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「Tech総研エンジニア白書」シリーズ(1)自腹で370万円! MOT入学者も急増 技術マネジメント力・30代焦りの実態
Tech総研創立1周年を記念して2月に発行された『エンジニア白書』。その中で掲載しているエンジニア3117人のアンケート結果の中から、気になるデータを3回にわたって追跡レポートします。今回は「マネジメント力に対する焦燥感の実態」。
(取材・文/中村光宏 総研スタッフ/山田せいめい イラスト/内山弘隆)作成日:04.03.10

その1「マネジメント力に対する焦燥感…47%」のなぜ?
 アンケートでは、技術力、マネジメント力に対するスキルアップにエンジニアが焦りを感じている、という実態が明らかになった(表1)。とりわけマネジメント力に対する焦燥感は、「かなり焦っている」「焦っている」を合わせると47.5%と高く、技術力に対する焦りと変わらない。職種別では、ソフトウェア関連やネットワーク関連のエンジニアが、マネジメント力についてとくに強い焦りを感じていることがわかった(表2)。

仕事に追われながら、日々進化する技術変化にも対応していかなくては、と焦燥感に駆られているエンジニアの姿は想像に難くない。しかし、「マネジメント力」に対する焦りとは? 芝浦工大の岡本史紀教授はこのアンケート結果について、「多くのエンジニア、なかでも30代を中心とした層が、もっとマネジメント力を高めていかなければならない、と強い焦りを感じているように思います」と語る。
(表1)技術変化などに対するスキルアップの焦燥感の割合
(表2)職種別マネジメント力への焦燥感
       

その2 「MOT」に学んでいるエンジニアの姿から探る「焦りの実態」
 エンジニアが抱くマネジメント力への焦燥感。その実態を探るうえで、最近話題のMOT(Management of Technology)に着目してみた。少なからぬ学費を払い、プライベートの時間を削って、大学のMOTコースに学ぶエンジニアたち。技術力だけでなく、経営スキルも身につけたいと考えている彼らこそ、最も切実にエンジニアにもマネジメント力が必要だと“焦り”を感じている存在に違いない。そこで、芝浦工業大学でMOT推進室長を務める岡本史紀教授に、同大学のMOTコースに学ぶエンジニアについてお話を伺ってみた。
  技術営業力を高めるため、MOTに370万円の授業料を払うエンジニアの意識とは?
岡本史紀さん
岡本史紀さん
芝浦工業大学常務理事(学務担当)MOT推進室長 教授 工学博士
1968年早稲田大学理工学部機械工学科卒業
1989年芝浦工業大学工学部機械工学科教授
専門分野は流体力学。主著書として「専門職大学院におけるMOT教育の取組み」(大学時報No.292 pp62-67)などがある。
 芝浦工大のMOTコースで現在、第1期生として学んでいるのは43人の社会人。そのうち8割がエンジニア系の職種である。彼らの平均年齢は35.8歳。まさに働き盛りの世代で、職場ではある程度プロジェクトを任され、若い部下を指導する立場として、日々仕事に追われていることだろう。「それでも、ほとんどの方が週5日休まず通学されています。授業は平日の夜ですし、なかには新幹線通学されている方もいますが、それでも欠席はありません」と岡本教授は語る。

 また、同コースの授業料は、入学金を合わせて2年間でおよそ370万円かかる。決して安い授業料とは言えないが、会社から学費補助などを得て学んでいるのではなく、この43人は全員、全額自費で授業料を払って学んでいるのだという。時間と費用を捻出し、彼らがそうまでしてMOTを修めたいと考えているのはなぜか。

 第1期生と話した岡本教授は、特に30代のエンジニアたちが自分の将来に対して「終身雇用の人生プランが成り立たなくなっている」「このまま平穏に会社勤めが続いていくのだろうか」という強い不安感を抱えていることに驚いたという。「だからこそ将来に向け、『技術経営を体系化して学び、組織の中でキャリアアップを図りたい』『流通や財務の知識、経営能力を身につけて、いずれは独立したい』といった確固たる目的意識をもって、彼らはMOTを学んでいるようです」と岡本教授は語ってくれた。

 岡本教授の話からは、どうやらMOTに学ぶエンジニアたちは、将来に対する強い不安を抱え、その不安を一蹴して将来を切り開いていくために、今マネジメント力を身につけておく必要があると切実に考えているらしいという姿が見えてきた。
 
  芝浦工大のMOTについて 提供:芝浦工業大学大学院 事務課
 アメリカでは1990年代以降、経営戦略や技術戦略の構想・立案ができる技術者、技術を評価することができる事務職、起業家などを育成する場として、MOT(Management of Technology)のコースを設ける大学が急増。それを受けて日本でも、MOTの重要性に対する認識が高まってきたことから、芝浦工業大学では2003年4月、技術者または技術にかかわる仕事に従事する社会人を対象に、日本で初めて技術経営修士(専門職)の学位を授与する専門職大学院「工学マネジメント研究科」を開設した。

まとめ いたずらに焦燥感を抱く前にやるべきことは?
 
好川哲人さん
好川哲人さん
エム・アンド・ティ・コンサルティング 技術経営コンサルタント・技術士
All About「ソフトウエアエンジニア」サイトガイド。82年、大学院工学研究科システム工学専攻修了後、機械メーカーに就職。発電プラントや航空機などのIT化に取り組む。「技術士」取得後、エム・アンド・ティ・コンサルティング設立。1997年にはMBAコースを修了、PMをはじめとするIT人材の体系的な養成に注力している。
 一方、「技術力不足を、マネジメント力で補おうと考えて焦っているのでは」と指摘するのは、IT業界の実態に詳しい技術経営コンサルタントの好川哲人さん。

 エンジニアに求められる技術力として好川さんが挙げるのは、原理を見極める力、システム(仕組み)を理解する力、物事を論理的に考える力、そして、身につけた知識を抽象化し、ほかの分野に応用できる力。「こうした技術力は、実はマネジメント力とも共通しています。技術を極めることで自然とマネジメント力も高まるはずなのです」と好川さんは語る。しかし、最近はツールや開発環境が便利になったこともあって、これらの技術力をきちんと身につけていない若いエンジニアが増えているという。

 好川さんはまた、近い将来、IT業界も厳しい差別化の時代を迎えるだろうと予想している。そのとき企業がエンジニアを峻別する目安となるのは、技術力の有無だという。「エンジニアがまずやるべきことは、基本的な技術力をしっかり身につけること。そのうえで、さらにキャリアアップを目指すのであれば、MOTなどで経営スキルを磨くことも有効でしょう」と語る好川さん。

 いたずらに焦燥感にかられる前に、技術力を身につけ、自分の目標を真摯に追求していくこと。それこそがエンジニアにとって何よりも大切な姿勢のようだ。
 
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山田せいめい(総研スタッフ)からのメッセージ
先述の芝浦工大のお話では、「370万円自腹」ということもそうですが、入学前から受講者が「○○氏に教えてもらいたい」と事前に教員の名前を挙げるケースも少なくないということを聞き、その熱心なスキルアップへの意欲にただ頭が下がるばかりでした。

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