電気自動車／環境に優しい次世代自動車は新技術の宝庫

燃料電池車やハイブリッド車の陰に隠れた感のある電気自動車だが、技術革新次第では低公害車の大本命。
自動車メーカーばかりでなく、他分野の企業も参入の機会をうかがっている。
技術的にまだまだ進歩の余地が大きい商品だけに、腕の振るいがいがある。

（取材・文／伊藤憲二　総研スタッフ／高橋マサシ）　作成日:04.04.21

　地球温暖化防止に向けたCO2排出抑制のなかでも、交通機関のCO2削減は急務とされている。現時点ではハイブリッドカー、燃料電池電気自動車などが有望視されているが、その一方で着実に改良が進められているのがバッテリー、コンデンサーに蓄電して走行する、純粋な電気自動車である。

　電気自動車は充電時間の長さと価格がネックとなっているため、普及は地方自治体や大都市圏での法人ユースなど限定的だが、こと熱効率の点ではほかの方式の追随を許さない高さを誇る。そのため、次世代自動車の隠れた本命として、依然有力視されているのである。
　ある自動車部品会社は自社ブランド製品として一人乗りの小型四輪車を発売しているが、10キロ当たりの走行コストは2円前後と、原動機付き自転車をもしのぐ数字をたたき出している。400キロ走行分の電力を10分以内でチャージできるようになれば、電気自動車の普及率は飛躍的に高まるといわれている。

　電気自動車業界には、自動車メーカー以外にも自動車部品メーカー、電力メーカーなど多くの企業が参入を狙う。イギリスのあるシンクタンクでは、電気自動車の世界市場は、2013年に18兆円前後になると予測している。
　これは技術革新の登場の期待値を含めたものであるが、電池のイノベーションは燃料電池などほかの方式に比べて早期に実現するという見方も多い。
　今後の新技術を見込んだ、自動車メーカー各社の開発競争は、まさにこれからが本番。技術開発志向のエンジニアにとって、魅力にあふれる分野であろう。

　電気自動車の開発は自動車、自動車部品、電池、電気機器、電力など、多くの業界の企業が手がけている。リクナビＮＥＸＴで検索する際は、「電気自動車」をキーワードにすると、モデルのアセンブリーや部品開発に関する求人などが得られるだろう。
　また、「バッテリー」をキーワードにすれば、電池本体だけでなく、出力制御回路全般を手がける企業を見つけられるだろう。

　求められるスキルは多種多様だ。ハードウェア開発については、自動車関連の技術があれば有利なのはもちろんだが、電気自動車が一般の自動車と異なるのは主に動力系。ブラシレスモーター、出力制御用回路、駆動力伝達機構、インバーターなど、自動車以外の電気、機械分野と重なる技術も多い。鉄道、重電、重機、モーターといった自動車以外の機械、電機関連にも、参入のチャンスは大いにある。

　また、内燃機関に比べて使用される電子回路の点数が多く、制御ロジックも複雑であるため、ソフトウェアを含めたメカトロニクス系エンジニアのニーズも大きい。C、C++、VC++、アセンブラなどでのシステム設計、アルゴリズム構築から回路設計まで、ニーズは幅広い。
　自動車関連のハードウェア知識をある程度もっていると、より有利に働く。希望者は自動車工学について自習しておくのも手だ。
　燃料電池車やハイブリッドカーと電気自動車は共通する技術も多く、エンジニアが両分野にまたがって開発を行う企業もある。電気工学の粋ともいえる電気自動車の開発は、スキルアップの大舞台になるといえるだろう。