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材料系技術者が基礎研究と製品開発の両方を目指して転職

顔料分散技術で精密機器メーカーから大日本印刷へ

大日本印刷は川上への進出も図っている。材料の分野では、自社事業グループ内で使用する各種の塗料・インク、レジストなどの研究・製品開発に、現在注力中である。今回はその研究開発エンジニアの面接現場をレポートする。
(取材・文/須田忠博 総研スタッフ/高橋マサシ) 作成日:04.02.18
大日本印刷
応募したエンジニア 企業の面接担当者
瀬川さん
瀬川裕章さん(当時33歳)
池上さん
技術開発センター
材料開発研究所 エキスパート
池上 圭氏
当時の職種
製品開発技術者
募集職種
材料研究開発職
業務の内容
高機能インクジェット用顔料インクの製品開発
仕事内容
水系インク・塗料の研究開発
職務経歴
国立大学大学院修士課程を修了後、総合化学メーカーで外壁用塗料の開発を5年。その後、精密機器メーカーで顔料インクの開発を3年担当
応募資格
水系インク・塗料の開発経験者
志望動機
コーティング材料について、基礎研究に近いところから製品の開発や改良までかかわれるから
募集背景
水系塗料を用いた新規事業を立ち上げるための研究開発体制の強化
面接の流れ
本社人材開発部でいったん選考。次に、技術開発センター材料開発研究所で所長と該当グループリーダーが選考。
完全な技術面接。面接官は材料開発研究所長とグループリーダーの2人。所要時間は約1時間。
技術担当役員でもある技術開発センター長が1対1で面接。所要時間は20〜30分。

本社の人事担当役員が1対1で面接する。所要時間は15〜20分。
書面で判定結果を通知する。
【通過率:約1.5〜2割】
【通過率:約9割】
【通過率:約9割】
Part1
職務経歴と転職理由

前回の転職理由は新分野へのキャリアアップ
池上:
 水系のインク・塗料の研究開発職、その即戦力採用ということで、本日の面接を行わせていただきます。われわれが求める人材の条件に合致しているかどうかを判断させていただくため、ご経歴を中心にお話をうかがいます。
 最初に瀬川さんのほうから職務経歴の説明をお願いします。
瀬川:
 私は新卒で○○○(総合化学メーカー)に入社し、塗料事業部へ配属されました。そこで5年間、主に外装建材メーカー向け塗料の製品開発に携わりました。特に水系塗料の開発が多かったです。内容としては高耐候エマルション塗料、低汚染型高耐候ウレタン塗料です。【Point1】習得したコア技術は顔料分散、配合設計、コーディング技術、樹脂設計です。
池上:
 そのあと、2000年5月に現職へ転職したわけですね?
瀬川:
 はい、そうです。×××(精密機器メーカー)へ移り、現在までの3年近くを、コンシューマー向けインクジェット用顔料インクの製品開発に従事しています。
池上:
 【Point2】○○○から×××へ転職した理由およびきっかけは何だったのですか?
瀬川:
 きっかけは所属事業部の分社化が決まったからです。動機はキャリアアップが狙いでした。それまでに習得した知見を生かしながら、インクジェットという比較的新しい分野で、顔料インクに取り組んでみようという考えでした。
池上:
 インクジェット用インクは水系ですね?
瀬川:
 はい。コンシューマー向けはすべて水系ですね。
基礎研究のブラックボックス化は耐えられない
池上:
 今回、当社へ応募された動機を聞かせてください。
瀬川:
 私は一貫してコーティング技術に興味を持ち、ずっと携わってきました。御社は印刷技術から派生してさまざまな事業展開をされています。そのバックグラウンドのひとつがコーティング技術です。私の興味と合っていますし、新たに技術領域を広げられるとも思っています。

 さらに、今回募集がありました水系のインク・塗料の研究開発では経験を積んできています。これまでに養った私の知見がすぐ役立てられます。
池上:
 過去の経験は当社できっと生かせるでしょうが、今の会社でも同じではないですか? 【Point3】なぜ、会社を再び替わりたいのかが今ひとつわからないのですが……。
瀬川:
 ×××は精密機器メーカーですので、インクの開発はインクメーカーと協業する形です。課題があれば、どちらかというと材料よりも、機械設計技術によって解決しようとします。その一方で、製品はコンシューマー向けなので、開発日程はタイトです。その結果、基礎研究に近いことはほとんどできず、材料技術者にとって重要な部分が、ブラックボックスになったまま開発を進めねばなりません。

 これでは将来的にまずいと判断しました。対して御社のポジションであれば、生産自体は系列会社への委託としても、【Point4】材料の研究から製品開発、社内ユーザーライン対応までに一気通貫でかかわれます。そこに魅力を感じるのです。
Point1
[面接官]瀬川さんの職務経歴の説明は、簡潔でわかりやすいものです。こういうプレゼンスキルには好感が持てます。身につけたコア技術もきちんとアピールしています。
 特に、色材粒子を均一微細に分散させる「顔料分散技術」。これを真っ先に挙げている点が効果的です。なぜなら、水系であろうと溶剤系であろうと、コーティング材の研究開発においては、必要不可欠にして活用範囲が広い中核技術だからです。そのレベルに関してはあとから突っ込んで尋ねることになります。
[応募者]習得技術は職務経歴書に列記しておいたのですが、やはり口頭でもしっかりアピールすべきだと思っていました。
Point2
[面接官]転職歴のある応募者については、転職理由が気になります。転職癖がついていたり、後ろ向きの転職をしてしまったりする人の採用は難しいでしょう。
[応募者]この質問は必ず出ると予想していました。前回の転職が約3年前で、今回また転職しようとしているわけですから、採用側は気になって当然です。客観的には不利な条件での応募だとも感じていました。
Point3
[面接官]応募動機をどうしてこれほどしつこく聞いたのかというと、志向性を確かめたかったからです。瀬川さんは、現職では満たされないものが当社にはあると考えているはず。それが何なのかを知りたいのです。
Point4
[応募者]私は研究から開発、使用する現場の対応までに、バランスよくかかわれる環境を望んでいました。もし研究だけを望むのであれば、研究機関へ転職すべきだと思っていました。
[面接官]この志向性は当社にベストマッチングです。研究職のみにこだわらず、製品が使われる現場にまで興味をもっている。こういう材料技術者がほしいのです。
Part2
必要不可欠な中核スキル

顔料分散技術を使った数々の実績
池上:
 確認しますが、2つの会社でずっと顔料分散を行ってきたのですか?
瀬川:
 ○○○ではメーンの技術でしたが、現在勤務する×××では、今申し上げたとおり主な開発はインクメーカーに任せています。そのため、顔料分散技術そのものはあまり使っていません。
池上:
 そうすると、現職での開発内容は?
瀬川:
 これまでに低粘度顔料分散液の開発や顔料分散手法の検討はしましたが、中心業務は配合設計や樹脂設計、色材選定で、評価にも多くの時間を費やしています。
池上:
 ○○○での5年間で挙げた実績のうち、瀬川さんが顔料分散を使って成果に導いたもの。それは、先ほどの高耐候型の水系塗料ですか?
瀬川:
【Point5】はい、そうです。これは事業部として新しく取り組んだ製品です。顔料の選定・分散安定化検討から担当しました。
池上:
 ○○○ではユーザーライン対応も行っていたんですね?
瀬川:
 はい。得意先の建材メーカーへ赴いて使用ラインに立ち会っていました。自分の開発したものをユーザーのラインに合わせる形です。不具合があれば改良を加えます。
池上:
 今の会社で瀬川さんが開発したインクジェット用の顔料インクは、既に市場へ出ているのですか?
瀬川:
 従来は染料インクだったのですが、×××では初の顔料インクとして発売されました。この製品の開発では高機能化、保存性向上技術の確立、エマルション樹脂設計を行いました。
エンジニアとしての環境対策意識
池上:
 インクや塗料の水性化は、環境対策を主眼とする世の流れです。【Point6】ところが、実際問題として、水性化するには人体に有害なものも加えねばなりません。その点についてどう思いますか?
瀬川:
 確かに、現状の段階ではそのまま下水に流していいとか、人が飲んでも大丈夫というわけではありません。水系インク・塗料を構成するもの自体に有害なものが多々ありますから。しかし、だからこそ、人体への安全という点から研究開発する余地があるのだと思います。

 もちろん、溶剤系と同等レベルまで性能を引き上げねばならないという、大命題があるわけです。ですから、そことの攻めぎ合いにならざるを得ないとは認識しています。ここが水系の最も難しい点だと思います。
Point5
[面接官]限られた面接時間内で材料技術者の技術レベルを判定するのは、実はとても難しく、開発した製品と担当内容から推測することになります。瀬川さんの場合、この答えを聞いた段階で、われわれが求める技術レベルをクリアしていると判断しました。もしかすると、かなり優秀なのかもしれないと感じました。
 実際、入社後すぐにその実力がわかり、4カ月ほど水系塗料の開発を担当してもらった後、液晶カラーフィルター用顔料分散レジストの、研究開発チームへ異動してもらいました。
Point6
[面接官]これは、エンジニアとしてのポリシー、立ち位置を確かめるためにした質問です。瀬川さんの答えは模範回答の一例といっていいでしょう。現状を踏まえてコツコツと研究を積み上げながら、理想に近付きたいという、意志の強さが感じられます。
Part3
サブスキルと働き方

差が出る樹脂合成・分析などの基礎スキル
池上:
【Point7】○○○では樹脂設計もしていたということですが、樹脂合成の経験は?
瀬川:
 溶剤系塗料では合成したこともあります。
池上:
 どんなものを?
瀬川:
 普通の高分子樹脂です。樹脂合成には設備の問題がありますから、どうしても原材料メーカーと共同で行わざるを得ません。
池上:
 合成したあとの分析は?
瀬川:
 もちろん、自分で合成したものについては分析、同定もしていました。
中期の現地工場駐在を誇りに感じる
池上:
 ここの研究所では、モノをつくり出して終わりというわけではありません。自社およびグループ企業内で使う工場ラインを立ち上げ、軌道に乗せるところまでが仕事です。【Point8】自分が開発した製品を持って地方へ、場合によっては海外へ2年、3年と赴任するケースも発生します。そういう働き方に抵抗はありませんか?
瀬川:
 それは抵抗どころか、望むところです。使用現場で被塗布物特性ごとにテストを重ねながら改良し、市場で評価されるインク・塗料を完成させる。それはエンジニアとして誇りに感じることですし、次の研究開発のやる気につながることでもあると思います。
池上:
 ○○○では建材メーカーでのライン立ち会いを経験しているし、瀬川さんの開発志向性と弊社での業務内容がマッチしている。そう受け取って構いませんね?
瀬川:
 はい、それで間違いありません。
池上:
 最後に、もし内定となった場合、いつごろ入社できますか?
瀬川:
 内定の通知をいただいてから1〜2カ月を想定していただけると助かります。
池上:
 わかりました。それでは、本日の面接はこれで終了とします。
Point7
[面接官]これは、サブスキルをチェックする質問です。合成技術と高分子の知識が経験的に少しでもあれば、それでいい。しかしこの知識の有無により、原材料メーカーと協働する場合に相当な違いが出るのです。
 このことは、分析についても当てはまります。分析のエキスパートと対等レベルで話ができ、分析結果をストレスなしに読める程度で十分なのです。


Point8
[面接官]この確認は必ずします。当研究所には純粋に基礎研究だけを担当する者もおりますが、大多数は応用研究であり、製品開発の担当です。しかも、ユーザーは自社とグループ企業。質問したような働き方がどうしても嫌だという人では困ります。
面接官はここを見た!
●顔料分散技術を使った開発をどれほど経験しているか。
●製品使用段階まで考えて研究開発する志向性があるか。
●協働でモノづくりをする際のヒューマンスキルはあるか。
 まず、顔料分散技術をしっかり習得しているかどうかがポイント。開発経験は水系でも溶剤系でもかまわない。ただし、技術レベルと知識の厚みを把握するために実績はチェックする。サブ的に合成や分析の経験も尋ねる。次に、モノづくりの考え方を確かめる。使用現場で製品を仕上げる姿勢の有無を探る。そして、協働でモノづくりをするのに必要なコミュニケーション力などを判定。ほかには、キャリアアップの意識の強さもチェックポイント。
瀬川さんはコレで決めた!
「私はインク・塗料をはじめとするコーティング材料を
研究から製品の開発・改良まで一貫して手掛けたかった。
大日本印刷の開発体制はぴったりでした」
 大日本印刷は原材料メーカーではないのに、自社用コーティング材料の開発にあたって、川上のコア技術までもとうとしている。一方で研究開発者は、社内ユーザーラインに密着して、新規事業の現実的な一翼を担う形です。そのことが面接を通じてわかりました。こういう開発体制こそ、私が望んだものでした。また、未経験の開発対象、たとえば顔料分散レジストの開発に携われる機会もありそうでしたから、キャリアアップの点でも魅力的だったのです。
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
「面接現場の舞台裏」で、初の材料系エンジニアの方の取材でした。当然ですが、奥が深い。時代を反映している。そして、面白い! 私自身、この分野の基礎知識や取材経験に乏しいのですが、ITやデジタル家電だけがエンジニアのフィールドでないと、改めて実感しました。
 あなたの業種や職種に特化した、面接現場を見たくありませんか? ご希望がありましたら、ぜひメールでお知らせください。

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