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合併をチャンスに変えるエンジニア処世術
企業の合併再編の動きは、企業規模や業種を問わず年を追うごとに加速傾向にある。いつ自分が直面するかもわからない合併再編。そのとき、エンジニアを待ち受けているものとは……。
(取材・文/中村光宏 総研スタッフ/山田せいめい)作成日:04.02.04
【その1】明日はわが身? 他人事じゃない企業の合併再編
日立製作所と三菱電機が半導体事業の大半を統合したルネサステクノロジや、ゲームソフト大手のスクウェアとエニックスが合併したスクウェア・エニックスの誕生など、2003年も大型合併が相次いだ。大企業だけでなく、中小企業の間でも経営統合や事業再編が進んでいる。産業再生機構を活用した本格的な企業再生の取り組みが始まる2004年は、本体から切り出された事業が売り買いされる例が一気に増えるのではないか、という経済予測も出ている。

 そうした合併再編によって、企業方針、仕事内容、職場環境、待遇、場合によっては転勤を含む生活環境まで、エンジニアは予想もしていなかった大きな変化に直面することになる。その変化にどう対処すればいいのか。合併再編を自分のチャンスに変えることはできるのか。実際に合併を経験した2人のエンジニアと、企業合併に詳しい専門家にお話をうかがった。

【その2】合併再編を経験したエンジニアが語る「変化の実態」
ITネットワークサービス企業である株式会社エヌエイケー(ネットワークサービスシステムの構築・サポート)と株式会社エヌシーアイ(ネットワークインフラの構築・工事)が2002年8月に合併して誕生したエクストリーク株式会社。それぞれの企業出身エンジニアに、合併によるご自身の変化を語っていただいた。


[CASE1]LAN/Web系ネットワーク設計・構築エンジニア
顔写真
竹本賢治さん(27歳)
Profile
エクストリーク株式会社
サービスプロバイダー事業部
テクニカルサービスプロバイダー
システムエンジニアリングサービスグループ リーダー

2001年、(株)エヌエイケー入社。セミナーや研修の講師として、新人教育を含む社内のエンジニア教育を担当。合併後は、自ら現場作業もこなしつつ、グループリーダーとして部下のマネジメントも行っている。

 合併前は教育担当でしたが、座学による教育だけでは限界も感じていました。クライアントの求めるレベルは日々アップしていましたし、それにこたえるためにも現場に出て、緊張感のある仕事を通して人材を育てたいという思いがありました。その点は、合併によって希望がかなえられたといえるでしょうね。

 予想外だったのは、グループリーダーとしてのマネジメント業務が加わったこと。私のグループは20人ほどの構成ですが、新人から40代まで年齢も幅広いので、それぞれに合わせた対応を心掛けるのは大変でした。また、朝の出社時間が徹底されるようになったことと、社内の申請手続きのルールが複雑になったのはつらかったですね。リーダーとしては、率先して部下の手本とならないわけにはいきませんから。

 合併によって人数が増えたこと、仕事の守備範囲が広がったことは大きなメリットでしょう。今後は組織やグループの壁を越えた連携で、さらに大きな仕事もやってみたいですね。

竹本さんの合併再編before/after
竹本さんの合併再編before/after



[CASE2](合併後)工事のプロから。プロジェクトリーダーへの道が広がる
顔写真
原田 晶さん(30歳)
Profile
エクストリーク株式会社
サービスプロバイダー事業部
インテグレーションサービスプロバイダー ワイヤードテクニカルサービスグループ

1999年、(株)エヌシーアイ入社。ケーブル敷設などネットワークインフラの構築、現場での施工管理を担当。合併後も担当業務は変わらないが、最近ではサーバー構築や移設、キッティングなどでハード面を担当することも。

 合併によって仕事内容が変わることはありませんでしたが、仕事の進め方はずいぶん変わりました。かつては職人の世界。最初から最後まで、すべて一人で仕切って進めていました。その分、責任も重かったですけど。合併後はグループ内で仕事を分担するようになりました。一人で抱え込まなくてよくなったわけですが、半面、だれが担当しても同じように仕事ができるよう、情報をフォーマット化する作業が増えました。設計図や報告書など文書作成にかかる時間はかなり多くなっています。反省会や会議の時間も増えていますね。当初はそうした時間がかなり負担でしたが、半年ぐらいでそれも慣れました。

 合併で会社が大きくなった分、それまでの工事のプロから、自分でももっと大きなプロジェクトを動かせるようになりたい、と考えるようになってきました。そのための教育研修制度もあるし、人材もそろったわけですから、チャンスだと思っています。

原田さんのbefore/after
原田さんのbefore/after


【その3】不安をチャンスに プラス志向で合併再編を乗り切る!

 今回お話をうかがったエンジニアのお二人は、合併によって体験した変化を前向きに受け止め、仕事への新たなモチベーションを見いだしているようである。これは希有なケースなのだろうか。

 明治大学政治経済学部の海野素央助教授によると、合併によって「企業文化の衝突が生じる」のだという。

「企業合併ではよく“シナジー効果”という言葉が使われますが、一般には数値化可能な経済的シナジー効果のことを指しています。
しかし、これは言ってみれば氷山の一角で、実は目に見えないところ、社員の心、意識、感情といったレベルでの潜在化したシナジー効果のほうが中長期的には大きな影響力をもたらすのです」(図参照)

 企業合併では、心や意識のシナジー効果はマイナスからスタートするという。「勝ち組」「負け組」の意識や、自分たちのやり方を「正」として相手を認めない意識、ステレオタイプで相手を見て決めつける意識が働くからだ。
顔写真
明治大学政治経済学部助教授・心理学博士。専門は異文化ビジネス論、異文化間コミュニケーション論、産業・組織心理学。著書に『ネットワーク社会の経営学』(白桃書房)、『企業文化と「異文化」−企業文化の衝突』(学文社・いずれも共著)などがある。
企業合併におけるシナジー効果のイメージ図
企業合併におけるシナジー効果のイメージ図
明治大学海野助教授作成

「このマイナスのシナジー効果をどうやって0=ゼロまで押し上げるか、そしてプラスに転じることができるかが、企業合併の成否を握っているともいえます。そのためには自分たちのやり方に固執せず、相手に好奇心をもち、相手を認めて協働できるようになることです。合併による企業文化の衝突に適応できる人とは、例えば次のような特徴をもった人です」

合併をチャンスに変える条件

企業文化を通訳できる
身につけた考え方や仕事の進め方を合併相手に説明でき、相手の考え方や仕事の進め方も尊重できる。

好奇心が旺盛
別のやり方や考え方に好奇心がもてる。

相手に対する解釈の幅が広い
合併した相手企業のやり方や考え方、行動を自分の価値基準だけですぐに判断しない。

海野先生の言われるように、こうした意識を持てれば、合併再編をやみくもに恐れることなく、むしろ自分の可能性を拡げるチャンスとしてとらえることができるかもしれない。今回取材させていただいた二人のエンジニアのように。
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山田せいめい(総研スタッフ)からのメッセージ
昨今、合併再編のニュースがマスコミをにぎわせていますが、その多くは合併による経済効果やリストラといった、「表面的」な情報が主流です。今回取材に応じていただいた方のお話からは、合併という変化に対する期待や戸惑い、苦労ややりがいといった現場の当事者でなければ知り得ない、本音を語っていただきました。合併を経験された方の体験談や、これから合併を経験するかもしれない方の心境など、ぜひみなさまのご意見をお聞かせください。

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