再生医療／得意技術とコラボレートさせ難病治療に貢献

近年急速にメジャーになってきた医療テクノロジーが熱い。臓器再生のための幹細胞培養その
ほか、再生医療技術はバイオテクノロジーと深くかかわっており、他分野からの参入も可能。
未来医療の柱である再生医療は、情熱を傾けるに十分なジャンルだ。

（取材・文／伊藤憲二　総研スタッフ／高橋マサシ）　作成日:03.12.17

　未来医療のコアテクノロジーといわれている再生医療。肝臓、腎臓、心臓などの重要臓器が機能を失ってしまった場合、現在では臓器移植でしか治療できない。しかし、再生医療が確立されれば、細胞増殖によって臓器を自己再生させることが可能になり、多くの難病が治療できる。新規産業としても大いに期待されており、科学技術振興事業団は、2010年に1兆5000億円市場を形成すると予測している。

　医療技術と聞くと、他分野のエンジニアは敷居を高く感じがち。しかし、再生医療は幹細胞の培養など、バイオテクノロジーを手がけてきた食品、化学をはじめとする多くの企業の「手慣れた技術」をベースにしている。つまり、医学分野が未経験のエンジニアでも、取り組める余地が大きいのが特徴だ。

　自分の技術を生かして転職し、改めて医療や医薬について学ぶことも十分可能。この点は、スキルを広げたいエンジニアにとって見落とせないメリットだ。遺伝子治療と並んで、21世紀の医療技術の核になるといわれる再生医療。自分の得意分野を生かして、難病治療に貢献する……これこそまさに、エンジニア冥利に尽きる生き方ではないだろうか。

　リクナビＮＥＸＴで「再生医療」をキーワードに検索すると3件がヒットする（11月10日現在）。いずれも人材派遣会社で、派遣先は食品や化学系企業で、医薬、試薬など対象は多岐にわたっている。

　直接的な求人は、再生医療がまだ先行開発レベルにあるために多くはないが、食品、酒造会社や化学メーカーで、バイオに強い企業が行うケースがある。また、産官協同で設立されたバイオベンチャー企業も設立されている。一方では、自動培養装置など、再生医療用の機器開発も進んできた。こちらも将来的な求人ニーズが期待できそうだ。

　再生医療で求められるスキルは幅広い。細胞増殖のベースとなる幹細胞分離などは医学分野だが、薬品、有機合成、分析など、一般的な生物、化学分野については、医療分野未経験でも十分転職可能。
　また、大学で農学、生物学、化学を専攻し、その後全く違う分野で仕事をしていたという人材も参入可能である。まだ研究開発が始まったばかりであるだけに、現時点での求人は少ないものの、スキルの間口が広いのは魅力的。おくせず挑戦してみたい。