直噴エンジン／ガソリンエンジン直噴化の波を先取り

自動車用エンジンのトレンドとなっている「直噴」。
既にディーゼル分野では直噴が大勢を占めているが、ガソリンエンジンも直噴化される傾向が強まっている。
機械設計の極みともいえるエンジン開発は、エンジニアにとって格好の腕試しの場である。

（取材・文／伊藤憲二　総研スタッフ／高橋マサシ）　作成日:04.03.10

　世界規模で激戦が繰り広げられている自動車用エンジンの開発。低公害・低燃費と高出力の両立は、自動車メーカーの興亡を直接左右する分野だけに、巨額の研究開発投資がなされている。そのエンジンの中でも、とりわけ注目度が高まっているのが直噴エンジンだ。

　直噴とは直接噴射の略。簡単に言えば、シリンダーの中に直接燃料を噴射するタイプのエンジンである。燃料噴射のコントロールがきめ細かにできるため、圧縮比を高くセッティングできる（＝熱効率を上げられる）などのメリットがある。
　ディーゼルエンジンについては、乗用車用の小型エンジンの大半が直噴化されているが、ガソリンエンジンについても直噴化が急速に進められている。

　直噴エンジンの開発は完成車メーカー本体だけでなく、1次・2次部品メーカー、燃料噴射マップや制御用ソフトのプログラミングを行うソフトハウス、また触媒などの周辺機器には化学メーカーなども参画する大きなプロジェクトである。
　世界をリードするモノづくりに関心のあるエンジニアにとって、またとない活躍の舞台だろう。

　エンジン開発は完成車メーカーだけでなく、多くの分野の企業が参画して行われるもの。求人情報を検索する際には、自動車だけでなく、自動車に関連する分野の企業を広く当たる必要がある。
　例えばリクナビＮＥＸＴでは、「自動車」「燃料噴射」「触媒」「直噴」「ECU」「自動車部品」といったキーワードを入力すると、それぞれ異なる検索結果が得られる。自分の専門分野に関連したキーワードで探すほうが、幅広い候補が見つかる。

　必要とされるスキルは多岐にわたる。機械設計ではCAD、素材、構造力学、運動力学など。エンドユーザー向けの商品であるため、制振のための共鳴理論などの知識ももっているとなおよい。
　また、燃焼効率を上げるための研究では気体、液体の流体力学や燃焼のシミュレーション、熱力学、燃料関連の知識。ECU関連ではC＋＋などによるプログラミング、触媒では還元元素の知識などが役に立つ。

　数百、数千という部品点数からなるエンジン開発は、エンジニアにとって「究極の腕試し」的なところがある。転職してもすぐに中核的な仕事に携われるほど甘くはないだろうが、エンジニア本来の満足感が得られる仕事だといえる。