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ほぼ月イチ連載・第10回 〜止まらない 技術者人性の法則〜 「技術者人性はセクシーである」法則


(イラスト/工藤六助)

エンジニアの論理的な仕事には無縁のものに思われる「セクシー」。しかし、エンジニアなら誰しも
データ収集も検証も理論の裏づけも不十分なのに「この技術は絶対にイケる」と直感することがあるはず。
技術者人性には、そんなセクシーなときめきが満ちあふれている。
(文/出川通 総研スタッフ/根村かやの) 作成日:04.02.11
機械もシステムも、数式もセクシーだ

 私は、技術(産業)博物館でいろいろな時代のエンジンを見たときに、「おやっ、この機械はどんどんセクシーになっているぞ」と実感したことがあります。また、数学や物理で自然現象の法則を数式化したものに、シンプルであるけれども単純というだけではない、なんともいえないエレガンスやセクシーさを感じることもあります。
 このように、本来無機質なものと思われている人工物に対しても「セクシーだ」という感情を抱くのが、技術者人性の特徴であり法則であると思います。

 そこで、今回は「技術者人性はセクシーである」と大胆に仮定したところで、技術および技術者におけるセクシーさとは何かを見ていきます。
「人間的」と「セクシー」との関係

図1.「機械的」「人間的」のイメージと特徴
  図
 セクシー(sexy)とは、人間の性的な魅力に対する表現ですが、もう少し中身を見ていくと「彼女のくびれたウエストがセクシー」「彼の厚い胸板がセクシー」という“形状”に関するものと、「あのダンスはセクシー」「髪に手をやる仕草がセクシー」という“動き”に関するものに大きく分けられそうです。
 この“形状(デザイン)”と“動き(機能)”というのは、エンジニアが作り出し利用する機械装置・道具でも、基本中の基本です。その意味では、エンジンをはじめとする動力機械がセクシーであることには、何の不思議もありません(といっては言いすぎでしょうか)。

 昔は機械・道具というのは、単機能で、動きも直線的、単純なものがほとんどでした。また、機能第一とはいえ外見のデザインはけっこう複雑で、いかにも「おれは動く機械であるぞ」という形をしていたものです。
 しかし、技術はメカ主体から電子・ソフト主体へ変化し、複雑なシステムもできるようになりました。さらに最近では新素材、ナノテクの活用などで、機械装置類も鉄と油の「非人間的」なものからどんどん「非機械的」なものになってきています。形状がシンプルになる一方で、動きは複雑にかつスムーズになってきています。形状と動作がともに「機械的なもの」から「人間的なもの」へ変化してきているといってもよいかと思います(図1)。これが、私が博物館で感じた「セクシーな進化」でしょう。
 しかし、人間っぽくなったからといって、そのままセクシーになるというわけではありません。現にエンジニアは、機械装置の人間っぽくない外見にこそ感情移入できて、セクシーさを感じることがあるものです。技術のセクシーさは、どこに秘められているのでしょうか。
五感とセクシー

表1. 五感の表現によるセクシー感覚
 
五感の表現 感覚の表現
視覚 ・スムーズでシンプルな形状(ごてごてしていない)
・連続性のある無駄のない動き(ごつごつしない)
・カラフルな色彩(モノクロのトーンでない)
聴覚 ・適度で刺激的なリズムがある(眠くならない)
・自然の息吹を感じる音楽(耳障りでない)
触覚 ・すべすべとしたスムーズな感覚(ざらざらでない)
嗅覚 ・いいにおい、香り(臭くない)
味覚 ・とろけるおいしさ(まずくない)
その他 ・ときめく、しびれる、夢見ごごち、愛がある・・・
・そそられる、ほれられる、ほれっぽい
 改めて、セクシーとはなんでしょうか。「色気」ともいいますが、「ときめき・そそる」という現象について考えてみましょう。

 セクシーにはもともと「性的な魅力」という根源的なものがあり、視覚、聴覚だけではなく、触覚、嗅覚、味覚といったものと深く結びついています。第六感というのも関係しているのかもしれませんが、表1では、セクシー感覚を五感の表現でまとめてみました。
 機械でもシステムでも数式でも、それに接したときに五感が働き刺激され、快いと感じると「これはセクシーなものだ」と思う(錯覚する?)のかもしれません。

 これに「ミステリアス」という要素が加われば、もっとセクシーになるでしょう。もっとわかりたい、もっとよく見たい、聞きたい、触りたい、という気持ちは、人をときめかせ、そそるものだからです。そう考えると、技術的課題を解決し、対象となる技術に近づいていこうとするエンジニアの営みは、なんとセクシーなことでしょう。
セクシー、武骨、卑猥の関係

 何がどうしてセクシーかと考え、その法則を証明しようとすること自体、「セクシーでない」「興ざめな」行為ですが、もう少しだけ、セクシーの意味を考えてみましょう。

 セクシーさがまったくない状態を、「武骨(無骨)」といいます。工業製品でいえば、色気もなにもない、灰色のスチール机や中途半端に古い装置群などが相当するでしょうか。エンジニアなら、理論一辺倒で五感がまったく働かないような人たちで、味もそっけもありません。大きな工場などで、長年、昔の軍隊式管理の中で働かされる場合には、どうしても「武骨なエンジニア」になりがちです。

 一方で、あまりに性的アピールが過剰だと「卑猥」となります。これも「セクシー」とは程遠い状態です。五感のうちのある感覚を、特別な目的のために誇張すると、ここに陥るようです。
 製品としては、目立たせるためだけに不要な機能・過剰な機能がごてごてとつけられたものがわかりやすい例でしょう。企業開発の中では、売らんがために往々にして見られます。エンジニアとしては、売れればよいということで、極端に人目を引く派手な色をつけるとか、すぐに壊れてもよいから、とりあえず激しい動きにするとかというように、目的を忘れて手段に走る人たちのことです。


表2. 技術者のセクシー、卑猥、武骨とは
意味 その内容 技術・技術者への
アナロジー
セクシー 性的に魅力ある
(sexy)
無駄がない
自然に溶け込む美しさ
環境に適応
自然体で魅力のある技術者
本質が見える・感じる
卑猥 色っぽい
興味本位
どきつい
(dirty)
強調しすぎる、ごてごて
自己中心世界
環境への突出
過剰に顧客対応
短期の人気取り対応
表面的なものに反応
武骨
(無骨)
荒削りな
田舎モノ
スマートでない
(rough)
いいかげん
ひたすら鈍感
自己中心世界
過剰に内部対応
カイシャの言いなり
力まかせ、単純思考

図2. 技術者のセクシーさのイメージ

 セクシーさと、対照的な武骨さ・卑猥さについてまとめ、この3つの位置関係を示しました(表2、図2)。自然環境への本質的な適応が五感でできる技術者はセクシーであるということのようです。

 この連載の第1回では、「理科少年には3つのタイプがある」の法則を取り上げましたが、五感を存分に働かせることの原点には、「工作型」ならプラモデルに、「博物型」なら昆虫採集に、「計算型」なら方程式に、無心に熱中し、感情移入した日々があるようにも思います。
「セクシー」を感じ取る

 エンジニアのセクシー度を測ることはできるでしょうか? 自分の仕事であれ他人の仕事であれ、技術の成果物を見て、最近、以下のように思ったことがあるかどうか、考えてみてください。全部思い当たれば、パーフェクトにセクシーかも。ピンとくるものが1つもなければ、武骨なエンジニアになりかけているかもしれません。

 
1) これは「○○色」をした技術だ!
モノトーンでなく、色を感じたことがあるでしょうか?(もちろん図面に色がついていてカラフルだという意味ではありません)
2) いいリズムの技術だ! いいメロディーの技術だ!
音楽や歌が聞こえてくるような感じがしたでしょうか?(作った装置やシステムがひとりでに踊りだすという意味ではありません。念のため)
3) スムーズな、いい肌合いの技術だ!
スムーズさが無機的なものから有機的なものに変化していたでしょうか? それが感じられたでしょうか?
4) いい香りのする技術だ!
装置やシステムに、いいにおいを感じたことがあるでしょうか?
5) まるごと食べてもおいしそうな技術だ!
食べてみたい気持ちがわいたでしょうか?

 そして、「愛」や「ミステリアス」を感じたでしょうか? それがさらに、「そそられた」というところまで感情移入できていれば、技術に対するセクシーな感受性は最大です。
「ほれっぽい」エンジニアはいいエンジニアだ?

 世の中のエンジニアに対するイメージを見てみると、まじめ、論理的などのよい面だけでなく、融通が利かない、しゃくし定規などの要素があるようです。物や自然を主に相手にする「理系」の人たちについては、ものが動く原理を考えたり、冷静に分解したり組み立てたりできるということで、主に人間を相手にする「文系」の人よりもクールで冷静という面が強調されてきた気がします。

 けれども、技術者人性はもっと情熱的でセクシーなのだと、エンジニア自身は知っています。エンジニアが技術にときめき、感情移入することで、そこから作り出される製品が、世の中の人に愛されるセクシーなものになっていくのではないでしょうか。
「感情移入」は、「ほれる」と言い換えることもできます。自然の造形の秩序や人造物の構造、それらの法則や機能を示す数式など、「人間でないもの」にも、ほれることができる、止めようのないほれっぽさ。それも技術者人性の本質と思います。
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根村かやの(総研スタッフ)からのメッセージ
 「エンジニアが描くイラストや実験ノートは、どうしてあんなにセクシーなんでしょうかね」という藤井所長のひと言に端を発した今回の法則。成果を生み出すエンジニアはもちろん、それを「セクシー」ととらえる感性が、なんとも技術者人性を象徴していると思います。
 みなさんの採点、そしてご意見・ご感想をお待ちしています。

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