ECU／好調な自動車業界を支える心臓部


	一度知ったらやめられない技術職の醍醐味。その代表といえば、研究開発＝R&Dだ。ここでは、次世代を担う新技術をキーワードに、最新の業界事情と採用動向を解析する。やっぱりR&Dはオモシロイ！（取材・文／伊藤憲二　総研スタッフ／高橋マサシ）　作成日:03.11.26

　自動車の電子制御を司る重要部品ECUは、もともとエンジンの制御を行うためのマイクロコンピュータ。それが、安全、環境、情報化、快適性など、自動車に要求される技術の高度化によって、受け持つ機能は拡大する一方だ。新型車発表の際、ECUの機能の高さを強調するケースも珍しくなくなるなど、近年では一段と脚光を浴びている。

　ECUはアクセル開度と空気流入量、負荷などからエンジンへの燃料噴射量を演算するCPU、自動変速機の変速プログラム、安全のためのトルクコントロールなどから、モデルによってはエアバッグ、ABSをはじめとする安全装備の制御も行う。
　制御の複雑化に伴うシステムLSI化の需要増や、ハイブリッドカーなどの新しい動力制御への対応などに迫られている完成車メーカーでは、ECUの新設計や改良に取り組んでおり、現在、ECU業界は活況を呈している。

　ECUを含めた車載電子機器市場は急拡大の見通し。世界規模で2002年に200億ドル（約2兆3000億円）だったのが（カーナビゲーション、カーオーディオなどを除く）、2010年には355億ドル（約4兆1000億円）に膨らむという。ちなみに日本の自動車部品業界全体の市場規模は、約9兆円だ。
　自動車の情報化が進んでいる現在、国際競争力は相対的に高まっているが、その中でもECUは核となる技術のひとつ。多くのエンジニアにとって、ECUは挑戦しがいのある分野といえるだろう。

　リクナビＮＥＸＴでECUをキーワード検索すると、43件がヒットする（10月14日現在）。国内完成車メーカー、同部品メーカー、海外の自動車部品メーカーなどが名を連ねるほか、IT機器から自動車用ECUに参入したメーカーもある。
　ECUの開発は膨大なリソースを必要とするため、自動車メーカーと部品メーカーが緊密に協力して開発を行うケースが多い。つまり、働くエンジニアにとっても、最先端の技術を手にする絶好の場であるのだ。

　求人は上流工程から下流工程まで幅広い。設計分野では機械設計、回路設計、実装技術、システムLSI。ソフトウェア分野としては、TRONやLinuxなどの組込みOS、プログラミング、アルゴリズム開発などが挙げられる。また、自動車は誤作動を起こさない安全性を確保するため、徹底したデバッグを行うが、デバッガーの需要が極めて大きいことも特色だ。

　ECU関連の人材需要は非常に大きく、途切れることはまずないだろう。メーカーによって技術的な方向性にある程度の違いが見られるので、転職を志すエンジニアは、自分の適性や目標に合う企業をじっくり選んでいきたい。