生体認識／需要が急拡大する先端認証システム


	一度知ったらやめられない技術職の醍醐味。その代表といえば、研究開発＝R&Dだ。研究開発はあらゆるものが対象。だからこそ、「やりたいモノづくり」の求人情報は、なかなか網羅しきれない。ここでは、次世代を担う新技術をキーワードに、最新の業界事情と採用動向を解析する。R&Dはオモシロイ！（取材・文／伊藤憲二　総研スタッフ／高橋マサシ）　作成日:03.10.08

解析テーマ

生体認識

需要が急拡大する先端認証システム。困難な技術だからこそ挑戦したい

　人間の指紋、虹彩（瞳にある放射状の紋様）、声紋などを利用した認証システム、「生体認識（バイオメトリックス）」の開発熱が高まっている。社会のネットワーク化が進むに従い、セキュリティーや個人認証の重要性が飛躍的に高まったからだ。
　世界の生体認証機器市場は、98年の約60億円から2000年には約240億円に急成長。今年は約1920億円に達する見通しだという。

　例えば現在、カードなどで4けたの暗証番号が使用されているが、誕生日など類推の容易な番号を使ったり、磁気情報を解析されたりすれば、簡単に認証を破られてしまう。それに対し、指紋や虹彩は同じものが2つと存在しないため、紋様を正確にトレースできれば、セキュリティーチェックにはうってつけというわけだ。政府もこの生体情報を利用したパスポートを、2005年から発行する方針を固めた。

　バイオメトリックスの開発は簡単ではない。技術的な難題は、画像認識・識別技術に集中している。CCDカメラで指紋などの紋様を読み取り、それをパターン化して登録した元データと照会し、同一であると判断するのは容易なことではない。
　画像認識のためのアルゴリズムやプログラム、グラフィックエンジンから画像を取得するための照明、照射装置などのハードウェアまで、多くの技術の複合体という色彩が強く、それゆえに雇用創出力への期待も大きい。

　リクナビＮＥＸＴでは、生体認識、バイオメトリックスといったキーワードで募集をしている企業はない（9月8日現在）。だた、銀行のATMなど、大型のインフラに生体認識が採用されるとなると、市場規模は一気に拡大する。そのため、例えば画像処理関連のキーワードで探しても、関連技術開発の現場に遭遇することも十分にあり得る。

　生体認識装置の開発で求められるスキルは幅広い。まずはCCDカメラなど、光学処理のためのデバイス開発が挙げられる。パターン認識および照合はすべて画像処理関連の技術（ウェッジシェイピングなどの後処理も含めて）であるため、MPEGなどの動画や静止画の生成を行っていたエンジニアも必要とされる。

　一方で、各種アプリケーション開発、ファームウェア開発、アルゴリズム作成などのソフトウェア開発でもチャンスがある。もちろん、基礎として電気工学、回路、センサーなどのエンジニアも必要とされていることはいうまでもない。
　実際に、大手重電メーカーが虹彩を使用した空港でのチェックインシステムの試運転を成田空港で開始したように、画像認識・識別技術を使った認証システムの開発競争は既に始まっている。世界規模での需要が急拡大しつつある先端技術に、乗り遅れたくはない。