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失敗しない転職のための「情報収集法」とは?
20日で10人。クチコミ情報収集で企業の実態を探ったM・Eさん(31歳)
机上で図面と対峙するだけじゃ物足りない。自分の手でエンジンを触りながら開発をしたい。モノづくりの醍醐味が味わえる社風を重視したM・Eさんは、自分に合う転職先を見つけるには「関係者に話を聞くのがいちばん」と動き始め……。
(取材・文/長谷川恵子 総研スタッフ/木下ミカエル) 作成日:03.09.24
THANKS! 「いい会社を選ぶための、効果的な情報収集法ってありますか?」(sarutobiさん・29歳)などの多くの質問からこの企画は生まれました。
PROFILE
自動車メーカーエンジン開発エンジニア
M・Eさん(31歳)
1996年3月工学部機械工学科卒。同年4月、大手自動車メーカー系列の部品メーカーに入社、研究開発部門で次世代エンジンの開発に携わる。
98年親会社に出向し、研究所で量産用のディーゼルエンジンの開発を担当。CAE解析などを手がけるが、社内体制や風土に疑問を感じ、転職を決意。
2000年3月、自動車メーカーA社に入社。現在は海外向けのエンジン開発に携わっている。
SCHEDULE 転職決意から第一志望内定まで141日
1999.8 転職を決意
エンジニアらしいモノづくりがしたい
1999.9 1週間後 情報収集を開始
20日で10人以上に話を聞きまくる
1999.9 1カ月後 ついにA社に応募
行きたいと思えるのはここだけ!
1999.12 A社3次面接
ついに内定、憧れのA社で働ける
2000.1 退職の意思表示
A社への転職は隠し、引き留めにも屈せず
2000.1 退職
引き継ぎと自分の業務をやり遂げる
||  キッカケ編  ||  モノづくりの手ごたえをもっと感じたい!
||  情報収集編  ||  「クチコミ」情報重視。 20日間で10人以上に話を聞く
||  活動編  ||  自動車会社A社に絞り、面接に臨む
キッカケ編 モノづくりの手ごたえをもっと感じたい!

1999年8月27日 決意のとき

 親会社に出向して、最初のうちは無我夢中だった。でも、今の状態を改めて考えてみると社内の体制には疑問がわいてくる。

 今の会社では、エンジンテストなど、じかにエンジンに触れる業務はすべて工場側に任せっぱなし。エンジン開発者としてモノづくりをしながら、ほとんど「モノ」に触れることがない。「汚れる仕事は工場にまわし、開発者は机上で設計をしていればいい」という状況には疑問を感じる。

 しかも、官僚的な雰囲気で、自由に意見を言い合って開発を進めることができない。出来上がったエンジンが車に搭載されたのを見ても、僕が開発したという手ごたえを感じられない。このままでは、技術屋として面白くない。やりがいを得るには、転職するしかなさそうだ。


8月28日 社風重視でいこう

 何よりも、モノづくりの醍醐味を味わえる会社がいい。今の会社のように年齢や学歴、学閥に縛られない、実力主義の会社がいい。そして垣根がなく、エンジニア同士が技術に関して遠慮なく意見を言い合える会社。そういうところなら、自分が求めるモノづくりができると思う。

 エンジン開発にこだわるつもりはないが、これまでの経験を生かそうと考えると、やはり自動車関連業種だろうか。そういう基準で選ぶと、同業他社が再優先候補になる。サプライヤーになるよりも完成品を作る仕事がしたいので、部品メーカーはパスである。

 何にせよ、いろいろな会社の情報を集めてみよう。モノづくりの醍醐味を味わえる社風を優先したい自分としては、ネットや雑誌で企業が流している情報に加えて、関係者の生の話を聞くことが必要だと思う。
情報収集編 「クチコミ」情報重視。20日間で10人以上に話を聞く

9月3日 同僚、先輩に聞いてみる

 仕事が終わった後、自動車メーカーA社について職場の同僚や先輩数人にさりげなく意見を聞いてみた。A社は技術へのこだわりに定評があり、自由闊達な社風でも有名で、昔からひそかに憧れていたことを思い出したからだ。

 大学の同級生がA社に入っているという10歳上の先輩からは、「自由だけど競争が激しいようだからやめたほうがいい。入ってから苦労するよ」と言われた。A社には魅力を感じるんだが……。


9月10日 学生時代の同級生と話す

 大学時代の同級生数人と飲み会。みな異業種だが、自然と「仕事のやりがい」の話題になる。環境が違う世界で働く友人の話も、自分のキャリアを考えるうえでとても参考になる。

 勤務先の詳しい話にまではならなかったが、お互い働くうえで大切にしたい価値観を知ることができた。あらためて「自分がこの製品を作ったんだ」という実感がわく環境で働きたいと感じた。


9月14日 今度は同僚との飲み会で

 今度は職場の同僚と飲みに行って転職の話。彼の友人にも例の自動車メーカーA社に入っている人がいて、いろいろ情報が入ってくるらしい。

 社風について聞いてみると確かに厳しそうではあるが、エンジニアたちは立場に関係なく議論を戦わせ、楽しくモノづくりをしているようだ。A社を取り上げたビジネス書を何冊か読んだことがあるが、そこに書かれていた内容とも一致している。うーん、いいなあ。


9月17日  元同僚に電話でリサーチ

 技術的なコンサルティングという立場から、モノづくりの現場に携わることもできるのではと考え、転職先の候補に技術コンサルティング会社を加えてみる。
 晩、さりげなく今の会社の取引先である技術コンサルティング会社B社に転職した元同僚に電話してみる。募集の有無など軽く話を聞いてみるが、完成車メーカーに比べると自分が求めている環境では働けなさそうだ。入りたいというほどではないかも……。


9月20日  A社の募集広告が

 この間から毎週日曜日、新聞にA社の募集広告が載っている。非常に気になる。

9月23日 さらに友人に電話

 ネットで自動車メーカーB社の募集を発見。ちょうどそこに勤めている友人がいるので、電話してみる。実力主義をうたっているが、B社の本音はどうも違うようだ。実態を知る人に話を聞いてよかった。

9月29日 やっぱりココしかない!

 あれから大手自動車メーカーC社の採用セミナーなどにも参加した。でも、いちばん役立ったのは、やはり大学の同級生や同僚、取引先の人からもらった情報だ。10人以上に話を聞いてみて、今の時点で自分がいきたいと思えるのはやっぱり自動車メーカーA社しかない。A社に的を絞ってアプローチしようと決意。
活動編 自動車会社A社に絞り、面接に臨む

10月14日  書類選考通過

 締め切り(9月末)ぎりぎりに応募したA社から、1次面接の通知が届く。

11月6日  ハッタリをかます

 朝8時半に、某駅に集合。80人ほどの応募者が会社のバスに乗せられ、研究所に連れて行かれる。午前中は筆記試験。クレペリン検査※は集中できず、あまりできなかった。

※編集部注:連続的に数字の計算を行わせて注意力、集中力、作業への順応性、疲労度などを検査するテスト。

 午後はひとりずつ呼ばれて面接。面接官は課長クラスのエンジニア2人と人事部から1人。いきなり自己アピールをするように言われ、頭が真っ白になりながらも、今までやってきたことをつらつらと話した。ハッタリも必要かなと思い、最後に「損はさせません」と言い切った。意地悪なことも言われたが、感触はけっこう良かった。


11月10日 1次面接合格

 自動車メーカーA社から2次面接の案内が届く。うれしい。現在、社宅にいるせいか、封書が個人名で届いたのには驚いた。

12月4日  内定を確信?

 また朝8時半に、某駅に集合。人数は10人に減っていた。午前中は健康診断を受け、その合間にA4版、1枚程度の自由なテーマで作文を書かされた。
 午後は面接。また3対1で、このときの相手は技術部門のマネジャーと役員、人事課長。「入社すると君の年収はこれくらい(今の1.4倍)になるけど、それに見合った仕事ができますか?」と言われた。

 技術的な話になり、今後採用すべきだと思うエンジンの部品仕様について一生懸命語った(面接後、それはA社が使っているものと違うということがわかり、冷や汗をかく)。そのほか勤務地の話などもして、最後の10分はお酒の話で盛り上がった。この時点で、なぜだか落ちるわけがないという確信があったが、3次面接もあると聞き、まだあるのかと少々げんなり。


12月13日  タクシーチケット

 自動車メーカーA社から封書が届く。面接のとき、「時間が記入してあるタクシーチケットが入っていたら2次面接合格」と言われていた。ちゃんと入っているのを見つけてほっとする。

2000年1月15日 ほぼ内定!

 3次面接。この日来ていたのは自分を含めて3人。今度は人事の人だけが出てきて、ほとんど条件の確認のみに終始した。実質的に内定だ。入社可能な日を聞かれ、配属部署、給与、社宅などについて説明を受けた。


1月17日  退職届を請求

 会社で退職届の用紙を請求し、上司にも「話がある」と言って近々時間をもらう約束をした。夜には、A社に入社を承諾する返事を出した。

1月28日  やっと退職が決定

 上司にはしつこく退職理由を詮索され、引き留めにもあったが、A社のことは隠し通して2月いっぱいで退職できることになった。これから1カ月、昼は引き継ぎ業務、夜は自分の仕事とハードな日々が続きそうだが、がんばろう。
今だから言える・・・反省の小部屋
ほかの業種の社内事情も聞けばよかった
 自動車関連、特に憧れていた自動車メーカーA社を中心に情報収集をしてしまい、結果的にほかの業種と接触する機会がなかったのが、今となっては心残りだ。異業種にいる学生時代の友人からは、彼ら自身や彼らの友人が勤めている企業の社風や待遇面についても、もっと詳しく聞いておけばよかったと思う。
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木下ミカエル(総研スタッフ)からのメッセージ
転職活動をするうえでの情報収集先というと、主にWeb、情報誌、人材紹介会社、そして今回のM・Eさんのように「人」があります。あなたはどうやって情報を集めていますか?  また転職の際、役に立った情報源は何ですか? ぜひ、Tech総研までお知らせください。

このレポートの連載バックナンバー

エンジニア☆マル秘転職活動記

エンジニアが転職を決意してから入社するまでのプロセスを日記形式で紹介。行動、感想、入社後の反省点などをリアルに綴る転職ドキュメントです。

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