受講する。また、英語力アップとスキルアップを兼ねて米国の先端的サイトに毎日アクセスする。焦燥感を抱く前に、まずはこのような行動をしてみてはいかがだろうか。
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山田せいめい(総研スタッフ)からのメッセージ
今回ご登場いただいた方々は、倒産や事業撤退など、それぞれ過去に大きなピンチを経験されています。もちろん多くの方にとってこれほどの経験をする機会はあまりないと思いますが、陳腐化を防ぐ最大の特効薬はやはり、あらゆることを「経験」することではないでしょうか。そして経験するためには、常に積極的な行動を起こすこと。3人の方からはそうした前向きさがひしひしと伝わってきました。皆さんのご意見をお聞かせください。

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