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エンジニアの理想郷はどこだ!? 研究に没頭できる真のR&D企業の条件
 
企業内でさまざまな研究・開発に携わるエンジニアにとって、自らの研究に没頭できる環境は、
ひとつの理想といえるのではないだろうか。
そこで、特に研究・開発に注力するR&D志向の強い企業で働くエンジニアに取材。彼らの言葉から、
研究・開発に携わるエンジニアにとっての理想の職場=真のR&D企業の条件を探る。
(総研スタッフ/太田百合子)作成日04.02.18
 
Part 1 エンジニアのモチベーションを高める企業とは!?
 
 エンジニアにとって理想の職場とひと口に言っても、そこに求めるものは、職種や、仕事の内容によって変わってくるだろう。例えば、企業内でさまざまな研究・開発に携わるエンジニアにとって、理想の職場の条件とは一体何だろうか。
 その答えを見つけるうえでヒントになりそうなのが、サラリーマン研究者として初めてノーベル賞を受賞した、島津製作所の田中耕一さんの言葉だ。田中さんは、そのインタビューの中で繰り返し「自由に研究に没頭できる環境を提供してくれた、会社に感謝している」と語っている。研究・開発に携わるエンジニアにとっての理想の職場を探るうえで、この「自由」と「研究に没頭できる環境」というのは、重要なキーワードといえるのではないだろうか。

 そこで実際に、売上高に対する研究開発費の比率が高いなど、R&D志向の強い企業で働くエンジニアに、現在の職場のどのような点が「自由」で、かつ「研究に没頭できる」のかを取材。彼らの言葉を通して、研究・開発に携わるエンジニアにとっての理想の職場とはどのようなものかを探ってみた。またさらにその答えの中から、エンジニアが高いモチベーションをもって研究・開発に取り組める、真のR&D企業の条件を導き出してみたい。
 

Part 2 エンジニアが語るR&D志向企業の魅力
 
何のための研究か、明確な目的がモチベーションを高める
パナソニック モバイルコミュニケーションズ株式会社
通信事業全般のインフラ構築から携帯電話端末やモバイルカードなど、モバイル通信機器事業で日本トップクラスのシェアを誇る。次世代移動体通信技術の研究にも積極的に取り組んでいる。

 大学で移動無線通信の研究を専攻していた高草木さんが、パナソニック モバイルコミュニケーションズ(旧松下通信工業)へ入社してまず感じたのは、「研究の目標が明確で、かつそれを実現するための情報が豊富なこと」だ。

 「大学でやっていた研究のための研究とはベクトルが違う。理論から、シミュレーション、試作、小型化と、開発の作業を進めていく中で、ほかの事業部とも頻繁にやり取りするので、自分の研究がどのようなビジネスに結びついているのかを、きちんと理解できる。目の前の研究だけをやっているとどうしても視野が狭くなりがちですが、事業全体を見通せることで、自分がやっている研究の意義も明確になるし、それがモチベーションを高めることにもつながっていると思います」。
R&Dセンター
モバイルシステム開発グループ
チームリーダー
高草木恵二さん(35歳)

 高草木さんが現在手掛けているのは、第4世代携帯電話の通信方式についての研究だが、例えば携帯電話の画像処理やカメラなどの分野では、「グループ会社との研究者レベルの交流も活発に行われている」という。また移動体通信に関する学会などへ参加する機会も多く、こうした社内外との交流を通して、「自分の専門分野だけにとどまらない、幅広い情報を得られるのも今の職場の魅力」だと、高草木さんは語る。

 「誰かが新しい情報を得たら、勉強会や講演会を開くなど、すぐに情報を共有できるしくみができているので、いろんな知識をどんどん吸収できる。この会社に入っていちばんよかったと思えるのは、研究者としての視野が広がったことですね」
 
 
 
自分の出した設計のアイデアをとことん話せる雰囲気がある
株式会社 本田技術研究所
本田技研工業の独立した研究開発機関。本田技研工業やHondaグループ各社と連携しながら、四輪から二輪、さらにはロボットまで幅広い分野に渡る研究開発を手掛けている。栃木研究所では、四輪車の総合的な研究開発が行われている。

 ハイブリッドエンジンの電気制御の設計を手掛ける渕辺さんが、現在の仕事にもっともやりがいを感じるのは、自分の出したアイデアが生かされ、それが実際にクルマという形になる瞬間だという。

 「うちはいわゆるトップダウンのやり方ではなく、ボトムアップ。プロジェクトに取りかかる前には、必ず“ワイガヤ”があって、そこでは上司も先輩も関係なく、みんながざっくばらんにアイデアを出し合うことができます。その中で自分のアイデアが採用されれば、当然モチベーションが高まりますね」
栃木研究所 エンジン開発ブロック
渕辺光支郎さん(32歳)

 もちろん、一方では出したアイデアを形にしなければならないというプレッシャーもあるが、仮に失敗をするようなことがあっても、自分できちんとリカバリーできれば、「それをとがめられることはありません」と渕辺さん。特に量産化前の先行開発の段階では、失敗を恐れず、仲間と意見を交換しながら、自分のアイデアに自由に挑戦することができるという。

 「現在私の担当しているECUはハイブリッド車の頭脳であり、そのためその先にある全ての部品を把握している必要がある。初めて取り組むことも多く、プレッシャーも感じますが、それだけ多くの事を知るチャンスがある仕事ともいえます。また、良い意味でノウハウがマニュアル化されていない部分もあるので、わからないことはいろんな人に聞く。そうやって質問することで、活発に意見を交換することができ、それが自分の経験と知識を生かした新しいアイデアにつながっていっていると思います。上司ともときにはぶつかることもありますが、互いの意見をわかり合えるまでとことん話し合える雰囲気がある。前の職場ではあまりなかったのですが、今はいっしょに飲みにいきたいと思える上司がいます」
 
 
 
HDDの最先端を、年齢や経験にかかわらずまかせてもらえる
株式会社 日立グローバル ストレージテクノロジーズ
日立製作所と米IBMのハードディスクドライブ(HDD)事業部門が統合され、2003年1月1日に設立。サーバーやデスクトップ、モバイルパソコン、更には情報家電製品までのHDDの研究・開発・製造・販売等、全てを手がける。

 日立グローバルストレージテクノロジーズは、日立とIBMのHDD部門を統合し設立された新しい会社だ。社員も両社からの移籍組がほとんどで、山碕さんはIBMの研究・開発部門から移籍してきた一人。「研究内容は以前と同じですが、異なるバックグラウンドを持つエンジニアがいるのは刺激になっていい」と言う。

 山碕さんが手掛けているのは、モバイルパソコン向けハードディスクの、ヘッドの位置決めというナノメートル単位の緻密な設計。その微妙なバランスが、HDDの容量やパフォーマンス、音の静かさなどに影響する「自分のさじ加減ひとつ」という点に、最もやりがいを感じるという。

2.5型/1.8型コンシューマ アンド コマーシャル本部
第1設計部 第1開発装置2G
山碕将英さん(29歳)

 「うちはとにかく実践主義。その人の年齢や経験にかかわらず、仕事をまかせてもらえるので、本当に自分のさじ加減ひとつで決まってしまう。もちろん研究の進捗状況は定期的に報告しますが、それ以外はかなり自由にやらせてもらっています。その分、責任の重さは感じますが励みになります」

 上司とも互いに○○さんと、さん付けで呼び合うのが同社流。アドバイスをもらったり意見交換をすることはあっても、トップダウン的に「やらされる」感覚はないという。また、オフィスもローパーテーションに区切られ、集中したい時には集中し、質問したい時は気軽に質問できるような雰囲気の形状だ。

 「HDDは機械や電気や材料の集合体。それぞれが常に進化しているので、全体を見渡せることも大切なんですが、社内にはグループウェアを通じてエンジニアが自由に意見を書き込めるインフラが整っているので、ほかの人がどんなことを考えているのか常に情報共有できるのも魅力。上司ともそうですが、ほかの研究をしているエンジニアとの間にも垣根を感じることがありません」
 
 
Part3 エンジニアにとって理想の職場の条件とは?
 
 今回取材した3つの会社に共通して感じられたのは、エンジニアが自らの研究について自由闊達に意見を述べることができ、かつ必要な知識や情報をすぐに得られる環境が整っている点。『こういう組織が技術者を活かす』などの著書もある、立命館アジア太平洋大学の福谷正信教授も、「自分のやりたい研究テーマを吸い上げてくれるルートが、きちんと整えられていることがポイント」だと話す。
福谷 正信 氏
立命館アジア太平洋大学 アジア太平洋マネジメント学部 教授
国際化・イノベーションの進展と就業構造の変化の中で、産業・企業における「人と組織にかかわる仕組みとその運用のあり方」について研究。著書に『こういう組織が技術者を活かす』(日本実業出版社刊)、『R&D人材マネジメント』(泉文堂)などがある。

 
 
「エンジニアの中には、賃金やポストよりも、やりたいことができるかどうかを重視する人が多い。逆に言えばこれからの企業には、こうしたエンジニアの意見をいかにうまくくみ上げ、事業に生かせるかという人材マネジメント力が重要になってくるでしょう。またモチベーションを高めるためには、今やっている研究が全社的にどう役立っているのか、その評価をきちんとエンジニアに伝えることも大切だと思います」

 さらに社内だけでなく、学会に参加するなど、幅広い情報交換やエンジニア同士の横のつながりを築ける環境であれば理想的だと、福谷教授は言う。「一つのことを突き詰めていく穴掘り型の研究ではなく、知識を積み上げて視野を広げる木登り型の研究が、結果的にはエンジニアの能力を高めていく。そうやってエンジニアを育て、適切に評価し、マネジメントできることが、これからの真のR&D企業の条件と言えるのではないでしょうか」
 
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太田百合子(総研スタッフ)からのメッセージ
 「理想の職場ですか?」の問いに「100%と言えないかもしれないが、満足している」と、答えてくれた取材先のエンジニアの方。100%理想的な職場なんてないのかもしれませんが、自分の職場に「満足している」と自信をもって言えるのは、とても幸せなことだと思います。何より、自身の研究内容についておうかがいしたときのキラキラした目が、それを雄弁に語っているように思えました。
 もし今の職場に不満があるなら、キラキラした目を取り戻す第一歩として、改めて自分が求める理想の職場の条件を見直してみるのもいいかもしれません。

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