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給与、キャリア、取得資格…… ITSSで変わる!? ITエンジニアの損得勘定 給与、キャリア、取得資格…… ITSSで変わる!? ITエンジニアの損得勘定
給与、キャリア、取得資格…… ITSSで変わる!? ITエンジニアの損得勘定
給与、キャリア、取得資格…… ITSSで変わる!? ITエンジニアの損得勘定
給与、キャリア、取得資格…… ITSSで変わる!? ITエンジニアの損得勘定

賛否両論あるとはいえ、ITSSが徐々にIT業界に浸透している。ITSSはITエンジニア一人ひとりにとって、給与、キャリア、取得資格などの面でどういう損得をもたらすのか。表層だけでは見えないITSSの真実を徹底解剖しよう。
(総研スタッフ/関洋子 CGイラスト/Rey.Hori))作成日:04.01.07
ITSSが本格的に普及するこれだけの事実
官だけじゃない、大手企業がITSSを推進
「官主導のITスキル・スタンダード(ITSS)。これまでも官主導でのプロジェクトがうまくいったためしがない。これも掛け声倒れに終わるのでは……」──。こう考える読者も多いかもしれない。しかし、「今のままでは、若くて優秀な人ほどIT業界を希望しなくなる。だからITSSは普及するかではなく、普及させなければならない」とITスキル・スタンダード協議会委員の一人でもある教育戦略情報研究所・所長の舟本奨氏は語る。IT産業自体の危機感に呼応するようにITSSは既に官主導ではなく、民主導のプロジェクトへと変化しつつある。

 2003年12月15日、ITSSを普及させるための民間団体・ITSSユーザー協会の設立総会が開催された。この団体に賛同しているのは、富士通、NEC、日本オラクル、マイクロソフト、シスコシステムズなどをはじめとする大手ITベンダー、教育ベンダーなど約30社(2003年11月末現在)。「ほかにも関心が広がっており、50社ぐらいにはすぐなると思います」とITSSユーザー協会専務理事の高橋秀典氏。この協会では経済産業省が定めたITSSを基に、具体的な技術名を使ったスキルレベルのマッピング、スキルを認定するためのアセスメント手法の開発やアセッサーの要請、効果的なトレーニングの提供などを行う。
WidowsやOracleなどの具体的な技術名を使い、現場に即する
 実際、ITSSを見ると、その表現は抽象的でわかりにくい。おそらく自分が今、どのレベルにあるか、即判断できる人はいないのではないだろうか。
「ITSSは辞書にすぎません。WindowsやOracleという名称も入っていない。だが、実際にITエンジニアが現場で使っているのはこれらの技術。現場に即したスキル標準を提供する予定です」(高橋氏)

 このように、ITSSユーザー協会ではITSSが絵に描いた餅で終わらないよう、ITベンダーもITエンジニア個人も使いやすい仕組みづくりを進めている。この4月には、ASPサービスでスキル診断するサービスツールを提供する予定だ。
ITSS向けの教育研修もすでに開催
 教育ベンダーもITSSの普及を後押しする。アルゴエデュケーションサービスの代表取締役社長・加藤正彦氏は
「当社では情報サービス産業協会主催のITSSに基づくITプロフェッショナル研修を行うICTカレッジの企画・運営を行っています。11月から開始しましたが、既に複数の企業が研修に参加しています」
 と語る。

 ITエンジニアのスキルを提供する派遣業者はITSS導入を最も積極的に行っている企業群。これらの動向について、高橋氏はこう語る。
「派遣業者はITSSのレベルによって、こういうレベルの人を派遣するからこの単価と決められますし、また派遣先となるITベンダーはどのレベルの人材が来るか、また来てほしいかを明確に伝えられる。双方にとって、メリットになるのでは」

 このようにITベンダー側もITSSを導入する意欲は非常に高いのがわかるだろう。

ITSSミニ解説
 経済産業省が「e-Japan 重点計画−2002」に基づき、高度なIT 技術者の育成・活用を図るため、2002年12月に発表した各種IT関連サービスの提供に必要とされる実務能力を体系化した指標。11職種(マーケティング、セールス、コンサルタント、ITアーキテクト、プロジェクトマネジメント、ITスペシャリスト、アプリケーションスペシャリスト、ソフトウェアディベロップメント、カスタマサービス、オペレーション、エデュケーション)をそれぞれ1〜7のレベルで表す。 スキルフレームワーク例(ITSSより一部抜粋)

スキルフレームワーク例
ITSS損得勘定 徹底検証

では、ITSS導入はITエンジニアにどのような影響を及ぼすのか、検証しよう。
給与は上がる、下がる?
 日本の「ITエンジニアの7〜8割はレベル3までに分布される」(舟本氏)といわれる。ITSSベータ版では、おおよその給与水準が書かれていた。それによると、レベル3の給与水準は「500万〜600万円」。一方、情報サービス産業が2002年に行った「ITエンジニアのための仕事・市場基準の人材評価システム」によると、ITエンジニアの総年収は平均691.2万円(平均年齢38.3歳)と報告されている。では、ITSSが導入されれば、給与が下がるのか。

「年収の表記がITSSから消えたのは、企業ごとの給与テーブルが違うからです。また標準的な指標を提示するとはいえ、エンジニア個人の評価は、所属企業におけるスキルレベルとなります。だから、どの企業でも同じ報酬とは決定づけられないのです」(舟本氏)
 つまり、ITSSが導入されても、企業固有の給与テーブルは守られる可能性は高い。今のところ損得なしというところか。

年齢、キャリアによって損得はある?
「今、企業で優秀と認められ、プロジェクトを掛け持ちさせられているような人は、ITSS導入は得ですね」(舟本氏、高橋氏)

 現在、IT業界で一般的に用いられている人月計算では、エンジニアの優劣によって単価が変動することはほとんどない。つまり優秀なエンジニアであればあるほど、損をする仕組みとなっている。ではITSSが普及すればどう変わるか。
 
「スキルによって市場価値を明らかにするためには、システム発注側であるユーザー企業の意識が変わることも大切です。ITSSユーザー協会にはまだ3社しか、ユーザー企業は参加していません。しかしITSSの普及により発注側の意識も変われば、人月商売から脱却でき、ITエンジニアのスキルに値段がつくことになる。調達側のメジャメントとしても期待されます」(高橋氏)

 ITSS普及は、ITエンジニアが持つスキルによって、市場価値がより鮮明になると考えられる。つまりレベルが上になればなるほど、市場価値の高騰が期待できるわけだ。経験年数10年以上(レベル4以上)でかつ優秀なエンジニアほど得をするといえるのでは……。一方、こんな損をする人も出てくる。

「ITSSが導入されれば、本当にITエンジニアに向いているかどうかが明確にわかるようになります。向いてないとわかった場合は、ITエンジニアを辞めることも考えなければなりません」(舟本氏)
「ITSSはリストラのツールとして使うことも可能です。例えば、毎年レベルアップしない人は、リストラ候補となる可能性があります」(高橋氏)

「スキルアップを意識することなくなんとなく目前の仕事をこなしてきた」という人にとっては、非常に厳しい現実がすぐそこまできている。特に人材が集中しているレベル2〜3(8年未満)の人は、要注意だ。

得するキャリア、損するキャリア
 では今後、有望視されるキャリアパスは何か。
「現在、あらゆる企業がプロジェクトマネジャー(PM)の育成に力を入れており、PMPの取得ニーズが高まっています」(加藤氏)
「ITコンサルタントやPMなどの上流職種、もしくはカスタマーサポートなどのオペレーション職種というように、二極化した人材が不足しています。今はほとんどの人がアプリケーションスペシャリストやITスペシャリストに位置づけられていますが、これらの職種は今後、国内だけではなく、中国、インドのエンジニアとも競争が始まる。今のままでは優位性がそれほどあるとは思えません」(舟本氏)

 つまりアプリケーションスペシャリストやITスペシャリストでレベルを高めるのは、いばらの道ともいえる。キャリアパスはやはり、ITアーキテクトやコンサルタント、PMという上流工程の職種を狙うのが得策なようだ。
資格取得はどれだけ得になる
「当社ではITSSに対応して、基本情報技術者はレベル1、ソフトウェア開発技術者はレベル2、情報セキュリティアドミニストレータはレベル3、アプリケーションエンジニア、システムアナリスト、テクニカルエンジニア(ネットワーク、データベース)、PMP、プロジェクトマネージャ、システムアナリストなどはレベル4に位置づけています。レベルと資格を対応づけることで、より技術保有状況をわかりやすくしています」(加藤氏)

 ではベンダー資格はどうか。
「各資格で問われる詳細なスキル項目をITSSにマッピングしています。しかし“この資格を取ればこのレベル”という位置づけではありません」(高橋氏)

 ベンダー資格、公的資格ともにITSSのスキルレベルを診断する際の加点要素ではあるとのこと。しかし「資格取得による加点要素で効果が出るのは、レベル3ぐらいまででは」と高橋氏が語る。だからといって資格取得はムダではない。
 
「日本のエンジニアの約半分は専門的な学問を積んでいないという報告もあります。基礎がなければ、その上にスペシャリティーを築くことができない。体系的な知識を身につけるためにも、特に公的な資格は取得したほうがいいでしょう」(舟本氏)
 ということで、資格を取得しなければ損をすることに……。

転職するときの得or損
「ITSSを導入すれば、今いる会社で自分の目指したいキャリアパスが得られるかどうかもわかるようになります」と語るのは高橋氏。ITSSユーザー協会が開発したツール「SSI-ITSS」では、描いたキャリアパスを実現するために、自らのスキル開発をどのように行うかが判断できる。そこで「この会社ではスキルを伸ばせない」と思えば、もはや転職するしか方策がない。

「ITエンジニアの流動性が高まると思います」と高橋氏が語るように、ITSSはITエンジニアの転職市場を活性化させる。しかもエンジニアが持つスキルレベルがある程度標準化されているので、企業とのマッチングもうまくいくと考えられる。

 もちろんスキルがあからさまになるので、口だけスキルで乗り切ってきた人にとっては、裏目となる。スキルがあり、かつ今の会社にいるべきかどうか迷っているITエンジニアにとっては、非常に有効な判断ツールとなる。


キャリア実現に必要なスキルを明確化するスキルインベントリーシステム「SSI-ITSS」
 日本オラクルが自社のITエンジニアのスキルレベルを診断するために開発したシステムを、各社で使えるよう標準化したシステム。企業にとってのメリットは事業戦略に則った人材育成計画や適材適所のアサインが可能になること。ITエンジニアにとっては、キャリア実現に必要なスキルが明確化されるので、キャリアパスが描きやすいというメリットがある。2004年4月からASPで提供を開始する予定だ。また導入されていない企業に所属するITエンジニアのために、簡易的なツールもWeb上で提供する予定。
キャリアパス表示画面例
レベル認定条件の画面例

レベル認定条件の画面例:
次のレベルにいくために、足りているスキル、
足りないスキルが一覧で表示される 

キャリアパス表示画面例:
今あるスキルを生かして
どんなキャリアパスが描けるか、旗印で表示

ITSSはキャリアパスを明確にするためのツールとして使おう
 オフショア開発など、今後ますますIT産業はグローバル競争へと突入する。その際、ITエンジニア一人ひとりの価値を判断するのは、スキルだ。

「レベルの低い人は今はまだ日本語の障壁があるので、働く場所があるかもしれませんが、今後、働く場所を見つけるのは難しくなる。そうならないためにもまず、自分のスキルを認識し、キャリアパスを早急に考える必要があるでしょうね」(舟本氏)

 そう、頼りになるのはスキル。スキルとは技術だけではない。自分の目指すキャリアを設定し、それに向かうためにはどんな技術的、ビジネス的なスキルを獲得しなければならないかが明確にわかるITSSは、ITエンジニアにとって厳しくもうれしい(?)指標といえるのではないか。
今回の取材に協力してくれた方々
舟本奨氏 高橋秀典氏 加藤正彦氏

舟本奨氏
株式会社教育戦略情報研究所
所長

高橋秀典氏
ITSSユーザー協会専務理事
日本オラクル株式会社
バイスプレジデント

加藤正彦氏
株式会社アルゴエデュケーションサービス
代表取締役社長
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関洋子(総研スタッフ)からのメッセージ
本来、会社では各従業員のレベルはそれなりにチェックし、把握しているはず。しかしそれほど、明確ではなかったのではないでしょうか?
スキルレベルが明確化されるITSSの導入は、ITエンジニアのみなさんにとって厳しい現実をもたらす一方、人月商売から脱却するための有効なツールになると期待しています。

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