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オーディオ分野からカーナビ分野にキャリア展開
パナソニックITSに挑戦 組込みソフトエンジニアのケース
松下電器グループの中でパナソニックITSは、カーエレクトロニクス分野のシステム設計、ソフト開発に特化する、車載マルチメディアとITSインフラが開発対象だ。今回はますます高度化するカーナビ開発へ応募した、組込みソフトエンジニアを紹介する。
(取材・文/須田忠博 総研スタッフ/高橋マサシ) 作成日:03.09.17
THANKS! 採用市場で注目を集める組込みソフトエンジニア。開発の対象機器が多種多様に広がっているので、「今までのスキルを生かして、ほかの製品や分野に挑戦したい」という声をよく聞きます。そんな方は、ぜひこの面接を参考にしてください。
PASITS
応募したエンジニア 企業の面接担当者
佐藤さんphoto
佐藤 誠さん(当時29歳)
村田さんphoto
取締役(技術統括担当) 村田 忠彦氏
当時の職種 組込みソフト技術者
(応募2カ月半前に退職し、求職中だった)
募集職種 カーナビのソフトウェア開発技術者
業務の内容 HDD搭載カーオーディオのファームウェア開発においてテストモジュールなどを担当
仕事内容 カーナビゲーションシステムに組み込まれるソフトウェアの開発
職務経歴 派遣技術者として組込みソフト開発を6年半。うち4年間はカーオーディオ製品
応募資格 機器組込みソフト、通信制御ソフト、リアルタイム制御技術、オブジェクト指向設計、GUIなどの開発経験
志望動機 経験技術をもとにカーナビ開発を主体的な立場で行いたい。技術力をさらに高めたい
募集背景 2005年に社員350人、売上高70億円とする経営計画に基づく、即戦力の技術者採用
人事グループで第1次選考を行い、応募職種に該当するプロジェクトのマネジャークラスが第2次選考を行う。 プロジェクトマネジャー、その下のリーダーなど計2〜3人が面接。時間は30〜60分。
【通過率:約3〜4割】
技術統括役員、常務、総務部長の計3人が面接。時間は30〜60分。

【通過率:約8割】
2次面接のあとに採用条件などを確認し合い、そのうえで正式の内定となる。
Part1 自己紹介・志望動機・転職理由

カーナビ開発に挑戦して技術スキルを広げたい
村田:
 【Point1】最初に、キャリアやスキルを中心とした自己紹介を簡単にお願いします。
佐藤:
 私は組込み系のマイコンソフト開発の派遣技術者として6年半、開発現場で実務に就いてきました。初めの2年半はコードレス電話とTVゲーム機用メモリカード。そのあとの4年間は派遣先である○○○(総合エレクトロニクスメーカー)で、カーオーディオの開発に携わりました。扱ってきたマイコンはすべて日立製で、8ビットから32ビットまでです。
 【Point2】この間に培った、C++やオブジェクト指向開発の技術力には自信があります。開発テーマに対して責任を持って取り組み、その達成までの間に多くのスキルが習得できたと自負しています。
村田:
 それでは、【Point3】当社を志望する動機をご説明ください。
佐藤:
 私は以前から車載製品に興味があり、カーナビの領域へキャリアを展開させたいと考えています。仕事もここ4年間は、カーオーディオ用のファームウェア開発でした。御社はITS分野に特化して、システム設計やソフト開発をされています。自分の興味を追求できるとともに、経験技術を生かせる職場としてぴったりだと思いました。
村田:
 転職の理由は、カーナビのソフト開発に携わるということだけですか?
佐藤:
 派遣技術者の立場では、自分のアイデアを製品に反映しにくい環境にありました。自分なりの工夫をしながら、組込みソフトの開発をしたい気持ちが強くあります。
Point 1
[面接官]面接の出だしは自由に話してもらって、第一印象をとらえるようにします。話し方、話す態度、雰囲気に着目するのです。特に話し方が力強く明確かどうかは気になります。
Point2
[応募者]この部分の説明には、もっと厚みを加えるべきでした。私がアピールできるのは技術力ですから、これでは印象が弱いと思い返しました。また、自分の強みとする技術が御社での開発業務にぴったり合うはずだ、とまで言及しなかったのはミスですね。
Point3
[面接官]志望動機では2点に注目します。ひとつは、どうしても当社に入りたいという熱意。数あるカーナビ開発会社の中から、当社を選ぶ理由を述べてほしい。もうひとつは、自分の習得技術の持ち味を生かす形での、応募動機になっているかどうかです。
[応募者]このような着目点がわかっていたら、もっと話すことがありました。パナソニックITSはほかのカーナビ開発会社と比較して、新しいものを社外から取り入れようとするパワーが、強いように感じられたのです。そのことを付け加えるべきでした。
Part2 開発言語とOSの経験・マネジメント力

重視されるオブジェクト指向での開発経験
村田:
 当社が技術者を中途採用するいちばんの理由は、即戦力です。佐藤さんが最もアピールできる技術スキルは何でしょうか?
佐藤:
 アセンブラ、C、C++、UML、オブジェクト指向です。このあたりの技術領域には自信があります。
村田:
 【Point4】C++で開発したソフトは、具体的にどんな製品に組み込まれましたか?
佐藤:
 カーオーディオ開発の4年のうち、後半の2年強ではC++とUMLを用い、OSはVxWorksを使いながら、アプリケーションを開発してきました。
村田:
  【Point5】オブジェクト指向のモデリングはそう簡単ではありません。どういう形でアプローチしてきましたか?
佐藤:
 社内に閉じられている、簡単なプロトコルモニタのようなものから、オブジェクト指向で作り始めました。そうして学んだものを、実際の製品開発プロジェクトへ移行させる、応用する形でした。
村田:
 オブジェクト指向技術の資格は持っていますか?
佐藤:
 【Point6】UML技術者認定制度の、ブロンズレベルを取得しています。派遣先企業の所属部署がオブジェクト指向で開発を始めることになり、何日かセミナーに通わせてもらって受験し、合格しました。そのあとは、独学で勉強すると同時に、自主的に社外セミナーを受講しています。
村田:
 国家資格の情報処理技術者試験のほうはどうですか?
佐藤:
 そちらは何も受験していません。
OSはリアルタイム系のWindows CE、μITRON
村田:
 これまでの開発実務で使った経験のある、言語とOSをすべて挙げてもらえますか?
佐藤:
 言語はまず、日立製のマイコンを扱ってきましたので日立系のアセンブラ。それにC、C++、UML。OSに関しては、ここ2年ほど前からVxWorksで実装しています。UNIXも開発環境では使ってきました。
村田:
 ほかのOSは?
佐藤:
 【Point7】少しだけμITRONを経験しています。
村田:
 それは研修を受けたという意味ですか?
佐藤:
 いえ、実際に組み込みました。○○○で担当した一連のカーオーディオ開発で、短期間でしたがμITRON上で動く制御アプリケーションを作りました。
村田:
 これまでの開発で、品質管理手法として特に使ったものはありますか?
佐藤:
 ISOなどですか?
村田:
 そうです。△△などです。
佐藤:
 【Point8】残念ながら、そういった手法ではなかったような気がします。部署で指示されたとおりにドキュメントは作成してきましたが、それが国際規格などに基づくものだったかはちょっと……。

プロジェクトリーダーの経験や素養はあるか
村田:
 先ほど話に出たオブジェクト指向での開発プロジェクトは、何人くらいの規模でしたか?
佐藤:
 導入時の最初の小さなプロジェクトは2人でしたが、実際に市販された製品に組み込んだソフトの開発では15人くらいでした。
村田:
 その15人の中で佐藤さんの立場は?
佐藤:
 機能リーダーでした。
村田:
 【Point9】部下のメンバーは何人ですか?
佐藤:
 1人です。どの機能も小さいので、リーダー1人にメンバー1人というのが基本構成でした。これまでにマネジメントした中で、メンバー数が最も多かったのは5人です。コードレス電話開発のとき、協力会社の5人のプログラマをコントロールしました。
村田:
 チームで仕事をするとき、どんなことに最も苦労しましたか?
佐藤:
 特に苦労は感じません。問題が起こったときに1人だったら袋小路に入り込んでしまうところを防げるとか、人数が多いと単純に作業が速く進むとか、メリットのほうを強く感じます。
村田:
 信号の入出力インターフェースについて、コミュニケーションをとるのに苦労した経験はありませんでしたか? 開発者全員がインターフェースについて共通の認識を持ち、作業を進めないと、機能の統合のときに混乱したり、余分な修正作業が出たりしますよね。
佐藤:
 インターフェース決めはその都度皆で集まって行っていましたし、また、オブジェクト指向で開発をしているためか、特に問題はありませんでした。
 
Point4
[面接官]この質問は再確認のためです。答えは聞かずともわかっていましたから。車載品の開発経験があるほうが、有利なのは確かです。ただ、経験がなくても、C++での組込みソフト開発スキルが一定以上であれば問題ありません。例えば、携帯端末やデジタルカメラ、ロボットなど、技術が共通する部品はたくさんあります。
Point5
[面接官]この質問の狙いは、本当にオブジェクト指向での開発をしてきたのかどうかを探ることです。佐藤さんの答えを聞くと、実務経験のあることが納得できます。即座にこんな作り話はできません。
[応募者]質問の意図がそういうものだとは、察知できませんでした。村田さんは速いテンポで質問してくるので、こちらは事実を説明するだけで精いっぱいでした。ウソや脚色のほうが難しい。いや、きっと無理だったでしょうね。
Point6
[面接官]技術の資格と実際の開発スキルとは、必ずしもリンクしません。一定レベルの保証書程度と考えます。しかしながら、オブジェクト指向技術に関しては別です。ブロンズくらいは取っていないと、オブジェクト指向を知っているとはいえません。資格がないと、こちらは疑ってかかります。
Point7
[面接官]カーナビはリアルタイム処理が必要。従って、これらのOSにソフトを組み込んだ経験は重視します。
[応募者]面接のときは、パナソニック製カーナビに搭載される、リアルタイムOSの種類を知りませんでした。経験したOSを答えたわけですが、μITRONが一致していたのは幸運でした。
Point8
[面接官]開発の品質管理法には、ISOなど標準的なものがいくつかあります。何かを経験していれば、サブスキルとして若干の加点評価をします。当社が採用しているドキュメント作成法に、早くなじめるからです。佐藤さんの回答は、多くの応募者から聞かれる内容です。特にマイナス評価にはなりません。
Point9
[面接官]プロジェクトの規模や部下の人数、このあとで探りを入れるマネジメントスキルなどにこだわるのは、プロジェクトのリーダーかサブリーダーに短期間でなれるかどうかを見るためです。中途採用でいちばん欲しい技術者層はここなのです。
Part3 TOEICに見る英語力・ストレス耐性

海外勤務を見据えた英語力の確認
村田:
 ところで、【Point10】英会話はどのくらいできますか?
佐藤:
 日常会話なら、少しは話せます。
村田:
 TOEICを受験したことはありますか?
佐藤:
 あります。
村田:
 何点でしたか?
佐藤:
 最後の受験は2年前でしたが、450点ほどでした。
村田:
 海外勤務には興味がありますか?
佐藤:
 はい。機会があれば、体験してみたいです。
村田:
 当社の勤務地は新横浜と札幌の2カ所にあるのですが、どちらかに限定するような事情はありますか?
佐藤:
 札幌を希望しますが、業務の都合に合わせます。

気持ちと体を切り替えるストレス解消法
村田:
 ところで、【Point11】残業時間はどのくらいでしたか?
佐藤:
 多いときは月に150時間くらい。少ない時期だと50〜60時間でした。
村田:
 ストレスがたまると思うのですが、解消法はありますか?
佐藤:
 休日のスポーツが私のストレス解消法です。テニス、スキー、それに山登りが好きです。週に1度は何かのスポーツをしています。
村田:
 残業が多いと仕事に嫌気が差すこともありますか?
佐藤:
 さすがに体は参りますが、休日にリフレッシュして、次の週の活力を作り出すようにしてきました。


(このあと村田氏は「自分の性格で嫌いなところ、一番よいところはどこか?」「いつから勤務できるか?」「今の年収はいくらか?」などの質問をした)
Point10
[面接官]当社にはドイツやアメリカと連携する仕事があります。現地での駐在もあれば、来日する技術者との共同作業もあります。そのため、英会話力は必ずチェックします。サブスキルの加点要素としては、割とウエイトが高いでしょうね。450点という佐藤さんの点数では、加点はされません。
Point11
[面接官]この質問はほとんどすべての応募者にします。というのは、当社でもピーク時には残業が多くなるからです。応募者の中には、残業の少ない会社を希望する人もいますが、残念ながら当社に適していないと思います。
面接官はここを見た!
●車載端末組込みソフトを開発できる技術力
●プロジェクトマネジメントの経験または素養
●組込みソフト開発業務に打ち込める熱意
 カーナビの組込みソフト開発技術者を選考する場合、上記の3点が重要なチェックポイントになる。特に1番目の技術力は細かく審査する。まず、マイコンやシステムLSIなどを使用した組込みソフト開発の、実務経験の内容を問う。次に開発言語は、アセンブラ、C、C++、Javaなどのレベルをチェック。OSは各種のリアルタイム系の経験が重要。また、(将来の)リーダー職に適した人材かどうかも判定する。
佐藤さんはコレで決めた!
「パナソニックITSはほかのカーナビ開発企業に比べて、
外から技術力を吸収する姿勢が強いと思っていました。
それが面接でも感じられ、入社の意欲が増しました」
 技術力で勝負したい。そう考えて面接に臨みました。自信のある技術を何としても知ってもらいたかったのです。しかし、そんな思惑は不要でした。私のアピールポイントを次々と、積極的に発言させる面接でした。技術力を重視して選考しており、社外からの技術力を導入する姿勢が強い証拠だと思いました。ソフト開発の仕事が思い切りできると、入社の意欲が高まりました。
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
スタッフイラストイメージ  開発がしたい、それも、自分でなければできない工夫を盛り込みたい。そんなエンジニア・スピリットが、日本の技術を支えていると思います。何から何までは思いどおりにできなくても、「私の技術」で人を喜ばせたいという強い気持ちです。
 今回の佐藤さんもそんな思い入れのある人。取材の最後に、「忙しいけど楽しいんです」と笑っていました。あなたからのご意見、お待ちしています。

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