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変貌する自動車“生産技術”のげんば
転職を考える人なら必ず目を通す、求人広告の募集要項。ここで気になるのが、「経験3年以上」「要リーダー経験」「35歳位まで」などの「募集条件」だ。では、経験2年や36歳のエンジニアは、希望する企業に応募できないのか? 多くの企業を知る3人の転職コンサルタントとともに、Tech総研が「応募条件の謎」を解明する。
(取材・文 総研スタッフ/高橋マサシ) 作成日:03.07.16


THANKS! 応募条件とは絶対的なものなのか、本当のボーダーラインはどこなのか? などの疑問の声をよく聞きます。企業や業界により差があることを前提にしつつも、エンジニアを求める企業の本音を、3回シリーズで探っていきます。
Part1 || 求人データから探る経験年数の最新事情
Part2 || 「経験」と「年数」は、それぞれ何を意味している?
Part3 || 経験年数を尋ねるホントの理由&満たない場合の対処法
Part1 求人データから探る経験年数の最新事情

 応募者のスキルの判断材料として、多くの企業が応募条件で経験年数を設定する。それなら、企業はそれを「何年」と考えているのだろう。リクナビNEXTの応募要項に書かれた年数と近年の傾向から、最新事情を見ていこう。

リクナビNEXT応募要項に見る経験年数分布

ソフト系職種(ソフトウェア・ネットワーク) ハード系職種(電気・電子・機械)
グラフ ソフト系職種(ソフトウェア・ネットワーク) グラフ ハード系職種(電気・電子・機会)
※「希望条件で探す」で検索した「経験年数」が記載の件数(6月18日現在)

企業が求める経験年数のトップは「3年以上」

 経験年数で最も多いのは、ソフト系もハード系も「3年以上」だ。1つの業務を3年も経験すれば一人前。こう考えている企業の多さがわかる、また、技術的な基礎知識と素養を必要とするハード系職種のほうが、明らかに条件はシビアだ。同じ「経験3年」でも件数は倍。一方、「経験1年」を比べると、ハード系はソフト系の6分の1の件数しかない。
 ただ、そんなハード系職種であっても、実は経験年数を記載しているのは672件中132件で、総件数の約20%しかない。ちなみにソフト系でも、616件中142件(総件数の約23%)である。

経験年数を問わない企業のボーダーライン

■経験年数を問わない募集要項例

■近年の傾向

・猶予期間のあるポテンシャル
 採用から即戦力採用へ
・「○○ができる人」から
 「貢献ができる人」へ
・採用するための面接から
 不採用が前提の面接へ
 上記に、経験年数を問わない応募要項の典型例を挙げた。上の例はピンポイントのスペシャリスト採用、下の例は未経験者を含めたポテンシャル採用とわかる。つまり、応募する側にとっては、経験年数を聞かれる前に、採用のボーダーラインが見えるのである。

 これらのケースがすべてではないが、「経験年数の記載がないから安心」ではないのだ。転職コンサルタントに話を聞くと、近年の傾向は、即戦力、貢献度、不採用前提の面接の3つだという。すぐに仕事を任せられて、積極的な提案もしてくれる人材。その人材が見つからなければ、無理には採用しないというスタンスだ。

 それを考えると、経験年数の持つ意味は大きい。なぜなら、明記された条件に応募者が満たない場合、企業には「落とす権利」があるからだ。この経験年数とはいかなるものか?
Part2 「経験」と「年数」は、それぞれ何を意味している?

 企業が意図している経験年数の具体的な意味を、転職コンサルタントの3人に聞いた。題材は下の募集要項の例。ここでは「3年以上」となっているが、この経験に満たないエンジニアは、応募資格がないのだろうか。

応募要項例


経験年数は絶対ではなく、流動的に考えてもよい

 経験年数が満たない場合は、応募の資格がないのか。昨今の企業は即戦力採用に力を入れているため、履歴書上では確かに不利だが、そればかりではないという。
「仕事内容などを読んで、『SFAに関わった経験はないが、CRMならJavaを使ってこんなシステムが組めるな』などと具体的にイメージできる場合は、可能性大です。応募動機書などを作成し、不足している経験を書面でプレゼンテーションしてみるのも1つの方法だと思います。企業によってですが、特に26歳くらいまでの若い方であれば、ポテンシャルを買われてチャンスが開ける事もあります」(稲垣氏)

 経験が連続していない場合も、基本的には合計してよいようだ。
「同じ職務を続けさせない企業もあります。あまりに頻度が多かったり、極端に間隔が空いている場合は別ですが、経験が分かれていても合計して3年ならよいでしょう」(佐藤氏)

 逆に、単に年数を満たせばよいというものでもない。
「経験3年なら『直近の3年』という意味。現在の仕事が全く違う職種であれば、書類審査で落とされるかもしれません。また、同じ経験3年でも、28歳と35歳では企業の見方は全く異なります。35歳なら『3年しかないのか』と判断されるでしょう」(清野氏)


(取材協力)
株式会社リクルートエイブリック
株式会社アイテック
株式会社クロップス・クリエイト
キャリアプロモーション一部 ITCAグループ 稲垣礼仁氏
人事事業部 部長 清野義則氏
エグゼクティブサーチ事業部 コンサルタント 佐藤 淳氏
Part3 経験年数を尋ねるホントの理由&満たない場合の対処法

 実務経験が不足していても応募の可能性が大なら、なぜ企業はそんな基準を用いるのだろうか。そして、経験年数が満たない場合の対処法とは何だろうか。

企業は「実務経験年数」から何を見るのか?

経験年数を決める企業の本音
理由1:ミスマッチの応募者を避けたい
ミスマッチの応募者が多いと、選考や面接に手間も時間もかかる。そのため、「1年やってればこのくらいはわかるはず」「3年以上と書けば素人はこないだろう」などの思惑で境界線を設定する。


理由2:以前の中途採用者から判断するしかない
年数を決めるのは採用予定部署の責任者などだが、中途採用者の経験年数とその後の活躍度を判断材料にすることが多い。つまり、「以前に採った『経験1年』は使えなかった」などの肌感覚で数字を出す。

理由3:広告スペースと広告費に限りがある
ほしい人材を詳細に説明すると、文章量が膨大になり、広告スペースに収まらなくなってしまう。また、広告費に上限があるので、ほしいスペースを確保できない場合もある。

 経験年数を設定するのは、書類選考で応募者を絞る第一段階のようだ。
「ある程度の経験のない人に応募されても困るわけです。逆にいえば年数は関係ない。応募の際は、『仕事内容』と一緒に考えることが大切です。上の例なら、CやJavaができればよいのではなく、流通系の支援、基幹システムをCやJavaで作れる人がほしいのです。それができるなら応募すべきですね」(清野氏)
「基本的には一人前のスキルがあり、すぐに仕事を任せられることが、採否の基準です」(佐藤氏)

 また、広告媒体のスペースやコストも関係している。
「企業サイドの事情で、掲載スペースが限定される場合もあります。だから簡単に『3年以上』と書いてしまう。また、事細かに人材像を書くと長くなるし、ピンポイントになり過ぎて応募者を抑制してしまうデメリットもあります。本当にピンポイントな採用なら、短くても必要な経験に対してきちんとした説明があったり、条件を限定しているケースが多いと思います。」(稲垣氏)


企業はどこまで譲歩できるか、どうすれば譲歩させられるか

企業の譲歩のポイントと対策法
●経験年数が不足⇒実績と事業貢献度をまず職務経歴書でアピールする。
●仕事内容が同一でない⇒貢献できる具体的な業務内容をプレゼンする。
●年数は満たしているが年齢が高い⇒「何ができるか」の企画を持ち込む。

 3人のコンサルタントは口をそろえて「年数が足りなくても応募すべき」という。しかし、無条件というわけではない。
「経験年数は通常8割までが許容量だと思います。経験3年以上という記載なら、2年半ですね。大切なのは、不足の2割を補うプラスアルファ。そこが強いことが条件ですが、6、7割でも可能な場合もあります」(佐藤氏)
「ただ部署にいただけの経験3年と、業務をみっちり学んだ経験2年では、スキルで後者が勝る場合もある。しかし、企業はその事実を知りませんから、まずは応募書類でアピールすべきです。
 例えば、『経験は2年ですが、私が考える御社の業務展開に特化した、密度の濃い2年でした。なぜなら……』などと具体的に説明する。これは面接に進んだ場合のアピールにも使えます」(稲垣氏)

 また、経験年数をクリアしている場合は、年齢が高いほど不利になる。
「同じ3年の経験者なら、企業は35歳より27歳を選びます。ですから、その年齢ならではの『持ち味』を出さないと通らない。例えば、応募先企業の事業内容や技術力を調べて、新製品の企画書を作ってしまう。そこに自分の業務を盛り込む。多少的外れでもよいのです。目的は積極性のアピールなのですから」
 経験年数が足りなくても、頭の使い方次第でカバーでき、それを「売り」にも転換できるのだ。まずは、「使える人材」であることを企業にアピールする。ここからスタートだ。
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
 実務経験って、わからないものですよね。例えば編集者の私。Web編集はTech総研が初めてですが、雑誌も単行本の編集も経験しました。キャリアもそれなりにあります。ですが、モバイルコンテンツ編集とか、ストリーミング放送の編集なんて、できるかなぁ。まあ、イメージはできますけど。
 この「応募条件の謎」はシリーズでレポートします。次回は7月30日、近年特に掲載件数の多くなってきた「リーダー・マネジャー経験」の予定です。ご期待ください!

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