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今月のデータが語る エンジニア給与知っ得WAVE! Vol.13 コンサル約5割が年収ダウンでも転職する理由
コンサルタントの転職事情に異変が見られる。2003年下半期には、約5割の人が年収ダウンを覚悟で転職しているのだという。景況のせいだけではない、その背景と彼らの戦略を探った。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき) 作成日:04.03.24
PM・コンサル転職の48.6%が「年収ダウン」
 コンサルタント業界の転職給与が伸び悩んでいる。一時の業務改革ブームが去り、業界内の吸収・合併など再編も進み、案件も落ち着いてきた。またそれに伴い、コンサルファーム間同士の転職事例も減り、コンサルタント職の転職給与が大幅アップすることが少なくなってきた。

「最近のコンサルファーム間の転職の事例が少ないのは確か。むしろ、ファームから事業会社への転職というのが最近は目立ちます。この場合は年収ダウンを前提でご相談に来る方が増えています。」

データ1 「転職で年収ダウン」がアップを上回る!
データ1
出典:リクルートエイブリック
2003年4月〜12月のPM・コンサル職の転職事例より
 というのは、リクルートエイブリックでコンサルタント業界を担当する稲垣礼仁氏。2003年4月〜12月に稲垣氏が担当したコンサルタント職やPM(プロジェクトマネジャー)職の転職事例144件を見ても、年収アップが43.8%なのに対し、ダウンは48.6%とそれを上回っている(※データ1)。ダウン幅は「年収で50万円未満」が最も多いが、「300万円以上」のダウンという例もあった。
コンサル(C)→事業会社(B)への動きが目立つ
 ダウン例のいずれもがコンサル・ファームから事業会社へというものではないが、やはり多いのはこのいわゆる「C 2 B(Consulting Firm to Business)」転職のケースだ。もちろんコンサル業界における「C 2 B」志向は今に始まったことではない。机上の戦略ではなく、実際の業務でスキルを磨くため、一度事業会社へ出ることは、コンサルタントの定番キャリアプランのひとつでもあった。そうした「C 2 B」転職を、現場のコンサルタントたちがより強く意識するようになってきた最近の背景を、稲垣氏はこう語る。

稲垣礼仁氏

稲垣礼仁氏
株式会社リクルートエイブリック
ITCAグループ コンサルタント
「例えばこういう例があります。大手企業向けのコンサルタントでは、ファームのパートナークラスの方がまずは戦略立案又はIT企画立案を行い、PMクラスがそれを実行計画に落としていくわけですが、現場のPMたちはその導入成果を検証できないままに次の案件に移ってしまうことがよくあります。つまり自分が導入したプランについて顧客からのフィードバックがリアルタイムに得られない。その繰り返しではコンサルタントとしての経験も十分積めないのではないか、という焦燥感や虚無感を感じる人は、あえてファームを飛び出して、事業会社でIT戦略の企画、実行部分にかかわりたいと思うようになるのです」(稲垣氏)

 この場合は、コンサルタント業界の給与水準が、製造・流通業などの事業会社に比べると下げ止まりしているため、事業会社への転職では多くのケースにおいて結果的な年収ダウンとなる。大手コンサルファームで30歳・年収1000万円だった人が、大手メーカーに移れば650万〜700万円前後になってしまうこともよくある。しかし、一時は年収ダウンしても、事業会社での戦略実行プロセスを経験することは、その人のコンサルタントとしてのキャリアに大きな幅をもたらすことは確かだ。更に結果的にと言ったのは、総労働時間に対する賃金バリューは多くの場合、向上する事を意味している(総労働時間に対する時間あたりの賃金)。また1〜2年後にマネジャー職となり年収1000万円〜1200万円となるケースはまま見受けられる。その後事業会社に居続けるか、再びファームに戻るかは選択次第だが、いずれにしてもその人は現場を知っていることの強みを得ることになる。
自分の市場価値を長期的にとらえる
 こうした年収ダウン覚悟の転職は、ある意味で自分の市場価値を長期的な視点でとらえるという意識のあらわれでもある。それを示す例をさらに稲垣氏に挙げてもらった。

年収ダウンでも転職したのはなぜ?
850万円⇒650万円
30歳 メーカーから大手ファームに転職し、事業会社での業務改革やBPRに従事
ITの重要性も認識していたが、あくまでも業務改革のツールとしてのITというスタンス。ところが、彼のファームは近年になってあらかじめITありき、いわばIT偏重ともいえる戦略転換を進めている。彼にはより継続的で本質的なコンサルタントへの渇望が生まれ、そこで再び事業会社で、コンサルタント教務を求めている事業会社の戦略IT企画部門が転職ターゲットに浮上してきた。

530万円⇒450万円+残業代(月30h平均含んで500万円代前半)
20代後半 業務系ファームでCRM系の導入コンサルを担当
自身が導入業務を進めるうちに、市場調査などの実務に関心をもつようになり、大手自動車メーカーのマーケティング部へ転職。導入と実務では実はキャリアが異なるが、それでも語学力やマーケティング戦略論を学んでいることが評価されて転職成功。

800万円⇒730万円
20代後半 戦略系ファームから、急成長した新興流通業の経営戦略部門へ
この会社は成長後に社内組織の細分化が進んだため、経営全体が見通せる人材が少なくなってしまっていた。だが、経営トップにはまだベンチャーマインドが残っていたため、経営という視点で事業のミクロからマクロまでを見渡せる彼の戦略系・IT系コンサルファームでのコンサル経験者が求められた。
(リクルートエイブリック 2003年4月〜12月のPM・コンサル職の転職事例より)

 いずれも、年収は1割から2割ダウンした例である。これらのケースでは、年収が上がるか下がるかはあまり重要ではない。自分が本当にやりたいことは何だったのかを振り返ったとき、自分に不足している部分を補う必要性を感じての転職なのだ。その“経験の補填”が現在の会社でできる可能性が高ければ、そこに残る意味はあるが、そうでなければ、一度は飛び出してみることも選択肢になる。
ゆとりある生活を送るためには年収ダウンも辞さず
 年収がダウンしても転職する理由として、コンサルに戻ることを前提とした“経験の補填”のほかにもうひとつ、前述の様に“ゆとりある生活の確保”を重要視する傾向が見られる。
「年収1000万円クラス以上の人の労働実態はかなり過密であることも、次第に知られるようになってきました。終電でも帰れない生活よりは、もっとゆとりのある生活の中で自分の人生をとらえ返してみたい、という理由で転職する人もいます」(稲垣氏)

データ2  労働時間が短い、休日が多いなど、ゆとりある生活ができる企業に転職したい
データ2
出典:Tech総研『エンジニア白書』2004年2月発行
 どうやら今コンサルタント業界では、長期的な市場価値と自分の価値観を重視する風が吹いているようだ。ただし時代背景もあり、この視点はコンサル職に限らず、すべての業界・職種に共通していると考えられる。(※データ2)
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